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今月の主題 癌と免疫
癌と免疫のかかわりあい
著者: 漆崎一朗1
所属機関: 1札幌医大癌研内科
ページ範囲:P.976 - P.978
文献購入ページに移動はじめに
生体には本来selfとnon selfの成分を区別認識し,non-selfの成分に対して免疫応答を示し,これを排除しようとする基本的防御機能がある.これがBurnet1)のいう免疫学的監視機構immunological surveillanceの概念であり,この機構の中心的役割を果たしているのが,T細胞による細胞性免疫であることはいうまでもない.腫瘍免疫においても,生体の免疫応答能が腫瘍に対する主な防御機構であるとされてきている.これには4つの基本的な見解に基づいている。①腫瘍細胞には正常細胞には見られない特異抗原がある,②そのような腫瘍抗原は宿主に対し免疫原として作用する,③発現する免疫応答は腫瘍を免疫学的に排除するように働く,④生体の免疫応答能が抑制されると種瘍が発生しやすい,などである2).このような腫瘍免疫においてBurnetが指摘した4項目には多くの問題が含まれている.まず実験腫瘍においては多くの場合,確かに腫瘍特異抗原の存在が認められ,それに対する宿主の免疫応答も証明されている.ヒト癌においても,すべての腫瘍ではないがin vitroの実験で腫瘍特異抗原の証明される場合が認められている.しかし,in vivoに腫瘍細胞はこの特異抗原に対する免疫応答に遭遇しながらも着実に増殖するのである.癌患者のほとんどすべてが不幸な転帰をとることが知られている.
生体には本来selfとnon selfの成分を区別認識し,non-selfの成分に対して免疫応答を示し,これを排除しようとする基本的防御機能がある.これがBurnet1)のいう免疫学的監視機構immunological surveillanceの概念であり,この機構の中心的役割を果たしているのが,T細胞による細胞性免疫であることはいうまでもない.腫瘍免疫においても,生体の免疫応答能が腫瘍に対する主な防御機構であるとされてきている.これには4つの基本的な見解に基づいている。①腫瘍細胞には正常細胞には見られない特異抗原がある,②そのような腫瘍抗原は宿主に対し免疫原として作用する,③発現する免疫応答は腫瘍を免疫学的に排除するように働く,④生体の免疫応答能が抑制されると種瘍が発生しやすい,などである2).このような腫瘍免疫においてBurnetが指摘した4項目には多くの問題が含まれている.まず実験腫瘍においては多くの場合,確かに腫瘍特異抗原の存在が認められ,それに対する宿主の免疫応答も証明されている.ヒト癌においても,すべての腫瘍ではないがin vitroの実験で腫瘍特異抗原の証明される場合が認められている.しかし,in vivoに腫瘍細胞はこの特異抗原に対する免疫応答に遭遇しながらも着実に増殖するのである.癌患者のほとんどすべてが不幸な転帰をとることが知られている.
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