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今月の主題 腸疾患の臨床 大腸潰瘍性病変
薬剤性腸潰瘍
著者: 村上義次1 菱沼義興1
所属機関: 1都立豊島病院内科
ページ範囲:P.1184 - P.1185
文献購入ページに移動薬剤性腸潰瘍のうち,炎症を伴う薬剤性大腸炎の大部分は抗生剤の投与が原因と考えられる.欧米ではカナマイシン,アレオマイシン,クロラムフェニコール,エリスロマイシン,ネオマイシンによるものが古くから知られており,とくにリンコマイシン(LCM),クリンダマイシン(CLDM)による偽膜性大腸炎は有名である.しかし本邦の最近の趨勢としてはLCM,CLDMなどよりアンピシリン(ABPC),アモキシリン(AMPC)など最近開発された抗生剤による大腸炎の報告が多い.
薬剤性大腸炎の発生機序として抗生剤による腸内細菌叢の変化,腸粘膜細胞内の酵素活性の阻害作用,ビタミン欠乏,アレルギー的機序,ウイルス,免疫学的機序の関与などが考えられているが,いまだに結論は出ていない.またLCM,CL-DMの臨床像は周知のものとなっているが,他の抗生剤によるものについては,目下症例報告が相ついでいる段階で,まだその輪郭は明確にされていない.そこで自験例および報告例の中で最も頻度の高いABPC,およびAMPC起因の薬剤性大腸炎を中心に述べる.なお,他の薬剤については割愛した.
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