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雑誌目次

雑誌文献

medicina14巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

今月の主題 熱性疾患への臨床的アプローチ

理解のための10題

ページ範囲:P.400 - P.402

発熱の基礎

体温のセットポイント

著者: 入来正躬

ページ範囲:P.320 - P.322

 体温調節に関するセットポイントの考え方は,生体の調節系の研究に制御工学の進歩をとり入れる際に始められた.元来,制御工学の分野での概念であるため,体温調節機構でのセットポイントの考え方が単なるシミュレーションにすぎないのか,実際の現象として把握できるものなのかについて未だに論議されつつある.しかし,多くの現象がこの概念を用いることによって容易に説明できるので,体温調節機構を考える際にひろく用いられている.本稿では,基本的な考え方についてのみ御紹介したい.
 制御工学で,負のフィードバックをもつ最も基本的な制御系を図1Aに示す.この系では制御対象変数と標準値の差が誤差としてとらえられ,制御要素を動かす.荷重誤差信号としてのとらえられ方は図1Bに示され,制御対象温度信号が標準信号と等しい温度がセットポイントの温度となる.前者が後者より高い場合には正の荷重誤差に,逆の場合には負の荷重誤差となる.

発熱の機序

著者: 小坂光男

ページ範囲:P.323 - P.326

はじめに
 発熱とは感染症や熱性疾患時の体温上昇を指し,"体温が異常に高いレベルにsetされ,かつそのレベルで調節されている現象(Liebermeister 1875)"だと古くから考えられている.
 一方,高温多湿環境や入浴,運動時の体温上昇は誘発または生理的高体温と称し,発熱とは区別されている.誘発高体温は生理的,発熱は概して病的という観点から,発熱は体温調節中枢の異常だと決めつけるのは早計である."発熱中も体温調節機構そのものには狂いがなく,健常かつ有効に作動している"とのLèfevre(1911)の提唱は今日もなお生きているのである.

発熱患者のみかた

臨床検温法

著者: 冨家崇雄

ページ範囲:P.327 - P.331

必要な基礎知識識
 臨床検温(臨床的な「体温」の測定)に必要な基礎知識としてはつぎの諸事項がある.
 1)臨床検温の目的は「体温」の測定であって,漠然とした人体温度の測定ではない.したがって,第一に,「体温」とは何であるかという体温調節機序の概略,第二に,臨床上,直腸,口腔,腋窩などで温度を測定し,「体温」を測定したと称しているが,このような温度は,真の「体温」とどのような関係にあるものなのか,どのような条件が満足された場合に「体温」の代表値のひとつとみなしてよいのか.

熱型のみかた

著者: 吉植庄平 ,   大嶋大和 ,   吉原昭次 ,   鶴田吉昭 ,   荒巻武彦 ,   松江石文

ページ範囲:P.332 - P.337

 熱型からある程度の診断ができることもあるが,一般には今日のごとく原因も多様化してきわめて複雑な課題である.
 しかしながら,熱型を整理しながら,他の所見と合わせて診断できるよう努力することは大切である.

理学的診断のコツ

著者: 長谷川弥人

ページ範囲:P.338 - P.339

はじめに
 発熱と同時に主要症状があるときは,それについて診断がすすめられるはずであるので,ここでは不明の発熱(Pyrexia unknown origin,PUO)として述べる.

検査のすすめ方

著者: 林康之

ページ範囲:P.340 - P.341

 主訴が発熱であっても現病歴の聴取現症のいかんによって,スクリーニングから始めるか,直ちに専門的な検査を行うかはかなり異なった場合があろう.患者の年齢,性別,発熱の程度,持続,局所所見や随伴症状の有無流行時期に当たったか否かなどすべてが検査項目の選択に欠かせない要素となる.また,多少とも症候が見出されれば必然的にその方向へと検査の選択も引きずられがちであり,思わぬ陥穽に困惑することもあろう.以下,ひと通りのスクリーニングテストに始まり,そのデータからの検査のすすめ方をまとめて述べる.ただ,検査の範囲はなるべくどこでも実施可能な検体検査に限り,スクリーニングテスト項目としても,尿定性,尿沈渣,赤沈,白血球数,末梢血液像,CRPなどだけをとりあげることとする.

