icon fsr

文献詳細

雑誌文献

medicina17巻12号

1980年11月発行

臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント

X.腎疾患

起立性蛋白尿 VS 慢性腎炎の潜在型

著者: 折田義正1 藤原芳廣3 阿部裕2

所属機関: 1滋賀医科大学・第3内科 2大阪大学医学部・第1内科 3滋賀医科大学・内科

ページ範囲:P.2070 - P.2071

文献概要

なぜ鑑別が問題となるか
 起立性蛋白尿および慢性腎炎の潜在型という病名は,ともに明確に定義されたものではない.たとえば前者を「仰臥位には尿中蛋白排泄量が正常範囲内であるが,立位をとったときにのみ尿蛋白排泄量が病的範囲内にまで増加するもの」と定義すると,その中には後者をはじめ各種腎疾患の回復期を含んでしまう.そこで本稿では前述の定義を満足した上で,a)腎糸球体に明らかな病変がみられず,遊走腎を除外したものを前者,b)腎糸球体に明らかな病変が存在するが,腎機能の低下や高血圧,浮腫を伴わない原発性糸球体疾患で,急性腎炎の回復期を除外したものを後者と定義し,以下の記述をすすめたい.
 このように定義すると両疾患の鑑別の必要性は明らかである.すなわち,前者はまったく病的意義のない生理的・良性蛋白尿に属し,治療や生活制限の必要がない.これに対して後者は臨床的に慢性腎炎固定期ないし軽度腎炎型を呈し,組織学的にはIgA腎症を含む軽度のメサンギウム増殖性腎炎を主とし,稀に膜性増殖性腎炎や膜性腎症の初期もありうると考えられる.いずれにせよ腎不全にまで進行する可能性を有し,多かれ少なかれ医師の管理下におく必要がある.近年,学校や職場における集団検尿が普及し,これらの鑑別の対象となる症例は著増している.無意味な治療や生活および食餌の規制,逆に腎不全に至る症例の見落し,などを避けるためにも,両者の鑑別は重要な意味をもってくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら