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雑誌目次

雑誌文献

medicina17巻12号

1980年11月発行

雑誌目次

臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント カラーグラフ

目でみる鑑別診断

ページ範囲:P.1824 - P.1829

 本欄では「鑑別診断のポイント」の中で,血液疾患・皮膚疾患の鑑別に必要なカラー写真を一括して掲載した.各項ごとに付した頁数の論文も,あわせて参照いただきたい.

I.循環器疾患

心筋梗塞 VS 解離性大動脈瘤

著者: 太田怜

ページ範囲:P.1834 - P.1835

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,成人に多いこと,高血圧者に多くみられること,突発する劇しい胸痛が主徴であること,いずれも重病感があるという点で,常に鑑別のcompetitorとなる疾患である.ただし頻度は,心筋梗塞のほうが解離性大動脈瘤よりは,はるかに多いので,このような場合は,まず心筋梗塞を考えるのが原則であろう,ただし,解離性大動脈瘤のことも考えておかなければ,時に誤診のもとになる.

ウイルス性心膜炎 VS 結核性心膜炎

著者: 松森昭 ,   河合忠一

ページ範囲:P.1836 - P.1837

なぜ鑑別が問題となるか
 心膜炎は,ウイルス,細菌などの感染症,膠原病,悪性腫瘍,尿毒症など全身疾患に伴い,また心筋梗塞後,外傷・放射線療法後にも起こる1)が,原因不明のいわゆる特発性心膜炎(idiopathicpericarditis)の頻度が最も高い.特発性心膜炎といわれてきたものの多くがウイルス性であると示唆されるようになったが,発症が緩徐であることが多いために診断の困難なことの多い結核性心膜炎もこの中に含まれる可能性がある,結核性心膜炎は心タンポナーデを伴うことが多く,また高率に収縮性心膜炎に移行するなど予後不良のため早期診断,早期治療が重要であり,その鑑別診断が大切である.

心室瘤 VS 仮性心室瘤

著者: 吉川純一

ページ範囲:P.1838 - P.1839

なぜ鑑別が問題となるか
 心室瘤は,通常心筋梗塞後に発生するものであり,真性trueと仮性falseのタイプがある.一般的に見られるのは真性の心室瘤であり,瘤壁は梗塞に陥った心筋によって形成されている.一方,仮性心室瘤は心筋破裂によって生じた心嚢内血腫が器質化したものであり,真性のタイプに比べればかなり稀なものである。この仮性心室瘤の壁がきわめて脆弱な組織から成ることは,その発生過程から考えて当然であり,そこに臨床的な問題点も存在する.すなわち,真性の心室瘤の破裂がきわめて稀なのに対し,仮性心室瘤は容易に破裂する.したがって,仮性心室瘤の場合、早期の診断,手術が必要であるばかりでなく,左心カテーテルや左室造影はカテーテルが瘤壁を突き破る可能性があるため,極力避けられねばならない.つぎに述べる非観血的検査法を中心として両者の鑑別が行われるべきであり,もし心カテーテルを行う必要があるとしても,右心カテーテル,右心からの造影(たとえば肺動脈造影)にとどめる必要がある.

労作性狭心症 VS 中間型心冠症候群

著者: 宮下英夫

ページ範囲:P.1840 - P.1841

なぜ鑑別が問題となるか
 典型的な労作性狭心症と心筋梗塞との鑑別は臨床症状,心電図所見,血清逸脱酵素(CPK,GOT,LDHなど)レベルの組み合わせから,それほど困難ではないが,臨床的に労作性狭心症と心筋梗塞の中間の状態を示す場合があり,これをVakilら1)は中間型心冠症候群(intermediate coronarysyndrome)と名づけた1),この症候群を呈する患者のうちの,かなりの症例が比較的短期間に心筋梗塞に移行することが知られており,その治療および予後の上から労作性狭心症と鑑別する必要がある.中間型心冠症候群を心筋梗塞への移行直前の状態と考えて,これを切迫心筋梗塞(impendingmyocardial infarction),梗塞前狭心症(preinfarctionangina)などとよぶ人もある2).このような状態は一般に入院臥床安静と心筋梗塞に準ずる監視と治療を要するので,労作性狭心症との鑑別はきわめて重要である.
 最近では心筋梗塞および突然死の前駆症となる狭心症の病型をprospectiveな立場から把握しようとする努力がなされ,狭心症を安定狭心症(stableangina)と不安定狭心症(unstable angina)に分類する立場が広く用いられつつある.

僧帽弁閉鎖不全 VS 三尖弁閉鎖不全

著者: 浜中康彦

ページ範囲:P.1842 - P.1843

なぜ鑑別が問題となるか
 この両疾患はその原因が大部分リウマチ性で,ともに収縮期雑音を呈することにより鑑別が問題となる.三尖弁閉鎖不全は単独で存在することは稀で,ほかの弁膜症に合併して認められる.僧帽弁閉鎖不全では,僧帽弁逸脱症候群などのリウマチ以外の原因による僧帽弁閉鎖不全が最近注目されている.

大動脈弁狭窄症 VS 特発性肥厚性大動脈弁下狭窄(IHSS)

著者: 堀健次郎

ページ範囲:P.1844 - P.1845

なぜ鑑別が問題となるか
 比較的若年者で,初診時大動脈弁に起因すると思われる駆出性雑音をきく場合,両者の鑑別が問題となる.外来では心電図,胸部X線が主な検査であり,これのみでは鑑別困難な場合がある.したがって,両者の血行動態の差異を十分理解しておれば,聴診に工夫をこらし,さらに脈波の差異,心エコー図を参照すれば,さほど両者の鑑別診断は困難ではないと思われる.なお,IHSS(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄)は,Braunwaldが記載した時代から,研究の進歩が著しく,心エコー図が診断に用いられる昨今,やや様相を異にしてきた.IHSSの典型例,すなわち左室流出路狭窄例はむしろ少なく,異常に発育した乳頭筋による左心室の狭窄例が多いように思われる.したがってHOCM(肥大型閉塞性心筋症)とした方が妥当かもしれない.以下,本文で補足しながら述べる.

動脈管開存 VS バルサルバ洞動脈瘤

著者: 加藤裕久 ,   横地一興

ページ範囲:P.1846 - P.1847

診断上の問題
 動脈管開存(PDA)とバルサルバ洞動脈瘤は聴診上,類似した雑音を有するため鑑別が必要となってくるが,動脈管開存が臨床上あるいは管理の上で問題になるのは,乳児,小児期であるのに対し,バルサルバ洞動脈瘤は,むしろ成人期に出現してくるものが多い.そういう意味では,小児期の動脈管開存との鑑別上,重要なのは,心室中隔欠損に伴った大動脈弁閉鎖不全(VSD,AI)であろう.

心膜液貯留 VS うっ血型心筋症

著者: 村松準

ページ範囲:P.1848 - P.1849

なぜ鑑別が問題となるか
 X線上,心陰影が左右に著しく拡大した所見が示されるとき,心陰影の拡大が,多量の心膜液貯留による変化か,または,うっ血型心筋症におけるいわゆる心筋性拡大による変化かを,いつも考慮する必要がある.この両者では,いずれもX線透視によって心縁運動の減少または消失が示される,また,うっ血型心筋症では,しばしば胸水とともに心膜液貯留を伴うことがあり,心膜炎では心筋炎を合併することがある.
 心膜液貯留が急性心膜炎によるときには,臨床的に,高熱,悪寒・戦慄,および突発性の激しい胸痛(その性状と部位は変動的である)などを伴うので鑑別は容易である.しかし,慢性心膜炎または非炎症性心膜液貯留のさいには,その程度が強ければ,うっ血型心筋症で示される臨床症状や徴候,たとえば安静時または労作時呼吸困難,動悸,咳嗽,および頸静脈怒張や肝腫大なども示されることが多いので,臨床的にも鑑別が問題になる.

房室ブロック VS 房室干渉解離

著者: 石川恭三

ページ範囲:P.1850 - P.1851

なぜ鑑別が問題となるか
 房室干渉解離(interference A-V dissociation:A-VD)と鑑別診断上とくに問題となる房室ブロックは,完全房室ブロック(complete A-V block:A-VB)である.ここで少し房室解離の説明をしておきたい.房室解離とは,心房と心室とがまったく別個のペースメーカーの支配下で脱分極される状態をいう.A-VBも房室解離の状態にあるわけであり,いうなれば完全房室ブロックによる房室解離ということになる.一方,房室干渉解離とは,上室性の刺激と心室性の刺激が同時か,ほとんど同時に発生することにより,房室解離の状態を生じるわけである.この2つの刺激は衝突し,互いに進行を妨害することになる.この現象を房室干渉解離という.
 房室干渉解離が生じ得る部位は図に示すとおりである.

上室性頻拍 VS 心室性頻拍

著者: 小沢友紀雄

ページ範囲:P.1852 - P.1853

なぜ鑑別が問題となるか
 上室性頻拍も心室性頻拍もともに著明な頻脈性の発作性の不整脈であるが,前者が比較的良性なのに対し,後者は致命的な心室細動への移行の可能性のある危険な不整脈である.したがって治療にあたっても両者では判断が異なってくる.典型例では両者の鑑別はそう困難ではないが,QRSの変形した一部の上室性頻拍およびWPW症候群にみられる発作性心房細動は心電図上も心室性頻拍症と紛らわしく,臨床的にはこれが最も鑑別上問題となるところである.

出血性ショック VS 心原性ショック

著者: 大林完二 ,   鈴木健

ページ範囲:P.1854 - P.1855

なぜ鑑別が問題となるか
 ショックとは何らかの原因により,心拍出量が極端に減少して主要臓器の代謝障害,および末梢循環不全をきたし,アシドーシスなどの症状が出現するとともに種々の悪循環が生じて,やがて各臓器の不可逆性の障害をきたして死に至る症候群ということができる,原因により神経性,出血性,細菌性,心原性,薬物性,アレルギー性などに分類され,それぞれ治療法も異なる.そして,ショックに陥ってから時間を経るにしたがい,臓器組織の不可逆性変化は進行するから,早急な原因の究明と,適切な救急治療が要求される.
 出血性ショックは消化管出血や,外傷,手術などによる大出血が原因で循環血液量の著しい減少をきたすことからはじまる.初期には代償性に末梢動静脈の収縮が惹起されるが,やがて代償不全に陥り血管緊張は喪失し,心臓への静脈還流量は減じ,心拍出量も減少して,最終的には心原性ショック状態へと移行する.救急処置は止血,輸血,輸液などである.

II.呼吸器疾患

肺癌 VS 結核腫

著者: 田村昌士 ,   小室淳

ページ範囲:P.1862 - P.1863

なぜ鑑別が問題となるか
 肺野型の肺癌と結核腫は無症状で発見されることが比較的多く,胸部X線所見ではいわゆるcoinlesionとして認められ,さらに喀痰検査では癌細胞あるいは結核菌の陽性所見を得ることが少ないなどの点で両者の早期鑑別診断は必ずしも容易ではない,しかし,鑑別できないまま経過観察すること,あるいは抗結核剤を投与しながら経過をみることは重大な過失を犯すことになりかねない.したがって,少しでも肺癌が疑われるときには積極的に検査をすすめ診断しなければならない.

癌性胸膜炎 VS 結核性胸膜炎

著者: 末次勧

ページ範囲:P.1864 - P.1865

なぜ鑑別が問題となるか
 胸膜炎はいろいろな原因で生じるので,それらをすべて鑑別しなくてはならないが,この両者は最も頻度が多く,その上,前者は予後が悪く,後者は予後の良い疾患であるため,常に鑑別が大切な問題となる.両者の間には,後述のごとく種々の相違点がみられるが,実際に個々の症例に当ってみると,なかなか確定的な陽性所見が得られず,鑑別に苦心することも決してまれではない.

胸腺腫 VS 奇形腫

著者: 岡厚

ページ範囲:P.1866 - P.1867

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,いずれも前縦隔腫瘤を形成し,多くは健診における胸部X線撮影により発見される.手術前に鑑別が問題となるのは,胸腺腫には特異な合併疾患を伴うことがあり,その面での検索が必要となる.術前に不顕性のものが,術後顕性化してくる場合もある.合併疾患としては,第1に重症筋無力症(ほぼ20〜40%に合併,以下MGと略記),第2には赤芽球癆(ほぼ3〜5%に合併),ごく稀にCushing症候群,低γグロブリン血症などがあげられる.つぎには摘除可能性が問題となるが,これには上大静脈撮影や気縦隔撮影が有用である.
 いずれも手術適応であるが,浸潤,癒着がなく容易に摘除可能のとき,胸腺腫で合併疾患(とくにMG)を伴う場合には胸腺全摘を併せ行う必要がある,合併疾患を伴わないときも併施すべきか否かについては異論も多いが,奇形腫ではまったく顧慮する必要はない.浸潤型胸腺腫では可及的に広汎合併切除を行うべきであるが,奇形腫系の胸腺ゼミノーマやその他の悪性奇形腫ではその必要がない,前者は放射線感受性が高いためであり,後者は過大な手術の効果を期待できないためである.

サルコイドーシス VS 悪性リンパ腫

著者: 光永慶吉 ,   橋本憲一

ページ範囲:P.1868 - P.1869

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,系統的なリンパ節腫大,肝脾腫,胸部X線像上の肺門,縦隔リンパ節腫脹,PPDに代表される遅延型免疫反応低下など病像の類似点があり,しかも,その予後,治療法において大いに異なるので,両者を鑑別することが臨床上大切である.

過敏性肺臓炎 VS アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

著者: 可部順三郎

ページ範囲:P.1870 - P.1871

なぜ鑑別が問題となるか
 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(以下ア症)は気管支喘息の一型であり,過敏性肺(臓)炎は肉芽腫性間質性肺炎であって,両者の臨床像はかなり異なる.しかし,後者が大量の抗原曝露を受けた場合には,悪寒・発熱・関節痛・倦怠などとともに咳噺・喀痰・呼吸困難を呈し,喘息類似の呼吸器症状を呈することがある.またア症の抗原はアスペルギルスで,ペニシリウム,カンジダなどでも同種類の疾患が起こるが,過敏性肺炎の場合にもアスペルギルス,ペニシリウム,アルテルナリヤなどの真菌胞子が抗原となりえて,両者ともに沈降抗体が証明される.すなわち発病の免疫学的機序に共通の基盤があるわけで,当然その中間型のような病態を呈する場合もありえよう.さらに正しく診断されないで年月をへると肺の線維化がすすみ,広汎なびまん性間質性病変から肺性心へと進展するようになると両者の鑑別はきわめて困難となる.

肺結核 VS 非定型抗酸菌症

著者: 本宮雅吉 ,   大泉耕太郎

ページ範囲:P.1872 - P.1873

なぜ鑑別が問題となるか
 非定型抗酸菌による非定型抗酸菌症と結核とは臨床,病理所見からは区別が困難であり,また,菌の種類によって毒力,薬剤感受性も異なるから,臨床上鑑別が問題となる.

びまん性汎細気管支炎 VS びまん性間質性肺炎

著者: 谷本普一 ,   中田紘一郎

ページ範囲:P.1874 - P.1875

なぜ鑑別が問題となるか
 この両疾患は,いずれもつよい呼吸不全を示すこと,病変のひろがりが両側びまん性で,胸部X線写真でびまん性陰影を呈すること,比較的最近病態が明らかにされてきた疾患概念であること,原因がなお不明で,難治であり,予後が悪いことなど共通する点が多く,いずれもが最近の呼吸器病学領域のなかで注目され,識者の研究の対象となっている疾患である.

Goodpasture症候群 VS Wegener肉芽腫症

著者: 荻間勇 ,   山本保 ,   三間孝雄

ページ範囲:P.1876 - P.1877

なぜ鑑別が問題となるか
 Goodpasture症候群(G症)を,①肺出血,②腎炎,③anti-glomerular basement membraneantibody(anti-GBM抗体)の三者が認められたものとする定義が定着しつつある.Wegener肉芽腫症(Wg症)は古くから,①呼吸気道の壊死性肉芽腫性病変,②巣状糸球体炎,③小〜細動静脈炎の3つの病理学的特徴を有するものとされている。
 典型的な症状,所見を示す場合,G症とWg症との鑑別は容易である.しかし,Wg症でびまん性陰影,喀血・血痰,急性進行性腎炎などが初発症状としてみられることがあり,この際にはG症との鑑別がむずかしい.O'Donohueはびまん性肺出血の2年後にWgと診断された例を,Schachterらは,はじめに臨床的にG症と考えられたが,4年後にWg症と確診された例を報告している.さらに,最近Hensleyらはびまん性肺出血,急性進行性腎不全で発症し,G症が疑われ両腎摘出をうけて軽快したが,1年後に両肺に多発性空洞性結節影があらわれ,肺生検でWg症と診断された例を報告している.

粟粒結核 VS 転移性肺腫瘍

著者: 吉田稔 ,   沓掛洋

ページ範囲:P.1878 - P.1879

なぜ鑑別が問題となるか
 粟粒結核症と粟粒型の転移を示す転移性肺腫瘍は,いずれも胸部X線上びまん性の粟粒陰影を呈するので,鑑別上,常に問題となる.この両者の鑑別がとくに重要である根拠として,それが予後に大いに影響するからである.たとえば転移性肺腫瘍ではいうまでもなく悪性腫瘍として予後がきわめて不良であるのに対し,感染症としての粟粒結核は,抗結核薬に比較的良好に反応するため早期の発見,確診と早期治療により,ほとんど完全に治癒させることが可能である.

乾酪性肺炎 VS 肺炎桿菌性肺炎

著者: 原耕平 ,   神田哲郎

ページ範囲:P.1880 - P.1881

なぜ鑑別が問題となるか
 細菌性肺炎の中でも,乾酪性肺炎は結核菌で,肺炎桿菌性肺炎は肺炎桿菌(クレブシエラ)によってと,いずれも弱毒と考えられている菌によって惹起される肺炎であるが,いわば大葉性肺炎の形をとって,均等性(homogenous)の陰影が主として上葉に生じ,急速に進行して,しばしば空洞を形成する点で,両者は類似している.いずれも治療が遅れると不幸な転帰をとることがあるので,早急な診断が必要である.

