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—佐野 量造 著—「胃疾患の臨床病理」 「胃と腸の臨床病理ノート」
著者: 柴田一郎
所属機関:
ページ範囲:P.732 - P.732
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私は最近,はからずも癌の病理学の探究にその長いとはいえない一生を燃焼させて他界された偉大な学者の足跡の一部を2冊の本によって知ることができた.2冊の本を引き続き読んだあと,この拙文を綴りながらその感激が甦ってきて故人の他界が惜しまれてならない.その2冊というのは,元国立がんセンター病理部の佐野量造博士著「胃疾患の臨床病理」(医学書院1974)と「胃と腸の臨床病理ノート」(医学書院,1977)である.私は以前から前著の存在は知ってはいたが,むずかしくて一般の内科医には手のとどかない内容だろうと想像していた.
しかるに昨年後著が出版され,村上忠重教授の故人に語りかけるような悲しみと敬愛の念に満ちた名書評を何かで読み(弊誌vol. 14 no. 8:編集部注),はじめて佐野先生の偉大さと同時代の同じ道を歩む方々から寄せられている信頼を知り,むずかしい内容かもしれないが,ぜひ私も読みたいと思っていた.なにぶんに,私は胃に関してはX線診断以外の部門にはほとんど接していなかったので,ただ出版された順序に従って読了した.両著ともわが国の医学書の最高の水準に達する内容であることはもとより,その格調の高さは世界に誇りうるものであろう,数年前に50歳そこそこで逝かれた著者の後生への最大のかたみである.
私は最近,はからずも癌の病理学の探究にその長いとはいえない一生を燃焼させて他界された偉大な学者の足跡の一部を2冊の本によって知ることができた.2冊の本を引き続き読んだあと,この拙文を綴りながらその感激が甦ってきて故人の他界が惜しまれてならない.その2冊というのは,元国立がんセンター病理部の佐野量造博士著「胃疾患の臨床病理」(医学書院1974)と「胃と腸の臨床病理ノート」(医学書院,1977)である.私は以前から前著の存在は知ってはいたが,むずかしくて一般の内科医には手のとどかない内容だろうと想像していた.
しかるに昨年後著が出版され,村上忠重教授の故人に語りかけるような悲しみと敬愛の念に満ちた名書評を何かで読み(弊誌vol. 14 no. 8:編集部注),はじめて佐野先生の偉大さと同時代の同じ道を歩む方々から寄せられている信頼を知り,むずかしい内容かもしれないが,ぜひ私も読みたいと思っていた.なにぶんに,私は胃に関してはX線診断以外の部門にはほとんど接していなかったので,ただ出版された順序に従って読了した.両著ともわが国の医学書の最高の水準に達する内容であることはもとより,その格調の高さは世界に誇りうるものであろう,数年前に50歳そこそこで逝かれた著者の後生への最大のかたみである.
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