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雑誌目次

雑誌文献

medicina18巻6号

1981年06月発行

雑誌目次

今月の主題 膠原病—最近の考え方 膠原病—今日の概念

臨床の立場から

著者: 塩川優一

ページ範囲:P.930 - P.931

膠原病という名称について
 膠原病がKlemperer(1942)によりはじめて提案されて以来,すでに40年を経た.その間,その概念,それに属する疾患の種類も大きく変化してきた.すでに諸外国では膠原病を,①結合組織病(connective tissue disease)という新しい疾患群に所属させる,②リウマチ性疾患(rheumaticdiseases)の中に入れて,リウマチ学(rheumatology)で取り扱う,③免疫病(immunological diseases)としてまとめて,臨床免疫学(clinical immunology)で取り扱う,という3つの行き方が行われている.
 以上のうちで,結合組織病という新しい名称はわが国ではまだ耳慣れていない.また,もし膠原病の代りにこの名称を用いるなら,種々の結合組織の代謝異常による疾患と区別するために,「炎症性結合組織病」という長い名前で呼ばなければならないであろう.

病理学的な立場から

著者: 京極方久

ページ範囲:P.932 - P.934

膠原病とは―その本態観
 膠原病(collagen disease)という名前はKlempererにより提言されたものであるが,その後,免疫学,病理学,病態生化学の進歩に伴って,これらの疾病がcollagen fiberの病気などというのはおかしいとしてあまり用いられなくなってきた.その後これらの疾患群は,「自己免疫病」的要素の濃いものが多いとしてそちらのほうに入れられたり,臨床的には「リウマチ」(筋,関節などの痛み)病群の中枢を占めるものとして取り扱われてきた.また,膠原線維だけではない,血管も含めた間葉系全体の病変であるとして,「結合織病」という名前を用いる人も増えてきた.しかしながら,自己免疫病には溶血性貧血や橋本甲状腺炎も入っているし,リウマチ症候群には痛風なども入り,結合織病というとMarfan症候群なども入るのかという話しになって,どの名前を使ってもこの疾病群をハズレルもののほうがむしろ多くなる傾向があり,結局は昔からの"膠原病"という名前は,やはりこれらの仲間の特徴を実に微妙に上手に表現した捨てがたい魅力ある言葉として今も使われている.
 それらの代表としては,慢性関節リウマチ(RA),強皮症(PSS),全身性エリテマトーデス(SLE),多発性動脈炎(PN),皮膚筋炎および多発性筋炎(DM-PM)とリウマチ熱(RF)の6疾患が普通入れられる.

膠原病の病態と免疫異常

液性免疫

著者: 東條毅

ページ範囲:P.936 - P.939

 膠原病という病名には,独得のニュアンスが含まれている.これは臓器病理学では律することができなかった"系",システムの炎症を意味する歴史的な響きがこめられているからである.さらにその背景に,何か共通した免疫異常が期待されてきたためでもある.
 膠原病を提唱したKlemperer自身は,病因論にはまったく触れることがなかった.しかしSLEを中心とする免疫病態の研究によって,膠原病は病因論の観点から,自己免疫疾患に分類されることとなった.

細胞性免疫

著者: 本田正明 ,   坂根剛

ページ範囲:P.940 - P.944

 自己免疫病は,自己抗体ないしは自己抗原による細胞性免疫が病因的に関与する疾患で,その原因については,今日なお明らかにされていないが,ウイルス感染,遺伝素因,ホルモン異常,および免疫学的要因が複雑に絡みあって,病因的役割を果たしていることを示唆する成績が集積されつつある.さらに,近年のT細胞,B細胞の研究からは,T細胞の減少,とりわけサプレッサーT細胞の減少によって,B細胞の機能逸脱ないし自己抗体の産生という新しい思考過程が脚光を浴びてきている1).すなわち,生体では健康者においても自己免疫反応が絶えず起こっているにもかかわらず,サプレッサーT細胞によるバランスのとれた対応によって,生体の恒常状態が維持されているのに対し,自己免疫疾患状態では,免疫寛容の主役をなすサプレッサーT細胞の機能が低下して,必然的に自己体組織成分と反応する細胞クローンの増生が促され,自己抗原に対する細胞性免疫反応および自己抗体の産生が起こると考えられている.ここでは全身性自己免疫病の原型ともいえる全身性エリテマトーデスを中心にして,その細胞性免疫異常を述べ,さらに慢性関節リウマチのそれについても最近の動向に言及してみたい.