各種疾患と発熱

一般感染症

著者: 国井乙彦 ,   小松喬

ページ範囲:P.342 - P.344

はじめに
 発熱を伴う疾患は日常臨床において遭遇する機会は多く,後述するごとくその大部分が感染に由来している.しかし,かつて発熱患者において1位を占めていた結核症が公衆衛生,化学療法などの進歩により減少し,また感染症全体としてもいわゆる法定伝染病に属するものは激減しており,代わって白血病,膠原病などの比率が増加していることが指摘されている.この比率は患者に接する立場によって異なるが,第一線においては依然としてまず感染症を考えなければならない.本稿では,発熱疾患における感染症のとらえ方について述べる.

結核

著者: 田島洋

ページ範囲:P.345 - P.347

 わが国では,結核の発見診断に集団検診が実績をあげてきたが,最近は年間の新登録患者のうち集検発見は16.7%に過ぎず,症状発現で医院,病院を受診して発見される率がはるかに高い(73.1%).表は,入院初回治療患者の病型と初期症状との関係をみたものであるが,発熱を主訴とするものは約50%を占あている.化療開始までに示した最高体温は,39〜40℃22%,37.5〜39℃未満48%,微熱14%,平熱16%であった.病型別には,粟粒結核,胸膜炎,滲出性病変群に熱を主訴とするものが多かった.以下,初回治療例の熱型を病型別に整理してみた.

著者: 古江尚

ページ範囲:P.348 - P.349

 癌患者においては高い頻度で発熱がみられる.以前は発熱というとまず感染症が考えられたが,今日のように抗生物質の発達した時代においては,まず癌を考える.癌患者における発熱は,早期のものから進行したものまで,全経過を通じて,種々の問題をなげかける.

膠原病

著者: 大藤眞

ページ範囲:P.350 - P.351

 膠原病のすべてに発熱があるわけではないが,一般的に膠原病の共通症状の筆頭に発熱があげられているごとく,膠原病の臨床的概念としては発熱疾患というイメージが定着しているようである.それは,膠原病の範疇には全身性エリテマトーデス(以下SLE)とその周辺疾患,結節性動脈周囲炎(以下PN)とその周辺の血管炎疾患など発熱性疾患が多数あるので,臨床家が不明発熱疾患に遭遇したとき,まず感染症のたぐいか膠原病のたぐいかの鑑別に腐心しなければならないことが多いことによっても理解できる.
 しかし,膠原病を古典的6膠原病にしぼってみると,一応発熱にとくに関連が深いのはSLE,PN,リウマチ熱(以下RF)の3者であり,ついで皮膚筋炎(以下DM)(多発性筋炎-以下PM-を含む)も急性期には比較的発熱が多い.しかし,慢性関節リウマチ(以下RA)では特殊の場合には発熱があるとはいうものの,本症には発熱性疾患というイメージは少なく,また強皮症(以下PSS)にはふつう発熱は特徴的ではない.

血液疾患

著者: 加々美光安

ページ範囲:P.352 - P.353

 血液疾患に発熱を伴うことはしばしばであり,とくに発熱が特徴的な症状である場合がある,とくに白血病や悪性リンパ腫については疾患そのものに基づく発熱か,感染によるものかの鑑別は治療にも関連し重要な課題となっている.本稿では,日常診療のうえで問題となる白血病,悪性リンパ腫を中心として述べたい.

脳卒中

著者: 荒木五郎

ページ範囲:P.354 - P.355

 日常,急性期脳血管障害患者を診療するにあたって,発熱をみることはしばしばある.発熱は脳浮腫を助長させるので,なるべく早く発熱の原因を追究し,処置しなければならない.しかし,原因が明らかになるまでは解熱剤を投与しておく.発熱の原因は大別して,①脱水症による発熱,②感染症による発熱,③中枢性発熱の3つに区分できる.ここにその見わけ方について概略を述べることとする.

内分泌疾患

著者: 武部和夫

ページ範囲:P.356 - P.357

 内分泌疾患のうちで感染に罹患しやすいものが存在するが,本稿では内分泌疾患のうちで発熱を主な症状としてくるものにつき述べたい.
 発熱を伴う内分泌疾患として下垂体,甲状腺,副腎皮質のクリーゼ,亜急性甲状腺炎などが知られている.クリーゼは稀な現象であるが,一般にショック症状を呈し,ときに発熱をみるが,緊急治療を要するので,できるだけ早く内分泌腺のクリーゼと診断し,的確な治療を施行しなければならない.これら内分泌疾患における発熱は感染の徴候がなく,割に突発的に発熱をきたすことが多く,発熱の裏面に存在する内分泌疾患を見出さなければならない.