細菌性肺炎 VS マイコプラズマ肺炎

著者: 新津泰孝

ページ範囲:P.1882 - P.1883

なぜ鑑別が問題となるか
 細菌性肺炎は,自然経過,あるいは病原細菌が感受性をもつ抗生物質で適正に治療されなければ,重症となりさらに死亡する危険性をもつ.肺炎マイコプラズマ肺炎は,自然経過でも一般に予後は良好で,通例は治癒する.細菌性肺炎には有効なことが多いペニシリン系,セファロスポリン系,さらにサルファ剤は無効であり,テトラサイクリン系,マクロライド系が有効である.
 したがって細菌性肺炎か肺炎マイコプラズマ肺炎かの鑑別は,治療法の選択,予後の診断に役立つ.正確には鑑別できないまま治癒する肺炎も多い.それぞれの肺炎の疫学,臨床,治療効果,予後などの観察には鑑別が前提である.細菌性肺炎は,上述の特質を考えれば,さらにウイルス肺炎,病原不明の異型肺炎などの非細菌性肺炎との鑑別も重要である.また各種肺炎は結核との鑑別を要する.

過換気症候群 VS 急性呼吸不全

著者: 西田修実

ページ範囲:P.1884 - P.1885

なぜ鑑別が問題となるか
 過換気症候群とは,不安,緊張,興奮,恐怖などの心理的要因に基づき,発作性に過換気になる状態であるのに対して,急性呼吸不全とは,何らかの原因で動脈血O2分圧(PaO2)が急激に著しく低下し,そのために生体が正常な機能を営みえなくなる状態である.
 急性呼吸不全にはhypoxemia with hypercapniaとhypoxemia without hypercapniaとがあるが,過換気症候群との鑑別が問題になるのはhypoxemia without hypercapniaの場合である.なぜなら,hypoxemia with hypercapniaの場合には換気は抑制されるので,鑑別に問題はないが,hypoxemia without hypercapniaの場合には,PaO2を少しでも正常にもどそうとする生体の反応によって,過換気になるからである.

肺塞栓症 VS 心筋梗塞

著者: 小野寺壮吉

ページ範囲:P.1886 - P.1887

なぜ鑑別が問題となるか
 肺塞栓症は急性死の原因疾患の1つである.米国では年間発症数は心筋梗塞の半数に達するという試算があるが,わが国では今日なお必ずしも高い関心が払われているとはいえない.前胸部重圧感,胸骨後面痛,中心胸痛などといわれる心筋梗塞とまぎらわしい訴えは,大量広汎塞栓の場合であって,急激な虚脱やショック状態に陥ることが多い.また,胸痛はさほどでもなく,あるいはこれを欠き,急激に呼吸困難を主徴として発症するような場合も多いのであるが,心筋梗塞にも無痛例は稀ではない,こういった循環・呼吸の危機にあたって,まず心筋梗塞を疑うのは常道であるが,肺塞栓症も思い浮かべる習慣をつけることがすべてのはじまりである,そして両疾患とも重症例ほど入院前の死亡率は高く,心電図記録のないときは心筋梗塞と判断されてしまうことが多いものと思われる.

III.消化管疾患

食道癌 VS アカラシア

著者: 遠藤光夫

ページ範囲:P.1890 - P.1891

なぜ鑑別が問題となるか
 これには2つの問題が含まれている.1つは,下部食道噴門癌とアカラシアで,臨床症状や食道造影所見が類似することで,ほかの1つはアカラシア経過中に合併する食道癌の診断である.アカラシアの愁訴は嚥下障害を主体とし,たとえ食道癌が合併しても,はじめは症状に差がなく,拡張した食道では,嚥下障害の増強はみられないことが多く,発見時,手遅れにしていることが多い.アカラシアへの癌の併発の頻度は高く,文献上0.3〜20%とされ,筆者らも113例中8例(7.1%)に癌の併発をみた.自験例では,癌はすべて中部食道にみられたが,この傾向は文献上も同じである.

胃潰瘍 VS 胃癌

著者: 高木國夫

ページ範囲:P.1892 - P.1893

なぜ鑑別が問題となるか
 胃疾患のなかで最も多い胃潰瘍は良性であるに対し,胃癌は悪性で両者の鑑別は,胃疾患の診断および治療の上で最も重要な問題である.
 胃癌には,肉眼所見上,多くの形態を示すものがあるが,隆起を示す胃癌には,胃潰瘍のなかでも特殊な隆起を伴う瘢痕(たとえば幽門前庭部の対称性急性潰瘍瘢痕の一部にみとめられる)との鑑別が必要なほかは,鑑別診断も問題はほとんどない.胃癌のなかで癌巣内に潰瘍形成を有する癌(早期癌では,IIC+III,III+IICであり,進行癌ではBorrmann II,III,IV)と胃潰瘍との鑑別が日常診療の上で最もしばしば経験するものである.両者間で最も重要な点は早期癌で潰瘍病変をもったものと胃潰瘍との鑑別であって,X線検査や内視鏡検査で良性潰瘍と思われても,一度は必ず癌ではないかと念頭におくことである.

慢性胃炎 VS 慢性膵炎

著者: 竹内正 ,   白鳥敬子

ページ範囲:P.1894 - P.1895

なぜ鑑別が問題となるか
 上腹部の不快感,鈍痛,悪心・嘔吐,食欲不振,下痢などのいわゆる上腹部の不定愁訴の原因として,しばしば慢性胃炎があげられるが,胃内視鏡が発達してくると,胃炎像とその症状とはまったく無関係であるといわれたり,また,他臓器に異常のない場合には上腹部の愁訴は胃炎によるものであると考えられたりした.このように慢性胃炎についての考え方には一定したものがないが,こうした背景のもとに上腹部の不定愁訴の原因として膵臓の関与が注目されてきている.
 近年,膵についてのアプローチとして,パンクレオザイミン・セクレチン試験のような膵外分泌機能検査がひろく行われるようになり,また,内視鏡的膵胆管造影が一般化して,慢性膵炎の診断も一段と向上してきた.これによると,確かに上腹部の愁訴のある患者のうち,あるものは慢性膵炎に原因を求めるのが妥当であると考えられてきている.

潰瘍性大腸炎 VS クローン病

著者: 渡辺晃

ページ範囲:P.1896 - P.1897

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者の本態は,いずれも原因不明の非特異性炎症であるから,その診断は臨床および病理所見の特徴(積極診断)と類縁疾患の除外(除外診断)の両面より総合的に下されなければならない.当然のことながら両者には診断のきめ手となる特有(pathognornonic)な所見がないので,病変が主として大腸に限局する大腸クローン病(肉芽腫性大腸炎)と潰瘍性大腸炎との鑑別が,この際とくに問題となる.

大腸結核 VS クローン病

著者: 田沢浩 ,   狩谷淳

ページ範囲:P.1898 - P.1899

はじめに
 クローン病と結核は,しばしば非連続性または区域性で,高度の腸管変形を示し,また粘膜面の所見も一見似ている場合があり,しかも病変の占居部位が小腸や大腸においても重なり合う傾向にあり,さらに疾患特有の症状を示さないので,鑑別が問題になるものと考えられる.しかし,両者の形態的変化には基本的に異なる点があり,この点を検討すれば鑑別診断は可能であると考えられる,近年,従来の診断基準からはみ出すような,非定型的とも称すべき大腸クローン病も報告されており,このような例も含めて,大腸結核との鑑別診断をX線像を中心として試みたい.

感染性大腸炎 VS 潰瘍性大腸炎

著者: 名尾良憲

ページ範囲:P.1900 - P.1901

なぜ鑑別が問題となるか
 大腸炎は感染性大腸炎と非感染性大腸炎とに大別される.急性大腸炎では感染性大腸炎が主体をなすが,慢性大腸炎では非感染性大腸炎が大部分を占める.この非感染性大腸炎のうちで最も多いものは潰瘍性大腸炎である.感染性大腸炎と潰瘍性大腸炎とは,ともに血性下痢,粘血便性下痢,腹痛,発熱など共通の症状があって,しかも治療方針はまったく異なるから早期に鑑別しなければならない.

薬剤性大腸炎 VS 感染性大腸炎

著者: 竹本忠良 ,   福本陽平

ページ範囲:P.1902 - P.1903

薬剤性大腸炎の問題点
 薬剤性大腸炎は最近注目されてきた疾患で,現在のところ一般に通用する診断基準はない.一応,①薬剤投与後に大腸炎が発生し,②そのほかの大腸炎症性疾患が存在しないものを,その基準としている.原因薬剤としては抗生物質が最も多く,Ampicillin,Amoxicillin,CiclacillinなどのPenicillin類,Lyncomycin,Clindamycin,Chloramphenicol,Cephalexin,Tetracyclineのほか,Aureomycin,Terramycin,Streptomycin,Duracillin' Kanamycin,Erythromycin,Neomycin,Hetacillin,Vancomycin,Piromidic Acidなど数多くの薬剤が報告されている.
 主症状は下痢,血便,腹痛および発熱で,一般に全身状態は良好である.投与開始より症状発現までの期間は7〜14日以内とされている.投薬を中止し対症療法を行うことによって治癒することが多いが,偽膜を形成する症例では,時に重篤な大腸炎の症状を示すものがある.大腸粘膜は著明な発赤,出血,びらん,浮腫を主徴とし偽膜を形成しない例と,多数の黄白色,小斑状の偽膜を形成する例がある.

虚血性大腸炎 VS 潰瘍性大腸炎

著者: 吉川邦生

ページ範囲:P.1904 - P.1905

なぜ鑑別が問題となるか
 この両疾患は,ともに血便を主徴とすること,病期によってはX線,内視鏡所見とも類似の所見を呈することから,鑑別診断上常に問題となる.
 潰瘍性大腸炎は粘血便を主徴とし,寛解と再燃をくり返す慢性の非特異性炎症疾患で,主として粘膜および粘膜下層を侵す.本症は病変の広がりから全大腸炎,左側大腸炎,直腸炎,右側または区域性大腸炎に,経過からは再燃寛解型,慢性持続型,急性電撃型,初回発作型に分けられる.本症の診断はX線,内視鏡,生検などかなり特徴的であるが,きめ手となる特異所見がなく,総合的に診断される.

大腸憩室症 VS 過敏性大腸症候群

著者: 矢沢知海

ページ範囲:P.1906 - P.1907

なぜ鑑別が問題となるか
 大腸憩室症にも合併症のないものから,いわゆる憩室炎,穿孔,狭窄などを合併するものなどがあり,また,右側結腸憩室,左側結腸憩室では症状も異なり一様に取り扱うことは無理である.さらに過敏性大腸症候群(以下,過敏性大腸と略す)も便通異常の状態によって3型に分けられ,
 1)不安定型:腹痛そのほかの腹部症状と便秘,下痢の交代または便秘を訴え,主として痙攣性便秘
 2)慢性下痢型:持続的または間歇的な下痢や軟便を訴える神経性下痢
 3)分泌型:多量の非炎症性粘液を排出する.
 典型例では便秘についで激しい腹痛,ついで大量の粘液を排出し便秘に傾くmucous colitisなどあり一様ではない.そこで,これらを細分し比較することは不可能であるので総括的に述べることとする.

付属器炎 VS 虫垂炎

著者: 藤井明和

ページ範囲:P.1908 - P.1909

なぜ鑑別が問題となるか
 いずれも性成熟期に多く,虫垂炎では11〜30歳に多いとされ,付属器炎も性交渉の行われる年代に多くみられる.
 また両者とも感染症であり,虫垂炎は通常右下腹部に,付属器炎は骨盤内に比較的限局された形で発症する.

小腸良性腫瘍 VS 小腸悪性腫瘍

著者: 中村卓次 ,   岡田孝

ページ範囲:P.1910 - P.1911

なぜ鑑別が問題となるか
 小腸腫瘍は解剖学的特性により術前診断がむずかしく,診断の遅れにより予後不良例が多く,腸癌に比して5年生存率も悪い.これは早期診断がむずかしいためでもある,良性・悪性両者の特異的所見は乏しいが,年齢,性,発生部位,臨床症状,理学所見,X線所見,内視鏡,血管造影などを詳細に比較検討することにより腫瘍の部位,広がりおよび質的鑑別をすることは必ずしも不可能ではない.

(大)腸結核症 VS (大)腸癌

著者: 村上義次

ページ範囲:P.1912 - P.1913

なぜ鑑別が問題となるか
 近年,大腸結核症は激減し,臨床家はややもすれば本症の存在を忘れがちである.注意深く大腸X線像および内視鏡像を観察すれば,大腸結核症と大腸癌の鑑別は容易であるが,大腸結核症に対する知見が乏しいと,結核性病変を癌として手術してしまう可能性がある.腸結核症の85%が回盲部にみられるのであるから,両疾患の鑑別が問題になるのは病変が右側結腸に存在する場合であって,他の部位ではあまり問題にはならない.また,結核病変が治癒期の場合は,鑑別は一層容易となる.

非特異性直腸炎 VS 痔核

著者: 岡田光生 ,   隅越幸男

ページ範囲:P.1914 - P.1915

なぜ鑑別が問題となるか
 非特異性直腸炎とは,直腸に限局した潰瘍性大腸炎の一病型として一般に認められている、すなわち,その病変部より口側には正常な直腸S状結腸が存在するものをいう.一方,痔核は門脈系,大循環系の同時的な静脈還流障害に基づく静脈瘤様変化が肛門静脈叢に生じたものである.これを外痔核(肛門縁に生ずるもの)と内痔核(歯状線より口側に生ずるもの)に分けるが,今回問題になるのは内痔核である.頻度からいえば痔核は直腸炎よりも圧倒的に多いが,その共通な症状として「出血」があり,その鑑別が問題となる.

IV.肝・胆道・膵疾患

総胆管結石 VS 膵頭部領域癌

著者: 尾形佳郎

ページ範囲:P.1922 - P.1923

なぜ鑑別が問題となるか
 両者は閉塞性黄疸を伴うことが多く,時に急性化膿性胆管炎を合併する疾患であるため鑑別が必要になる.診断後の外科治療法は異なり,総胆管結石には胆嚢摘出術に総胆管結石除去術が,膵頭部領域癌には膵頭十二指腸切除術が行われる.

急性膵炎 VS 急性胆のう炎

著者: 鈴木紘一

ページ範囲:P.1924 - P.1925

なぜ鑑別が問題となるか
 食餌摂取を誘因として,しばしば突然に,きわめて激しい上腹部痛をきたす疾患の中で,この両者は最も代表的な疾患である.これらの鑑別にあたって問題となるのは,それぞれが特有な,独立した病態を呈するのではなく,多かれ少なかれお互いが合併する点である.すなわち急性膵炎の原因の中で胆石症はアルコール過飲とならんで最も重要であり,胆石が急性胆のう炎を惹起する一方,乳頭部あるいは胆管への炎症波及により胆汁うっ滞をひき起こすことになる.急性胆のう炎は,そのほとんどが胆のう結石の頸部嵌頓によりひき起こされ,その1/3に随伴性膵炎を合併してくることは1),発作時の血清あるいは尿アミラーゼの一過性上昇がみられることからも明らかである.常に相互の影響を考慮しつつ鑑別されねばならない.

膵癌 VS 慢性膵炎

著者: 本間達二 ,   小口寿夫

ページ範囲:P.1926 - P.1927

なぜ鑑別が問題となるか
 根治手術可能の膵癌例はきわめて少なく,その早期診断法の確立がさけばれて久しい.最近,以下に記すいくつかの検査法がとり入れられ幾分の進歩をみているが,比較的早期の膵癌を疑って手術決定をする場合,必ず問題になるのは慢性膵炎との鑑別である.なかには開腹しても誤診することがある,それほど両者の鑑別はむずかしい.まず鑑別の問題点を記す.
 1)臨床症状の類似性:膵癌の主要症状は上腹部痛,黄疸,体重減少,食欲不振,便通異常,腹部腫瘤などであるが,これらは慢性膵炎でもすべてありうる.

慢性膵炎 VS マクロアミラーゼ血症

著者: 竹内正

ページ範囲:P.1928 - P.1929

なぜ鑑別が問題となるか
 慢性膵炎は膵実質細胞の脱落と不規則な線維化を主体とする病変を膵に生じ,一般に進行性で,腹痛発作を反復し,そのたびに高アミラーゼ血症を伴うことが多く,膵の荒廃とともに血清アミラーゼは次第に低値となる.一方,マクロアミラーゼ血症でも高アミラーゼ血症を認めるので,この点で鑑別を要することとなる.さらにマクロアミラーゼ血症が慢性膵炎に合併してみられることもあり,他疾患に合併するときにも不定の上腹部愁訴を伴うことが多い.

急性膵炎 VS 穿孔性消化性潰瘍

著者: 木南義男

ページ範囲:P.1930 - P.1931

なぜ鑑別が問題となるか
 急性膵炎と穿孔性消化性潰瘍の両疾患は急性腹症として臨床的に取り扱われ,それらの早期診断は適切な早期治療を実施するうえに必要である.また,この両者は成因や病態が異なることはいうまでもないが,とくに治療内容に大きな差があり,これらの鑑別診断はきわめて重要となる.一方,両疾患とも注意深く診断を進めれば,両者間の鑑別は可能であるが,症例によってはかなり診断に難渋する.したがって,このような症例に対し早期に外科的治療を行うか否かを判断する場合に,両者の鑑別はきわめて重要な意味をもつ.

Zollinger-Ellison症候群 VS WDHA症候群

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.1932 - P.1933

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,大量の分泌性下痢(絶食時にも大量の下痢をきたす)を主訴とする点,また,その下痢に基づく脱水症状や電解質異常が主症状となる点で,常に鑑別のcompetitorとなる疾患である.また,典型例の鑑別は容易でも非典型例では,その鑑別が困難なことも稀ではなく,以下に述べるようなsystemicなアプローチにより鑑別が可能になる.

