icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

medicina17巻9号

1980年09月発行

雑誌目次

今月の主題 膵と胆道疾患

理解のための10題

ページ範囲:P.1406 - P.1408

病態生理

膵外分泌機能とその調節

著者: 竹内正 ,   渡辺伸一郎 ,   白鳥敬子

ページ範囲:P.1324 - P.1325

はじめに
 膵の外分泌は2つの大きな機能をもっている.第1には,酸性の胃内容を十二指腸内で中和すべく,重炭酸ナトリウムを分泌することであり,第2には,消化のための酵素を供給することである.
 膵からの水分と重炭酸塩の分泌は,十二指腸に入る胃内容の酸によって,膵消化酵素の分泌は,蛋白,脂肪の分解産物によって主としてコントロールされている.

膵炎発生に関与する諸因子

著者: 八田善夫 ,   平林秀三 ,   吉川望海

ページ範囲:P.1326 - P.1327

はじめに
 膵炎発生因子は臨床的に数多くの検討がなされているが,発生病態についてはなお推定の域にとどまっている.とくに慢性膵炎における病態は問題が多い.その進展過程や,急性膵炎と,慢性膵炎の急性増悪の病態は必ずしも同じではないと考えられるが,その詳細については今後の検討課題であろう.
 したがって本文では主として臨床的な観点から述べるとともに,可能な限りその問題点を明らかにしていく.なお発生因子については以前にも報告1)してあるので多少の重複があることをご了承いただきたい.

胆石の生成と胆汁の生化学

著者: 大菅俊明

ページ範囲:P.1328 - P.1330

 胆石は胆汁のなかから,胆汁中に含まれる成分を材料として生れ出る.胆汁は肝で生成され,細胆管から胆管を経て十二指腸に排泄される途中で,水分や,電解質が新たに分泌されたり,再吸収をうけたりして修飾される.肝胆汁は陰圧となっている胆嚢内に注ぎ入り,ここで5〜10倍に濃縮されるが,食事の刺激で放出されたコレシストキニンによって胆嚢が収縮すると,胆嚢胆汁は総胆管を経て十二指腸内に注ぐ.ここで胆汁は食事中の脂肪を可溶化して腸管からの吸収を助ける.

診断のすすめ方

急性膵炎の診断のすすめ方

著者: 早川哲夫

ページ範囲:P.1332 - P.1334

 急性膵炎は上腹部の激痛をもって突然に発症し,しばしば重篤な全身症状を呈するため,急性腹症と同様に,診断確定に時間を費やすことなくただちに治療が必要となる.本症は致命率が高く,最近でも5〜15%と報告されており,壊死型膵炎では40〜50%ときわめて高い死亡率である.
 本症の治療の原則は強力な内科的治療である.一方,急性腹症の多くは緊急手術を要するものが多く,時機を逸すれば予後はきわめて不良となる.本症の診断が的確であれば,不要な手術侵襲をさけることができる.緊急手術の必要な急性腹症を,誤まって保存的に治療すれば致命的な結果を招く,本症の診断に際しては,ほかの急性腹症との鑑別が中心となる.診断に用いる検査も患者の負担が軽く,方法が簡単で結果が早くわかる方法でないと実用となりがたい.図1に本症診断の概略を示した.

慢性膵炎の診断基準

著者: 本間達二 ,   長田敦夫

ページ範囲:P.1336 - P.1337

 慢性膵炎は,ときとして急性腹痛発作,血液と尿アミラーゼの異常を認め,慢性に経過しながら次第に膵内外分泌機能の低下する疾患である.組織学的には,基本的には膵腺房細胞の変性・壊死,間質のかなり高度の線維化,膵管系の変化などが認められる.
 しかしながら,臨床的には組織生検をくり返すのが不可能なこともあって,確定診断は容易ではない.腹部の不定愁訴をもつ患者に,通常の外来診察や外来検査をして胃・十二指腸や肝・胆道系に異常所見の認められぬとき,かつての「慢性胃炎」や「慢性肝炎」のように,“診断のクズカゴ”として「慢性膵炎」の病名が使用されることも少なくない.膵検査法のあまりなかった10年前には,慢性膵炎を疑診病名として使用することもやむをえなかったが,現在すでにいくつかの膵検査法の応用されている状況では「慢性膵炎」の病名をあいまいに使うことは慎むげきであろう.この意味からも,これまでも述べた慢性膵炎の診断基準をあらためて整理してみるのも無益ではないと思われる.

