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雑誌目次

雑誌文献

medicina17巻4号

1980年04月発行

雑誌目次

今月の主題 最近の腎疾患の基礎と臨床

理解のための10題

ページ範囲:P.564 - P.566

腎疾患の病態

腎血管性高血圧

著者: 石井當男

ページ範囲:P.480 - P.483

はじめに
 腎血管性高血圧は腎循環障害に起因する高血圧である.腎循環障害は,多くの場合主腎動脈あるいはその分枝動脈の狭窄ないし閉塞によるが,ときに腎内の梗塞あるいは塞栓による場合があり,また,まれに腎内外に生じた腫瘍による圧迫,先天性奇形または全身性疾患に伴う腎血管障害に基づくと考えられる場合がある,本症の診断は,腎循環障害の病因を外科的に除去することにより血圧が正常化することを確かめてから下されるべきであるが,外科的手技の影響,あるいは種々の理由で外科的適応がない場合もあり,手術の結果をみて診断を決定することが必ずしも適切ではないことがある.したがって,腎血管造影所見ならびに腎静脈血漿レニン活性測定を含む諸分腎検査所見に基づいて本症の診断がなされる場合が少なくない.

ネフローゼ症候群以外の糸球体病変のとらえ方

著者: 土田弘基 ,   倉山英昭 ,   森和夫 ,   岡田正明

ページ範囲:P.484 - P.488

はじめに
 かなり明確な輪郭をもって,ネフローゼ症候群を把握することはできる.反対に,非ネフローゼ症候群に関しては,漠としてその掴みどころがない.そこで,今回はまず筆者らの経験例のなかから,非ネフローゼ症候群とされたものの占める割合を見直し,そのなかで最も頻度の高いchance proteinuria and/or hematuriaに焦点をあて,非ネフローゼ症候群の意義を考えてみたい.ここでは,学童集団検尿の例を使い,いくつかの問題点を論及する.

尿細管障害―酵素活性の面から

著者: 遠藤仁

ページ範囲:P.490 - P.492

はじめに
 尿細管障害の存在を判定する手段として,尿中に排泄される酵素を測定することは有意義と思われる.しかしそれら酵素の起源が確実に尿細管由来であることを裏付けられない限り,その評価は曖昧になってしまう.すなわち,血液-腎(尿細管)-尿という3つの連続する尿生成の過程で,尿中に出現する酵素が血液に存在しない酵素であれば,その酵素は尿細管特異酵素として理想的といえる.
 しかも尿細管に一様に分布しておらず,尿細管の特有な部分にのみ存在する酵素が,尿細管全長に亘って幾種類か存在が確かめられれば話は至極簡単である.すでに腎ネフロン内諸酵素の分布は組織化学的手法で調べられているが1),上述のように,明瞭な解釈が尿細管障害の際に,はたして当てはめうるか否かを試みた筆者らの実験を中心に,以下に述べる.

尿細管障害―尿細管透過性の面から

著者: 藤本守 ,   内藤和世

ページ範囲:P.494 - P.496

尿細管の透過性
 尿細管の膜透過現象は細胞膜を通る物質の経細胞的輸送と,細胞同志の継目を通る労細胞的輸送の両者からなる.前者はさらに管腔膜と側基底膜の透過現象が組合わされており,後者は管腔膜に近いタイト結合の透過性と,それにつづく細胞間隙の通りやすさが問題となる.上皮組織として腎尿細管をながめると,近位部は小腸粘膜や胆嚢などと同様に,漏洩性上皮(leaky epithelium)に属し,Naなどの輸送を積極的に行っているが,強い濃度勾配を作りえず,Naとともに水を等張性に輸送している.これに対して遠位尿細管は蛙皮やガマ膀胱膜などと同様に,タイト上皮(tight epithelium)に属し,能動的に輸送されるNaのみならず,受動的に運ばれるイオンや水もほとんど細胞膜を通る結果,その相対的な通過速度の違いによって,全体として非等張性の液の輸送が起こっている.
 腎尿細管では,大量の血漿濾液の成分が再吸収される一方,一部の尿成分は直接細胞によって分泌をうけることはひろく知られている.各種の成分が上皮組織のどこをどのように通るかは物質の種類により,また尿細管の部位によって異なる.たとえば,Naやブドウ糖やアミノ酸は,近位部ではもっぱら経細胞的に再吸収され,しかもそれらの有機溶質は大部分が近位尿細管の前半で再吸収されてしまう.ところがClはそのかなりの部分が旁細胞的にも再吸収される.