原発性肝癌 VS 転移性肝癌

著者: 河田肇

ページ範囲:P.1934 - P.1935

臨床上,鑑別の意義はあるか
 いずれにしろ悪性腫瘍で,予後のきわめて悲観的な両疾患を鑑別しても,実際問題として,どのくらい患者,あるいはその家族に役立つことがあるだろうか.疾病統計や学術的意義を別にすれば,きわあて深刻な疑問といえよう.しかし原発性肝癌を切除可能な時期に発見して根治させることができるか,転移性の場合に,原発巣とともに肝転移も切除することが救命あるいは予後延長に役立つのか,多数の症例の積み重ねと,その追跡が待たれている.また肝癌の根治は望めないとしても,抗癌剤の使用方法,ことに選択的動脈カテーテルを介してステンレスコイルおよびゼラチンスポンジなどを用いた腫瘍部栓塞と抗癌剤局所使用の適応検討は患者の予後延長に影響するところが大きく,臨床経過の予測のためにも,両者を鑑別しておくことはかなり有用と考えられる.

ヘモクロマトーシス VS 肝硬変

著者: 平山千里

ページ範囲:P.1936 - P.1937

なぜ鑑別が問題となるか
 ヘモクロマトーシスは非ヘミン鉄が過剰に沈着し,実質臓器の線維化と機能低下をきたす疾患である.臨床的には,皮膚の色素沈着,肝腫,糖尿病,関節障害,心不全,性腺機能低下など多彩な症状がみられる.一方,肝硬変では,一般に鉄が肝臓に沈着しやすいが,とくにアルコール性肝硬変では,アルコール性飲料,たとえばブドウ酒に鉄が含まれていること,また膵炎を合併すると鉄の吸収が増加するなどの理由から,続発性ヘモクロマトーシスをきたす場合がある.したがって,ヘモクロマトーシスとアルコール性肝硬変はときとして鑑別が困難な場合がある.

慢性肝炎 VS 脂肪肝

著者: 藤沢洌

ページ範囲:P.1938 - P.1939

なぜ鑑別が問題となるか
 慢性肝炎と脂肪肝の鑑別が問題となる第一の理由は,いずれも臨床症状に乏しく,機能的にも両者の鑑別が困難であり,したがって本来可逆的である脂肪肝が慢性肝炎と診断される可能性が少なくないためであり,第二は,両者の治療法の原則がまったく相反し,前者は高カロリー食と安静を,後者は低カロリー食と運動を原則とするためである.
 脂肪肝を病因論的にみれば,①肥満に伴う脂肪肝,②糖尿病性脂肪肝,③アルコール性脂肪肝,④医原性脂肪肝(tetracycline,glucocorticoidの投与,小陽バイパス),⑤栄養性脂肪肝(低栄養性・過栄養性),⑥中毒性脂肪肝(四塩化炭素,黄燐)などに大別されるが,多くは可逆性であって原因除去によって治癒する.しかし,表に示すごとく,脂肪肝と慢性肝炎の機能的鑑別は必ずしも容易でなく,脂肪肝はしばしば慢性肝炎と誤認される.

アルコール性肝炎 VS アルコール性脂肪肝

著者: 石井裕正 ,   高木俊和

ページ範囲:P.1940 - P.1941

なぜ鑑別が問題となるか
 一般にアルコール性肝障害は,脂肪肝,アルコール性肝炎,肝硬変に大きく分類される.脂肪肝は臨床的には比較的良性な疾患と考えられるが,アルコール性肝炎は肝細胞壊死を伴い,その反復は肝細胞の再生と結合織の増生を促進し,アルコール性脂肪肝と肝硬変症を結ぶきわめて重要な病態と考えられ,アルコール性肝炎を的確に診断治療することは,肝硬変症への進展の予防を含めて予後決定に重要な役割を果たすと考えられる.

肝性脳症 VS アルコール離脱症候群

著者: 高木敏

ページ範囲:P.1942 - P.1943

なぜ鑑別が問題となるか
 肝障害を伴っている大酒家が指南力の低下,錯乱状態などの意識障害や振戦を認めた場合,肝性脳症の切迫による症状か突然禁酒したために起こったアルコール離脱症候群か鑑別しなくてはならない.この両者は飲酒に起因または随伴する意識障害として発症するが,発症要因が異なっているので治療上もそれに応じた適切な処置が必要である.肝性脳症はアルコール性肝炎や肝硬変に伴う高度の肝不全の主要徴候の一つである.一方アルコール離脱症候群には振戦譫妄delirium tremens,Wernicke脳症,Korsakoff症候群と呼ばれる意識障害がある.

体質性黄疸 VS 体質性ICG排泄異常症

著者: 浪久利彦 ,   南部勝司

ページ範囲:P.1944 - P.1945

なぜ鑑別が問題となるか
 実際には,この両者が鑑別上問題になることはあまりない.それは,体質性黄疸では黄疸が必発であるのに対し,体質性ICG排泄異常症(ICG異常症)では,通常は,自覚的にも他覚的にも症状を現わすことがないからである.しかし,過労,飢餓,発熱,妊娠,肝疾患の合併などに伴って,ICG異常症でも黄疸をきたすことがあり,この時に鑑別が問題になる.

肝膿瘍(細菌性,アメーバ性) VS 肝腫瘍(原発性,転移性)

著者: 飯田眞司 ,   奥田邦雄

ページ範囲:P.1946 - P.1947

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,症状・検査所見に類似した点が多く,診断を進めていく方法もほぼ同じである.反面,病態的には,一方は炎症,他方は腫瘍と,治療がまったく異なるので鑑別が問題となる.

肝外性閉塞性黄疸 VS 肝内胆汁うっ滞症

著者: 佐々木博

ページ範囲:P.1948 - P.1949

なぜ鑑別が問題となるか
 黄疸をきたす疾患は多いが,鑑別診断上最も問題となるのは(肝外性)閉塞性黄疸と肝内胆汁うっ滞(症)とである.前者ではさらに腫瘍性と非腫瘍性(主に胆石症)閉塞の鑑別が必要であり,後者では成因として薬剤性とウイルス性との区別が問題となる.両疾患は症状,機能検査上しばしば類似点を示す場合があるが,閉塞性黄疸では外科的治療の対象となることが多く,一方,肝内胆汁うっ滞は黄疸が遷延しても通常2〜3ヵ月で軽快し,内科領域の疾患として取扱われる.なお肝内胆汁うっ滞は急性,反復性および慢性に分類されているが,ここでは急性肝内胆汁うっ滞との鑑別について述べることにする.

慢性肝炎 VS 肝硬変

著者: 亀谷麟与隆

ページ範囲:P.1950 - P.1951

 慢性肝炎とは ウイルス,薬剤,免疫異常などによって起こる肝の炎症,機能障害が6ヵ月以上持続し,下記のような肝組織所見を示すものをいう.慢性肝炎の肝組織診断基準(1979年8月,第11回犬山シンポジウム)では慢性肝炎とは6ヵ月以上肝臓に炎症が持続,あるいは持続していると思われる病態である.組織学的には門脈域を中心とした持続性の炎症があり,円形細胞浸潤と線維の増生により,門脈域の拡大がみられ,活動性(active)と非活動性(inactive)に区分される.活動性では,piecemeal necrosisが著明で,小葉内細胞浸潤と,肝細胞の変性ならびに壊死(spottynecrosis,bridging necrosisなど)を伴う.非活動性では上記の変化はいずれも軽微である.
 肝硬変とは 広範な線維化と再生結節とを伴う肝小葉実質の改築性病変で,中心静脈と門脈域を結ぶ結合織の隔壁が広汎に形成され,隔壁中に求心性および遠心性の脈管系の吻合が形成されている状態である1)

V.内分泌疾患

クッシング病 VS クッシング症候群

著者: 清水直容

ページ範囲:P.1954 - P.1955

なぜ鑑別が問題となるか
 クッシング病はクッシング症候群(広義)のなかの1つの病態であるが,本稿では下垂体性ACTH過剰を原因とするものをクッシング病(以下「ク」病),それ以外(副腎腫瘍,異所性ACTH産生腫瘍および原発性副腎過形成)のうち副腎腫瘍によるもののみをクッシング症候群(以下「ク」症候群)として述べる.異所性ACTH産生腫瘍およびとくに原発性副腎過形成は珍しいので簡潔にするために省略するが,異所性ACTH産生腫瘍が存在する可能性は常に念頭におかなければならない.
 「ク」病と「ク」症候群を鑑別する必要性は,治療およびその後の経過が異なるからである.「ク」病では原因となる病変が視床下部・下垂体にあるので,治療の標的は第一次的に下垂体に向けられるのに対し,「ク」症候群では副腎腫瘍の摘出が手術可能なかぎり唯一の選択的な治療であり,副腎腫瘍(多くは腺腫)が摘出され,その対側副腎(萎縮している)の機能に十分注意して1〜2年の経過をみれば,「ク」症候群は完全に治癒する疾患である.「ク」病の治療については近年経蝶骨洞下垂体腺腫摘出術(Hardy法)により,下垂体腺腫の摘出が多く行われるが,その長期予後の成績は検討中であり,下垂体照射,薬物療法,副腎に対する手術あるいは薬物療法もなお症例によって有用である.

神経性食欲不振症 VS 下垂体前葉機能低下症

著者: 末松弘行

ページ範囲:P.1956 - P.1957

なぜ鑑別が問題となるか
 神経性食欲不振症1)(Anorexia nervosa,以下Anと略す)は,精神的な原因で食べなくなって,ひどくやせる疾患であるが,二次的な視床下部下垂体の機能的な障害によって,内分泌機能異常を呈することがある.一方,下垂体前葉機能低下症2)(Simmonds病,以下Siと略す)は,分娩時に起こった大出血のために下垂体が壊死に陥ったり(Sheehan症候群),腫瘍などによって下垂体に器質的な障害があるために,内分泌機能異常を示す疾患である.Simmondsが最初に報告した症例は,無月経や悪液質などの症状がある婦人であった.したがって,重症例では,臨床症状にしても内分泌機能検査所見にしても,両者は同様の異常を呈することがあるので鑑別が問題になる.
 Anで,内分泌機能異常のみを注目されて,Siと誤診されて不必要なホルモン補充を受けていた症例があった.この例では,有害とも考えられるステロイドなどを用心しながら中止し,精神療法によって摂食し始めて,体重が回復したところ,内分泌機能も正常化した.また,軽度の下垂体機能異常があった男子青年で,受験に失敗して食欲不振であったために,Anとして経過をみられているうちに,脳圧亢進症状がでてきて,脳腫瘍によるSiであることがわかった症例もある.

下垂体性小人症 VS 甲状腺性小人症

著者: 中島博徳

ページ範囲:P.1958 - P.1959

下垂体性小入症と甲状腺性小人症とは
 下垂体性小人症は成長ホルモン(HGH)の欠乏により,甲状腺性小人症は甲状腺ホルモン(サイロキシン:T4,トリヨードサイロニン:T3)の欠乏によって生ずる低身長である.
 前者は小人症を主徴とすることが多く,そのほかにはなんら症状を示さないことがある.しかし,下垂体前葉,視床下部の障害される部位によって,HGH以外にゴナドトロピン(LH,FSH),TSH,ACTHなどの欠損が合併することがあり,それに応じて性発達不全,甲状腺機能低下症,副腎機能不全などの症状を合併する.ただし第二次性徴に達しない年齢ではゴナドトロピン欠乏は症状として明らかでない.

尿崩症 VS 心因性多飲症

著者: 斎藤寿一

ページ範囲:P.1960 - P.1961

なぜ鑑別が問題となるか
 尿崩症と心因性多飲症は,いずれも時に1日10lに及ぶ多尿と,100mOsm/L前後の浸透圧をしめす低張尿を主徴としている点で臨床所見は酷似している.しかしながら,両者の成因と治療は互いに逆の関係にあり,とくに治療上の選択を誤まれば危険な病態を招くこととなり,その鑑別は臨床上きわめて重要である.尿崩症は,下垂体後葉より分泌される抗利尿ホルモン(ADH)の欠乏により,腎における水再吸収が低下して発来した多尿が一次的原因であり,その結果として口渇と多飲がみとめられるのに対し,心因性多飲症は心因的強迫飲水が,まず一次的原因としてあり,多尿は水負荷に対する正常な反応であるといえる.尿崩症にあっては脱水に傾き,治療は抗利尿薬剤の補充が主となり,強度の水分制限は脱水と虚脱をきたすおそれがつよいのに対し,心因性多飲症では水過剰の状態にあり,抗利尿薬剤の誤用は危険な水中毒の発生を招くこととなる.

バセドウ病 VS プランマー病

著者: 満間照典

ページ範囲:P.1962 - P.1963

なぜ鑑別が問題となるか
 プランマー病は甲状腺にsingle noduleを有し,その結節のhyperfunctionによって甲状腺機能亢進症の症状,所見をひき起こしている疾患である。したがって,通常バセドウ病とプランマー病とは甲状腺腫がdiffuseとnoduleとの差により容易に鑑別可能である。しかし,バセドウ病に癌腫などの甲状腺結節を伴う場合や,甲状腺の先天奇形である甲状腺片葉例でバセドウ病をひき起こしている場合などでは臨床症状,身体所見のみで両疾患の鑑別ができないことがある.

非中毒性結節性甲状腺腫 VS 甲状腺癌

著者: 伊藤國彦

ページ範囲:P.1964 - P.1965

なぜ鑑別が問題となるか
 甲状腺の腫瘍性疾患には非中毒性結節性甲状腺腫すなわち腺腫と,多発結節性甲状腺腫すなわち腺腫様甲状腺腫,および悪性甲状腺腫すなわち癌か,稀には肉腫の三者がある.腺腫と腺腫様甲状腺腫の鑑別は明確でない場合が少なくない.腺腫様甲状腺腫では,その結節の一部分が癌であることもまれではない.また悪性甲状腺腫は乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,未分化癌,あるいは悪性リンパ腺などに分類され,これらは臨床像も異なっている.このように甲状腺の腫瘍性疾患は臨床的にも組織学的にも複雑である.したがって,本稿では腺腫と日本人の甲状腺癌の90%以上を占める乳頭癌と濾胞癌の腺癌に限って対比してみることにした.

原発性副甲状腺機能亢進症 VS 多発性骨髄腫

著者: 森井浩世

ページ範囲:P.1966 - P.1967

なぜ鑑別が問題となるか
 両疾患は高Ca血症の鑑別診断上,常に問題となる疾患であり,また,骨病変がX線所見上類似している場合がしばしばあり,いずれの疾患も腎結石,腎機能障害を合併する.

特発性副甲状腺機能低下症 VS 偽性副甲状腺機能低下症

著者: 折茂肇 ,   佐藤靖史

ページ範囲:P.1968 - P.1969

なぜ鑑別が問題となるか
 副甲状腺機能低下症とは副甲状腺ホルモン(PTH)の作用が低下または欠如した状態をいい,臨床的には低Ca血症によるテタニー症状が有名であるが,病態の上からはPTHが不足している場合と,PTHは十分に存在するが,標的臓器のPTHに対する感受性が欠如している場合とが区別される1)
 特発性副甲状腺機能低下症(以下IHPと略す)と偽性副甲状腺機能低下症(以下PHPと略す)は,いずれも稀な疾患であるが,病態の上から鑑別が必要である.すなわちIHPとは不明の原因によりPTHの不足をきたしたものであり,多くは散発例であるが,家族内発生も知られている.また自己免疫疾患と考えられる例もある.一方,PHPとは,PTHは十分に存在するが,標的臓器の感受性が欠如しているものであり,家族内発生が多く,性染色体性優性遺伝を示すと考えられている.

原発性アルドステロン症 VS 偽性アルドステロン症(Licoriceによる)

著者: 竹田亮祐

ページ範囲:P.1970 - P.1971

定義,鑑別診断の問題点
 原発性アルドステロン症は,副腎皮質にアルドステロンを自律的に過剰分泌する腺腫(aldosteronoma)が生じ,低カリウム性アルカロージスを呈する二次性高血圧症で,四肢麻痺,筋力低下,夜間多尿などの症状を特徴とする.したがって①アルドステロン分泌過剰の証拠,すなわち血漿および尿中アルドステロン増加,その結果生じているNa貯留,②循環血漿量増大によるレニン分泌抑制および③グルココルチコイド系が正常であること,の3項目が本症の診断基準とされている.
 しかし,臨床症状や検査所見が多くの点で類似しながら,血・尿中アルドステロンが著しく低下もしくはほとんど測定にかからない医原性疾患として偽性アルドステロン症pseudoaldosteronismがある.この病態は,それ自身がミネラルコルチコイド作用をもっglycyrrhizin(厳密にはそのアグルコンであるglycyrrhezinic acid)を含む製剤,もしくは漢方薬(甘草含有)の多量・長期服用により,循環血漿量が増大し,レニン分泌抑制を伴う高血圧,低K血症が起こる点で原発性アルドステロンの臨床像ときわめて類似しているが,内因性アルドステロン分泌は著しく低下している点が異なる.近年,glycyrrhezinic acidは特異的に腎のミネラルコルチコイド受容体に結合することが明らかにされている.

11β-hydroxylase欠乏 VS 21-hydroxylase欠乏

著者: 出村博

ページ範囲:P.1972 - P.1973

なぜ鑑別が問題となるか
 両者はともに先天的に副腎皮質におけるステロイド合成酵素の欠損により,血中コルチゾール値が低下し,negative feedback機構によってACTHの分泌亢進が生ずる結果,副腎アンドロゲンが増加し,副腎性器症候群を示す.すなわち,女子にあっては陰核肥大や陰裂融合などの仮性半陰陽,男子にあっては陰茎肥大などの性早熟がみられ,両者はともに早期恥毛出現,骨年齢促進や多毛などをみる.21-hydroxylase欠損のうち,Na喪失型(salt losing form)は生後1〜2週から下記の症状が出現するので,11β-hydroxylase欠損と誤られることはない.しかし,大部分を占める単純性男性化型(simple virilizing form)では理学所見のみからは11β-hydroxylase欠損症との鑑別は困難である.

VI.代謝・栄養障害

一次性糖尿病 VS 膵癌

著者: 豊田隆謙

ページ範囲:P.1976 - P.1977

なぜ鑑別が問題となるか
 一次性糖尿病の治療を開始し,しばらくして膵癌と分ることがある.両者とも体重減少がみられるが,腹部症状が出現しない限り膵癌を疑うことは困難である.糖尿病患者に膵癌が発生する頻度は一般人口の2倍であり,膵癌患者が高血糖を示す頻度は30〜80%である.後者を膵性糖尿病と呼び,一次性糖尿病と区別する必要がある.膵性糖尿病は膵癌のみならず慢性膵炎や広範囲膵切除後に起こるSandmeyer型糖尿病を含むもので,二次性糖尿病に属する.

