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文献詳細

雑誌文献

medicina16巻10号

1979年10月発行

文献概要

今月の主題 酸塩基平衡の実際 酸塩基平衡異常の臨床・循環不全

Lactic acidosis

著者: 後藤文夫1 藤田達士1

所属機関: 1群馬大麻酔学

ページ範囲:P.1498 - P.1499

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乳酸の形成とその意義
 組織で最も重要な基質である糖は,嫌気的代謝系であるEmbden-Meyerhof回路を経てピルビン酸になる.ピルビン酸は,好気的条件下においてはクエン酸回路(TCAサイクル)に入りCO2とH2Oに代謝されるが,血流障害や低酸素状態では,ピルビン酸からアセチルCoAへの転換酵素であるpyruvate dehydrogenase活性が阻害されるので,lactate dehydrogenaseに触媒されてNADHにより乳酸に還元される.このとき生じたNADは嫌気的解糖をさらに進行させるのに利用される.この乳酸形成系でのエネルギー産生量はクエン酸回路を介する好気的代謝の約1/20であることから,多量の解糖が必要となり,その結果生じた乳酸が血中に増加して乳酸血症(lactic acidosis)になる.
 乳酸のpKは3.86であるから,通常は体液中でほぼ完全に解離しており,Hを生ずるのでlactic acidosisを起こす.正常人でも過激な運動を行うと乳酸の異常増加をきたすが,肝で急速に代謝され10分以内に正常化する.すなわち,代謝異常が生じ乳酸産生が増加した場合,肝および腎機能が正常に保たれているか否かがlactic acidosisの悪化に大きく影響する.乳酸は肝においてCO2とH2Oに代謝されるが,一部は解糖系を逆行して糖新生に利用される(1式,2式).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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