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開業医日誌
心臓破りの坂
著者: 西田一彦1
所属機関: 1西田内科医院
ページ範囲:P.1290 - P.1292
文献購入ページに移動何年ぶりだろうか,私は井之城部落の入口に立っていた.ここから約3キロのところに波多野城趾がある.井之城もその昔,出城のあったところだという.昔からこの辺一帯は清洌な井戸水が湧き出るので,あるいはその湧水を守るための砦であったのかも知れない.井之城と呼ばれる所以であろうか.
この部落に来るには,街はずれの専売公社たばこ工場の東北の道から,今は高速道路なみに完全舗装された国道246号線を横断して,そこから始まるつづら折れの坂道を約2キロ越えなければならない.その坂道も今は道幅も広がり舗装されてバスが通っているが,あの頃は凸凹だらけの砂利道で,オートバイでの往診も大骨で,巻き上る砂塵で頭から真白になるのは毎度のことで,砂利道にハンドルを取られて転倒することもしばしばであった.
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