膵・胆道系の悪性腫瘍

著者: 久保勝彦 ,   田辺正也

ページ範囲:P.1338 - P.1340

はじめに
 胃を中心として消化管の悪性腫瘍の診断は,二重造影法や内視鏡を駆使して,きわめて高い水準に到達している.これに引き続いて,膵・胆道系の腫瘍に対しても新しいME機器を利用した発展が,はなばなしく報ぜられはじめた.
 ただこれらの画像診断法,すなわちCTスキャンや超音波診断法を数年以上も前から導入しているアメリカにおいても1),膵癌診断後の初年度死亡率は90%以上といわれ,この面の治療への寄与はみるべきものがないというのが現状である2)

胆石・胆嚢炎のみかた

著者: 松崎松平

ページ範囲:P.1342 - P.1343

 胆石症(胆嚢結石,総胆管結石)の存在は,その結石の性状を問わず,激しい上腹部疝痛の原因として最も多いものである.さらに重篤な病態である急性胆嚢炎や胆管炎の約90%も,胆石の存在が原因とされている.その存在が比較的無症候性に慢性経過を示していることも少なくないが,やはり疝痛や炎症を惹起する準備状態であり,また長期的には胆道癌発生の原因となることも考えられている.よって反復検査による経過観察を必要とする重要な問題であるが,本項では適切な治療方針を迅速に決定することがきわめて重要な急性発作のみかたについて述べる.

膵ホルモン産生腫瘍の診断

著者: 遠藤巌

ページ範囲:P.1344 - P.1346

 膵ホルモン産生腫瘍としてはgastrinoma, insulinoma,glucagonoma, VIPoma, somatostatinomaが知られている.それぞれ特有の症状,検査所見から疑いを置かれ症状を発現する主要ホルモンの血中濃度の上昇や薬物負荷試験への反応態度から疑いが強められる.これらの腫瘍はいずれも血管に富むため,血管造影によりほとんどの症例で腫瘍濃染像から局在診断を下すことができる.また,これらの腫瘍にはそれぞれかなりの頻度に悪性例がみられるので,血管造影により肝転移巣の状態をみておけば組織診断と治療方針を決める上に有用である.ただし,膵の血管腫,副脾,膵へ穿通した消化性潰瘍,大網塊などが本腫瘍類似の所見を呈することがあり注意を要する.近年,経皮経肝門脈内カテーテル挿入による門脈血中ホルモン濃度測定法が開発され,腫瘍の局在診断に有用であるといわれている.
 以下,それぞれの腫瘍について述べる.

画像診断法とその限界

経皮経肝胆道造影(PTC)

著者: 土屋幸浩 ,   大藤正雄

ページ範囲:P.1348 - P.1350

はじめに
 診断技術の向上は器械,器具の進歩と常に歩みをともにする.経皮経肝胆道造影(PTC)はX線テレビの応用をはじめとして,細い穿刺針の使用,穿刺方法の工夫などで造影成績や安全性の向上が得られるようになり,PTCの内科領域での応用も含めて幅広い臨床応用が可能となった1)
 だが,肝内胆石症や肝門部癌など肝内胆管に狭窄性あるいは閉塞性病変を有する症例の場合,従来のPTCでは必ずしも病変胆管を確実に造影しえず,PTCの診断能に限界がみられた.そこで,pharmaco-PTC2)や選択的胆管胆嚢穿刺3)の工夫が加わり,PTCの診断能は一段と向上した.

内視鏡的逆行性胆道・膵管造影(ERCP)

著者: 春日井達造

ページ範囲:P.1352 - P.1355

ERCPとは
 ERCPは経口的内視鏡を用い経十二指腸的,逆行性に膵管・胆道を造影,X線写真を撮影して病変の診断を行う検査法である.
 膵管は,主膵管,主要分枝のみならず,細かい分枝すなわち微細膵管を含む全膵管を意味する.したがって,膵の病的変化がいずれの膵管に生じても,またいずれの膵管に波及しても,そこに形態的変化が惹起されている限り,膵管造影で膵管の形態を忠実に描写すれば,その異常像に基づいて病変の診断が導き出せるわけである.

