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文献詳細

雑誌文献

medicina15巻12号

1978年12月発行

文献概要

臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集 IV.消化管疾患 3.患者に応じた投薬のコツ

潰瘍患者

著者: 上野恒太郎1 片岡茂樹1

所属機関: 1山形大第2内科

ページ範囲:P.1891 - P.1893

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薬物療法を考える前に
 消化性潰瘍は,"no acid,no ulcer"といわれるように,胃液が存在するどこの粘膜にでも発生する潰瘍であり発生機序については粘膜に対する攻撃因子と粘膜側の防禦因子の双方の均衡の破綻によるというShay(1961)の考え方が基本になっている.攻撃因子の増大とは,ガストリンまたは迷走神経を介しての胃液分泌の亢進や胆汁の胃内逆流などであり,防禦因子の減弱としては,粘膜の抵抗性(gastric mucosal barrier)や粘膜血流の低下あるいはセクレチン,CCK-PZ,GIPなどの十二指腸粘膜産生ホルモンによる腸性の胃液分泌抑制機能の低下などがあげられている.十二指腸潰瘍の場合は,過酸が特徴的であり,粘膜抵抗性の低下よりも攻撃因子の増加した状態が考えられるので,治療は胃液分泌の抑制と分泌された胃酸の中和に重点がおかれる.これに対し胃潰瘍の場合は過酸は必ずしも多くなく,正酸や低酸の患者も少なくないので,攻撃因子の増加よりも防禦因子の低下した状態が考えられ,治療も胃液中の酸の中和と粘膜の保護に重点がおかれる.
 消化性潰瘍のなかには,投薬治療を受けないでも,安静だけで自然治癒する例があることはしばしば経験することであるが,患者を精神的肉体的なストレスから解放して安静を得させることと適正な食事計画の下におくことは,薬物治療の効果を上げるためにも極めて大切なことである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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