薬剤アレルギー

著者: 可部順三郎

ページ範囲:P.358 - P.359

薬剤による発熱と薬剤アレルギー
 薬剤による発熱は多岐にわたる直接的・間接的作用によって起こりうるわけで,広義のdrugfeverは薬剤アレルギーによるもののみでなく,薬剤の代謝,中枢神経系への作用,host-parasite relationship,二次感染への影響,組織障害,発熱因子によるものなど種々のものを含んでいる(表)1)
 薬剤アレルギーに基づく発熱は,発熱のみを主症状とする場合と,発熱と同時に皮膚発疹,光線過敏症や筋肉痛・関節痛などの血清病様症状,血液異常,肝機能障害などの他の薬剤アレルギーの症状を伴う場合とがある.

特殊な発熱

微熱—本態性高体温症を含めて

著者: 戸川潔

ページ範囲:P.360 - P.361

 最近の医学の目覚ましい進歩により,疾患に関する各種の情報の飛躍的な増加にもかかわらず,体温と熱型の評価は,疾患の診断とその経過の判定に重大な意義を失っていない.いわゆる「微熱」に接して,われわれはその臨床的意味づけと対策に悩まされることが少なくない.

悪性過高熱

著者: 藤田達士

ページ範囲:P.362 - P.363

 悪性過高熱は吸入麻酔剤フローセンや筋弛緩剤SCC(サクシニールコリン)によって発生する激症高熱である.最初の報告はDenboroughがLancetに寄せたレターで,麻酔をかけると38人中10人が死亡した家系が存在し,そのうち3人は異常な高熱を発したとしている.その後1964年,Saidmanが高体温症による2例の麻酔死をJAMAに発表して以来注目され,今日までに全世界で700例以上が報告され,300篇以上の論文が発表されている.
 本邦での最初の報告は1968年であるが,すでに1964年以来発生しており,今日までに60例が報告され,うち39例が死亡した.

周期熱

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.364 - P.367

周期熱とは
 1948年,Reimannはなんら特別の原因が認められないのに,一定の間隔をおいて,ある特定の症状を発作的にくり返す患者が存在することに気づき,これを周期病と呼ぶことを提唱したが,とくにそのなかでも,一定の間隔をおいて発作的に発熱をくり返す周期熱periodic feverという病型がその後有名になった.
 したがって,周期熱とは元来病因不明で一定の間隔をおいて発熱を発作的にくり返す一群の症例に対して名づけられたものであるが,このほか,周期熱の形をとるという点で従来からよく知られている疾患にマラリア,ブルセラ症,再帰熱,間欠性胆汁熱intermittent biliary fever(Charcot),Hodgkin病などがある.

小児の発熱

著者: 合瀬徹

ページ範囲:P.368 - P.369

 小児の発熱に対処する場合,医師はまず,その発熱の原病をたずね,そして治療にとりかかるわけであるが,小児科ではこの点に関して,次のような一般内科とやや異なる面があるように思う.すなわち,①一般に原病をたずねる時間的余裕があまりないこと,②発熱そのものが即治療の対象となる状態(例:熱性痙攣)がたまたまあること,③発熱の高低が病気の重,軽症度と必ずしも比例しないこと,などが小児発熱に関していえる特徴であろう.したがって,その診断と治療に当たって大切なことは,常に多種類の疾病の可能性を想定しながら,それらを予めわかりやすく患児の親に説明しつつ,的確にまず現状の好転,すなわち解熱,病気の軽快を認めうるよう努力しなければならないことである.

老人の発熱

著者: 原沢道美

ページ範囲:P.370 - P.371

 老人が発熱するのは,若年者と同じく異常高温への曝露,体温調節機構の障害,および発熱物質の作用,などによってである1).しかし,老人では体温調節機構が低下していたり,好発する疾患に違いがあったりするので,発熱患者の診療にあたっては,若年者とは少しく異なった配慮が必要と思われる.

治 療

発熱患者の薬物療法

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.372 - P.373

 熱があるから解熱剤という思想は古くからあり,いまもその傾向はなくなっていない.これは考え方の短絡であって賛成できない.もともと発熱は何かの病因に対する生体反応の現れのひとつで,必ずしも生体に不利な条件とみなすことはできない.
 患者や家族は,高熱があると"脳膜炎になりはしないでしょうか"といった心配をするものであるが,脳膜炎(髄膜炎)になれば高熱がでるかも知れないけれども,熱があるから髄膜炎になるのではない.発熱患者をみたとき,まず行わねばならないのは原因の究明で,熱がその患者にとってどんな意義をもっているかを考える必要がある.