膵・胆道疾患における血管造影

著者: 平松京一

ページ範囲:P.1356 - P.1362

 膵ならびに胆道系は互いに密接な関係にあり,画像診断を施行するにあたっては,両者を切り離して考えることはむずかしい.とくに膵頭部では,総胆管下部との位置的関係,血行支配の密接さからみても,血管造影診断は常にこの両者の疾患を念頭において行われなければならない.
 膵・胆道の診断上最も重要と考えられるものはやはり癌とその鑑別診断である.しかし一般に,膵癌ならびに胆管癌はともに腫瘍血管に乏しく,血管造影診断の役割は,経静脈性胆嚢造影,経皮経肝胆道造影(PTC),逆行性膵・胆管造影(ERCP)などの所見を十分に把握した上で,さらに最近とくに発達したCTスキャンや超音波診断などの所見を参考にして,これらの画像からは得られない情報を引き出すことにあると考えられる.

X線CTスキャンニング

著者: 木下文雄 ,   前川全

ページ範囲:P.1363 - P.1365

膵疾患
 膵についてCTで得られる情報の主なものは,①体軸横断面での膵の位置,形態を知る,②形態,density(X線吸収度)の変化から膵腫瘍の有無を知る,③膵腫瘍の位置,大きさ,形態を知る,④腫瘍が充実性か,嚢胞性かをdensityから判別しうる,⑤膵または膵周囲の石灰化の有無,位置を知りうる,などである.
 このような情報を利用し,膵癌,膵嚢胞,慢性膵炎の診断に結びつける.

膵・胆道疾患の超音波診断

著者: 北村次男

ページ範囲:P.1366 - P.1369

はじめに
 膵・胆道疾患が疑われたとき,まずはじめに行われるのが,この超音波診断である.それはちょうど,心・肺疾患が疑われたとき聴診器を使って診断をすると同じように,腹部疾患では,従来の触診などに加えて,簡単にこの超音波,なかでもリニア電子スキャンにより腹腔内各臓器の診断ができるからである.

新しい診断法

アミラーゼアイソザイム測定とその意義

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.1370 - P.1371

 血清および尿中でのアミラーゼ活性の上昇は,古くから膵炎の診断に重視されてきた.
 しかし,アミラーゼのアイソザイムの分画が支持体電気泳動によって容易に行われるようになると1,2),いわゆる高アミラーゼ血症の中で唾液腺由来と電気易動度を同じとする高アミラーゼ血症がかなりの頻度で存在することが知られてきた3).膵疾患の診断上はこのような原因不明のS位アミラーゼ上昇,マクロアミラーゼ血症,腫瘍産生高アミラーゼ血症等を除外する必要があるので,高アミラーゼ血症をきたす病態について述べ,さらに膵疾患診断上の要点をまとめることとする.

膵癌の免疫生化学的診断

著者: 土屋雅春 ,   熊谷直樹

ページ範囲:P.1372 - P.1373

 膵癌を根治手術可能な早期の段階で診断すべく,種々の免疫生化学的診断法が諸家によって研究されてきた.以下最近の知見を中心に現在までの主な膵癌の免疫生化学的診断法について述べる.

膵生検—超音波画像ガイド経皮的膵生検を中心に

著者: 木村健 ,   山中桓夫

ページ範囲:P.1374 - P.1376

はじめに
 膵生検は,現在のところ主に膵の形態異常に対する最終(確定)診断を得る目的で行われている.すなわち,膵の形態異常,とくに腫瘤性病変の悪性・良性の鑑別が主である.したがって,膵生検の場合,主に悪性腫瘍に対する陽性率が問題となる.もちろん,膵生検そのものが診断の一過程に過ぎないことを考えれば,本手技による合併症の発現率の問題もまた重要であることはいうまでもない,現在主に行われている膵生検法とその膵癌に対する診断率,合併症について,表に一括して示す(詳細は文献1)参照).膵生検は術前生検法と術中生検法に大別されるが,術前生検法では超音波画像ガイドによる経皮的膵吸引生検(エコーガイド膵生検)が最も優れている.筆者らの教室では,腹腔鏡下における膵の直視下吸引生検も行っており,満足すべき成績を得ているが,本稿ではこのエコーガイド膵生検について概説する.