尿細管障害―成人の場合

著者: 富田公夫 ,   椎貝達夫

ページ範囲:P.498 - P.500

はじめに
 尿細管障害はその部位により臨床的に異なった症状を呈する.いろいろな分類が可能であるが,尿細管障害部位により分類すれば,近位尿細管,Henle上行脚,遠位尿細管,集合管障害に分けられる.近位・遠位尿細管障害として主に尿細管性アシドーシス1),Henle上行脚障害としてBartter症候群2),集合管障害として尿濃縮力障害があげられる.

尿細管障害―小児の場合

著者: 酒井糾

ページ範囲:P.502 - P.504

はじめに
 腎尿細管転送異常は先天的に発症する場合(primary)と後天的に発症する場合(secondary)とがあるが,おのおの症例において腎尿細管上皮細胞のいかなる代謝が障害されているかが不明であるために,原発性の尿細管の機能障害なのか,ほかの遣伝性疾患の一部分症としての尿細管の続発性機能障害なのかが解明されていない症例が多い.臨床的には再吸収されるべき物質の尿中への異常出現,あるいは分泌によって排泄されると考えられる物質の異常出現が見られるときに,腎尿細管転送異常と考える必要が生じる.
 とくに再吸収機能の旺盛な近位尿細管の異常として,アミノ酸の再吸収不全・ブドウ糖の再吸収不全・リン酸の再吸収不全などに由来する疾患がそれぞれ単独に尿細管異常としての疾患単位を形成するとともに,これらに加えて重炭酸の再吸収不全が随伴し,尿細管の多発性障害となって一臨床疾患単位を形成し,Fanconi症候群と診断される場合が多い.つぎに尿の濃縮過程に重要とされている髄質部ネフロンの異常は,多飲多尿をきたす疾患の原発部位となり,一次的障害にせよ,二次的障害にせよ,ADH不応症をきたす疾患を形成する.K喪失性腎症や腎性尿崩症がその例としてあげられる.

間質性腎炎

著者: 酒井紀 ,   御手洗哲也

ページ範囲:P.506 - P.509

はじめに
 間質性腎炎は糸球体腎炎に対応する疾患概念であり,そのおもな病変は腎間質にある.形態学的には腎間質に炎症性細胞浸潤,浮腫,線維化がみられ,多くの場合,尿細管の変性,萎縮,壊死などの所見も伴っている。このような病変部では,尿細管病変が,さきに起こるのか,間質性病変がさきに起こるのか,あるいは同時に起こってくるものなのかはっきりしない場合が多く,命名法に混乱がみられる.しかし最近では,糸球体を病変の場とするglomerular diseaseという言葉に対し,tubulointerstitial diseaseがよく用いられるようになってきている.このような尿細管・間質病変は,腎の非特異的反応形態の一つであり,種々の化学的,細菌学的,免疫学的および生理学的原因に基づく,いくつかの異なった病因的機構によって発症するものと考えられている.
 一般に間質性腎炎は急性間質性腎炎と慢性間質性腎炎に区別され,表のごとく種々の病態が含まれている.ここではおのおのの代表的疾患について,その病態の概要と,最近注目される2,3の知見を述べる.

