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雑誌目次

雑誌文献

medicina18巻3号

1981年03月発行

雑誌目次

今月の主題 肺癌—最近の知識

理解のための10題

ページ範囲:P.462 - P.464

肺癌の画像診断

X線所見の特徴

著者: 難波煌冶

ページ範囲:P.376 - P.380

 胸部X線写真の読影方法には色々な方法がある.たとえば肺野に表れた病影の形態を詳細に分析し,その実体を求めるという方法がある.これには数多くの症例を見,投影された病変に対する知識と病影を詳細に分析しうる経験が必要である.これに対し筆者らが行っている読影方法は病影と気管支,肺血管といった肺の既存構造との関係から,陰影の持つ病態を知ろうとする方法である.この方法は肺区域と気管支分岐の解剖学的知識さえあれば,経験はなくともある程度普遍的な読影ができると思われるからである.幸いなことに,肺という臓器には陰性造影剤として空気が充満しているために,太い気管支はair bronchogramとして気管支の走行を教えてくれるし,末梢側では血液の充満した肺血管の周囲には空気があり,肺血管影を浮き出させてくれる.
 このような読影方法をとるためには,肺区域と気管支分岐の解剖を知る必要があるが,気管支の分岐さえ知っていれば,肺動脈は気管支に随伴しており,肺静脈は区域間すなわち気管支と気管支の間,換言すれば肺動脈間を走行している.したがって気管支の分岐さえ知っていれば,動静脈の区別もできるわけである.

肺癌診断とCT

著者: 松延政一 ,   寺松孝

ページ範囲:P.382 - P.385

 1969年Hounsfieldらにより開発されたEMIscannerが世界最初のコンピュータ断層(CT)として登場して以来,各方面にわたるその臨床応用にはめざましいものがある.とくに頭部領域においては,従来のX線写真では診断しえなかった種種の病巣を描出しうるばかりか,灰白質,白質,脳室などの脳内構造もよく識別し,今やCTは脳神経領域の診断には不可欠な診断法として確立されているといえよう.しかし胸部領域では,CTのそれほどめざましい効用は報告されていない.実際,肺領域では従来のX線診断法が簡易で非常に有効であるため,それを超えるCTの診断的意味合いは少ないのも事実である.ここではCT画像の特徴の検討に基づいて,肺癌診断におけるCTの可能性と限界とについて言及する.

ゼロトモグラフィー

著者: 西脇裕

ページ範囲:P.386 - P.391

 肺癌診断法の進歩とその普及により,現在では肺癌か否かを診断することについては,きわめて向上している.しかし,その進展時期や進展様相など病態の把握となると,今一歩の観がある.末舛らは,臨床TNMと,外科病理学的TNM(P-TNM)との一致率は約50%である1)と報告している.記号化された,大雑把な進展時期の分類であるTNMの的中率でも,このような現況である.そこで,最近edge enhancement effectを有するゼロラジオグラフィーの断層撮影(ゼロトモグラフィー)を用いて,縦隔肺門リンパ節転移の読影や,肺野病変の解析を行い,進展時期,進展様相のより詳細な検討がなされるようになってきている2〜6)

気管支造影の特徴

著者: 小野良祐 ,   池田茂人

ページ範囲:P.392 - P.396

 Chevalier Jacksonが1918年に,硬性気管支鏡を用いてBismuth oxideを気道支内に吹き込み,気管支の形態をX線写真で分析したのが気管支造影のはじまりである.
 Métras1)が1948年に,選択的造影用のゾンデを考案し,1952年篠原2)がわが国にMétras法を導入し,ゾンデを改良し,それ以降気管支造影法は肺臓外科の著しい発達とあいまって普及進歩した.

