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文献詳細

雑誌文献

medicina14巻5号

1977年05月発行

文献概要

疾患合併と薬剤

消化性潰瘍でステロイドを使うとき

著者: 河野実1

所属機関: 1横浜船員保険病院

ページ範囲:P.762 - P.763

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ステロイド剤と消化性潰瘍の発生および悪化
 ステロイド剤がなぜ潰瘍を発生させ,または既存の潰瘍を悪化させるかについては,2つの要因が考えられる.第1は,これによる胃液分泌の刺激作用すなわち塩酸およびペプシン分泌の増量である.これは直接体液性に胃粘膜に作用するのであるから迷走神経に無関係のようであるが,迷走神経が同時に刺激されない限り,ステロイド剤だけではたいした胃液分泌の増加を及ぼさないと主張している学者もある.また,コーチゾンよりACTHのほうがより潰瘍を作りやすい.それは後者はコーチゾン以外のコルチコイドを出し,より有害であるとしている.いずれにしても,ステロイド剤は塩酸およびペプシンの分泌増加をきたし,これは非経口的に与えても同じことである.第2は,ステロイドは粘膜の抗潰瘍としての抵抗性を減弱させ,かつ修復機転を遅らせる.それは繊維形成を阻害し,欠損組織の修復を防げるためである.潰瘍発生には胃液分泌増加よりも後者の要因を重視している学者が多いようである.
 とにかくわれわれは経験上,いままで潰瘍のない場合にはプレドニンとして60mgくらい使用しても1週間や10日で潰瘍を生じないことを知っている.しかしながら,1ヵ月以上の長期間使用例ではしばしば潰瘍の発生に遭遇している.このとき潰瘍誘因の薬剤1)を併用すれば,とくに潰瘍は発生しやすい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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