ネフローゼ症候群の臨床

原発性ネフローゼ症候群

著者: 稲毛博実 ,   東條静夫

ページ範囲:P.510 - P.512

概念と診断基準
 ネフローゼ症候群とは,特徴的な臨床諸症状を呈する症候診断名であり,その主体となる原疾患は原発性腎(糸球体)疾患であることは,周知の事実であろう.
 ネフローゼ症候群の主要徴候としては,高度の蛋白尿,低蛋白(アルブミン)血症,高脂血症ならびに浮腫があげられるが,普遍的診断基準としては,数量的に明示し,同一条件下で診断して,その病態,治療効果を検討することが望まれる.このような意図のもとに設定された成人ネフローゼ症候群治療研究会1)の診断基準を表1に示した.

糖尿病性腎症

著者: 木田寛

ページ範囲:P.514 - P.515

はじめに
 インスリン・抗生物質の導入により,糖尿病の予後は著しく改善されたが,一方では,徐々に進行する全身の血管合併症が予後決定因子として大きくクローズアップされるようになってきた,その部分症の1つである糖尿病性腎症(以下腎症と略す)もこの例外ではなく,生存期間の延長とともに,重篤な症例が多くみられるようになり,糖尿病治療上の問題点の1つとされている.このような症例では,しばしばネフローゼ症候群・高窒素血症・高血圧などが同時に認められることが特徴であり,最初の記載者の名にちなんでKimmelstiel-Wilson症候群(以下K-W症候群と略す)と呼ばれている.なおK-W症候群の頻度は,糖尿病患者のたかだか10%,また諸種ネフローゼ症候群全体の5%前後であろうと推測される.

SLE腎症

著者: 大藤真 ,   倉田典之

ページ範囲:P.516 - P.517

はじめに
 全身性エリテマトーデス(SLE)は高頻度に腎障害を発生する膠原病の一つであり,臨床的にネフローゼ症候群を呈すことが多く,2次性ネフローゼ症候群の代表疾患としてよく知られている.
 ここでは,本特集の主旨にしたがって,SLEのネフローゼ症候群について,その病態,診断のポイント,治療および予後などの臨床上の諸問題につき解説する.

腎アミロイドーシス

著者: 古山隆 ,   京極芳夫

ページ範囲:P.518 - P.521

はじめに
 アミロイドーシスにおけるアミロイド沈着は,剖検例では全身の臓器に及ぶが,臨床的に問題になるのは腎,心,肝,消化管,末梢神経などであって,脾,甲状腺,副腎,膵などへの沈着は症状として捉えにくい.
 本症の症状のうち,腎症状とくにネフローゼ症候群は頻度が高く,かつ目立つ症状の一つであり,それによる腎不全は心筋障害とともにアミロイドーシスの主要な死因である.これまで本症の生前診断は15%にすぎないといわれているが,腎障害を伴う例については,本症の多臓器侵襲性を念頭におけば,診断は必ずしも困難でない.

小児のネフローゼ症候群

著者: 村上睦美 ,   植田穰

ページ範囲:P.522 - P.523

疫学的事項および定義
 ネフローゼ症候群の発生頻度はわが国においては,15歳以下では,人口10万について1年間2.1〜6.9例との報告があり,有病率は15歳以下では,人口10万について30〜35例とされている.発症年齢は4歳をピークとし3〜6歳に多く,男女比では約3:1で男児に多い.これらのことはわが国において特徴的なものではない.
 小児のネフローゼ症候群の診断基準は,厚生省特定疾患NS調査研究班のものでは,成人の診断基準と項目としては同様であるが,蛋白尿に関しては0.1g/kg/日以上,早朝起床時第一尿で300mg/dl以上,低蛋白血症に関しては血清総蛋白量が学童・幼児では6.0g/dl以下,乳児では5.5g/dl以下,血清アルブミン量が学童・幼児では3.0g/dl以下,乳児では2.5g/dl以下,高脂血症に関しては血清総コレステロール値が学童では250mg/dl以上,幼児では220mg/dl以上,乳児では200mg/dl以上が付加されている.

