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文献詳細

雑誌文献

medicina14巻7号

1977年07月発行

文献概要

今月の主題 腹痛の診かた・とらえかた 随伴症状からみた腹痛

吐血・下血

著者: 竹本忠良1

所属機関: 1山口大・第1内科

ページ範囲:P.948 - P.949

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はじめに
 吐血・下血を伴う腹痛患者をみた場合,ポピュラーで,簡明な教科書にすら記載してある消化器疾患をまず思い浮かべることは常識というものである.しかし,稀には常識ではなかなか考えられない出血病変もあって,そういうときにはどこまで検査をすすめたらよいのか,またどの方向に検査を組み立てていくかおおいに迷うものである.たとえば.Lamら1)が報告しているような,軽度の腹痛のあるアルコール膵炎で偽のう胞が脾動脈をおかし,のう胞内出血が主膵管を通って大量の吐血を起こした症例など,普通のX線,内視鏡検査では診断がつきにくい.この症例など腹腔動脈撮影で脾動脈領域に造影剤のpoolingを認めて手術している.また,胆道からの出血は血胆汁hemobiliaといい,興味ある人はSandblom2)のモノグラフ Hemobilia(Biliary Tract Hemorrhage)を読んでみて欲しい.稀ではあるが,ときに致死的な大量出血を起こし,しかも原因不明のままで死亡し,剖検によってはじめて出血源が判明することがある.
 したがって,吐血・下血,つまり消化管顕出血患者で,しかも腹痛があるものに対する診断的アプローチの常道は,まず消化管の主要病変を中心に,消化管出血と腹痛の両面から原因病変を追究することであるが,とくに出血源がなかなかみつからない場合には常に消化器系を注意深く広く検査する必要がある.小病変といえども見逃さない鋭い目を全消化器にむけておくことが大切な態度であろう.今日,消化管出血に対する緊急内視鏡検査が急速に普及しているが,このような検査のすすめ方によって,現在でもなお少なくない出血源不明例が減少する可能性があると思っている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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