PFD

著者: 久保保彦 ,   桑原靖道

ページ範囲:P.1378 - P.1379

はじめに
 膵外分泌機能検査としてはP-S試験が最も感度がよく,標準診断法として確立している.しかし,手技が比較的繁雑であり,とくにスクリーニングとしてはなはだ不適切である.一方,131I標識トライオレインをはじめ数種の吸収試験が行われているが,RIを使用するため種種の制約を受ける.Imondiらは種々のペプタイドを合成し,その消化吸収試験から膵外分泌機能検査をしようと試み,BT-PABAがこの目的にかない,十分実用的であることを確認しPFD(Pancreatic Function Diagnostant)として検査法を確立した,この検査は簡便であり,今後広く普及するものと思われる.

治療における諸問題

膵炎の薬物療法の現況

著者: 石井裕正 ,   高木俊和

ページ範囲:P.1380 - P.1381

 膵炎,とくに急性膵壊死に代表される膵炎の急性期は内科的に処置するか,外科的方法も講ずる必要があるかの判断を要するきわあて重篤な疾患である.ショック,腎不全などの循環不全が出現すると生命への危険率が高いので,適切な早期診断と早期治療を心掛ける必要がある.
 膵炎の治療は,急性膵炎,慢性再燃性膵炎に代表される急性期および慢性膵炎,膵石症に代表される慢性期の治療の2つに大別される.

胆汁酸による胆石溶解療法

著者: 桐生恭好 ,   船津和夫

ページ範囲:P.1382 - P.1384

 古くから民間療法で,胆石を溶かすと称されている薬が一部で売られていたが,その効果については不明な点が多い,剖検でのわが国の胆石の保有率は8%前後といわれ,胆石症の患者の多いこともあって,外科的手術でなく胆石を溶解させる薬の出現が望まれていた.
 Danzingerら1)が1972年に一次胆汁酸であるchenodeoxycholic acid(以下CDCA)を投与して,コレステロール系胆嚢胆石が溶解した症例を報告して以来,多くの研究者によりその有効性が確認された2,3)。またCDCAの7β-OH異性体であるursodeoxycholic acid(以下UDCA)にも同様にコレステロール結石溶解作用があることが相ついで報告された4,5)

Silent Stoneの取り扱い方

著者: 武内俊彦 ,   宮治眞

ページ範囲:P.1386 - P.1388

 silent stoneを臨床的にいかに取り扱うかという問題は従来よりくり返し検討されているが,未だ明確な結論は得られていない.これはsilent stoneが内科外科の両領域に関与する病態で,それぞれの立場によって考え方に多少の相違があること以外に,手術の安全性の向上,経口胆石溶解剤の出現,超音波診断法により患者にほとんど負荷をかけることなく経過観察できるなどの治療面,診断面における進歩や変遷が関係してきていると思われる.
 本稿では,現時点における筆者らの考え方を中心に述べることにする.

胆嚢・胆管炎の抗生物質療法と手術適応

著者: 加藤繁次

ページ範囲:P.1390 - P.1391

 胆嚢炎,胆管炎の多くは結石の形成からの発症が多く,悪性腫瘍の発生がこれに次ぐ.結石に対しては胆石溶解剤が種々考えられているが,現段階では未だ優れた胆石溶解効果が確認されていない.そのため手術の適応となってくるものが多い.
 しかし抗生物質の進歩から,これらの炎症に対する治療法としては,内科側と外科側とではやや見解の相違がみられる.その原因のひとつとして,以前は手術死亡率が現在よりもやや高く,胆摘後困難症の発生に苦しむ症例もあったことが考えられる.

胆嚢摘出後症候群

著者: 相馬智

ページ範囲:P.1392 - P.1394

はじめに
 胆嚢摘出(あるいはそれを主体とした胆道手術)後に,何らかの症状が残ったり,新たな症状が発生することを,胆嚢摘出後症候群あるいは胆嚢摘出後後遺症とよんできた.
 今日では胆道系の諸検査の進歩により,正しい手術適応が得られるようになり,また手術術式や手術材料の著しい進歩により,安全でしかも確実な病的状態の把握や処置が可能となった.しかし胆石症や胆嚢炎を,症状のみから手術適応を考えて,処置を急ぎ思わね後遺症に悩まされることも稀ではない.胆石症や胆嚢炎を胆道全体の一病変と考えて,その病態生理学的な面からのアプローチをしないために,過去,いや現在でも後遺症に悩まされているのである.今日では術前にその病態生理の把握がかなり確かになったので,本症が減りつつあることも事実であるが,決して過去のものではない.本稿ではその原因と治療(予防)につき言及したい.