新しい検査法

99mTc-DMSA腎シンチグラフィー

著者: 吉田修 ,   川村寿一

ページ範囲:P.524 - P.528

原理
 99mTc-dimercaptosuccinic acid(以下DMSAと略)を静注すると,何回かの体内環流ののち,漸次,腎内血流にしたがって腎皮質の血管床に分布し,主として腎皮質の尿細管周囲の血管網および間質に集まってくる.この間,糸球体からの濾過と尿細管からの尿中排泄はきわめて少ない.
 このようなDMSAの腎における性質を利用して,腎シンチグラムを撮ると同時に,投与されたDMSAの何%が腎に集まるかを測定し,腎摂取率として算出することによって,左右腎別の皮質機能ともいうべきひとつの定量的な腎機能パラメーターを求める.

β2-microglobulin

著者: 馬場茂明 ,   水野信彦 ,   高瀬重暉

ページ範囲:P.530 - P.533

はじめに
 β2-microglobulin(β2M)は,1968年にBerggardら1)によって尿細管性蛋白尿から分離された分子量11,800の低分子量蛋白である.産生はリンパ球を主とした有核細胞および血小板で行われるが,異化は主として腎で行われる.したがって産生異常をきたす疾患(炎症,腫瘍,免疫疾患など)だけでなく,種々の腎疾患においても血清または尿β2M値の異常がみられるので,腎機能検査法としての臨床的有用性がたかまってきている.

FDP

著者: 松山公彦 ,   本田西男

ページ範囲:P.534 - P.536

はじめに
 腎炎の発生過程では,免疫学的機序のみならず凝固機転が関与している.すなわち,形態学的には螢光抗体法により糸球体内へのフィブリン沈着が証明され,組織学的にメサンギウム細胞および血管内皮細胞の増殖変性を起こすといわれている.
 また一方,DIC(播種性血管内凝固症候群)に合併する腎皮質壊死による急性腎不全も報告されている.このような意味で血中および尿中のfibrin/fibrinogen degradation products(以下FDPと略す)が血管内凝固異常の1つの指標となり,その病態生理および診断治療面で注目されている.

血中免疫複合体と補体系

著者: 中山秀英 ,   大野丞二

ページ範囲:P.538 - P.539

はじめに
 可溶性免疫複合体の糸球体内への沈着が糸球体腎炎成立の主因となっていることは,WilsonやDixonらのウサギ実験的血清病により広く支持されている.ヒト糸球体腎炎においても,螢光抗体法で腎組織に免疫グロブリンや補体成分が顆粒状に沈着することでも明らかである.
 近年,免疫複合体測定法がつぎつぎと開発され,血中レベルでの循環性免疫複合体の測定が可能となっている.病変成立に免疫学的機序が想定される疾患では,血中免疫複合体および補体系の両面を把握することは臨床上重要である.腎疾患における補体系の変動についてはすでに報告している1,2)ので,今回は免疫複合体と補体系との関係ならびに治療経過による両者の動きを筆者らの成績3)をもとに述べてみたい.

特異な腎疾患

巣状糸球体硬化症

著者: 飯高和成

ページ範囲:P.540 - P.542

はじめに
 特異な腎疾患の一つに巣状糸球体硬化症があげられるが,臨床的にも病理学的にもかなり特徴的病像を示すことから,近年注目をあびている.生検材料から本症を診断することが極めて困難なことをはじめ,臨床と病理のいずれの面においても,その定義,成因,疾患概念の独立性など多くの未解決な問題が論議されている.すなわち第一に本症が独立疾患としての実体を有するのか,微小変化を呈するリポイドネフローゼの増悪型か,など疾患概念の独立性の問題.第二に多彩な糸球体障害とその障害糸球体の特異的な腎内分布,発症機序,第三に病因論的諸問題などがあげられ,今後とも充分な検討が望まれる糸球体病変である.