急性膵炎を合併した糖尿病 VS ケトアシドーシス

著者: 横山淳一 ,   池田義雄

ページ範囲:P.1978 - P.1979

なぜ鑑別が問題となるか
 糖尿病性ケトアシドーシスは,その初発症状として消化器症状(悪心,嘔吐,腹痛など)を訴えることが多く,その程度が強い場合には自・他覚的所見からも急性膵炎を思わすほどである.この際,検査成績の上でも高アミラーゼ血・尿症のみられる頻度が高く,糖尿病に急性膵炎が合併した場合との鑑別は,それぞれの治療方針を決める上でもきわめて重要である.

肝性糖尿病 VS 特発性糖尿病

著者: 後藤由夫

ページ範囲:P.1980 - P.1981

なぜ鑑別が問題となるか
 糖尿病は古くは真性と偽性とに分類され,インスリン発見後は島性と島外性に分けられ,1950年代には一次性(遺伝性)と二次性(非遺伝性)に分けられたが,最近は(特発性)糖尿病と特定の疾患や状態に起因する糖尿病とに分類されている.肝疾患に伴う糖尿病は後者に入り肝性糖尿病と呼ばれている.
 肝疾患とくに脂肪肝,慢性肝炎,肝硬変ではおよそ1/3に糖尿病がみられ,とくに脂肪肝ではその率が高い.肝細胞の糖処理機能の低下がその主な原因であるが,そのほかに末梢組織でインスリン効果が現れにくくインスリン抵抗性となることも1つの理由となっている.また,剖検例をみると,その大部分で膵に線維化やラ島細胞の変化も認められており,肝疾患で耐糖能低下の起こる機序は完全に解明されたわけではない.

肥満の糖代謝異常 VS 肥満型一次性糖尿病

著者: 片岡邦三 ,   丸山博

ページ範囲:P.1982 - P.1983

なぜ鑑別が問題となるか
 一次性糖尿病はインスリン依存性糖尿病(ID-DM,Type I)と非インスリン依存性糖尿病(NI-DDM,Type II)の二型に分類され,後者はさらに非肥満型と肥満型に区別されている1).このうち肥満型のインスリン非依存性糖尿病と肥満の糖代謝異常との鑑別が問題となる.つまり肥満者のブドウ糖負荷試験(OGTT)で明らかに糖尿病型血糖曲線を示したとしても,ただちに一次性糖尿病と診断することはなかなかむずかしい.肥満を治療すれば耐糖能は改善するが,正常化するものとしないものがある.本来一回のGTTの結果で糖尿病と診断するにはよほどの勇気が必要で,治療経過をみて黒白をつけることが望ましい.

脂質代謝に伴う糖代謝異常 VS 一次性糖尿病

著者: 赤沼安夫

ページ範囲:P.1984 - P.1985

なぜ鑑別が問題となるか
 糖代謝と脂質代謝はともに密接な関係にある.また両代謝異常ともに肥満が大きな増悪因子であり,合併率が高い.したがって,一次性糖尿病患者にみられるときの高脂血症,および一次性の高脂血症に高頻度にみられる糖代謝異常の病態,病因を正しく理解することは日常臨床上重要である.

糖尿病性下痢 VS カルチノイド症候群

著者: 竹本忠良 ,   沖田極

ページ範囲:P.1986 - P.1987

なぜ鑑別が問題となるか
 両疾患とも本邦においては稀な疾患といわざるをえない.重症糖尿病患者の多い欧米では剖検例の0.65〜1.4%にカルチノイドが認められ,一方カルチノイド症例の76%に下痢が認められる.この点に両者の鑑別上の必要性が生じる.両者とも下痢症状の発現が突発的である.このような下痢症例に遭遇した場合,通常よく経験される過敏性大腸症候群などを考えながら,頭のどこかに本タイトルである糖尿病性下痢やカルチノイドを思い浮かべることが必要である.

糖尿病性ニューロパチー VS 癌性ニューロパチー

著者: 荒木淑郎

ページ範囲:P.1988 - P.1989

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は,成人から高年に多い,感覚障害を主とする多発ニューロパチーが多くみられる,その成因として代謝障害が考えられるという点で,鑑別上問題とされる疾患である.ただし頻度は,糖尿病性のほうが癌性よりは,はるかに多いので,成人期になって,四肢末端にしびれ,疼痛あるいは感覚鈍麻が次第に進行するときには,癌性よりまず糖尿病性を考えるのが原則であろう.

一次性痛風 VS 二次性痛風

著者: 西岡久寿樹 ,   御巫清允

ページ範囲:P.1990 - P.1991

なぜ鑑別が問題となるか
 痛風の基礎疾患である高尿酸血症の成因には,その原因が不明確ないわゆる一次性の場合と,なんらかの基礎疾患が存在するため,結果的に二次的に発症するという二つの場合が存在する.
 本症を一次性か二次性か鑑別しなくてはならない最大の理由は,治療方針および予後のうえからも,前者と後者の間では基本的に異なるからであるといえる.

慢性関節リウマチ VS 痛風

著者: 御巫清允 ,   西岡久寿樹

ページ範囲:P.1992 - P.1993

なぜ鑑別が問題となるか
 慢性関節リウマチ(RA)は代表的な膠原病の一つであり,関節滑膜における免疫異常に伴う炎症を基礎病変とした系統的な結合織の疾患群である.一方,痛風はプリン代謝異常に伴う高尿酸血症を基礎疾患とし,臨床的には主として関節滑膜における尿酸結晶に起因する超急性の関節炎である.この両者があえて鑑別を必要とする理由は,多くの痛風症例が,これまでいわゆるリウマチとして治療されてきていることである.また近年では,逆にRAに伴う高尿酸血症をしばしば痛風と診断して治療しているケースも散見する.
 実際的に痛風とRAの合併症例はきわめてまれであり,Wallaceらによれば1881年の第1症例以降,わずかに7症例が報告されているにすぎない.これらのうちでも結核を合併したり,Felty症候群に伴っている場合などが多く,純粋な共存症例はきわめて少ない.それにもかかわらず本症にあえて鑑別が必要なのは,両者が関節炎という共通な臨床症状を有するからにほかならないからである.

VII.神経・筋疾患

脳出血 VS 脳梗塞

著者: 田崎義昭

ページ範囲:P.1996 - P.1997

鑑別の必要性
 脳卒中にはいろいろな病型があるが,中年以上で鑑別が間題になるのは脳出血と脳梗塞である.ことに脳出血は,血腫部位により手術適応の症例もあるので,その疑いがある場合には,CTあるいは脳血管撮影などにより早期に確定診断を行い,治療方針を決定すべきである,脳梗塞は脳血栓と脳塞栓に分類されているが,動脈硬化が進行した患者では,虚血性心疾患の合併も多く,また心疾患がなくても脳までの動脈壁にできた血栓が遊離して脳塞栓を起こすこともあるので,両者の臨床的鑑別は困難なことがある.したがって,中年以上では脳梗塞という総括的診断名を用いるのが一般的である.

脳出血 VS クモ膜下出血

著者: 澤田徹 ,   新美次男

ページ範囲:P.1998 - P.1999

なぜ鑑別が問題となるか
 脳出血とは脳実質内への出血,クモ膜下出血とはクモ膜下腔の出血を意味する.いずれも種々の原因でみられるが,前者では高血圧性脳出血が大多数で,その他,動脈瘤,血管奇形,腫瘍,脳静脈血栓,出血性梗塞,膠原病,出血傾向などでみられる.後者の原因は,外傷性および脳出血に続発したものを除けば,50〜70%は動脈瘤,10%は動静脈奇形で10〜20%は原因不明である.日本人に好発するウイルス動脈輪閉塞症でも成人例はくも膜下出血で発症することが多い.
 両者とも頭蓋内出血であるため,急激な発症で高血圧,髄膜刺激症状を伴い,意識障害や局所神経症状など臨床的に共通の症状を呈することがある。しかし,検査,治療法が異なるため,両者の鑑別が必要となる.

脳血栓 VS 脳塞栓

著者: 小林祥泰

ページ範囲:P.2000 - P.2001

なぜ鑑別が問題となるか
 脳血栓は主として動脈硬化による脳血管狭窄を基盤として発症し,脳塞栓は心臓などに由来する塞栓子によって生じる.脳塞栓では急激な血管閉塞により広範な脳虚血をきたすことが多く,また出血性梗塞に移行する率が高い.したがって,血栓溶解療法は重症脳塞栓では禁忌であり,臨床上両者の鑑別が重要となる.

片頭痛 VS 筋収縮性頭痛

著者: 片山宗一

ページ範囲:P.2002 - P.2003

なぜ鑑別が問題となるか
 脳に器質的病変のない,いわゆる慢性頭痛の約90%は片頭痛および筋収縮性頭痛であるが,両者の治療法が大きく異なることから,その鑑別診断は頭痛の診療に際して最も重要である.片頭痛は血管性頭痛の代表であり,発作性の拍動性頭痛を示すのに対し,筋収縮性頭痛は持続性・動揺性で,圧迫感,しめつけられるような感じの,むしろ頭重に近いものである.したがって,両者の鑑別は一見容易にみえるが,実際の診療に際して判断に迷うことが少なくない.

失神 VS てんかん

著者: 海老原進一郎

ページ範囲:P.2004 - P.2005

なぜ鑑別が問題となるか
 失神とてんかんは,いずれも一過性の意識喪失を主徴としている.しかし,失神は全脳血流の減少によって起こるのに対し,てんかんは脳の突発的な電気的律動異常によって起こるので,両者はその発生機序をまったく異にする.したがって,両者では患者の管理法,治療法は当然異なったものとなり,その鑑別はきわめて重要である.
 失神はその原因によって表中に示したように分類され,血管迷走神経性失神が多い.失神でも痙攣様運動を伴うことがある(syncopal convulsion).てんかんのうち失神との鑑別が問題となる意識障害を主徴とするものは表記のごとくであり,真性てんかんが多い.真性てんかん,焦点性てんかんでも,その初期および抗てんかん剤で部分的に調整されている場合には,痙攣を伴わず意識喪失という姿で現われることもある(epileptic faint).

末梢性めまい VS 中枢性めまい

著者: 小松崎篤

ページ範囲:P.2006 - P.2007

はじめに
 ここでいう「末梢性めまい」とは末梢前庭系の障害によって生ずるめまいのことで,末梢前庭系とは前庭神経の末梢部をさす.すなわち,内耳の部分と前庭神経の部分である.内耳は耳右器系と半規管系があり,その障害によって生ずる他覚所見には差異があるが,ここでは一括して記述することにした.

老人性振戦 VS パーキンソン病

著者: 亀山正邦

ページ範囲:P.2008 - P.2009

老人性振戦とは何か
 老人性振戦―senile tremorの定義はしばしばあいまいである.しかも,たいていの教科書は明確な定義を示していない.たとえば,Merrittの‘A Textbook of Neurology’の第6版(1979)1)では,Yahrがこの項を書いている(Ceci1の‘Text-book of Medicine’でもsenile tremorのところはYahrが書いており,両者はまったく同文である).
 「振戦は高齢者にはしばしばみられ,多くは上肢および頭部に起こる.パーキンソン病の振戦に比べて異なるのは,振戦が微細で,周期が速く,はじめは随意運動時にのみ起こる点である.経過とともに恒常的となり,安静時にもみられるようになる.麻痺の合併や筋トーヌスの異常はない.これらの特徴から,パーキンソン病の振戦とは区別される.原因は不明であるが,老人性振戦は,小脳性振戦と錐体外路性振戦との両者の特徴をもち,安静時にも運動時にもみられることから,これらを結ぶ系路の変性によると想定されている……」.

パーキンソン病 VS 動脈硬化性パーキンソニズム

著者: 東儀英夫

ページ範囲:P.2010 - P.2011

動脈硬化性パーキンソニズムとは
 パーキンソニズムを呈する疾患としては,特発性パーキンソニズム(パーキンソン病)と,二次性のパーキンソニズムがある.後者には,脳炎後のパーキンソニズムや種々の中毒によるもののほか,動脈硬化性パーキンソニズムがある.
 動脈硬化性パーキンソニズムとは,臨床的にパーキンソニズムを呈し,病理学的に大脳基底核に小梗塞巣が認められ,脳の血管性病変がパーキンソニズムの臨床症状と関係があると考えられるものをさす.黒質の神経細胞が中等度に減少しているが,パーキンソン病におけるほど著しい減少は示さない.同様の病理所見を有する例で仮性球麻痺を呈する例があるが,パーキンソニズムに著しい仮性球麻痺症状を同時に伴う例は,動脈硬化性パーキンソニズムとは別個に扱う必要があろう.

筋萎縮性側索硬化症 VS 脊髄性進行性筋萎縮症

著者: 近藤喜代太郎

ページ範囲:P.2012 - P.2013

なぜ鑑別が問題となるか
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)と脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)は進行性球麻痺(PBP)とともに運動ニューロン疾患(MND)の3つの臨床型を代表している.
 筆者は先に本誌14巻12号の特集「診断基準とその使い方」で,MNDの定義,臨床的特徴の変動とともに,厚生省特定疾患・ALS調査研究班が設定した「診断の手引き」を紹介した.右の付表はこれであり,MNDと診断するために有すべき特徴にはI,II,III,有すべきでない特徴にはV,鑑別すべき疾患の例にはVIがあることが示されている.

多発性硬化症 VS 視神経脊髄炎,急性散在性脳脊髄炎

著者: 濱口勝彦

ページ範囲:P.2014 - P.2015

なぜ鑑別が問題となるか
 多発性硬化症(MS),視神経脊髄炎(Devic病),急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は,いずれも脱髄疾患に属するものであり,とくにMSとDevic病の鑑別ないし異同は,本邦の脱髄疾患の歴史の上でも大きな問題となってきた.すなわち,本邦ではMSよりDevic病のほうが多いという意見,あるいはDevic病はMSの一型にすぎないという意見である.現在Devic病はMSの一部と考えられ,この両者の鑑別は疾患単位としての鑑別ではなく,MSの中の特徴ある臨床像を示すものという意味にすぎない.
 MSとADEMとの鑑別は予後に関連して重要で,MSでは通常再発をみるが,ADEMでは一旦寛解をみれば再発はほとんどない.

進行性筋ジストロフィー症 VS 多発筋炎

著者: 木下真男

ページ範囲:P.2016 - P.2017

なぜ鑑別が問題となるか
 進行性筋ジストロフィー症は遺伝因子によって惹起された筋肉の進行性変性疾患であり,適切な治療法がまったくない.これに対して多発筋炎は難治疾患ではあるが治療法はあり,時には治癒に至る症例もある、したがって両者の区別はきわめて重大であるにもかかわらず,臨床像が類似しているためにしばしば誤診され,治療可能にもかかわらず無治療のまま放置されている症例が決して少なくないのが現状である.

重症筋無力症 VS 筋無力症様症候群

著者: 古和久幸

ページ範囲:P.2018 - P.2019

定義
 重症筋無力症は胸腺腫または胸腺の異常を伴った"筋無力症状"を臨床的または電気生理学的に示す疾患で,自己免疫疾患の1つとされている1).一方,易疲労性,筋脱力など重症筋無力症の臨床的特徴は,悪性腫瘍,内分泌疾患,他の自己免疫疾患でもみられ,これらの臨床像の総称として筋無力症様症候群(広義)と呼ぶことがある.しかし,筋無力症様症候群は悪性腫瘍,とくに小細胞性気管支癌に合併する筋無力症で,特異な電気生理学的所見を示すものに限定して使用されている場合が少なくない(Eaton-Lambert症候群).このように筋無力症様症候群はEaton-Lambert症候群の同義語ではないが,ここでは臨床上問題となるEaton-Lambert症候群との対比について述べることとする.
 重症筋無力症(以下MG)とEaton-Lambert症候群(以下E-L症候群)はともに易疲労性と筋脱力を主徴候とし,神経筋接合部異常による病態であるが,臨床上治療薬剤に対する反応性,生命予後の点で異なる.また,E-L症候群では,しばしば原病の診断に先行して現れる場合もあり,臨床診断上も重要である.

VIII.免疫・アレルギー疾患

気管支喘息 VS 心臓喘息

著者: 太田怜

ページ範囲:P.2022 - P.2023

喘息とは
 喘息とは,字面の上では,息が喘ぐということで,呼吸促迫あるいは呼吸困難のことであるが,医学用語としては,突発する呼吸困難のことをいう.したがって,自然気胸,肺梗塞,あるいは気管内異物なども,広い意味では喘息であろうが,しかし,われわれが喘息という用語で表現するときは,くり返して起こるというニュアンスが含まれているようである.したがって,喘息をもっと細かく定義すれば,くり返して発作的に生ずる呼吸困難のことをいうのであろう.
 ただし,心筋梗塞発症と同時に,急性左心不全のため劇しい呼吸困難が突発した場合は,初回の発作でも,これを心臓喘息と表現することはあるであろう.逆にいえば,それまで心臓に関してなんの愁訴もなかった人が,突然,喘息発作を生じた場合は,それが心臓喘息であり,たとえ胸痛がなくとも,その原因は急性心筋梗塞であろうことを常に考えておく必要がある.