アイソトープによる診断

著者: 飯尾正明 ,   鈴木恒雄

ページ範囲:P.398 - P.402

 現在の肺癌診断用アイソトープ(RI)は67Gaシトレイト,197Hg-グルタチオンにほぼ大別され一部で20T1が用いられている.67Ga-シトレイト(半減期77.9時間),197Hg-グルタチオン(半減期65時間)両方法とも定着して10年余になり,一時期57Co-ブレオマイシン,99mTc-ブレオマィシン,169Yb-シトレイトなどによる方法も検討されたが,半減期が長いためいつかその姿を消している.
 197Hg-グルタチオン法は1969年当院で197HgCl2に改良を加え開発したもので日常的な悪性腫瘍の鑑別診断の1つとして今日に至っている1)

肺癌の形態学的検査

気管支ファイバースコープの最近の進歩

著者: 池田茂人 ,   小野良祐 ,   栗原正英

ページ範囲:P.404 - P.408

 気管支ファイバースコープを世界で初めて開発したのが1966年,第1号機(図1)は,フレキシブルには違いないが,操作性もなく,尖端部も弯曲させることができない.その後,数々の改良に改良を加えて,1968年にほぼ市販されるものができた1).本年は当初より数えて15年,世界を席巻する自動車,カメラ,そして電子機器とともに,気管支ファイバースコープは,文字通り世界を制覇している(図2).
 しかしながら,その制覇を続けるためには,機器メーカーの改良に次ぐ改良とともに,われわれ気管支学にたずさわる医師たちの気管支に対する技術の普及と,向上と,そして倦むことのない努力が払われている.

生検

著者: 林忠清 ,   加藤治文 ,   於保健吉

ページ範囲:P.410 - P.414

 肺癌の確定診断は,肺の臓器特殊性から容易に組織診断が得られないため,細胞診,組織診の両面から確診を得る努力がなされている.組織型の判定により適切な治療法が決定されるが,各種生検法はそれぞれ適応と限界があり,疾患の種類と病態に応じ適宜選択して行わなければならない.

肺癌の病型と特徴

早期肺癌

著者: 河野通雄 ,   高田佳木

ページ範囲:P.416 - P.419

早期肺癌の定義
 早期肺癌とはどのような肺癌であるか,については以前から諸家により検討されてきた.現在では池田1)の提案した早期肺癌を肺門部と末梢部にわけた考え方が定着しつつある.すなわち,区域気管支より中枢側を肺門部,亜区域気管支より末梢側を末梢部とし,発生部位別に早期癌の定義を作成した.
 肺門部早期肺癌の定義は,切除した標本において,①区域気管支より中枢側に発生した肺癌である,②気管支壁内に限局している,③リンパ節転移,遠隔転移がない,としている.この考え方による早期肺癌は当然StageⅠに含まれるものであるが,TNM分類では気管分岐部より2cm以内に癌が及んでいた場合にはT3になりStageⅢに分類されることと矛盾している2).しかし,もし完全に切除できたなら気管分岐部から2cm以内に癌が及んでいてもよいのではないかと考えられている.

小細胞癌

著者: 渡辺昌平 ,   長尾啓一

ページ範囲:P.420 - P.421

 小細胞癌は全肺癌の10%を占めるが,最も予後が悪く,吉村らによる全国集計でその5年生存率は2%とされている1).実際の臨床の場では患者が症状を訴えて来診した時点ではすでに遠隔転移をきたしていることが多い.その進展の早さから外科的根治療法の望みは少なく,内科的治療が主役をなしている.また,小細胞癌の中でも,病態,予後に差異があり,病理組織学的再検討が行われた結果,日本肺癌学会組織分類では,燕麦細胞型(oat cell type)と中間細胞型(intermediatecell type)の2つの組織亜型に細分された2).本稿ではその特徴と問題点につき述べる.

肺胞上皮癌

著者: 富田正雄

ページ範囲:P.422 - P.425

名称
 いわゆる肺胞上皮癌については,1876年Malassezが剖検例で肺における多発性結節性のencephaloid carcinomaとして第1例を報告して以来,Musserが1903年に全肺野におよぶびまん性の肺悪性腺腫症として報告した.その後1953年Storeyにより157例,1955年Deckerにより155例,1966年Watsonにより265例が報告されている.
 名称についてもPrimäres Gallertcarcinoma derlung, Diffuse primares alveolar epithel carcinoma,pulmonary alveolar adenomatosis, Epithelization ofalveolar walls, Bilateral miliary carcinoma, Diffusebronchiolar carcinoma, terminal bronchiolarcarcinomaなどがあるが,1960年Liebowがbronchioalveolar carcinomaと命名して以来この名称が広く用いられるようになった.細気管支癌,細気管支肺胞上皮癌,肺胞細胞型腺癌などは同一疾患をさす.WHO分類や日本肺癌学会分類でも腺癌の一つとしている.

