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文献詳細

雑誌文献

medicina16巻4号

1979年04月発行

文献概要

天地人

老人の群

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.621 - P.621

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 文芸春秋誌上で読んだのだから間違いはない.トンチン公債というのがあるそうである.定年になったとしよう.そのときの退職金が2000万あったとすれば,そのような人が100人あつまって,一種の講を立てるのである.つまり2000万×100の金額を,国または公団に譲渡してしまうのだ.その金はかえってこない.しかし,その配当金だけは,その人が生きているかぎりもらえるのである.かりにそれが年5分とすれば,年に100万円はもらえることになる.これは大した金ではない.しかし,同志が死亡すれば,その配当金は,残った同志に分配される.だから,講を立てあった同志が50人に減れば,配当金は200万になる.25人になれば400万,さらにその半分になれば800万ということになる.つまり,長生きすればするほど,年収はどんどん増えることになるのである.
 ところが,これが意外にはやらなかった.元金がかえってこないということもあるであろうが,一番大きな問題は,他人の死が自分の利につながることにあったようである.人間は慾ばりだから,自分の年収を増したいばかりに,人の死を願うことになり,これは倫理的に面白くないということのようである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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