アナフィラキシー VS 血管神経浮腫

著者: 宮本昭正

ページ範囲:P.2024 - P.2025

なぜ鑑別が問題となるか
 抗原抗体反応の結果,化学伝達物質が遊離され,それがショック臓器に作用して発症する全身症状のうち,とくに重篤な症状を一般にアナフィラキシーと呼んでいる.抗原抗体反応に起因するので,多くは抗原への暴露(多くは注射,稀に経口摂取や吸入によることもある)から発症までの時間が短く(注射や吸入の場合には多くは数分以内,経口の場合には数時間後のこともある),因果関係がかなりはっきりしていることが多い.
 初期症状として熱感,口内異常感,口唇の掻痒感,しびれ感,顔面または上半身の潮紅などから始まり,くしゃみ,悪心,嘔吐,頭痛,腹痛,腹鳴,顔面蒼白,不安感,発汗,尿意,便意,じん麻疹,浮腫,失禁,瞳孔散大,さらに血圧下降,脈拍微弱,虚脱,チアノーゼ,胸内苦悶,喘息様呼吸困難,最後には失神,全身痙攣,死の転機などをとる.もっとも,全例で上記の症状がすべてみられるわけではなく,症例によりこれらの一部のいずれかがとくに強調されている場合が多い.なお,主要症状は循環系の虚脱状態であって,血圧の著明な低下,脈拍頻数と微小化,チアノーゼ,咽頭浮腫と気道の痙攣である.これらの症状は急激に発症するが,適切な治療により速やかに寛解,消褪をみる,重篤な症状に対して速やかに適切な処置がなされなければ比較的短時間に不慮の転機をとりうる.

SLE VS 薬剤誘発ループス

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.2026 - P.2027

なぜ鑑別が問題となるか
 SLEは,多臓器障害を伴い慢性に経過する炎症性疾患で,代表的自己免疫疾患である.経過中,寛解と悪化をくり返し,臓器病変,とくに腎病変と中枢神経症状の存在は予後を左右する.したがって,長期間の治療・管理を必要とする症例が多い.
 他方,薬剤誘発ループス(drug-LE)は,ある種の薬剤投与によってSLE様の症状を呈するが,薬剤投与中止により症状は可逆性で,腎や中枢神経症状の発現は稀である,したがって,予後はSLEに比べてよい.しかしながら,あらかじめSLE発症の素因を有する症例では,薬剤が誘因となり,SLEが顕性化する可能性がある.以上より,両者の早期診断と鑑別診断が重要となる.

Overlap症候群 VS Mixed connective tissue disease

著者: 安倍達

ページ範囲:P.2028 - P.2029

MCTDとOverlap症候群
 Mixed connective tissue disease(MCTD)は,Sharp, G. によって提唱された症候群で,全身性エリテマトーデス(SLE),強皮症(PSS)および多発性筋炎(PM)の症状を合わせ持ち,RNP抗体が陽性である.また教室では,同一症例に複数の膠原病の特徴を合わせ持ち,診断基準を十分満足するものをOverlap症候群(OL)として別個に取り扱ってきた.
 この2つに共通する所見は,いずれも膠原病疾患相互の重複現象を持つということである.

ルポイド肝炎 VS ウイルス肝炎

著者: 鈴木宏

ページ範囲:P.2030 - P.2031

 ルポイド肝炎と鑑別が必要なものは,ウイルス肝炎のなかでも慢性活動性肝炎(chronic activehepatitis,CAH)である.欧米ではCAHのなかにルポイド肝炎を含あていることが多い.わが国ではルポイド肝炎が少ないこともあって,CAHとは区別している.なお,臨床所見および検査所見がルポイド肝炎に一致しているものを自己免疫性肝炎あるいはactive chronic hepatitis(Mackay)として総称し,LE細胞現象陽性のもののみをルポイド肝炎と呼ぶ考えもある.ここでは主としてルポイド肝炎と肝炎ウイルスに起因するCAHの鑑別について述べる.

多発性筋炎 VS 代謝性ミオパチー

著者: 里吉営二郎

ページ範囲:P.2032 - P.2033

なぜ鑑別が問題となるか
 多発性筋炎は膠原病の代表的疾患の1つとして知られ,難病の1つともなっているが,診断は必ずしも容易でない.原因が明らかでない疾患を診断するのは,いかなる場合でもむずかしいが,きめ手がないために症状を中心に診断をすすめてゆくことになり,補助診断法にも特異のものがないために診断に苦しむことになる.
 多発性筋炎は一般に自己免疫反応によって生じると想像され,臨床的には四肢筋および顔面筋の筋萎縮と筋力低下を示してくる.病変としては炎症を伴う筋の変性,破壊を生じてくるもので,血清中のCPK活性上昇や筋電図による検査でも筋原性病変を示す所見が得られるが,このような所見は進行性筋ジストロフィー症や代謝性ミオパチーでも認められるもので;特異性はない.

リウマチ熱 VS 若年性関節リウマチ

著者: 藤川敏

ページ範囲:P.2034 - P.2035

なぜ鑑別が問題となるか
 両者はともに小児期で発熱,関節症状を呈する代表的な疾患であり,皮膚症状,心合併も共通にみられ,とくに病初期には鑑別が困難な例もある。治療にステロイド剤の選択の有無,予後,眼症状による視力障害の注意も,鑑別とともに病型把握を必要とする点である.

IX.血液疾患

鉄欠乏性貧血 VS 鉄芽球性貧血

著者: 外山圭助

ページ範囲:P.2038 - P.2039

なぜ鑑別が問題となるか
 鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia,IDA)は貧血のうち最高の頻度を有し,鉄剤により容易に治癒する.貧血高度の場合は特徴的な小球性低色素性であるが,中等度の場合は特徴が明らかでないことも多い.一方,鉄芽球性貧血(sideroblasticanemia,SBA)は稀なもので,症候群(付表)であり,この中には小球性色素性貧血の型をとる場合もあり,IDAとの鑑別がまぎらわしい.また,安易に鉄剤を投与することは無効であるばかりでなく,危険であるので両者の鑑別が必要である.

再生不良性貧血 VS 他の汎血球減少症

著者: 山田英雄

ページ範囲:P.2040 - P.2041

なぜ鑑別が問題となるか
 汎血球減少症(pancytopenia)を呈する疾患は少なくなく,血液疾患のみならず,さまざまの非血液疾患があり,その発現メカニズムは多種多様である.再生不良性貧血は汎血球減少症をきたす代表的血液疾患の1つであり,その基本病態は血球産生障害であるが,その病因や発症機構は複雑で一疾候群とも呼ぶべき疾患であり,その厳密な定義は簡単ではない.したがって,再生不良性貧血の診断は現段階では一定の診断基準に基づく除外診断が中心であり,その問題点としては,①汎血球減少を呈するすべての疾患との鑑別を常に念頭におくこと,および②近似の血液所見を示す周辺疾患(主として血液病)とは慎重に厳密な鑑別を行うことの2点があげられる.再生不良性貧血の頻度はきわめて低く,汎血球減少の多くは基礎疾患に随伴するもので,臨床的にはこの背景にある基礎疾患の追求鑑別がポイントとなる.

悪性貧血 VS 他の巨赤芽球性貧血

著者: 岩永隆行 ,   堀内篤

ページ範囲:P.2042 - P.2043

なぜ鑑別が問題となるか
 巨赤芽球性貧血はビタミンB12欠乏,葉酸欠乏のほか,各種薬剤の影響で発症することがあり,さらに2,3の先天性代謝異常症に合併することが知られている.巨赤芽球性貧血の中でよく遭遇するのが胃液中の内因子欠乏に基づくビタミンB12欠乏性の悪性貧血である.しかし,本症は,その他の原因による巨赤芽球性貧血と血液所見のみから鑑別することは不可能である.したがって,巨赤芽球性貧血の原因を究明することが,診断と治療方針の決定に重要である.

顆粒球機能異常症 VS 免疫不全症

著者: 松浦良二 ,   臼井朋包

ページ範囲:P.2044 - P.2045

なぜ鑑別が問題となるか
 ともに乳幼児期より重篤な感染を反復するが,一部の疾患では早期の適切な治療が奏効する.また,T細胞系の免疫不全に対するvaccination,輸血によるgraft versus host reaction(GVH)は致命的であり,早期に診断を要する.

急性骨髄性白血病 VS 急性リンパ性白血病

著者: 大島年照

ページ範囲:P.2046 - P.2047

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は発熱,貧血および出血傾向を主症状とし,症候学的にはきわめて類似しているが,抗白血病剤に対する反応が異なる.
 急性リンパ性白血病(ALL)のうち,小児例はヴィンクリスチンおよび副腎皮質ステロイド,すなわち骨髄抑制の少ない薬剤で,90%以上に完全緩解が得られ,中枢神経系白血病の予防により,そのうちの半数は5年以上leukemia freeになっている.しかし,成人例の緩解率は70%前後で,緩解しても再発しやすい.

Hodgkin病 VS 非Hodgkinリンパ腫

著者: 難波紘二

ページ範囲:P.2048 - P.2049

なぜ鑑別が問題となるか
 悪性リンパ腫はHodgkin病(HD)とそれ以外のリンパ腫(非Hodgkinリンパ腫,NHL)に二分される.いずれも主として成人を侵すリンパ細網系原発の悪性腫瘍であるが,両者の進展形式,治療に対する反応性,予後には大きな違いがあり,治療開始前に的確に鑑別を行うことが重要である.なおHDの病型分類には国際的にRye分類1)が用いられているが,NHLでは最近国内的にLSG分類2)が用いられるようになってきており,国際的にもLSG分類と基本的に同一の新分類が採択された3)

良性単クローン性免疫グロブリン血症 VS 腫瘍性単クローン性免疫グロブリン血症

著者: 河合忠

ページ範囲:P.2050 - P.2051

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者に共通していることは,血液または尿中の単クローン性免疫グロブリン(M-蛋白)が検出されることである.前者は,M-蛋白産生細胞の増殖が反応性または良性であるのに対して,後者は腫瘍細胞でM-蛋白が産生されている.良性M-蛋白血症は,多くは基礎疾患があって二次的に合併しているか,本態性に認められる.腫瘍性M-蛋白血症をきたす代表的な疾患が多発性骨髄腫であり,稀に原発性マクログロブリン血症,H鎖病がある.したがって,実質的には良性M-蛋白血症と多発性骨髄腫との鑑別ということになる.ただ,多発性骨髄腫患者の2〜3%くらいにM-蛋白血症を伴わないものもある.多発性骨髄腫は,一口にいって,形質細胞の腫瘍性増殖によって骨破壊をきたす病態と定義しうる.
 両者の鑑別が重要である理由としては,前者の場合M-蛋白血症そのものに対する治療は必要でないのに対して,後者ではただちに適切な治療が必要となる.

白血病 VS Dysmyelopoietic Syndrome

著者: 土屋達行

ページ範囲:P.2052 - P.2053

Dysmyelopoietic Syndrome(DMPS)とは
 近年,診断技術の発達に伴い,従来いわれていた急性白血病の概念にあてはまらないが,経過を追ってゆくと急性白血病へ転化する症例が報告されるようになった.Blockらは,急性白血病と診断された時点よりretrospectiveにみた血液学的異常状態を前白血病状態preleukemic stateという概念でとらえることを提唱した.その後,前白血病状態とされる造血障害がmyeloid stem cel1レベルの病変に基づくことが強く示唆されることや,急性白血病への転化の可能性は確かに高いが,転化しないまま感染などで死亡する例も少なからず存在するなど多くの知見が報告されてきた.また,1971年以来,前白血病状態の主題のもとに国内でも国外でも討議会が再三開催された.その結果,現在では,ある程度prospectiveに前白血病状態であることが推定できるようになった.そこで"preleukemia"という用語はあくまでもretrospectiveに用いる用語とし,overtな急性白血病以前に存在している種々の造血障害についてはDysmyeloDoietic Syndrome(DMPS)あるいはHemopoietic Dysplasia1),Myeloid Dysplasia,Stem Cell Dysplasiaなどという用語を用いて表現したほうが適切であろうと提案された.

慢性骨髄性白血病のリンパ性急性転化 VS 骨髄性急性転化

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.2054 - P.2055

慢性骨髄性白血病のリンパ性・骨髄性急性転化とその血液学的意義
 慢性骨髄性白血病(CML)が顆粒球系細胞の腫瘍性増殖であることは周知である.したがって,最近までCMLの急性転化に際して出現してくる芽球は,同じ顆粒球系細胞の未分化型に属する骨髄芽球であると信じられていた.一方,CML急性転化時の芽球がリンパ芽球に似た形態を示す場合のあることは以前から指摘されていた.さらに最近開発された芽球の生化学的性質あるいは表面形質に関する新しい概念の結果からも,リンパ芽球が出現するCML急性転化例が実際に存在することが明らかとなってきた1).しかもその%が従来考えられたよりも多く,全症例の30%に達するのではないかと推定されている.
 そのほか,CMLの急性転化に際して稀ではあるが,巨核球,単球,あるいは赤血球系細胞の性質を示す芽球が出現する場合のあることが報告されている2).リンパ芽球性急性転化の場合と同様に,今後,皆の注意がそちらのほうに向けられれば,このような特殊な型の急性転化の症例が,さらに増加するであろうと考えられる.しかし,現在のところ,頻度の点からいって臨床的に重要なのはリンパ性と骨髄性の両者の急性転化例の鑑別である.

特発性血小板減少性紫斑病 VS その他の血小板減少症

著者: 山中學

ページ範囲:P.2056 - P.2057

なぜ鑑別が問題となるか
 出血症状を主症状あるいは初発症状として,その原因が血小板減少による疾患は,そう多いものではない.血小板減少による出血は,紫斑を特徴とする.その代表的な疾患は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)である.他方,急性白血病,再生不良性貧血は,およそ1/3の症例で,最初に出血に気づいている,最もしばしばみられるのは,皮膚の紫斑,とくに点状出血で,ついで歯肉出血,口腔粘膜出血が多く,女性では性器出血がこれについでみられる.これらの初発症状としての出血はITPのそれと類似する.その他,急性前骨髄球性白血病(APL)のびまん性血管内凝固症候群(DIC)がある.きわめて激烈な出血性素因を示し,速やかに死の転帰をとる.このほか稀に先天性血小板減少症Fanconi症候群がある.さらに遺伝的疾患に,男児のみに発症する血小板減少と,湿疹,感染症を主徴とするWiscott-Aldrich症候群,多核白血球のDohle小体と大型奇形血小板を特徴とするMay-Hegglin異常,巨大血小板が出現するBemard-Soulier症候群などがある.後者は血小板の量的異常より質的異常が注目されている.このほか薬剤による血小板減少症がある.なおITPとの鑑別に苦労するものにSLEがある.

血友病 VS von Willebrand病

著者: 森和夫

ページ範囲:P.2058 - P.2059

なぜ鑑別が問題となるか
 血友病およびvon Willebrand病は,先天性出血性疾患で遺伝性を有すること,幼少時より出血症状のみられること,また軽症例では通常時には健康者とかわらないが,外傷手術などにより大出血を起こし,生命の危険をまねく場合も少なくないことなどの点で臨床上共通の問題点を有する.血液学的には血友病Aとvon Willebrand病は,血液凝固第Ⅷ因子異常という点では共通点も有するが,その分子異常の態度が異なるという基本的相違点もあるため,その正しい診断,病態の把握がぜひ必要である.
 定義 血友病は古代より知られた伴性劣性の遺伝形式により男性にのみ発症する先天性出血性疾患で,血液凝固第Ⅷ因子活性の低下するものを血友病A,第Ⅸ因子活性の低下するものを血友病Bという.血友病の重症度は,第Ⅷ(Ⅸ)因子活性1%以下が重症,1〜5%を中等症,5%以上は軽症とされている1)

血小板機能異常症 VS 血管性紫斑病

著者: 三上定昭 ,   福井弘

ページ範囲:P.2060 - P.2061

なぜ鑑別が問題となるか
 出血傾向を有する患者はささいな打撲などにより皮膚,粘膜出血を反復しやすく,外傷後あるいは手術時の止血に困難をきたすことが多い,出血傾向には①血小板の量的,質的異常をきたす血小板障害,②凝固,線溶因子の障害,③血管障害が存在するが,本稿では皮膚点状出血などの浅在性出血を特徴とする血小板障害と血管障害をそれらの代表的疾患である血小板機能異常症と血管性紫斑病を対比して述べる.

X.腎疾患

急性腎炎 VS 慢性腎炎の再燃型

著者: 稲毛博実 ,   東條静夫

ページ範囲:P.2066 - P.2067

なぜ鑑別が問題となるか
 急性腎炎と慢性腎炎の再燃型の予後を比較すると,急性腎炎では,発症2週以内にすでに,蛋白尿のみを残し,血尿,高血圧のみられない静止性病態を示すものでは急性期内の治癒が多くみられるが,発症1ヵ月後に至っても蛋白尿以外に血尿,高血圧の両者を認めるか,明らかな血尿ないし高血圧のいずれかを示す活動性病態を呈するものでは,遷延慢性化の危険が大である.一方,慢性腎炎の再燃型では短期間内に血圧が正常化し,血尿もみられないものでは1ヵ年の経過内に潜伏型に移行するが,高血圧の固定化する場合は一般に腎機能も低下し,予後不良である.さらに,急性腎炎の場合の治癒では,糸球体の構造はほぼ正常かごく軽度の変化を示すにすぎないが,慢性腎炎では,その病型(とくに組織像)にもよるが,一応の臨床的治癒をみた段階でも,その組織像には部分的に糸球体硬化などの不可逆性病変の認められることがあり,日常生活の制限や特殊薬物療法を含めて十分な監視が必要とされることも多い.

腎前性急性腎不全 VS 急性尿細管壊死

著者: 秋沢忠男 ,   越川昭三

ページ範囲:P.2068 - P.2069

なぜ鑑別が問題となるか
 急性腎不全の定義は,本来尿中に排泄されるべき窒素代謝物を中心とした,生体に不必要な物質の急激な排泄障害と血中への貯留である.この概念には腎循環障害に基づく腎前性急性腎不全,腎毒性物質などによる急性尿細管壊死のほか,尿路閉塞による腎後性急性腎不全,急性糸球体腎炎,急性間質性腎炎,両側皮質壊死,腎動脈閉塞などが含まれる.
 一般に急性腎不全は腎前性腎不全と急性尿細管壊死の頻度が高く,前者は適切な治療で早期に腎循環の改善をはかれば可逆的で,腎機能不全は進行せずに回復させることができる.しかし処置を誤ると急性尿細管壊死に進行し,腎機能の回復には長期間を要する.