サルコイドーシス腎

著者: 大沢源吾 ,   深川光俊

ページ範囲:P.544 - P.546

はじめに
 サルコイドーシス(sarcoidosis,以下サ症)は病因不明の多臓器性,肉芽腫性疾患として知られている.臨床的には両側肺門リンパ節腫脹や肺病変,皮膚や眼病変の頻度が高く,組織学的な非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の証明やKreim-Siltzbach皮膚反応が陽性であること,などが特徴とされている.臨床的な腎所見の出現は報告者によって異なるが,一般には患者の10%以下と低い1).しかし,Lebacqら(1970)2)の152例の分析では尿蛋白陽性36%,尿沈渣異常13%と高頻度であるのが目につく.また,この腎障害の病因も従来は腎における肉芽腫形成やサ症にみられるCa代謝異常と結びつけた報告が多かったが,サ症における免疫病態が解明されるにつれて,これまでは偶然の合併症とみなされてきた腎炎や血管病変も,サ症の病態とより密接に関係づけてみなおされるようになってきたことも注目される.
 以下,サ症における腎障害をその成り立ちの面から4つに分けて略述したい.

IgA腎症

著者: 折田義正 ,   田中敏博

ページ範囲:P.548 - P.549

はじめに
 IgA腎症は,1968年BergerとHinglais1)によりはじめて報告され,免疫螢光抗体法所見によって分類された一腎疾患単位として注目されている.かれらは,原発性腎炎でメサンジウムに,lgAを主体にIgG,β1Cグロブリンの沈着を認める一群の腎疾患,すなわち"nephropathy with mesangial IgA-IgG deposits"を報告し,翌年詳細な55例を記載した.そのご本症について諸家の報告がなされ,IgA,IgGの沈着ばかりでなくIgM沈着例や,さらにはearly componentsをなわないC3,properdineの沈着例もみられることから,alternative pathwayによる補体活性経路が示唆されるようになった.その沈着様式はびまん性でしばしば不規則に分布し,メサンジウム領域のみでなく融合して近接の血管係蹄にまで及んでいる例も認められる(図).
 本症の糸球体病変は,しばしばfocal glomerulonephritisと述べられてきた.しかし,びまん性メサンジウム増生の上に巣状病変が加わった像が多く,このメサンジウム増生が唯一の光顕所見である,電顕的には,メサンジウム域,あるいはパラメサンジウム領域に大小いろいろなelectron dense deposits(EDD),典型的には大きな半球状沈着物(semishere deposits)が認められる.

痛風腎

著者: 加賀美年秀

ページ範囲:P.550 - P.552

はじめに
 痛風腎(gouty kidney)なる病名は,狭義には,病理組織学的に,髄質間質内に原発性痛風に特異的な尿酸塩(monosodium urate monohydrate)の沈着と,その周囲の異物細胞の存在,すなわち,痛風結節(tophus)を認めた場合に限定して用いられるが,限局性,散在性で,かつ髄質を主とする上記病変を,臨床的に証明することはきわめて困難であるので,現在では痛風患者において,臨床的に,尿所見,腎機能検査所見になんらかの異常を認めた場合には,これを痛風腎と呼ぶことが慣例化している.

座談会

人工透析のあり方と展望

著者: 樋口順三 ,   前田貞亮 ,   南郷英明 ,   西三郎 ,   岩淵勉

ページ範囲:P.554 - P.563

 腎臓病の治療に人工透析が導入されて10年余を経過した.その間,めざましい技術的進歩をとげた反面,さまざまな社会的批判を受けていることも事実である,ここでは,本特集のしめくくりとして,人工透析の現在かかえている問題点と今後の展望を,医学面,社会面の多様な観点からアプローチしていただいた.

