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文献詳細

雑誌文献

medicina16巻2号

1979年02月発行

文献概要

臨床医のための心の科学

虚と実の心理学

著者: 北山修1

所属機関: 1武田病院

ページ範囲:P.300 - P.301

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テレビジョンと「メディア現実」
 テレビジョンが一般家庭に普及して20年近い年月が流れ,生まれたときからテレビと接触している者たちが次々と「成人」している.不特定多数の人々に向けて同じ内容のものを同時に送り届けるという意味では,テレビジョンが代表的なマスメディアとしてあげられるが,ラジオ,映画,新聞からレコード,ポスターにいたるまでのそれぞれのメディアがテレビジョンの私的な接触を契機にして社会全体にひろがる「メディア現実」と呼ばれるものの現実性と存在感の一部を支えており,それは私たちの肉体が灰になる現実とは区別されるはずのものだろう,実際,楽観論者たちは「子供たちや人々は現実とテレビの世界を区別している」と語るのだが,そういう主張がおしだされる背景には「区別できない」可能性についての不安があるのではなかろうか.
 従来のマス・コミュニケーション論や情報理論では,テレビジョンなどのメディアは現実生活の手段でしかなかったが,60年代にはいって私たちの生きる空間の構成要素となり,物的現実,外的現実,事実の系から独立した経験世界となりつつあると主張されるようになった.そして,マスメディアのつくりだす「メディア現実」の存在が人間の精神構造を変容させることの「予言」もすでになされており,その変化が日常的なものになればなるほど,それに伴う危険の可能性も日常的なものになるはずである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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