起立性蛋白尿 VS 慢性腎炎の潜在型

著者: 折田義正 ,   藤原芳廣 ,   阿部裕

ページ範囲:P.2070 - P.2071

なぜ鑑別が問題となるか
 起立性蛋白尿および慢性腎炎の潜在型という病名は,ともに明確に定義されたものではない.たとえば前者を「仰臥位には尿中蛋白排泄量が正常範囲内であるが,立位をとったときにのみ尿蛋白排泄量が病的範囲内にまで増加するもの」と定義すると,その中には後者をはじめ各種腎疾患の回復期を含んでしまう.そこで本稿では前述の定義を満足した上で,a)腎糸球体に明らかな病変がみられず,遊走腎を除外したものを前者,b)腎糸球体に明らかな病変が存在するが,腎機能の低下や高血圧,浮腫を伴わない原発性糸球体疾患で,急性腎炎の回復期を除外したものを後者と定義し,以下の記述をすすめたい.
 このように定義すると両疾患の鑑別の必要性は明らかである.すなわち,前者はまったく病的意義のない生理的・良性蛋白尿に属し,治療や生活制限の必要がない.これに対して後者は臨床的に慢性腎炎固定期ないし軽度腎炎型を呈し,組織学的にはIgA腎症を含む軽度のメサンギウム増殖性腎炎を主とし,稀に膜性増殖性腎炎や膜性腎症の初期もありうると考えられる.いずれにせよ腎不全にまで進行する可能性を有し,多かれ少なかれ医師の管理下におく必要がある.近年,学校や職場における集団検尿が普及し,これらの鑑別の対象となる症例は著増している.無意味な治療や生活および食餌の規制,逆に腎不全に至る症例の見落し,などを避けるためにも,両者の鑑別は重要な意味をもってくる.

急性進行性(亜急性)腎炎 VS 悪性腎硬化症

著者: 増山善明

ページ範囲:P.2072 - P.2073

なぜ鑑別が問題となるか
 急性進行性腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis,RPGN)は急性発症を示す糸球体腎炎のうち,週ないし月の単位で数えるほどの短期間で腎不全にいたる経過をもつ重篤かつ急激な腎炎で,組織学的には定型例では広汎な糸球体半月体形成が特徴的である.Vorhaldは,これを亜急性腎炎(subacute glomerulonephritis)とよび,Heptinstallは上記のRPGNといい,今日ではこれが広く用いられている.
 一方,悪性腎硬化症(Maligne Nephrosklerose)は病理学的診断名で,臨床的には悪性高血圧malignant hypertensionとされる,重症高血圧,乳頭浮腫を含む高血圧性網膜症,多くは乳頭浮腫を示し,重症腎機能障害,急速に進行する臨床経過をとり,ついには腎不全に移行し,腎におけるびまん性血管障害を示し,その特徴は内膜増殖と中膜のフィブリノイド壊死としている.本態性高血圧,二次性高血圧のいずれからも悪性高血圧に進展しうる.今日では降圧剤治療の進歩により,その生命予後はかなりよくなってきたため,急進型高血圧accelerated hypertensionというものもある.

良性腎硬化症 VS 慢性腎盂腎炎

著者: 今井潤 ,   阿部圭志

ページ範囲:P.2074 - P.2075

なぜ鑑別が問題となるか
 良性本態性高血圧症に伴う腎の病理学的変化を良性腎硬化症と呼ぶ.腎が長期にわたって高血圧症の影響を受けると,究極的に腎は両側性に萎縮する.一方,慢性腎盂腎炎では腎の特徴的な萎縮を伴い,約60〜70%で高血圧症を有するといわれる.高血圧症を伴わない慢性腎盂腎炎,また片側性の腎盂腎炎では,当然良性本態性高血圧症(良性腎硬化症)との鑑別は問題とならない.明らかな腎萎縮を伴った良性本態性高血圧症と高血圧症を伴った両側性の慢性腎盂腎炎の鑑別が問題といえよう.
 とはいえ,この両者を分離することは必ずしも容易でない.慢性腎盂腎炎とは,腎盂・腎杯系に対する遷延化した細菌感染症ないしはその治癒像と定義される.したがって慢性腎盂腎炎の診断には,尿路感染症の既往が重要な意味をもつが,実際には多くの例で,その既往を証明することはできない.さて,慢性腎盂腎炎に伴う高血圧症は,古腎の機能組織の減少の結果と一般的には考えられているが,これに対して高血圧症の存在が,慢性腎盂腎炎の重要な発生素因であるとの主張も根強く,慢性腎盂腎炎に伴った高血圧症と本態性高血圧症の分離は必ずしも容易でない.

紫斑病腎炎 VS ループス腎炎

著者: 北川照男

ページ範囲:P.2076 - P.2077

なぜ鑑別が問題となるか
 紫斑病腎炎とループス腎炎の鑑別を実際に必要とする例は少ない.なぜならば,ループス腎炎は年少者に少なく,紫斑病腎炎は年少児に多く,その頻度に年齢差をみるからである.しかし,それだけに若年者のループス腎炎は紫斑病腎炎との鑑別が必要であり,成人の紫斑病腎炎はループス腎炎との鑑別が必要である.定型的なアレルギー性紫斑病では点状出血のほかに,特徴的な腹痛,下血などの腹部症状と関節痛,関節腫脹をきたす.ループスにおいても,点状皮下出血や関節痛,関節腫脹をしばしば認めるので,そのような症状を伴った腎炎においては,紫斑病腎炎とループス腎炎を一応考慮する必要がある.

リポイドネフローゼ VS 腎炎型ネフローゼ症候群

著者: 三條貞三

ページ範囲:P.2078 - P.2079

なぜ鑑別が問題となるか
 一般に多量の蛋白尿,低蛋白血症,高脂質血症および浮腫などの症状を伴う場合をネフローゼ症候群と呼び,その原因疾患のうち80〜90%は膠原病や代謝異常などによらない原発性(一次性)ネフローゼ症候群である.この原発性のうち,リポイドネフローゼが小児では70〜80%,成人では20〜30%を占め,腎炎型に比較するとステロイド治療が有効で予後もよく,その鑑別は予後上問題となる.とくに初期ステロイド治療無効の場合に,さらに治療を継続するか否かで鑑別が必要となる.

特発性腎出血 VS IgA腎症

著者: 酒井紀

ページ範囲:P.2080 - P.2081

なぜ鑑別が問題となるか
 従来から血尿を主訴とする場合に,それが顕微鏡的な血尿の持続であれば,まず内科的に検索して腎糸球体疾患を中心にして鑑別することが多いが,もし肉眼的血尿であれば泌尿器科的疾患を疑うことが一般的であった.本稿のテーマである特発性腎出血とIgA腎症とは,ともに血尿を主徴とし,とくに突発あるいは反復する血尿を特徴とし,しかも臨床的には良性に経過するものも多い,しかし,これら両疾患は臨床所見だけでは血尿の原因を明確にすることができない場合が多い.したがって,日常これら両者の取扱いは臨床医にとって困難なことが多い.

原発性アミロイド腎症 VS アミロイド合併の骨髄腫腎症

著者: 小野駿一郎 ,   三條貞三

ページ範囲:P.2082 - P.2083

なぜ鑑別が問題となるか
 アミロイドーシスは線維構造を有する特異な蛋白アミロイドが全身諸臓器の細胞外に沈着する原因不明の疾患で,
 1)原発性アミロイドーシス
 2)骨髄腫に伴うアミロイドーシス
 3)続発性アミロイドーシス
 4)限局性アミロイドーシス
 5)遺伝性アミロイドーシス
に分類され,また,最近ではその沈着部位により
 pattern I 心・筋肉・腸管・皮膚・神経
 pattern II 肝・腎・脾・副腎
 mixed pattern I+II
 とも分けられる1).pattern Iを呈するとされる原発性アミロイドーシスでも,実際には腎障害の頻度は高く35〜90%にアミロイドの腎内沈着がみられる2,3).一方,続発性アミロイドーシスの際は基礎疾患の確認により診断は比較的容易で,アミロイド蛋白はAAであり,patternIIの沈着様式をとるとされているが,骨髄腫に伴うアミロイドーシスの場合,基礎疾患が骨髄腫とされながらも続発性と別扱いされる理由は,沈着臓器・染色態度が原発性アミロイドーシスと同じで,アミロイド蛋白が両者ともALであることによる.

XI.感染症

麻疹 VS 風疹

著者: 岸本圭司

ページ範囲:P.2086 - P.2087

なぜ鑑別が問題となるか
 麻疹も風疹も感染防御能が正常な者にとってはself-limitedの疾患であるので,治療や管理の上で鑑別が必要となる点は限られてくる.治療の上で問題となるのは,風疹は細菌性二次感染を起こすことは,きわめて稀であり,対症療法のみでよいのに反し,麻疹はときどき細菌性二次感染を伴うので抗生剤投与の必要が生じることである.また麻疹に暴露された場合には受動免疫により発生が抑えられるので,とくに免疫不全状態にある者にとっては重要である,この場合,感染後5日以内にγグロブリンを投与する.風疹に関しては妊婦の罹患だけを抑えればよいという考えもある.

赤痢 VS サルモネラ腸炎

著者: 矢島太郎

ページ範囲:P.2088 - P.2089

なぜ鑑別が問題となるか
 両者とも下痢,腹痛といった消化器系の症状を主徴とする急性の感染性疾患である.細菌性赤痢は,発熱,腹痛,膿粘血便,しぶり腹といった4大主要症状を呈する法定伝染病の1つで,また食中毒の一種であるサルモネラ腸炎は,頻回の水様性下痢(時には血液を混入することもある),腹痛といった症状を呈し,過去においては,この両老の鑑別は細菌学的検索の結果をまたなくとも比較的容易であった.
 しかし,最近になって赤痢の国内発生が大幅に減少し,かわって,いわゆる輸入感染症といわれるような海外よりの旅行者,とくに東南アジア方面からの帰国者によって持ちこまれる赤痢が非常に多くなってきている.このため臨床症状も数回の下痢と軽い腹痛だけで終わってしまうような軽い症状の赤痢もみられるようになり,その軽症化が目立ってきている.

全身性播種性結核 VS 腸チフス

著者: 青柳昭雄

ページ範囲:P.2090 - P.2091

なぜ鑑別が問題となるか
 全身性播種性結核(generalized miliary tuberculosis, GT)は胸部X線にて撒布性陰影を呈し,喀痰中に結核菌が証明されれば診断は容易であるが,10〜30%の症例はX線にて異常所見を示さず,喀痰中結核菌の塗抹陽性率も約20%と低率である.しかもGTでは発熱,頭痛,全身倦怠,食思不振ではじまり,熱も稽留し,著明な脳症を伴う腸チフス型と呼ばれる症状を呈することがある。
 一方,腸チフス(typhus abdominalis, TA)でも乾性咳噺,肺野にラ音を聴取するなどの呼吸器症状を示し,また頭痛,項部強直などの髄膜刺激症状を呈し,GTに結核性髄膜炎を合併した場合と類似の症状を呈する.

伝染性単核症 VS サイトメガロウイルス感染

著者: 浦野隆

ページ範囲:P.2092 - P.2093

なぜ鑑別が問題となるか
 末梢血中に異型リンパ球が増加する疾患には種種のものが考えられるが,異常増加する場合にはEBウイルスとサイトメガロウイルス感染が二大原因としてあげられる.異型リンパ球が10%以上にみられる場合,伝染性単核症(単核球様症候群)と呼ぶべきものであるが,この伝染性単核症の原因としてEBウイルスが確立されている1).しかし,病原をこれだけに限定しえず,Evansも述べているごとく2),いわゆる単核球様症候群(mono syndrome)のうち90%以上のものはEBウイルスによって起こるが,残る5〜7%がサイトメガロウイルスによって,また1%以下ではあるがトキソプラズマによっても発症する.しかも近年,臓器移植や腎透析,新鮮血輸血などが活発に行われるようになって,サイトメガロウイルスによる単核球様症候群が増加する傾向にある.このため,こうした症例の病原的鑑別が問題となってきたしだいである。本来,両ウイルスはともにヘルペス属のものであるが,感染による臨床像はそれぞれかなり趣きを異にしている.とくにサイトメガロウイルス感染の臨床像は多彩であって,単核球様症候群はその一分症であり,むしろ先天感染,新生児期感染が注目されている.本ウイルスの浸淫度が大きい点,病原性が弱いなどの理由からか,成人の初感染発症例が少なく,多くの例が不顕性感染におわっている.

淋菌性尿道炎 VS 非淋菌性尿道炎

著者: 松下一男

ページ範囲:P.2094 - P.2095

なぜ鑑別が問題となるか
 淋菌性尿道炎gonococcal urethritis(GU)は淋菌によりひき起こされる尿道炎であり,非淋菌性尿道炎nongonococcal urethritis(NGU)は淋菌が検出されない尿道炎の総称である.いずれも性交がきっかけとなって感染するし,成年男子に罹患率が高く,尿道口からの排膿を主訴とする点など症状も似かよっていて,鑑別に迷うことがよくある.また,GUとNGUに同時に感染すると,GUが治癒してから数日後にNGUが発症することがあり,これはとくにpostgonococcal urethritis(PGU)とよばれているが,この場合にはGUの再感染,再発との鑑別もしなくてはならない.治療は本人だけではなく,とくにGUの場合には相手の治療も必要となる.薬剤の選択に際してはGUかNGUかの鑑別がきめ手となる.GUにはpenicillinとprobenecidの組み合わせが有効であり,NGUにはtetracyclineやerythromycinを投与する.

結核性髄膜炎 VS ウイルス性髄膜炎

著者: 高木繁治 ,   篠原幸人

ページ範囲:P.2096 - P.2097

なぜ鑑別が問題となるか
 われわれが日常の臨床で遭遇する髄膜炎の多くはウイルス性髄膜炎である,本症の予後は本質的には良好で,特殊な治療を要しない.発熱,頭痛,食思不振,嘔気を訴え,髄膜刺激症状を認あ,髄液検査で水様透明,リンパ球増加があり,培養で病原菌が証明されなければウイルス性髄膜炎として対症的治療のみで経過観察しがちである.しかし,これらの自他覚所見は結核性髄膜炎の初期の症状として,なんら矛盾するものではない.
 結核性髄膜炎は早期診断がきわめて重要である.死亡例は発症後1ヵ月以内に死の転帰をとることが多く(Weiss,1961),薬剤投与開始時の意識レベルが予後と密接に関係することを考えれば,この重要性は理解できよう.髄液塗抹標本より抗酸菌を証明できることは少ない.また髄液中の結核菌培養による確定診断は時間を要し,治療開始時の判断材料とはなりえない.定型的な経過をとる例でも早期診断は必ずしも容易ではなく,非定型的な臨床症状,髄液所見を呈する例では,さらに診断が困難ではあるが,数多いウイルス性髄膜炎患者の中に潜む結核性髄膜炎患者をいかに早く発見し,治療を開始するかが最も重要である.

細菌性肝膿瘍 VS アメーバ性肝膿瘍

著者: 中村毅志夫

ページ範囲:P.2098 - P.2099

なぜ鑑別が問題となるか
 両疾患は,単に起炎菌の異なる肝膿瘍であるので,理学的所見,血液生化学,末梢血検査所見はほぼ同じである.膿瘍の起炎菌の確定は,その内容物を得ることであるが,肝膿瘍の経皮的穿刺は症例の少ないこともあり,技術的に往々にして困難である,表在性のアメーバ性肝膿瘍と,細菌性肝膿瘍は外科的処置の適応である.
 アメーバ性肝膿瘍と細菌性肝膿瘍の鑑別の必要性は,アメーバ性肝膿瘍の治療においては,細菌性の2次感染をきたした場合と,表在性の膿瘍で破裂が予測される場合を除いて,切開排膿を必要としないことである.抗アメーバ剤による非観血的治療が可能である.また,観血的治療を必要とする場合は,術後のアメーバ性腹膜炎が予想されるが,アメーバ性腹膜炎の予後は,術前の抗アメーバ剤の投与により左右されると報告されているので,術前診断がなされ,抗アメーバ剤が術前投与されていることが望ましい.

Mycotic aneurysm VS 動脈瘤

著者: 矢田賢三 ,   斎藤武志

ページ範囲:P.2100 - P.2101

はじめに
 脳動脈瘤は,その原因から4つの種類に大別されている.①嚢状saccular(先天性)動脈瘤,②動脈硬化症fusiform(紡錘上)動脈瘤,③細菌性mycotic(敗血症性)動脈瘤,④外傷性traumatic動脈瘤の4者である.嚢状動脈瘤は全脳動脈瘤の90%以上を占め,通常,単に脳動脈瘤といえば,嚢状動脈瘤を指す.細菌性動脈瘤は,亜急性細菌性心内膜炎や敗血症などの感染性疾患によって,血管壁の炎症による脆弱化が原因となって生ずる動脈瘤で,全脳動脈瘤の約0.5%を占める.起炎菌はほとんどが細菌であり,真菌によるものはきわめて稀であるので,mycotic(真菌性)動脈瘤という言葉は正しくはないが,現在では,慣習としてmycotic aneurysmという言葉が一般的には用いられている.以下mycotic aneurysmと嚢状(先天性)動脈瘤の鑑別について述べる.

XII.精神疾患

神経症 VS 心身症

著者: 山下格

ページ範囲:P.2104 - P.2105

なぜ鑑別が問題となるか
 神経症と心身症の鑑別診断については,ほかの疾患の場合とちがって,両者を鑑別する根拠や,その必要性がまず問題になる.
 日本心身医学会の「心身症の治療指針」(1970)によれば,心身症とは「身体症状を主とするが,その診断や治療に,心理的因子についての配慮がとくに重要な意味をもつ病態」と定義されている.

心気症 VS セネストパチー

著者: 保崎秀夫

ページ範囲:P.2106 - P.2107

概念規定
 心気症は神経症の一型で,自己の心身の健康状態を過度に心配している状態である.したがって神経症の中では一番多いものであるが,実際には,この診断名を使わない人があるなど,かなりあいまいな面もある.
 他方,セネストパチー(体感異常症)は,以前は心気症状や心気妄想と考えられていたものであり,あまり注目されていなかった病態で,体感の異常,つまり奇妙でグロテスクな身体感覚の異常のみを主として訴えるもので,ひとつの疾患単位と考えられているが,心気症と同様かなりあいまいな面がある.