座談会

膵・胆道疾患診療の実際

著者: 本間達二 ,   菅田文夫 ,   尾形佳郎 ,   石井裕正

ページ範囲:P.1396 - P.1405

 膵・胆道領域の疾患は,胆石症をはじめとして日常的に遭遇する機会が多いにもかかわらず,病態生理から診断・治療まで,未だ明らかにされえない部分も残されている.しかし近年の画像診断法や内視鏡をはじめとする診断技術の目覚しい進歩により,その取り扱い方,考え方も変革を迫られているといっても過言ではないと思われる.
 本欄では,膵・胆道疾患の実地臨床上の問題点につき,こうした最新の動向をふまえてお話しいただいた.

胸部X線写真の読み方

先天性心疾患(1)

著者: 松山正也 ,   原典良

ページ範囲:P.1412 - P.1419

 松山 今回は先天性心疾患について,とくに肺血管のみかたを,心陰影との関連において説明していただきたいと思います.
 第1例は12歳の女性です(図1).

演習 放射線診断学 神経放射線学・3

脳血管障害(2)—脳梗塞

著者: 古井滋 ,   前原忠行

ページ範囲:P.1420 - P.1427

はじめに
 過去10年の統計では,やや減少傾向にあるとはいえ,脳血管障害,いわゆる脳卒中は,わが国の死因の1,2位を争う疾患である.脳卒中は大きく分けて出血性病変と,脳梗塞を中心とする閉塞性病変とに分類されるが,急性期における両者の鑑別は治療方針の決定にきわめて重要である.近年普及したコンピュータ断層撮影(CT)は急性期の脳出血の診断に非常に有効であり,その詳細については脳出血の稿で記載した.ここでは,CT,血管造影,脳シンチグラムを含めて脳梗塞の放射線診断について述べることにする.

連載

目でみるトレーニング 42

ページ範囲:P.1428 - P.1433

プライマリ・ケア

地域医療を考える(1)—上郷健康センターの活動に学ぶ

著者: 宮原伸二 ,   本田三郎 ,   永井友二郎

ページ範囲:P.1458 - P.1462

 永井(司会) 今日は,秋田県象潟町の上郷診療所でご活躍されている宮原先生に,辺地医療の実践的な活動についてご報告いただき,今後の地域医療はどうあるべきかを考えていく一つの指標に供したいと考えます.
 宮原先生,まず上郷地区の概要をご説明いただけませんか.

臨床免疫学講座

母児間の免疫反応

著者: 堀内篤

ページ範囲:P.1436 - P.1440

 妊娠による母親と胎児の相互関係については母児相関maternal-fetal relationshipとよばれて今までにいろいろな研究が行われてきた.しかし,妊娠を免疫学的立場から考えると,今まで述べてきた理論からはまったく理解しにくい機序が成立していることになる.すなわち受精卵の子宮内膜への着床は精子(移植抗原)による感作であり,また同種移植allograft(この場合1/2が父親からの組織適合性抗原をもっている)であるにもかかわらず,母体による拒絶反応がおこらずに一定期間妊娠が維持されるという現象である.ここではこの問題に対する考え方と胎児・新生児溶血性疾患について述べることにする.

Laboratory Medicine 異常値の出るメカニズム・30

プロラクチン

著者: 屋形稔

ページ範囲:P.1442 - P.1444

プロラクチンの分泌調節
 プロラクチン(PRL)は乳汁分泌ホルモン,黄体刺激ホルモンなどとよばれ,哺乳動物のみならず他の脊椎動物にも存在し,個体維持,種属維持に重要な役割を果す.分子量22,000,アミノ酸基200の下垂体性ペプチッドホルモンである.分泌細胞は下垂体前葉に存在する好酸性細胞で,電顕によりPRL分泌顆粒が認められ,これは授乳時放出され,乳汁分泌終了とともに消褪する.
 PRLは下垂体茎を切断すると増加し,下垂体前葉のin vitro組織培養に視床下部エキスを添加する実験では低下をみる.またラットで摘出下垂体の腎被膜下自己移植実験で増加する.以上から視床下部性PRL分泌抑制因子(PIF)により分泌調節されると考えられる.一方ラットではPIF以外にPRL分泌促進作用を有する因子(PRF)が視床下部から抽出されている.またTRH(TSH releasing hormone)の投与で血中PRLは有意に増加する.つまり,PRLは視床下部から合成分泌の抑制と促進の二重調整支配機構をうけていることになる.二重調節の理由としては,PRLはGHと同様に標的内分泌腺がなく,short feedbackのみでlong feedback looPによる分泌調節機序をもたないためと解される(図1).