肺癌の合併症

肺癌の異所性ホルモン産生

著者: 阿部薫

ページ範囲:P.426 - P.427

 異所性ホルモン産生腫瘍として,異所性ACTH産生肺癌が世界ではじめて報告されたのは1961年である1).以来多くの症例が報告され,ACTH以外に腫瘍では各種のポリペプチドホルモンが産生されること,そしてこのようなホルモンを産生する腫瘍は肺癌に最も多いことが明らかにされている1).ここでは,肺癌における異所性ホルモン産生の頻度,その主な病態である各種の電解質異常,そして現在注目されている,臨床的にはホルモン過剰の症状,所見を示さない,無症候性異所性ホルモン産生腫瘍について述べてみたい.

癌性胸膜炎

著者: 泉三郎 ,   吉良枝郎

ページ範囲:P.428 - P.430

 肺癌を疑われた症例ではまず,その組織診断を下し,進行の程度を見きわめる必要がある.胸水の有無は肺癌の病期決定に際しては大きな問題となる.なぜなら胸水が癌性のものであれば病期III(TNM分類)となり,TやNの因子に関係なく,すでに外科手術の適応外ということになるからである.

癌性リンパ管炎

著者: 田村昌士 ,   小室淳

ページ範囲:P.432 - P.434

 悪性腫瘍の肺内転移のX線所見,病型のうちでリンパ管炎型を示すものは高度の呼吸困難を訴えるため,治療上重要であるばかりでなく,鑑別診断上も大切である.

癌性ニューロマイオパチー

著者: 古和久幸

ページ範囲:P.436 - P.437

 癌性ニューロマイオパチーとは癌の転移や浸潤,または腫瘍の直接圧迫によらない神経症状の総称として用いられている.
 1940年Denny-Brown1)による肺癌に伴う知覚神経炎の2症例の報告が,今日呼ばれている癌性ニューロマイオパチーの概念に相当する最も古い報告例の1つである.

肺癌の治療

手術療法

著者: 成毛韶夫

ページ範囲:P.438 - P.442

 わが国における肺癌の増加とともに,手術療法を受ける例が全国的に急増している.放射線療法や化学療法の進歩,それに免疫療法が導入されたが,肺癌の治療は何といっても手術療法に最も治癒の期待がもてるからである.すなわち"肺癌は可能な限り切除"し,そして集学的治療というのが現在の肺癌に対する治療法である.手術の安全性は確立され,手術療法もいわゆる集学的治療の中で,一方では拡大傾向へと向かい,他方では心肺機能に対する配慮や高齢者に対する肺切除範囲の縮小傾向が出てきている.癌外科の原則である機能を温存しながらしかも根治性を重視した,いわゆる気管支成形術という新しい術式も導入されてきた.

放射線療法

著者: 砂倉瑞良

ページ範囲:P.444 - P.445

 切除不能例の多い肺癌に対して,放射線治療は根治性をもった治療方法として評価されてきたが,その成績は不良である,治療成績向上のために,問題点と最近の知見についてふれてみたい.

化学療法

著者: 木村郁郎

ページ範囲:P.446 - P.447

 肺癌の内科的治療としての化学療法は今やようやく一般に認められる治療として成長しつつあり,化学療法に高感受性を有する他の2,3の悪性腫瘍に続いて治癒への手掛りをつかみはじめている.現在用いられている肺癌の化学療法剤にはcyclophosphamide,methotrexate,adriamycin,mitomycin C,procarbazine,vincristine,bleomycin,5-fluorouracil,neocarzinostatinなどがあり,必ずしも最近のものばかりでなく,また従来白血病,悪性リンパ腫に有効とされている薬剤の中に肺癌に有効なもののあることが判明してきた.そして近年多剤の組み合わせが種々検討され,肺癌といえども完全寛解の症例が散見されるようになった.以下筆者らの成績を中心に最近の知見を述べてみたい.