仮面うつ病 VS 自律神経失調症

著者: 矢崎妙子

ページ範囲:P.2108 - P.2109

なぜ鑑別が問題となるか
 仮面うつ病と自律神経失調症の本態は,前者がうつ病そのものにほかならないのに対して,後者はうつ病とは関係がない.両者の本態は異なっている.
 本態は異なっているにもかかわらず,両者の臨床症状の類似することがある.それは,仮面うつ病が,自律神経症状の仮面をつけて発症した場合である.このとき両者の鑑別が必要となる.

内因性うつ病 VS 心因性うつ病

著者: 飯田真 ,   飛鳥井望

ページ範囲:P.2110 - P.2111

なぜ鑑別が問題となるか
 近年,一般医家を訪れるうつ病圏内の患者の数は増加しつつある傾向が指摘されている.症状のスペクトラムは広く,抑うつ気分,思考・判断・行動の制止といった典型的症状を前景に出すものから,不安焦燥の目立つもの,睡眠障害や不定愁訴,自律神経症状などの身体症状を主訴とするもの,神経症的葛藤を伴うものまでさまざまである.
 それら表面にあらわれた症状と,その背景にひそむ病的プロセスの特徴を把握し鑑別することが,治療的見通しをたてる上で不可欠である.

ナルコレプシー VS 周期嗜眠症

著者: 石黒健夫

ページ範囲:P.2112 - P.2113

なぜ鑑別が問題となるか
 表題の2疾患は比較的稀ではあるが,睡眠異常に基づく代表的な疾患である.両者とも過眠症とされることが多いが,ナルコレプシーは睡眠覚醒障害の異常とともにREM睡眠の出現機構の異常に基づいた病態なので,睡眠の質的障害群に入れるのが正しい.そして質的障害群は通常,睡眠減少症や過眠症を伴うのである.しかし,正確な知識がないと両者を混同することがある.

てんかん発作 VS ヒステリー発作

著者: 大熊輝雄

ページ範囲:P.2114 - P.2115

発作の本態と特徴
 発作の成因と形態 てんかん発作は全般発作と部分発作とに分けられ,全般発作は意識障害を主とする欠神発作とけいれん発作(強直間代発作,ミオクローヌス発作など)に,部分発作は要素部分発作(焦点運動発作,焦点感覚発作など)と複雑部分発作(精神運動発作)とに大別される.これらのてんかん発作は,脳の一部分に異常な強い興奮が起こり,これが脳の種々のニューロン系を介して脳の一部あるいは全般に広がるために生じるものであるから,それぞれの発作型の臨床形態や持続時間は,多少の変異があるとしても,かなり定型的なものである.
 これに対して,ヒステリー発作は,転換症状conversionとしてのけいれん発作にしても,分離症状としてのもうろう状態などの意識障害発作にしても,それぞれの患者の無意識的な感情葛藤が症状の形をとって表出されるものであるので,症状がかなり不規則,多彩で,各患者の葛藤と関係のある形態をとることも少なくない.

アルコール幻覚症 VS 分裂病(妄想型)

著者: 宮本忠雄 ,   吉野啓子

ページ範囲:P.2116 - P.2117

なぜ鑑別が問題となるか
 多年にわたる飲酒が各種の精神病的状態をひき起こす原因になることがある.そのうち一番多くみられる振戦せん妄は意識混濁を基礎にして,苦悶,せん妄,特有の幻視,手指振戦,自律神経症状などを示し,まず分裂病と間違うことはない、ところが,アルコール幻覚症は,意識清明で自律神経症状などもなく,しかも活発な言語性幻聴やそれと結びつく被害関係妄想が現れ,時に分裂病の幻覚妄想状態との鑑別が困難となることも少なくない.多くの場合は飲酒歴から診断を誤ることもないが,文献によれば,アルコール幻覚症と診断されたうち10人に1人は慢性分裂病に移行するといわれており,油断はならない.

ループス精神病 VS ステロイド精神病

著者: 原田憲一

ページ範囲:P.2118 - P.2119

なぜ鑑別が問題となるか
 ループス精神病は全身性エリテマトーデスの中枢神経症状である.稀に精神症状が,エリテマトーデスの身体症状に先行することがあるが,たいていは全身性エリテマトーデスの経過中に精神症状が現れてくる.したがって精神症状を示したエリテマトーデスの患者はほとんど常に治療として,すでにステロイド剤を投与されている.ステロイド剤を服用している人に精神症状が現れたとき,その精神症状はループス精神病なのか,ステロイド惹起性精神病なのかの鑑別が求められる.
 その上,ループス精神病とステロイド精神病とでは,治療方針が逆になる.後者ならステロイドを中止あるいは減量したいし,前者ならその必要はなく,むしろ増量が精神症状にも有益でありうる.両者の臨床鑑別が緊要な所以である.

脳動脈硬化性痴呆 VS 老年痴呆

著者: 長谷川和夫

ページ範囲:P.2120 - P.2121

なぜ鑑別が問題となるか
 両者は,老人に多くみられる点で,頻度からみると両横綱といってよい.しかも人口の高齢化に伴って増加しつつあること,また老年痴呆には原因療法がまったくないため,脳循環状態をよくすることや,リハビリテーションによって,治療による改善の可能性をもつ脳動脈硬化性痴呆を鑑別することは,重要な意義をもつと考えられる.予後を判定する上でも脳動脈硬化性痴呆は脳卒中発現の可能性が大きいから鑑別は重要といえる.
 ただ85歳以上の高齢期になると,両者の混合型が多くなることが知られていて,鑑別は必ずしも容易ではない.しかし,この場合でも脳動脈硬化性要因の有無を確定することは治療や介護のうえで重要であろう.

アルツハイマー病 VS ピック病

著者: 羽田忠

ページ範囲:P.2122 - P.2123

疾患の解説
 アルツハイマー病Alzheimer diseaseもピック病Pick diseaseも大脳の萎縮過程が初老期に始まり,長年月をかけ進行してゆく変性疾患である.
 アルツハイマー病の神経病理的特徴は,アルツハイマー原線維変化,老人斑などの出現を伴う大脳皮質全体の萎縮である、しかし,稀に前頭葉,側頭葉などの限局性萎縮が主変化の非定型例がみられ,これらの症例では,定型例とは臨床症状は異なってくる.

XIII.皮膚疾患

アナフィラキトイド紫斑 VS 血小板減少性紫斑

著者: 西川武二

ページ範囲:P.2126 - P.2127

なぜ鑑別が問題となるか
 アナフィラキトイド紫斑は血管壁の障害に由来する紫斑で,病巣感染・食餌・薬剤などによるIII型アレルギーと説明されている.血小板減少性紫斑は,本態不明(おそらくは自己免疫性)の血小板減少による紫斑である.したがって,発疹はいずれも皮下の出血という点で共通するが,本態的には異なるので,検査の進め方,治療方針を確立する上で両者の鑑別は重要である.なお,アナフィラキトイド紫斑は皮膚症状だけ(単純性紫斑),関節症状を伴うもの(リウマチ性紫斑)および胃腸症状を伴うもの(腸性紫斑)の3型に分けられる.また血小板減少性紫斑の診断に際しては,薬剤・急性感染症・膠原病(SLE)・血液疾患・血管腫(カサバッハ・メリット症候群)などによる2次的な血小板減少による紫斑を除外することが必要である.

皮膚アレルギー性血管炎 VS 結節性動脈周囲炎

著者: 堀嘉昭

ページ範囲:P.2128 - P.2129

はじめに
 1866年,KussmaulおよびMaierが,発熱,衰弱,筋肉痛,腹痛,知覚障害,頻脈,血尿,蛋白尿を呈し,数カ月で死亡した若い男子例を報告したのが結節性動脈周囲炎(古典的periarteritisnodosa)の第1例である.しかし,その後Zeekが壊死性血管炎necrotizing angiitisとして,病理組織学的に,①小動脈,小静脈の血管壁のフィブリノイド変化,②好中球の浸潤と好中球の核の破壊および,時に赤血球の遊出を呈する血管の病変を認める場合を表1のごとく総括した.
 この場合の組織反応はArthus型の反応,すなわち第III型のアレルギー反応に一致するもので,血管壁へのimmune colnplexの沈着と好中球の浸潤で説明されようが,実際にimmune complex,とくに抗原が明らかになることは稀である3)

皮膚筋炎皮膚症状 VS 全身性エリテマトーデス(SLE)皮膚症状

著者: 斎藤義雄

ページ範囲:P.2130 - P.2131

なぜ鑑別が問題となるか
 両者は代表的な膠原病として,ともに発熱,関節痛,筋症状,皮膚症状として顔面紅斑および手足の紅斑を認め,また光線過敏性を有するなどきわめて類似した症状を呈する場合が多い.しかし,皮膚筋炎成人例では悪性腫瘍を合併することが多く,SLEでは免疫異常,腎,心,脳神経症状を呈することが多い.治療および予後判定の見地から両者の適切な鑑別が必要となる.

多型ないし異型浸出性紅斑 VS 薬疹(汎発性)

著者: 今村貞夫

ページ範囲:P.2132 - P.2133

なぜ鑑別が問題となるか
 皮膚に発生する紅斑症には,多型ないし異型浸出性紅斑,遠心性環状紅斑,血管神経性環状紅斑,紅斑性狼瘡など独立した疾患単位と考えられるものがある.一方,薬剤の摂取によって発生する薬疹は,薬剤の種類,個体の差異により湿疹,紅斑,紫斑,水庖,じん麻疹,座瘡,苔癬,固定疹などさまざまの形態を示すが,そのうちで最も多いのは,紅斑型のものである.紅斑型には,アプレゾリンやヒダントインによる紅斑性狼瘡様の皮疹やサルファ剤やサリチル酸剤による結節性紅斑様の皮疹もあるが,大多数は不定の紅斑が播種性に発生するもので,麻疹型,狸紅熱型,多型紅斑型などと呼ばれているものである.
 紅斑の発生が薬剤に起因するものかどうかを鑑別することは,治療と予防の両面でとくに大切である.治療の面では,薬剤に起因する場合には,該当薬の除去なしには完全な治癒は期待できず,また逆にそれを除去するだけでも自然に改善がみられる.一方,予防の面では,起因薬を発見しその再摂取を行わなければ,皮疹の再発は防止できるという点で重要である.

接触性皮膚炎 VS アトピー性皮膚炎

著者: 原田昭太郎

ページ範囲:P.2134 - P.2135

なぜ鑑別が問題となるか
 接触性皮膚炎は原因物質との接触が避けられれば比較的短期間に治癒するし,また,将来の皮膚炎再発を防止できる.したがって,原因物質の検索が臨床的に非常に重要となる.一方,アトピー性皮膚炎では既存の皮膚症状に応じ,患者の年齢を考慮した適切な外用療法(幼小児の場合は全身的,局所的影響を考え,mildなコルチコステロイド外用剤の使用が好ましい)を行うとともに,治癒を遷延させる多くの悪化因子を可及的に避けるように患者(乳児,幼小児患者の場合は家族)を生活指導することが治療の大原則となる,このように両疾患では治療の方針が根本的に異なるので,正しい鑑別診断が必要となる.
 幸いにも,これら両疾患の鑑別診断は大多数の症例で容易であるが,成人期に発症し典型像を呈さないアトピー性皮膚炎,アトピー性皮膚炎の好発部位に生じた接触性皮膚炎,とくに慢性苔癬化病巣を呈する接触性皮膚炎などでは鑑別に難渋する場合がある.また,アトピー性皮膚炎患者に生じた接触性皮膚炎,とくに治療に用いた外用剤に含まれる成分により感作し,アトピー性皮膚炎病巣に接触性皮膚炎が重複した症例では接触性皮膚炎が見逃されやすい.

悪性リンパ腫 VS Pseudolymphoma

著者: 山田瑞穂

ページ範囲:P.2136 - P.2137

なぜ鑑別が問題となるか
 種々の程度に赤味を有し,皮表にすこし隆起し,皮下に浸潤を触れる限局性の皮膚病変で,生検をして真皮にリンパ細網系細胞の増殖の著しいものが問題となる.1つは悪性の腫瘍性増殖で,もう1つは良性の反応性の増殖であり,最終的には,いかに治療すべきか,とくに悪性リンパ腫に対する化学療法や放射線治療を実施するかどうかにかかわってくることが問題である.
 リンパ球より大きい単核の細胞が細網細胞と呼ばれていた。そして,皮膚にリンパ球,細網細胞の増殖をきたすもので,悪性のものはリンパ肉腫,細網肉腫と,良性のものは細網症と称されていた。しかし,昔,細網細胞と呼ばれていた細胞はリンパ球の変形したものであることがわかってきた.ところで,一見腫瘍様にみえるが良性のものは,pseudolymphoma(Spiegler-Fendt),lymphocytoma cutis benigna,lymphadenosis benigna cutis(Bafverstedt),cutaneous lymphoid hyperplasia(Caro-Helwig)などと呼ばれ,虫さされなどに対する反応によると考えられているが,まったく原因不明のことも少なくない.

菌状息肉症または局面性類乾癬 VS 乾癬

著者: 森俊二

ページ範囲:P.2138 - P.2139

なぜ鑑別が問題となるか
 菌状息肉症mycosis fungoidesは稀な病気で,皮疹で始まりついには諸臓器に病変を生じて死亡するに到る予後の悪い疾患である.cutaneous T-celllymphornaの名でも呼ばれるT細胞系のリンパ腫であり,前息肉期,浸潤期さらに腫瘍期へと進展する.前息肉期の皮膚病変は一見湿疹などの炎症性疾患と区別がつかない.
 局面性類乾癬parapsoriasis en plaques(以下Pa)は慢性で,角質増殖や鱗屑を伴う紅斑を特徴とする炎症性角化症に分類されているが,長い経過を辿って10%足らずの例では菌状息肉症になることが知られており,菌状息肉症の前息肉期の皮膚症状を示している疾患とも考えられる.

掌踪膿庖症 VS 手足湿疹

著者: 高橋伸也

ページ範囲:P.2140 - P.2141

なぜ鑑別が問題となるか
 アレルギー素因に基づく外因性疾患である手足湿疹と,真の原因は不明であるが,内因性疾患(病巣感染説,自己免疫説など)と推測されている掌蹠膿疱症とは,本質的に異なる疾患ではあるが,臨床的類似点が少なくない.ともに成人に多くみられ,表皮を主たる反応の場とする浸出性炎症性疾患で小水疱あるいは膿疱を原発疹とし,臨床像に多様性を認め,治療に抵抗して難治,慢性経過の後に落屑性角化紅斑病変を形成する、局所の安静と治療によって治癒可能な手足湿疹と,諸種の治療に頑固に抵抗するが,長い経過をもって自然治癒する掌蹠膿疱症とは,治療方針をたて,予後の判定をくだす上で,はっきりと鑑別されねばならない.

結節性紅斑 VS Behçet病の結節性紅斑様皮疹

著者: 西山茂夫

ページ範囲:P.2142 - P.2143

なぜ鑑別が問題となるか
 結節性紅斑とは皮下脂肪織における炎症という程度の意味であり,1つの疾患単位というよりは,種々の原因による症状と考えられる.
 皮下脂肪織の炎症は一般に皮下のしこり(結節)として表現されるが,多少とも真皮に波及するために皮膚の表面に潮紅(紅斑)がみられる.したがって,結節性紅斑erythema nodosumとよばれるが,病理学的な意味も含めて"dermopanniculitis"という言葉が適切である.

粘液水腫 VS 強皮症

著者: 石川英一

ページ範囲:P.2144 - P.2145

なぜ鑑別が問題となるか
 粘液水腫は,ムコ多糖が真皮に沈着する一連の疾患をいう.他方,強皮症は,皮膚硬化を主症状とする疾患群(皮膚硬化症)の代表疾患である.強皮症には膠原病に属する全身性強皮症(PSS)と,原則として皮膚病変のみがみられる限局性強皮症がある.
 粘液水腫は,臨床的に甲状腺機能低下症にみられる汎発性粘液水腫性苔癬と,バセドウ病(Graves病)に合併する前脛骨粘液水腫と,甲状腺機能異常をみない粘液水腫性苔癬とに大別される.そのうち,前脛骨粘液水腫は強皮症とは異なる臨床像を示すので,ここでは省略する.それに対し,汎発性粘液水腫では,臨床的に顔面,四肢,とくにその末梢部に圧痕を残さない浮腫性腫脹をみることが特徴であり,全身性強皮症の浮腫期の皮膚変化との鑑別が問題となる.

色素性母斑ないし黒子 VS 悪性黒色腫

著者: 久木田淳

ページ範囲:P.2146 - P.2147

なぜ鑑別が問題となるか
 臨床的に黒色を呈する皮膚腫瘍の種類はきわめて多く,これらの腫瘍は色素性母斑(黒子を含む)および悪性黒色腫のごとき色素細胞系列の腫瘍のみでなく,表皮細胞,間質性細胞系列の腫瘍も含まれる.色素性母斑は悪性黒色腫の発生母地として考えられており,色素性母斑と悪性黒色腫の臨床的,病理組織学的鑑別が重要である,とくに悪性黒色腫は他の腫瘍に比して悪性度が高く,診断確定後は1日も早い治療方針の決定が必要である.早期診断の時期を失った症例,または誤まった治療をされた症例は予後がきわめて絶望的になる,またその反対に,良性腫瘍を悪性黒色腫と誤まった場合は不必要な大きな侵襲を患者に与える結果となる.
 しかし,皮膚科診療上,黒色腫瘍は皮膚腫瘍のうち最も誤診されやすい疾患である.色素性母斑の臨床的誤診に関する報告によると,色素性母斑と臨床的に診断された551症例中,組織学的検査で診断が適中した症例は338症例で,診断適中率は低く61%で,基底細胞上表腫,脂漏性角化症,有棘細胞癌,色素性神経線維腫,血管腫,表皮嚢腫,悪性黒色腫などが含まれていた.また組織学的診断が色素性母斑であった454症例の臨床的診断は色素性母斑と適中した症例は338症例で,適中率74.4%であった.

