icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina16巻7号

1979年07月発行

文献概要

今月の主題 癌と免疫

癌と免疫のかかわりあい

著者: 漆崎一朗1

所属機関: 1札幌医大癌研内科

ページ範囲:P.976 - P.978

文献購入ページに移動
はじめに
 生体には本来selfとnon selfの成分を区別認識し,non-selfの成分に対して免疫応答を示し,これを排除しようとする基本的防御機能がある.これがBurnet1)のいう免疫学的監視機構immunological surveillanceの概念であり,この機構の中心的役割を果たしているのが,T細胞による細胞性免疫であることはいうまでもない.腫瘍免疫においても,生体の免疫応答能が腫瘍に対する主な防御機構であるとされてきている.これには4つの基本的な見解に基づいている。①腫瘍細胞には正常細胞には見られない特異抗原がある,②そのような腫瘍抗原は宿主に対し免疫原として作用する,③発現する免疫応答は腫瘍を免疫学的に排除するように働く,④生体の免疫応答能が抑制されると種瘍が発生しやすい,などである2).このような腫瘍免疫においてBurnetが指摘した4項目には多くの問題が含まれている.まず実験腫瘍においては多くの場合,確かに腫瘍特異抗原の存在が認められ,それに対する宿主の免疫応答も証明されている.ヒト癌においても,すべての腫瘍ではないがin vitroの実験で腫瘍特異抗原の証明される場合が認められている.しかし,in vivoに腫瘍細胞はこの特異抗原に対する免疫応答に遭遇しながらも着実に増殖するのである.癌患者のほとんどすべてが不幸な転帰をとることが知られている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?