ステロイドの使い方

著者: 勝正孝 ,   今高國夫 ,   金井豊親

ページ範囲:P.374 - P.375

 副腎皮質ステロイド(以下,副ス)剤は周知のごとく両刃の剣と評され,その作用機序も未だ不明の部分も決して少なくない.発熱患者にこれを使用する場合も単なる解熱剤としてではなく,宿主・生体に対して極めて複雑なる影響を与えることを常に念頭におき,適応を慎重に選んで使用すべきである.

グラフ

新しい体温の測定法

著者: 上田五雨 ,   竹岡みち子

ページ範囲:P.377 - P.383

はじめに
 体温の測定は体温計が出現する以前から行われ,主観的な感覚によって身体の温冷の度合が判断されてきた.体温の概念が次第に精密化され,拡張されるにつれ,その測定方法も種々開発されるに至っている.
 体温の測定を完全に行うためには較正された正しい温度計を用いるだけでは十分ではなく,被測定体および測定環境が正しく調整されていることが重要である.今,測定精度を0.1℃と定めると,従来の常識的な測定条件でも一般には差し支えないが,精度を0.01℃またはそれ以下に設定すると,かなり細かい注意を払うことが重要となる.

カラーグラフ

発疹を伴う発熱性疾患

著者: 柳下徳雄

ページ範囲:P.384 - P.387

予想すべき疾患名と頻度
 一般に,発疹を伴う発熱性疾患の患者をみた場合は,まず急性発疹性の感染症を考えるべきであるが,薬疹や膠原病なども忘れてはならない.また,これらの疾患の頻度は年齢層によって大差があることは周知のところであるが,成人と小児に大別して,その傾向を示せば表1のごとくである.
 小児では,麻疹,猩紅熱,突発性発疹,水痘,風疹の順で頻度も高いが,成人では,帯状庖疹,薬疹,風疹,湿疹(紅皮症),猩紅熱,水痘などが低い頻度で並んでいる.

座談会

FUOをめぐって

著者: 吉植庄平 ,   阿曽弘一 ,   今村栄一 ,   町野龍一郎

ページ範囲:P.390 - P.399

 発熱を主訴とする患者は多い.しかもその根底には数多くの疾患が潜んでいる.しかし,訓練された眼と種々の検査法をもってすれば,大部分は診断が下せる.残された少数の疾患がFUOとなるが,今回は,FUOへのアプローチの方法を中心に,熱性疾患の全体像についてお話しいただく.

演習・X線診断学 血管造影写真読影のコツ・3

腎動脈造影

著者: 平松京一

ページ範囲:P.405 - P.411

 前回は血管造影の基本となる大動脈造影について述べたが,今回から選択的血管造影に入ることにする,そこでまず選択的血管造影としては,テクニックが比較的容易で,しかも診断上非常に役に立つことから,最も広く普及している腎動脈造影から始めてみたい.腎の動脈造影は,以前よりdos Santos法による経腰的直接穿刺の大動脈造影によって行われていたが,Seldinger法を用いた経皮カテーテル法によって,現在行われている大動脈造影ならびに選択的腎動脈造影のテクニックが確立したわけである.

連載

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.412 - P.415

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内科専門医を志す人に・トレーニング3題

著者: 依藤進 ,   柴田昭 ,   繁田幸男

ページ範囲:P.417 - P.419

問題1. 高露圧症に対して降圧療法を行えばどうなるか,つぎのうち,正しい記述を選択せよ.
A:脳出血発作も心筋梗塞の発生も誠少する.

内科専門医を志す人に・私のプロトコール

POS編・その3

著者: 石村孝夫 ,   山口潜

ページ範囲:P.421 - P.424

 今回も前回にひき続き,POS入門編としてactiveproblemがひとつだけで,構成が簡単な症例を提示する.
 本例の♯2はここではinactiveとして扱う.前回でも述べたように,active problemがひとつの場合は単純にS,O,A,Pに"横割り"して整理するだけでよい.S,O,A,Pはそれぞれ従来形式におけるPresent illness,Physical examinationおよびLaboratory data,Hospital courseにあたると考えてよいわけだが,従来形式と異なるPOSの大きな特徴のひとつは,とくにAとPの項の記載に重点がおかれていることである.受持ち医が症例に関する情報(Data base)をどう把握,考察し,どう対処したか,さらに今後の方針はどうなのかなどについては,プロトコールの形式を問わず,よく内容が練られたものであれば,当然,含まれているべきものなのであるが,POS形式だとこれらの点がより一層明確となり,誰がみても一目瞭然となりうる.言いかえれば,POSのほうが見落とし,書き落としがチェックしやすく,受持ち医による較差が少なくなり,また指導医の側でも受持ち医が何を考えているのかが把握しやすく,教育,指導に,より好都合なのである.