免疫療法

著者: 螺良英郎 ,   香川和夫

ページ範囲:P.448 - P.449

癌免疫療法への考え方
 癌免疫療法が,Mathé,MortonらによってBCG生菌による白血病,メラノーマで臨床効果があった報告に刺激されて,世界で爆発的ともいえるブームをよんで,ほぼ10年余り経た今日,1つの反省期に至っていると考えてよいであろう.ここでは肺癌免疫療法について個々のデータを紹介するよりも,現在の癌免疫療法についての全般的な考え方を反省してみることにする.
 もともと腫瘍免疫は実験動物腫瘍でかなり以前から研究が重ねられていたが,免疫生物学の研究領域が進むにつれて抗腫瘍免疫にあずかる細胞群が明らかにされるようになって,腫瘍免疫の基礎の考え方が著しく進展してきた.このような腫瘍免疫の基礎的研究の展開と,一方で活発となった臨床での癌免疫療法の展開との間には,その考え方にギャップが存在している.

集学的治療

著者: 仁井谷久暢

ページ範囲:P.450 - P.452

 集学的治療(multidisciplinary treatment)の理念は,疾病治療の向上達成を目指して,基礎,応用科学,臨床医学を問わず関連するあらゆる分野の専門家がそれぞれの知識,進歩を集約し,目的のために協同作業を行うことにある.この成果を臨床に反映させるためには,個々の患者の治療に際してその計画立案への各専門領域医師の参加と緊密な連携をはかるための組織化1),あるいは個別的にせよ連携の必要を認識することが重要である.
 現状では制癌への最良の方策が早期発見,早期手術にあることは謂を俟たない.

座談会

肺癌診療の最先端

著者: 池田茂人 ,   末舛恵一 ,   仁井谷久暢 ,   金上晴夫

ページ範囲:P.453 - P.460

 10数年前の気管支ファイバースコープの開発以来肺癌の診療は画期的な進歩をとげてきた.とくに近年喀痰の集細胞による細胞診,レーザによる早期診断や治療への応用など,さらに画期的なdynamic special reconstructorの話題など,斯界の権威を招いてお話しいただいた.

カラーグラフ 臨床医のための内視鏡—パンエンドスコープ

上腹部痛を訴えた例を検査して発見された病変

著者: 加藤一雄 ,   関東逓信病院・消化器内科

ページ範囲:P.466 - P.467

 腹痛は臨床上,最もしばしば遭遇する訴えであり,それだけに原因疾患も多岐多彩で,上腹部痛だけに限定しても,表のごとく各種の疾患が考えられる.
 診断をすすめるにあたり,まず問診により,①疼痛の発現が突発的か緩徐か,②疼痛が間歇的か持続性か,③悪心,嘔吐,排便排ガス異常を伴うか,④疼痛部位と放散痛の関係はどうか,⑤疼痛発現の原因と考えられる因子はないか,⑥既往歴はどうか,などを詳しく聞くことにより,かなり原因疾患を予測することができる.

図解病態のしくみ 消化器疾患・15

大腸憩室症(2)—臨床像と診断

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.469 - P.473

 先月号でも述べたように,食生活の欧米化に伴い,本邦でも左側大腸憩室が増加の傾向にあり,左下腹部痛,左下腹部圧痛,そして下血などの鑑別診断として大腸憩室症を考慮に入れる必要が生じてきた.先月号の大腸憩室の病態生理に続いて,本号ではその臨床症状および診断のポイントについて述べたい.

図解病態のしくみ 循環器疾患・3

高血圧性血管病変 その1

著者: 須永俊明

ページ範囲:P.475 - P.480

 高血圧性血管病変には,二つの重要な面がある.すなわち,本来,高血圧によって起こるか,または一部高血圧の発症あるいは持続の要因になっている動脈病変(主として小型動脈,ときに中型動脈も含む)および大型動脈の粥状硬化の促進因子としての高血圧によって生ずる粥状硬化の修飾病変とである.
 本稿では,前者の概要をのべる.

臨床薬理学 薬物療法の考え方・3

投与間隔のきめ方

著者: 中野重行

ページ範囲:P.481 - P.488

 有効血中濃度域のわかっている薬物の場合には,この領域内に血中薬物濃度が入るように投与量を設計することが,薬物療法の有効性と安全性を高めるための有力な手段となる.そのために,生体をコンパートメントとしてとらえ,生体内における薬物動態をコンパートメント内における動きとしてモデル化して理解することにより,最適投与量の設計を行うことが可能である.このような薬物投与設計の考え方と,いくつかの例題についての投与量の算出法について,前回までに解説した.話をさらに進めるために必要な,前回までに述べた薬物投与設計に欠かせない基本的薬物動態値に関する用語と,計算式の要約を,表1,2にまとめておく.
 今回は,薬物の「投与間隔のきめ方」について主としてとりあげるが,投与間隔(τ)は常に投与量(D)と密接な関係にあり,τだけを単独にとりあげることはできない.なぜならば,D/τが薬物の投与速度を表現しており,CssのレベルはD/τにより規定されているからである.