胸部X線写真の読み方

縦隔

著者: 松山正也 ,   甲田英一

ページ範囲:P.572 - P.577

 松山 縦隔の疾患,とくに縦隔腫瘍について,少し勉強したいと思います.
 縦隔は肺と違って,とくに腫瘍,あるいは腫瘤のような疾患の場合には,好発部位がある程度きまっていますから,病巣部位がわかるだけで診断は相当できます.その上,形態上の特徴とか,あるいは石灰化のような特殊な異常陰影が加わってきますと,ますます診断率がよくなってきます.

演習・放射線診断学 CTスキャン読影のコツ・10

腎臓

著者: 八代直文

ページ範囲:P.580 - P.588

はじめに
 正常腎実質は,水溶性造影剤の静脈内投与によって濃染するため,腎のCTでは,他の腹部実質臓器に比して,より小さな病変を捉え得る可能性が高い.また,CT像は横断断層像であるため,他の検査法では知ることの困難な,腎病変部と周囲構造物との関係を容易に知ることができる.本稿では,第3世代CT装置を使用して描出できる腎および腎周囲構造物の正常解剖と,腎CTの検査手技について最初に略述する.次に,臨床上遭遇する機会の多い腎単純嚢胞と他の病変との鑑別について述べ,最後に,腎腫瘍性疾患に対するCTの役割について考察する.

連載

目でみるトレーニング 37

ページ範囲:P.590 - P.595

プライマリ・ケア

多摩ニュータウンにおけるメディカルプラン(2)

著者: 小松真 ,   田中恒男 ,   中村弘夫 ,   本郷元夫

ページ範囲:P.615 - P.621

開発母体と協議会の関係
 本郷 それでは公団や公社や民間のデベロッパーなどの開発母体と,医療面だけを問題とする協議会との関係をどのように調整しながら実際にまとめられたのか,田中先生いかがでしょう.
 田中 張りつけ作業はニュータウン部会でやるが,最終的な決定権は公団にあるという点に関しましては,実は最初の段階では,部会である程度南多摩全体を通した計画を立てることがねらいだったわけです.

臨床免疫学講座

免疫グロブリンと疾患

著者: 堀内篤

ページ範囲:P.596 - P.600

 免疫グロブリンimmunoglobulinとはB細胞系の細胞で産生され,血液,リンパ液,組織液,髄液などの体液中に存在している体液性抗体humoral antibodyである.哺乳類の免疫グロブリンはIgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5classにわけられており,体液性抗体はこのいずれかに属している.B細胞系(B細胞,形質細胞)の抗体産生過程にはT細胞が関与しており,これを促進するのがhelper T細胞,抑制するのがsuppressor T細胞である.

Laboratory Medicine 異常値の出るメカニズム・25

レニン・アンギオテンシン・アルドステロン

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.602 - P.604

アルドステロンの分泌調節(図1)
 アルドステロン(Ald)の分泌調節には,主として3つの機序が関与していることが知られている.第1にレニン・アンギオテンシン系で,第2に血漿K濃度,第3にACTHである.なおAldのほかに副腎ステロイドとして電解質作用をもつものにDOC,コルチコステロンがあり,DOCはAldよりも微弱ながらNaの貯留作用を有する.
 1)最も強い調節は,macula densa(遠位尿細管の特殊染色細胞-密斑-),傍糸球体細胞(JG細胞),輸入動脈などから成る腎皮質にあるJG装置の働きで放出される蛋白分解酵素レニンと,これに接触して生ずるアンギオテンシン(Ang)による支配である.この過程ではレニンで形成されたAng Iは肺循環において血漿中で酵素反応を再びうけて,強力な昇圧作用をもつAng IIに転換される.

老人診療のコツ

鎮静剤は鎮生剤—投与量は慎重に

著者: 大友英一

ページ範囲:P.606 - P.609

はじめに
 現在,老年者用に製造された薬物はなく,老年者は成人として,成人用の薬物を成人量投与されているのが一般的である.また小児におけるYoungの式のようなものもないが,これは老年者は成人として取扱われている証拠でもある.
 老年者は成人と見做して成人の量の薬物を投与することが不適当である理由はいろいろある.