老人診療のコツ

診断のむずかしい胃腸疾患—不定の胃腸症状は?

著者: 大友英一

ページ範囲:P.1446 - P.1449

症例提示
 〔症例〕 82歳,男 77歳,前立腺肥大で入院加療,血圧は190〜152/90〜60mmHgである.
 4日前より1日10回ほど臍を中心とする軽い腹痛が出没し食欲不振がある.発熱,便秘はなく軽い下痢があった.血圧は174/70mmHg.

臨床講座=癌化学療法

乳癌の化学療法

著者: 小川一誠 ,   稲垣治郎

ページ範囲:P.1450 - P.1453

はじめに
 乳癌は固型腫瘍の中で薬剤に対する感受性が比較的高い腫瘍に属し,術後の補助化学療法も早くより系統的に広く行われ,成果をあげている.進行乳癌の化学療法は1969年,Cooper1)による5者併用療法の発表以来,急速に進歩しつつある、ここでは,再発・進行乳癌の化学療法を中心に,乳癌の化学療法の現況を,筆者らの成績を含めて記述する.

外来診療・ここが聞きたい

白血球分画異常をみたとき

著者: 山口潜 ,   西崎統

ページ範囲:P.1454 - P.1457

症例
 患者 Y. M. 76歳 男性,無職
 現病歴 約2年前に腹部膨満と体重増加(約2kg)あり,近医入院し,精査の結果,結核性腹膜炎の疑いにて加療.その後,約半年間通院加療を受けていた.半年くらい前に白撫球の増多を指嫡されていたが自覚症状がないので放置していた.なお,出血傾向はないという。今回,右鼠径ヘルニヤにて来院した.

天地人

妙な理屈

著者:

ページ範囲:P.1467 - P.1467

 だから煙草を大いに吸ってよいとはいわないけれど,嫌煙運動も妙なものだといいたいのである.
 日本専売公社の発表によると,昨年の日本男子の喫煙率は73%,女子15.4%,この15年間で,男の喫煙率は6%減少,女は不変であるという.これを米国のそれと比較すると,米国男子の15年前の喫煙率は53%,それがこの15年間に35%に減少したという、また,現在,一平方マイルあたりの喫煙本数は,米国では460本でしかないのに,日本では5,000本に及び,煙草による空気の汚染度も,したがって,比較にならぬほど日本が悪い.

オスラー博士の生涯・86

オスラーの最後の社会的活動(1919年)

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1468 - P.1471

 オスラーは,7月12日に彼の70回の誕生日を迎えた.オスラーの親しい友人たちがロンドンに集まり,祝賀会を開いてくれたのに対し,オスラーは感慨をこめて70年の生涯を顧み,自分がこのような幸福な過去を持つことができたのは,多くの友人たちや弟子達のおかげであると,心からの感謝を述べた.

他科のトピックス

人工透析による精神病治療

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.1464 - P.1465

はじめに
 1977年6月,Wagemaker, Cade1)が「慢性精神分裂病治療における人工透析の応用」という報告を出して以来,この問題をめぐって多くの論議が行われ,賛否両論が相ついだ.
 筆者も,この問題について諸論文の紹介をすでに試みたが,その一文を執筆以後の新しい知見を含めて紹介してみたい.

紫煙考

各国の喫煙・禁煙事情

著者: 福田勝洋

ページ範囲:P.1472 - P.1473

 現在では多くの国々で喫煙を抑制する方向での喫煙コントロール活動が行われ,そのためにどんな対策をとるべきかに関するWHO専門委員会のガイドライン1)も出ているが,多くの対策は立法あるいはそれに代わる公的拘束力を必要としている.この種の活動の情報を国際的に収集し伝達する手段もまだ不十分な段階であるが,公的な活動については比較的よく収集しているInternational Digest of Health Legislationの最近4〜5年号と,WHO Chronicleの綜説などを参考に,海外での喫煙コントロールの現状をまとめた.公的な煙対策の喫情報は約30カ国ほどについてしか得られないが,少なくとも積極的に取り組んでいる国については見落としはないものと思われる.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

icon up
あなたは医療従事者ですか?