異常値の出るメカニズム・36

尿ケトン体およびケトーシス

著者: 河合忠

ページ範囲:P.489 - P.492

 ケトン体(ketone bodies)とは,アセトン,アセト酢酸,およびβ-ハイドロオキシ酪酸を総称したものである.それらの構造式は図1に示すとおりで,アセト酢酸とβ-ハイドロオキシ酪酸はかなり強い有機酸であって,血中では遊離酸としてではなく,塩の形で存在している.

臨床講座=癌化学療法

ヌードマウスと癌化学療法

著者: 井上雄弘 ,   小川一誠

ページ範囲:P.493 - P.496

 1962年に突然変異による無毛で,胸腺のないマウス(ヌードマウス,nude mouse)が発見されて以来,その免疫不全状態を利用して種々の分野で研究に応用されている.癌化学療法の分野では,人癌の移植が可能であることを利用し,新しい抗癌剤のスクリーニング(選別)や実験癌化学療法などに用いられている.本稿では癌化学療法の分野におけるヌードマウスを用いての研究の現状および将来の問題点について述べる.

神経放射線学

炎症性疾患

著者: 前原忠行

ページ範囲:P.509 - P.517

 中枢神経系の炎症性疾患あるいは感染症の病因としては,細菌性,真菌性,ウイルス性および寄生虫性のものが含まれる.
 細菌性のものはさらに化膿性と非化膿性とに分けられ,前者はブドウ球菌,髄膜炎菌,連鎖球菌,肺炎球菌などの化膿性細菌による化膿性髄膜炎,脳室上衣炎,硬膜下蓄膿や脳膿瘍を含み,後者は結核菌による肉芽腫性髄膜炎および結核腫が代表的なものである.

腹部単純写真の読み方

腹腔内遊離ガス

著者: 平松慶博 ,   甲田英一

ページ範囲:P.519 - P.523

 平松 腹部単純写真の基本は立位と臥位の2枚ですが,とくに急性腹症などが疑われるときには胸部の写真も必要になります(vol. 18 no. 1「撮り方と読み方の基本」参照).

画像診断と臨床

肝疾患(3)

著者: 能勢俊一 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.525 - P.530

症例1
 患者 T. N. 35歳 女性
 現病歴 Bence-Jones蛋白κ-typeの多発性骨髄腫.昭和40年頃の発症.49年に第XI胸椎圧迫骨折,また胸椎のtumorを手術した後,脊髄損傷にて,以後下半身麻痺.内科的に当初メルファランおよびプレドニゾロンにて治療を行ったところ,出血性膀胱炎を起こしたため以後サイクロフォスファマイド,プレドニゾロンにて治療.最近,胸壁帯状痛が出現したため胸部のCTスキャンを施行した.

連載 演習

目でみるトレーニング 46

ページ範囲:P.531 - P.537

外来診療・ここが聞きたい

眼底検査と眼底出血

著者: 松井瑞夫 ,   西崎統

ページ範囲:P.538 - P.542

症例
 患者 M. T. 63歳 主婦
 現病歴 数年前より高血圧(160/100mmHg)を指摘され,近医のfollow upを受けていた.約3ヵ月前に複視に気づき,眼科を受診したところ右眼底出血を指摘された.その後内科的な精査をすすめられて来院した.なお,高血圧に対してはレセルピンとマイナー・トランキライザーの投薬を受けている.

medicina CPC

尿路結石を長年患い,突然黄疸の出現をみた58歳女性の例

著者: 桜井英夫 ,   岡野匡雄 ,   新田義朗 ,   相磯嘉孝 ,   唐木一守 ,   飯野史郎

ページ範囲:P.544 - P.555

下記の症例を診断してください
症例 58歳 女性 主訴 黄疸
既往歴 19歳胸膜炎,虫垂切除術,昭和44年1月膀胱結石の手術,9月胆石症の手術,以後,毎年尿路結石で泌尿器科通院

