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今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題 治療
副腎皮質ステロイドおよび免疫抑制剤の適応と限界
著者: 平山千里1 川崎寛中2 周防武昭2
所属機関: 1鳥取大学医学部・第2内科 2鳥取大学医学部・内科
ページ範囲:P.890 - P.893
文献購入ページに移動慢性肝炎,とくに慢性活動性肝炎に対しては,経験的に古くから副腎皮質ホルモンまたは免疫抑制剤が投与されており,これらの薬剤は,患者の自覚症状,肝機能,肝生検像などの臨床所見をかなり改善することが報告されている.たとえば慢性活動性肝炎に,副腎皮質ホルモンを投与すると,症例の一部に食欲の亢進,全身倦怠感などの自覚症状が好転し,また生化学的検査では,ビリルビン,トランスアミナーゼ,γグロブリンの低下などがみとめられる.また肝組織像でも,炎症所見の改善をきたす場合があると報告されている.
しかしながら,副腎皮質ホルモンを具体的に投与してみると,無効例や増悪例があること,その中止により反跳現象がみられること,またとくにその長期投与で種々の重篤な副作用が出現するため,その治療効果については疑問視する傾向もある,事実,副腎皮質ホルモンはインターフェロンの生成を抑制し,また,細胞性,液性抗体の生成を抑制するなどの成績があげられている.したがって,すくなくともウイルスに起因する病型,とくにわが国で問題となる肝炎ウイルス起因性の慢性肝炎に対する治療効果については疑問点も多い.
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