膠原病へのアプローチ

ベッドサイドでのみかた

著者: 恒松徳五郎

ページ範囲:P.946 - P.948

 膠原病(collagen disease)とはKlempererにより病理学的に体系づけられたもので,全身の結合織基質のフィブリノイド壊死を主病変とする系統的疾患である.コラゲンまたはコラゲン血管系が結合織と同意義的に用いられたため膠原(コラゲン)病と名付けられた.病変がコラゲン線維に限定されるものでないので近年は結合織疾患として把握される傾向である.膠原病をその病態生理的にみるとまだ解明されない点は多いが,種々の免疫血清学的異常,ことに自己抗体が見出されることが多いので,自己免疫性疾患であるとするのが一般的である.すなわち,自己抗原と血清または細胞性自己抗体による免疫反応に基づく炎症性疾患である.上記の観点を踏まえて,ベッドサイドでの膠原病の診断に際しては次のごとき大きい特徴をまず念頭に置いておくべきである.
 1)膠原病は系統的すなわち多臓器障害症状を示す.

検査のすすめ方

著者: 安倍達

ページ範囲:P.950 - P.952

 全身性エリテマトーデス(SLE)の臨床的特徴は,多臓器障害性の炎症疾患と要約できる.また免疫学的特徴は抗核抗体をはじめとする多彩な自己抗体が出現する.さらに特定な臨床症状と出現自己抗体の間には密接な関連がみられる.したがってSLEを診断するには綿密な問診と,注意深い診察によって,臨床的特徴をさがし出すことである.この際問診が非常に大事である.たとえば,SLEの診断基準にある脱毛,口内潰瘍,日光過敏などは,本人が気付いていないこともあるので,いろいろな観点からの問診が必要となる.

膠原病の診断基準

診断基準の功罪—使い方の注意点

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.954 - P.956

診断とは
 膠原病の病因や発症機序は不明の点が多い.しかも膠原病各疾患相互間の臨床症状,検査所見には多分に共通する部分がある.したがって典型例以外の膠原病各疾患を相互に鑑別し,適確に診断するためには,各疾患の詳細についての十分な専門知識が要求される.しかし,各膠原病疾患を臨床的に,病理組織学的に,あるいは臨床免疫学的にどのように把握するか,専門家の間でも必ずしも見解が一致しているとはいえない.そこで膠原病各疾患をいろいろな施設間で比較しうるものにするには,一定の基準が必要となる.
 そもそも診断というのは,病因や発生病理と病態生理をまとめて,ある患者に現在いかなる異常が存在しているかをまとめたものである.正確で適切な診断を行うためには,患者の症状を医学的に正しく把握し,生じうる種々の異常を洩れなく考慮する段階的な思考過程が必要である.そのためにはまず患者の訴える症状を整理し,次にその症状を解析することで診断へと到達することができる.

診断基準一覧表

ページ範囲:P.957 - P.968

A項目
1.朝のこわばり
2.少なくとも1関節の運動痛または圧痛
3.少なくとも1関節の腫脹
4.少なくとももう一つの他の関節の腫脹
5.体の両側の同じ関節に同時に発生した対称性関節腫 脹
6.骨突出部,伸側表面関節付近の皮下結節
7.慢性関節リウマチの定型的X線像
8.凝集反応(リウマトイド因子)が陽性であること
9.関節液ムチン含量の少ないこと
10.定型的な滑膜病理組織像
11.皮下結節の定型的病理組織像

膠原病とその周辺疾患

全身性エリテマトーデス

著者: 横張龍一

ページ範囲:P.970 - P.971

 全身性エリテマトーデス(SLE)は,原因不明の多臓器障害性の炎症性疾患である.SLE診断基準には,多彩な臨床症状と検査所見が列記されている(診断基準の項p961参照).SLEの原因(etiology)は不明であるが,病因(pathogenesis)は,ある程度明らかにされてきており,診断基準にあげられた諸項目の多くに,自己抗体あるいはそれによる免疫複合体が関与していることが知られてきた.