診断基準とその使い方

急性膵炎

著者: 内藤聖二

ページ範囲:P.428 - P.429

 急性腹症として来院した患者は数時間以内に診断を決定して適切な治療を行わなければならない.急性膵炎は急性腹症のひとつとして日常の臨床の中に重要な位置を占める疾患である.したがって,急性腹症では立位腹部X線写真,心電図,血清,尿アミラーゼ,白血球数,血糖,尿沈渣などを緊急検査としてひとつのルーチン検査項目として決めて置くことが望ましい.急性膵炎の診断は慢性膵炎に比して比較的容易であり,一般臨床施設において早急な確定診断をすることが可能な疾患である.また,重症の急性膵炎には死亡することがある汎膵臓壊死症があるので,ショックを起こしたり,狂操痛を伴うような場合には早急に診断を確定して,入院施設に転送する必要がある.

図解病態のしくみ—甲状腺疾患・5

橋本病の発症機序

著者: 永田格 ,   青木矩彦

ページ範囲:P.430 - P.431

 はじめに これには液性免疫Vs細胞性免疫のいずれが主演しているか,なお未解決であると前回にも紹介した.本病はMackay & BurnetやWitebskyのいう定義をみたす唯一の自己免疫病である.

内科臨床に役立つ眼科の知識

複視

著者: 松井瑞夫 ,   伊藤研一

ページ範囲:P.432 - P.433

両眼性複視の確認
 複視は中枢神経系の疾患にかなりみられる眼症状である.今回ここでとりあげる複視は,もちろん両眼性複視binocular diplopiaであり,眼筋麻痺が原因となっているものである.両眼性複視に対して単眼性複視monocular diplopiaという訴えもかなり多いが,多くの場合,焦点が合わない状態を患者が「物が二重に見える」というもので,複視でないことが多い.真の単眼性複視は,水晶体脱臼などのときにみられる非常にまれなものである.
 まず,中枢神経系疾患の患者が複視を訴えた場合,これが両眼性複視であることを確かめる必要がある.このためには,まず—眼を閉じさせてみるとよい.両眼性複視であれば,このとき複視はなくなるはずである.次に,眼筋麻痺による両眼性複視には,方向性があるということも大切なことである.たとえば右を向いたとき,あるいは左上を向いたときに,複視がひどくなるといった訴えである.

臨床病理医はこう読む ホルモン異常・6

Turner症候群

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.434 - P.435

 この症例は短躯と骨年齢の遅延がみられるものである.血液化学検査では異常なく,甲状腺機能低下にしばしばみられる高脂血症も認められない.糖負荷試験もほぼ正常パターンを示す.

疾患合併と薬剤

肝疾患患者が不眠を訴えるとき

著者: 原田尚

ページ範囲:P.436 - P.437

 近年,各種の原因による肝障害,とくに慢性肝炎・肝硬変症などの慢性肝疾患患者が激増し,これらをいかに治療し,いかに社会復帰させるか,その対策が大きな社会問題となってきている.
 一方では,多くの医薬品の開発とともに,薬剤性肝障害もまた重要な医原性疾患として登場し,注目されつつある.

今日の食事療法

腎疾患—治療食の理論,実際,効果

著者: 平田清文 ,   松下肇顕 ,   菊池宏章 ,   中島麟一郎 ,   花岡瞳 ,   西岡悦子

ページ範囲:P.438 - P.441

はじめに
 腎疾患の成因,経過,予後に関しては,既知および未知の多因子が関与している.これらの諸因子のうち,食事管理の占める役割については不明な点も多かったが,最近の食事療法の進歩によって,とくに慢性腎不全の経過と予後については,食事療法の重要性が国内外において認められている.
 本稿においては,腎不全食事の理論を要約するとともに,東邦大学病院における治療食の実際とその効果について,その概略を述べる.

プライマリー・ケアの実際

きずの治療

著者: 眞栄城優夫

ページ範囲:P.442 - P.445

 きずの治療の主眼は,自然の力による治癒機転を阻害しないことである.治癒過程を遅延させる因子には,細菌感染,異物,組織の挫滅や壊死,その他などがあるが,これらを除去し,一期的癒合と形成的効果を得るためには,何を行わなければならないか,きずの種類とその取り扱い,破傷風の予防などについて概略を述べていきたい.