XIV.女性性器疾患

妊娠悪阻 VS 脳腫瘍

著者: 駒谷美津男 ,   須川佶

ページ範囲:P.2150 - P.2151

なぜ鑑別が問題となるか
 妊娠と脳腫瘍の合併はきわめて稀ではあるが,絨毛癌のごとき脳転移をきたすものや,妊娠によって再発することがある下垂体腺腫,さらには増悪傾向のみられる髄膜腫,血管腫,神経線維腫など,脳腫瘍合併例においては早期診断および治療が必要となることがある.そして一般に妊娠初期においては,悪心や嘔吐が多くの妊婦に発現し,重篤になると妊娠悪阻という状態になることがある.したがって,妊娠初期にみられる悪阻症状としての頑固な嘔吐が妊婦に発現した場合,それが脳腫瘍による頭蓋内圧亢進症状である可能性も考慮し,両者の鑑別が必要となる.

子宮外妊娠 VS 急性虫垂炎

著者: 服部一志 ,   浜田宏

ページ範囲:P.2152 - P.2153

なぜ鑑別が問題となるか
 両者とも下腹痛を主訴とし,緊急の開腹術を必要とする場合が多い.また,虫垂炎の好発年齢である20歳代は,妊娠の頻度も高い.
 虫垂炎を疑って開腹した場合の正診率を100%にしようとすると,重篤になるまで待たねばならない症例が増すことになり,臨床的には75%程度で十分と思われる.子宮外妊娠においても流産との鑑別が必要であり,腹腔内に大量出血があったり,腹膜炎を起こし,重篤になれば診断も容易であるが,比較的初期に急性腹症として開腹するか否かを早急に判断せねばならないため,それに先立って両者の鑑別が重要になってくる.さらに卵巣嚢腫茎捻転や付属器炎との鑑別も診断上の問題点である.

妊娠中毒症 VS 慢性腎炎

著者: 福田透 ,   平林稔之

ページ範囲:P.2154 - P.2155

 妊娠はreproductive biologyの面からは確かに生理的現象であるが,しかし妊婦では内分泌,代謝,循環,免疫など多方面にわたり非妊時と異なる動態が惹起されている.一般に妊娠週数とともに変化は強まるが,その対応が不十分な場合には必然的に各種の異常の発生につながる.中毒症はその最も代表的な異常のひとつであるが,本態に関しては今日もなお不明の点が多い."学説の疾患"といわれるように定義,診断,ひいては治療面などに,なお多くの問題点のあることを認めざるをえない.
 今回は現在までの種々の報告や経験例などを参考として,中毒症と慢性腎炎に関する諸事項の対比表を一応表示するとともに,筆者らの考えの一端にっき略述する.

子癇 VS クモ膜下出血

著者: 中山道男

ページ範囲:P.2156 - P.2157

なぜ鑑別が問題となるか
 子痛は妊娠中毒症(以下中毒症と略)のなかでも重症かつ特殊な症状を合併する疾患である.すなわち浮腫,蛋白尿,高血圧の,いわゆる中毒症の三大症状のほかに,突然意識が喪失し,同時に全身の痙攣を突発する急性疾患である.
 一方,クモ膜下出血は脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの原因により種々の程度にクモ膜下出血を突発する脳血管障害の疾患である.この両者はいずれも頭痛,意識障害,痙攣,血圧上昇など脳症状を主として,しかも急速に発症するhigh riskの疾患ということで共通する.

更年期障害 VS メニエール症候群

著者: 一条元彦 ,   平岡克忠

ページ範囲:P.2158 - P.2159

なぜ鑑別が問題となるか
 更年期障害とは,生殖期(成熟期)より生殖不能期(老年期)への移行期における不定愁訴を主とする障害である.内分泌面では,エストロゲン優位からアンドロゲン優位への過渡期に相当しており,視床下部機能の低下,卵巣機能の低下に起因している.早発症状としては,ほてり,発汗,萎縮性腔炎が主であり,晩発症状は末梢器官・組織の代謝性変化によるもので,膀胱機能障害などがある。そして,環境因子,性格因子が関与していると考えられている.一方,メニエール症候群は,内リンパ水腫が主病変であり,リンパ腔内圧の上昇により耳鳴,難聴があり,ついにはめまいが起こる症候群である.両者の発生因子として,自律神経失調が共通しており,また症状として,めまいがみられるため鑑別を要する.

急性子宮付属器炎 VS 尿路結石症

著者: 古谷博

ページ範囲:P.2160 - P.2161

なぜ鑑別が問題となるか
 尿路結石症は,腎盂,腎杯などに尿の成分が析出し,これが核となって尿酸塩,シュウ酸塩,リン酸塩などの結石を作るもので,尿流の停滞,代謝の異常などが誘因となるが,原因不明のもののほうが多い.またサルファ剤や副腎皮質ステロイドの長期投与,長期臥床も原因になる.結石の存在部位によって腎結石,腎盂結石,これが下流におちた尿管結石,膀胱結石,尿道結石にわけられるが,急性子宮付属器炎と鑑別が問題になるのは尿管結石症である.
 それは両疾患とも比較的に若年ないし中年者に多く,急激に下腹部の疝痛様疼痛があり,疼痛とともに嘔気,嘔吐を伴うことが多いからである.また疼痛が下腹部だけでなく,しばしば上腹部,外陰,大腿にまで放散し,嘔気,嘔吐のため食事がとれず全身の脱力が強くなる.時には癌痛でなく鈍痛のこともあり,波動的に消長して長期間続くこともある.また両者とも血尿が痛みとともにみられることがあり,顕微鏡的血尿から肉眼的血尿まで程度はまちまちで,性器出血をみることもある.

子宮内膜症 VS 慢性腹膜炎

著者: 蜂屋祥一

ページ範囲:P.2162 - P.2163

なぜ鑑別が問題となるか
 子宮内膜症と慢性(骨盤)腹膜炎は25〜40歳の成熟婦人における慢性的な下腹部膨満感,下腹痛,腰痛が主要徴候であって,これらはいずれも月経時に増強する点で鑑別がつきにくい.しかし,治療という点では,その方向がまったく異なり,正確な診断が当初より必要となる.この両者は綿密な問診により,さらに内診によって疼痛の部位,性状によってある程度判別されるが,さらに理学的検査によってほとんど鑑別が可能となる.

子宮筋腫 VS 卵巣腫瘍

著者: 飯塚理八 ,   山口順

ページ範囲:P.2164 - P.2165

なぜ鑑別が問題となるか
 子宮筋腫は婦人科領域における代表的疾患であり,外来患者の3〜5%を占めるといわれる.また剖検例の20%に子宮筋腫が発見される.子宮と卵巣は解剖学的に接近して存在し,卵巣腫瘍は種類が多く多彩であるため,鑑別診断を困難にすることがある.とりわけ有茎漿膜下筋腫と子宮に癒着した充実性卵巣腫瘍の鑑別は大切である.正しい診断がなされないと,治療方針,手術の適応,術式の決定が不可能である.

卵巣出血 VS 腸間膜動脈塞栓

著者: 望月眞人

ページ範囲:P.2166 - P.2167

なぜ鑑別が問題となるか
 両疾患はともに激しい腹痛を突発する重症腹部疾患である急性腹症に含まれるが,おのずからその症状に軽重がある.たとえば腸間膜動脈塞栓ではただちに手術をしなければ生命の危険があり,予後も一般に重篤である.これに反し,卵巣出血は症状が軽く,しばらく経過を観察したほうがよいこともある.したがって急性腹症においては,どの程度の救急を必要とするかを鑑別することが大切で,とくに腸間膜動脈塞栓の対策には,このことがきわめて重要な問題となる.

卵巣腫瘍 VS 後腹膜腫瘍

著者: 鈴木正彦 ,   宮坂康夫

ページ範囲:P.2168 - P.2169

なぜ鑑別が問題となるか
 後腹膜腫瘍とは,後腹膜腔領域(壁側腹膜と後腹壁の間にある腰仙部領域に対する呼称)に発生する腫瘍をいうが,臨床の習慣上,女性性器・膵臓・腎臓・副腎・脊椎・脊髄などの原発性腫瘍は除外されるのが普通である.しかし,小児における後腹膜腫瘍では,Wilms腫瘍・副腎腫瘍なども含めて論ずることもある.
 実地臨床の上で,卵巣腫瘍との鑑別対象となる後腹膜腫瘍は,下腹部に発生するものである.この場合,その発生頻度などから後腹膜腫瘍を卵巣腫瘍・子宮筋腫などと誤診されることが多く,無雑作に開腹してはじめて後腹膜腫瘍を確認し,困惑させられることがある.後腹膜腫瘍は悪性頻度が高く,しかも肉腫などの悪性度の高い腫瘍が多いため,とくに慎重な取り扱いが必要とされる.

付属器腫瘤 VS 回盲部腫瘤

著者: 木下佐

ページ範囲:P.2170 - P.2171

なぜ鑑別が問題となるか
 子宮付属器は骨盤腔内に深く位置し,正常では腹壁上からまったく触れないが,右付属器に腫瘤を生じてある程度以上(通常手拳大ないし小児頭大以上)に増大すると,回盲部腫瘤と同様に右下腹部に触知しうるようになり,時として両者の鑑別が問題になる.回盲部腫瘤,付属器腫瘤といってももちろん下記のごとく種々のものがあるが,ここではこれら個々の疾患の鑑別診断についてではなく,右下腹部に触れる腫瘤が回盲部から発生したものか,付属器に属するものかの一般的鑑別法ということに重点を置いて述べる.

付属器腫瘍茎捻転 VS 腸閉塞

著者: 大内広子

ページ範囲:P.2172 - P.2173

なぜ鑑別が問題となるか
 この両疾患は,激しい腹痛と腹膜刺激症状を起こし,ショック症状を現わし,緊急手術を必要とする急性腹症のことが多く,早期に適切な鑑別診断をつけ,治療を婦人科側,または外科側で施行する.ときには定型的症状を示さず,発症時に軽度の下腹痛を訴えていたが,徐々に腹膜刺激症状が増強し,処置の時期を失することがあるので,診断の確定を急ぐ必要がある.
 付属器腫瘍茎捻転は卵巣腫瘍,卵管溜水腫などが存在したときに起こるが,多くは可動性有茎卵巣嚢腫に発症し,その頻度は約10%である.捻転が起こると,まず茎内を走行する静脈の血行障害が生じ,腫瘍内に出血,時の経過とともに壊死,二次感染,腫瘍の破裂などをみ,腹腔内出血をきたし,重篤な状態をひき起こす.卵巣腫瘍の茎捻転は診断決定と同時に手術を施行する.

子宮溜膿腫 VS 腸管腫瘍

著者: 水野正彦

ページ範囲:P.2174 - P.2175

どのような場合に鑑別が問題となるか
 子宮潔膿腫は,子宮体の感染によって生ずる疾患で,いわゆる成熟期には,ほとんどの症例で子宮内操作や流産・分娩など感染を誘起する原因が先行し,また膿性帯下や発熱あるいは下腹痛などの婦人科的症状を訴えるので,腸管腫瘍との鑑別が必要となることは稀である。しかし,閉経以降の高年婦人では,子宮体癌による子宮溜膿腫が多く,この場合には先行する感染の原因が明瞭でなく,また頸管閉鎖のため膿性帯下もみられず,診断がむずかしくなることがある.
 一方,腸管腫瘍で下腹部中央に局在し,消化器系症状が著明でないものでは,当然ながら種々の下腹部腫瘤との鑑別が必要で,高年婦人の場合には子宮溜膿腫と鑑別しなければならないことがある.

XV.小児疾患

水痘 VS 手足口病

著者: 北山徹

ページ範囲:P.2178 - P.2179

なぜ鑑別が問題となるか
 それぞれかなり特徴的な臨床像を示す疾患であるから,定型例を経験しておけば鑑別診断は容易で問題となることは稀である.しかし,非定型例などでは,時に相互に類似像を認めることがある.たとえば手足口病で,手掌,足蹠などより,殿部,膝関節部などに水疱性発疹が出現すると,とくに発症間もなくの病初期には水痘とみ誤ることもありえよう.

流行性耳下腺炎 VS 伝染性単核球症

著者: 南谷幹夫

ページ範囲:P.2180 - P.2181

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は頸部リンパ節腫脹をみることが多く,流行性耳下腺炎では病初期の顎下リンパ節腫脹のみを認めるとき,あるいは耳下腺腫脹がなく舌下腺や顎下腺の腫脹を認めるときは鑑別すべき疾患となる.両疾患とも小児期にみる急性熱性感染症であるが,その頻度は流行性耳下腺炎のほうが伝染性単核球症よりもはるかに多い.
 流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる幼児,学童に多くみる唾液腺炎であるが,睾丸や膵臓などの腺組織を侵すばかりでなく,中枢神経系合併症を伴うことも少なくなく,むしろ全身性感染症として取り扱うべきである.伝染性単核球症はEBウイルスを原因とする全身リンパ節腫脹,扁桃炎,肝脾腫を主徴とする疾患であり,近年その病原が確立されたが,西日本では本症に類似した地方病的に発生する腺熱リケッチア症がある.

伝染性紅斑 VS 風疹

著者: 巷野悟郎

ページ範囲:P.2182 - P.2183

なぜ鑑別が問題となるか
 小児には発疹性の伝染病が多く,麻疹,水痘,突発性発疹などは代表的な疾患である.そのために小児科学教科書では,これらの疾患をかなりくわしく記載しているが,同じように発疹性の伝染病である伝染性紅斑については,その記載はわずかであり,他の発疹性伝染病の鑑別診断のおりに,ほとんど注目されることさえなかったのがふつうである.
 その理由は,伝染性紅斑は1889年にドイツではじめて報告され,わが国では1912年に報告されたのであるが,その後,麻疹や水痘のような流行がなく,小児科専門医でさえ本病を経験したものが少なかったからである.

狸紅熱 VS 川崎病

著者: 川崎富作

ページ範囲:P.2184 - P.2185

なぜ鑑別が問題となるか
 狸紅熱と川崎病とは日常の小児診療でしばしば遭遇する疾患であるが,定型例は診断に苦労しないが,少し症状が非定型のときは両者はよく誤まられる.しかも,両者の後遺症はまったく異なり,狸紅熱は一般に腎炎を,川崎病は冠状動脈瘤と突然死を考慮する必要があり,両者の管理もまた異なる.したがって,両者はできるだけ正しく鑑別し診断する必要がある.

憤怒けいれん VS てんかん

著者: 本多輝男 ,   星加明徳

ページ範囲:P.2186 - P.2187

なぜ鑑別が問題となるか
 両疾患ともけいれんあるいは意識喪失を主訴として来院するが,憤怒けいれんは予後良好な疾患であり,抗けいれん剤服用の必要がなく,また服用しても効果は少ない.一方,てんかんは,放置すると発作回数が増し,脳障害を招来して,知能の低下,性格の変容をもたらす頻度が高いので,抗けいれん剤の長期服用,脳波のfollow upが必要な疾患である.

血管性紫斑病 vs ITP

著者: 西村昂三

ページ範囲:P.2188 - P.2189

なぜ鑑別が問題となるか
 両者とも小児に比較的しばしばみられる疾患であるが,ともに紫斑病なる病名でよばれるため混同されやすい.血管性紫斑病はSch6nlein-Henoch紫斑病,アナフィラキシー様紫斑病,アレルギー性紫斑病ともよばれ,免疫機構の関与した血管炎症候群のひとつで血液疾患ではない.一方,ITP(Idiopathic thrombocytopenic purpura特発性血小板減少性紫斑病)は血小板減少を主徴とする血液疾患で,急性型と慢性型がある.血管性紫斑病にも何年にもわたり発疹(紫斑)の出没をくり返す慢性型のものもあるが,きわめて稀で,また腎合併症を起こしたものの中に慢性の腎症状を示すものもある.
 これら両紫斑病の発疹の形態は鑑別上重要で,通常は視診だけでも鑑別可能のことが多い.

機能性雑音 VS 心室中隔欠損

著者: 小佐野満

ページ範囲:P.2190 - P.2191

なぜ鑑別が問題となるか
 小児科年齢ではまったく健常児でも,聴診で心雑音を認めることが圧倒的に多い.
 注意深く,静かな環境のもとで聴診すればなんらかの心雑音は90%以上にみとめられる.

胸腺肥大 VS 縦隔腫瘍

著者: 赤塚順一

ページ範囲:P.2192 - P.2193

鑑別すべき要点
 幼小児期では胸腺肥大を呈する患児にはしばしば遭遇し,胸部X線撮影で,その像は胸部中央陰影に一致して出現することが多いので,縦隔腫瘍との鑑別診断は臨床上きわめて重要な課題の1つである.胸腺肥大は悪性のものでない限り放置していても加齢とともに徐々に縮小して問題は解決するが,一方,小児の縦隔腫瘍は悪性腫瘍由来のものが多いので,初診時の診断が急務となる.
 この際,胸腔内腫瘍であるため,身体の他の部位と異なって簡単に生検というわけにはゆかないので,それだけ診断は困難といえる.

ウィルムス腫瘍 VS 神経芽腫

著者: 細谷亮太

ページ範囲:P.2194 - P.2195

なぜ鑑別が問題となるか
 この両者は小児期とくに幼児期に多くみられ,悪性の固型腫瘍であること,腹部腫瘤を主徴とすることが多く,治療法と予後に差があることなどの点で鑑別診断上,お互いに重要なかかわりあいをもっている.欧米においては発生頻度が両者ともほぼ同じで,あまり鑑別の指標とはならないとされているが,わが国の統計では神経芽腫の発生頻度が明らかに高い.両者の大きな違いのひとつは,ウィルムス腫瘍が,非常に稀な腎外性ウィルムス腫瘍を除けば,すべて腎原発の腹部腫瘤として発症するのに,神経芽腫が腹部腫瘤として発症するのは,全体の50〜60%のみという点である.

腸重積 VS 急性胃腸炎

著者: 松山秀介

ページ範囲:P.2196 - P.2197

なぜ鑑別が問題となるか
 腸重積症は小児,とくに乳児を中心に日常しばしば遭遇する疾患である.早期に診断し,治療を行えば,およそ90%は非観血的な処置により治癒させうる.診断が遅れ,発症24時間を過ぎると非観血的な処置により整復させることは困難となり,開腹手術による整復,さらに腸切除を余儀なく行うことも少なくない.腸切除を行った例の手術成績は悪く,10〜20%の死亡率があげられている.早期診断の重要な疾患であり,乳幼児の診療にあたる際は常に念頭におくべき疾患である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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