強皮症

著者: 茆原忠夫

ページ範囲:P.972 - P.973

 強皮症は,結合組織と小血管のコラーゲンの増加を特徴とする全身性の多臓器疾患であり,その病変が皮膚に最も顕著であることより(腫脹,硬結,肥厚)強皮症(scleroderma)と呼ばれているが,皮膚症状が欠如しているにもかかわらず臓器病変の目立つscleroderma sinesclerodermaのあることより,最近全身性進行性硬化症(progressive systemic sclerosis, PSS)と呼ばれることが多い.慢性関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE)の次に多いリウマチ性疾患であり,他の多くのリウマチ性疾患と同様,女性の罹患率が高く,男性の約3倍である.どの年齢でも発症しうるが,20歳台から50歳台にピークがあり,小児の発生例は少ない.遺伝性はないが,2例以上の家族内発症は散発的に報告されている.
 強皮症の分類はRodnanら1)によると表のごとく分類されているが,ここでは全身性進行性硬化症について述べたい.

多発性筋炎と皮膚筋炎

著者: 西海正彦 ,   伊藤宗元

ページ範囲:P.974 - P.975

 多発性筋炎(以下PM)と皮膚筋炎(以下DM)につき最近の考え方および進歩を中心にして述べる.本論文で不足の部分については他の総説1,2)を参照されたい.

多発性動脈炎

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.976 - P.978

 多発性動脈炎は,中・小動脈の壊死性血管炎を特徴とする膠原病であるが,その診断は生検材料による病理組織学的所見によるところが多く,臨床診断は必ずしも容易ではない.中・小動脈の血管炎をきたす疾患は,臨床的に以下の4つに分けて考えると理解しやすい1).①多発性結節性動脈炎(polyarteritis nodosa, PAN),②アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatosis and angitis,AGA),③Wegener肉芽腫,④他の膠原病に伴う血管炎(SLE,悪性関節リウマチ,強皮症など),ここではPANを中心に診断のすすめ方,臨床像,検査所見,治療,予後について述べ,AGA,Wegener肉芽腫についても若干ふれたい.

Sjögren症候群

著者: 美田誠二 ,   入交昭一郎

ページ範囲:P.979 - P.981

 Sjögren症候群(以下SjS)は,1933年スウェーデンの眼科医Henrik Sjögrenによりはじめて報告された疾患で,涙腺と唾液腺の分泌低下(乾燥症候群sicca complex,sicca syndrome)を特徴とし,Dry eyeを主訴とする乾燥性角結膜炎(Keratoconjunctivitis sicca,KCS)と,Dry mouthを主訴とする口内乾燥(Xerostomia)を起こしてくる慢性炎症性疾患である.従来,SjSは,①乾燥性角結膜炎,②口腔内乾燥を伴う耳下腺腫脹,③慢性関節リウマチ(RA)を特徴とする症候群と記載されていた.しかしRAを合併しない例も多数あり,今日これらは前述したようにSiccacomplex,Sicca syndromeあるいはSicca aloneと称され,SjSの疾患の本質を検索する上で,最も重要な対象とされている.
 一方,RAや全身性エリテマトーデス(SLE),進行性全身性硬化症(PSS)などを合併するものは,Sicca complexのみのいわゆる乾燥症候群(実際には,軽度の多関節炎,レイノー現象など1,2の症状を合わせ持つものを含めることがある)とは,病像や免疫遺伝学的に若干異なることを指摘する報告1)もある.

Overlap症候群とMCTD

著者: 宮脇昌二 ,   古田嘉男 ,   小豆沢秀夫

ページ範囲:P.982 - P.984

Overlap症候群
 古くから多数の膠原病患者の中には,2種類の膠原病の病像が重複して認められることが報告されている.すなわち,全身性エリテマトーデス(SLE)と慢性関節リウマチ(RA),SLEと強皮症(SD),SDと皮膚筋炎(DM)または多発性筋炎(PM),SLEとPM,RAとSD,SLE-SD-PMの3者などの重複であり,これらはOverlap症候群(以下O-Lと略)と呼ばれ,今日に至っている.O-Lの病態は不明な点が多いが,各種膠原病の根底に存在する,Klempererが報告した病理所見のような,共通因子を探る上での格好の材料として,重視されている症候群である.