外来診療・ここが聞きたい

長く続く微熱

著者: 日野志郎 ,   西崎統

ページ範囲:P.446 - P.448

症 例
 患者 T. T. 50歳,主婦.
 主訴 長く続く微熱.

心疾患の治療・今日の考え方

高血圧

著者: 石川恭三 ,   広木忠行 ,   前田如矢

ページ範囲:P.450 - P.455

 前田(司会)最初に高血圧症の一般的な治療原則について,石川先生.

話題

糖尿病の経口剤療法—糖尿病学会モノテーマシンポジウムから

著者: 池田義雄

ページ範囲:P.426 - P.427

 糖尿病の治療に経口血糖降下剤(経口剤)が登場してから,すでに20余年をへている.インスリンの発見以来,糖尿病の治療薬として経口剤があれば,というのは長い間の夢だったかもしれない.1955年,カルブタマイドの登場はその夢を実現させる第一歩であった.しかし,今日用いられている経口剤療法には,いく多の問題が由積されている.
 1959年,アメサカのUGDPは経口魏が糖尿病に特有な血管合併症に対して,はたしてどのような影響をもつものかを明らかにすべく,prospectiveなstudyを開始した.1970年,10年間の観察期間をへた成績が発表されたことはすでに周知のところである.その結果,SU剤(トルブタマイド)もまたビグアナイド剤(フェンホルミン〉もいずれも糖尿病に伴う血管合併症,とくにmacroangiopathyに対して,なんらよい影響をもたらすことなく,統計的にはこれら薬物を使用した患者のなかに,ほかの治療(食事療法,インスリンあるいはプラセボのみ)と比較して有意に血管障害が多かったという非常に衝撃的な事実を明らかにした.

天地人

コミュニケーション

著者:

ページ範囲:P.457 - P.457

 わが家に「ピー子」と名付けた雌の白い文鳥が1羽いる.毎朝,「ピー子」と呼ぶと何をおいても手に乗って籠の外に出てくる.この頃,以前に比べて発声が単純になったように思う.以前に1羽では可愛想だというので雄を1羽買ってきたが,仲が悪く時に古顔の方が血を出す始末であった.新顔は雄だからであろうなどと考えていた.もうひとつ不思議なことがあった.ピー子が卵を産んで孵卵してもいっこうに赤ちゃん文鳥ができないのだ.ある日2羽が余り争うので2つの籠に分けておいた.ところが雄と思った新顔が卵を生んだではないか,道理で二世も生まれず,いがみ合っていたはずだ.それでも2羽の時は合より発声が複雑であったと思う.
 鳥の声には「さえずり」というのと,「地鳴き」というのがあるらしい.英語では,さえずりはSongといい,地鳴きはcall noteといっている.たとえば,ウグイスでは,ホーホケキョはさえずりで,チャッチャッというのは地鳴きである.

オスラー博士の生涯・47

講演—医師会(Medical Society)の医学教育的役割

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.458 - P.461

 1902年の後半,9月のカナダ医師会総会での講演は,19世紀の医学の反省と20世紀の医学の進むべき方向を示す示唆にとむものであった.また,12月のニューヨークでのアカデミー・オブ・メディシンでの講演は,医学生の教育は患者に触れさせることなしには実り多い成果が得られないことを強調するという医学教育の核心にふれる提言となり,これは,アメリカにおける大学附属病院の設立を促進させる上で,非常な刺激になったようである.

ここにも医療あり

肢体不自由児の医療・療育を経験して—全人間的視点からの医療的アプローチを願う

著者: 高橋孝文

ページ範囲:P.462 - P.463

●肢体不自由児療育事業との初めてのかかわり合い
 もう30年近くも前のことになりますが,戦後まもなく児童福祉法(昭22)が制定された翌年から,宮城県では肢体不自由児のための療育事業の推進を模索する手始めに,県下の在宅肢体不自由児の実態把握に着手し,東北大学(整形外科)の協力の下で頻繁に巡回検診が進められました.その最初の時点から大学病院派遣医師として参加したのが,私がこの事業にかかわり合いをもった最初のご縁でした.
 その後,昭和30年に仙台市近郊の秋保温泉の一隅に肢体不自由児施設である整肢拓桃園が開設され,この園長をおおせつかったのが再度のご縁で,以来,私はこの事業に専念するうちに,いつの間にか21年余を過してしまいました.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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