プライマリ・ケア

集団検診の諸問題(1)

著者: 梅園忠 ,   山手慎吾 ,   日野原重明

ページ範囲:P.558 - P.563

 日野原(司会) 今日は,「集団検診とその諸問題」というテーマでお話をうかがいたいと思います.
 そもそも日本の集団検診というものは,戦前の結核が非常に猖獗をきわめた時代,さらに終戦後でも,結核が死因の第1位であった時代に,結核検診というものをきっかけに非常に大きく伸びて,今ではその普及はおそらく世界にその比を見ないと思われます.現在では結核がなくなり,脳卒中,心臓病がこれに代わりましたが,結核検診の手法をそのまま広げて集団検診をつづけていこうという厚生省の方針,ならびに一般の地域の検診システムのスタイルが,ある程度完成されたということになっています.

Clinical topics

多発性骨髄腫の治療—最近の傾向

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.498 - P.499

 多発性骨髄腫は,かつてはきわめて稀な病気であるとされていた.しかし血清蛋白の検査,とくに免疫電気泳動の一般化に伴って,初期の多発性骨髄腫の診断が可能となり,疾患の経過が長期に及ぶことなどとも和まって多発性骨髄腫は現在では頻度の点でHodgkin病よりも多く,non-Hodgkin悪性リンパ腫に迫りつつある.それに伴って,治療に関しても著しい進歩がみられるようになった.かつて多発性骨髄腫に対する化学療法がほとんど行われなかった時代には,本疾患患者の平均寿命は診断時から7〜9ヵ月,症状の発現時から17〜19ヵ月とされていたのが,現在では数年にわたって生存する症例が稀でなくなった.
 多発性骨髄腫の治療の進歩の上で重要な役割を果たしたのはメルファランmelphalanの開発と大量間歇療法の導入である.メルファランは長い間わが国では入手できず,本症を治療する機会が多いものにとって渇望の薬剤であったが,最近漸く市販されるようになった.

他科のトピックス

超音波内視鏡

著者: 福田守道

ページ範囲:P.556 - P.557

 パルス波超音波反射法による軟部組織の映像化は超音波診断法(Bモード法)として広く普及をみつつある.腹部領域では主に肝胆膵の診断に利用され,胃,腸管のような管腔性臓器に関しては,進行癌を除き一般に適応とみなされていなかった.最近になり解像度の良好な電子スキャン装置が製作されるにおよび,胃壁などの構造を描出しうることが認められてきたが,依然として適応は限られたものであった.
 これに対し内視鏡を利用して走査部を直接胃腔内に挿入し,胃壁病変あるいは胃に接して存在する臓器の病変を検出,診断に利用しようという試みがなされるようになった.すなわち胃内腔の光学的観察と周辺の超音波診断を同時に可能にしようというもので,超音波内視鏡(echoendoscope)がそれである.

オスラー博士の生涯・92

オスラーの生涯の終焉

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.502 - P.506

 オスラーは,1919年7月の満70歳の誕生日を迎えたあと,体力が徐徐に衰えるのを自ら感じて,今までひきうけていた公的仕事をできるだけ早くきるように努力し,また自分の仕事を整理しはじめた.9月に入ってからは,しつこい咳の発作で臥床することになり,11月になると自宅で付添いの看護婦をつけて療養することになった.
 人と長話をすると咳込むので,オスラーには読書が一番の心の慰めとなった.12月に入ると病状は進行し,胸痛を起こしたりして肋膜炎が疑われ,胸腔穿刺が行われた.その間オスラーは,主治医の参考になるように自分で病床メモを書き記していた.

天地人

プロとアマ

著者:

ページ範囲:P.501 - P.501

 プロとアマの違いを,寄席の大喜利風に.
 「滅法強いのがプロ,弱いのがアマ」
 確かに将棋などではそうである.アマのトップクラスでも,プロの中堅に角落がいいところであろうし,プロの登竜門である奨励会へは,小学校の高年から中学校の低年でアマの四〜五段,アマ名人戦で県代表クラスでなくては入れない.
 しかし,社会人野球のエースがプロに転向した途端に,最多勝利投手になったり,学生横綱がアッという間に三役入りするのをみていると,少なくともスポーツの世界では,このことは当てはまらない.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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