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文献詳細

雑誌文献

medicina16巻6号

1979年06月発行

文献概要

医師の眼・患者の眼

死の床の句

著者: 松岡健平1

所属機関: 1済生会中央病院内科

ページ範囲:P.968 - P.970

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るいるいたる陰影欠損にわが眼を疑う
 朝倉はわが眼を疑った.そして,ブラウン管に写し出された胃袋と,何ごとも知らないで透視用テーブルに横たわっている患者の顔とを見較べた.貧血はない.便の潜血反応は出ていない.肝機能検査は彼が実施したすべての項目について正常範囲であった.「この美しいご婦人に,こんなに元気そうな人に,何故こんなものがあるのだろうか」.朝倉は,自分のX線装置に誰かがコンピュータでも仕掛けていたずらしているような錯覚に陥った.胃の体部大轡側中ほどよりるいるいと陰影欠損が現れ,胃角部のやや上方から前庭部に至るMagenstrasseのあたりは親指一本分を通すぐらいに狭窄していた.
 透視を終わると,朝倉はいつものにこやかな顔を意識的に保つようにし,ちょっとした胃炎であること,今後経過観察をしなければならないこと,を患者に告げ,胃散とMetocloprarnide(プリンペラン)を処方した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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