外来診療・ここが聞きたい

不眠の訴え

著者: 伊藤斉 ,   西崎統

ページ範囲:P.610 - P.614

症例
 患者 40歳 女性,独身,OL
 現病歴 数年前から仕事が多忙となり,その頃から会社の検診時に血圧がやや高いといわれ(160/100程度),食塩制限を適当に続けている.

medicina CPC

全身リンパ節腫大,肝腫大,呼吸困難を主訴とする39歳男の例

著者: 亀井徹正 ,   竹越國夫 ,   井上雄弘 ,   坂本穆彦 ,   金上晴夫

ページ範囲:P.622 - P.633

下記の症例を診断してください
 症例 39歳 男
 主訴:全身リンパ節腫大,肝腫大,呼吸困難
 家族歴・既往歴:特記すべきものなし.

目でみる心筋梗塞・4

冠状動脈造影所見と組織像の対比

著者: 堀江俊伸

ページ範囲:P.568 - P.569

 冠状動脈造影法は心筋梗塞の診断,予後判定,手術適応の決定などに有用な検査法である.
 冠状動脈造影所見の判読にはいくつかの重要なポイントがある.

天地人

仙人と練金術

著者:

ページ範囲:P.635 - P.635

 中国の古代には,疾病を治療するいわゆる疾医のほかに,不老長寿を研究するいわゆる神仙流の方士と称するものがいた.疾医を代表する古典は傷寒論であり,神仙流を代表する古典は抱朴子である.抱朴子とは六朝時代における晋の葛洪の著であり,その内編は不老長寿の学理,錬丹法と仙薬からなっている.
 すなわち不老長寿の薬の製法とその用法などについての解読である.この仙薬のうちには丹砂をはじめ黄金・白銀・雲母・石英・松柏脂そのほか解しにくいものがあげられている.

オスラー博士の生涯・81

本と人Books and Men—1901年1月Boston Medical Libraryの落成記念講演

著者: 日野原重明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.636 - P.639

はじめに
 1889年から,ジョンス・ホプキンス大学医学部の創設に尽力したウィリアム・オスラー教授(1849〜1919)は,1904年まで同医学部の内科教授としての役を果たしながら,学外においても多彩な活動をした.医師や医学生のために諸大学からの招待講演をひきうけ,またアメリカ合衆国やカナダの医学会づくりや,医学図書館の設立や発展のために大いに尽力した.
 1901年の1月には,ボストン医学図書館の新設の落成記念講演会に招かれた,この図書館の前歴とオスラーとの関係は古いもので,オスラーが26歳のときに,当時講師をしていたマギル大学では得られなかった文献探しにこの図書館を訪れ,司書James R. Chadwickの世話で目的を果たしたことがある.

紫煙考

タバコの排気ガス

著者: 外山敏夫

ページ範囲:P.640 - P.642

タバコの煙は排気ガスである
 題を「タバコの排気ガス」としたのにはわけがある,下の表の「自動車の排気とタバコの煙の成分比較表」を見ていただきたい,これは外国の文献1)からとったものであるが,見てわかることは,両者が実によく似ていることで,タバコの煙を排気といっても大差のないことが理解されるであろう.この中で,生体に最も有毒なCOは両者ともにほとんど同じであり,公害でやかましくいわれるNOxは,タバコで意外に高濃度であることに驚かされる.眼を刺激するアクロレインはタバコだけであるが,フォルムアルデヒドは両者同じようなものである.もっとも自動車のほうは,炭化水素やNOxが大気中で日光に照射されて,いわゆる光化学スモッグで二次的にアクロレインやPANなどという眼を刺激するものに変わることにはなる.
 タバコの煙の成分は,この表だけではなく,今まで分析されたものは約4,000種にのぼるという2).「イタイイタイ病」で知られていた重金属のカドミウムなどはこの表にはないが,灰皿に置きっぱなしになっている煙からはかなりの量が出される.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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