成人発症スチル病

著者: 谷本潔昭

ページ範囲:P.986 - P.987

分類
 若年性関節リウマチ(juvenile rheumatoid arthritis,JRA)は単一の疾患ではなく,いくつかの疾患群の総称名であり,いろいろな分類方法があるが,一般には,全身型(systemic type,Still病),少関節炎型(pauciarticular type),多関節炎型(polyarticular type)に分けられる1),このうち多関節炎型が,成人の慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA)に相当する疾患であり,慢性の経過をたどり,後に骨破壊や変形を残すことが多く,リウマチ反応も陽性を示すことが多い.少関節炎型は,大関節に好発し,虹彩炎を伴うことが多く,抗核抗体もしばしば陽性となり,稀に眼科的には失明の危険を伴うこともありうるが,成人ではこの型の関節炎が存在することは未だ知られていない.

リウマチ多発筋痛

著者: 近藤啓文

ページ範囲:P.988 - P.989

リウマチ多発筋痛とは
 リウマチ多発筋痛(polymyalgia rheumnatica,以下PMR)は頸部,肩,骨盤帯の痛みとこわばりを主症状とする症候群で,高齢者(50歳以上)にみられ,少なくとも1カ月以上持続し,筋力低下を伴わず,赤沈亢進(50mm/時間以上),少量の副腎皮質ステロイド(プレドニソロン10mg)の治療ですみやかに軽快することを特徴とする1)

好酸球性筋膜炎

著者: 宮城憲一 ,   井上光洋

ページ範囲:P.990 - P.991

 1974年にShulman LEは,外見的には強皮症様の所見を有するが,生検では皮膚に異常がなく,筋膜にびまん性炎症が認められる2例を,新しい結合織疾患,"diffuse fasciitis with hypergammaglobulinemia and eosinophilia:a new syndrome?"として報告した1).翌年,Rodnan GPらは筋膜に好酸球の浸潤を認める点を強調して,同様の症例を"eosinophilic fasciitis"として報告している2).これ以前にもこのような症例はあったと推測されているが6),以来,リウマチ学および皮膚科学の分野でアメリカを中心に多くの症例報告があり,わが国でも現在までに5例の報告がみられる.本稿では今までに明らかにされた本症の知見についてまとめてみたい.

膠原病の臓器病変のみかた

皮膚病変

著者: 植木宏明

ページ範囲:P.993 - P.996

 膠原病は古くより全身の結合組織を広範囲に侵襲する疾患として理解されており,その中でも皮膚は最も豊富な結合組織に恵まれている点からも,膠原病は皮膚を場として多彩に,かつ華やかに展開される.膠原病の皮膚病変は早期から末期に至るまで重要な所見を提供し,早期診断上も,また本症の発生病態や原因を探る上からも見落されてはならない.しかし一方で,膠原病特有の皮膚病変というものは存在せず,各疾患ごとにそれぞれの特徴を示しているわけである.

関節病変

著者: 橋本明

ページ範囲:P.998 - P.1001

 関節病変は程度の差こそあれ,ほとんどすべての膠原病に共通してみられる臓器病変の一つで,その特徴的な臨床所見を的確に把握することは,原病の診断上,きわめて重要な意義を有する.
 関節病変の診断にあたっては次の諸点に留意する.

呼吸器病変

著者: 中山昇二

ページ範囲:P.1002 - P.1004

 膠原病は全身の血管,結合織をおかす系統疾患であり,肺も,血管,結合織に富む臓器であるので,膠原病諸疾患の経過中に,肺にも膠原病固有の炎症過程に基づく病変が生ずることが当然考えられる.事実,膠原病の呼吸器病変の頻度は高く,診断上も重要である.
 そこで膠原病6疾患の肺,胸膜,心膜病変につき胸部X線像を中心に診断のポイントについて述べる.また膠原病の胸部X線像は必ずしも特異的な像を示さないので,これと鑑別すべき疾患について検討したい.

心血管病変

著者: 伊東盛夫 ,   山口雅也

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 膠原病は,多臓器障害をきたす全身性炎症性疾患であり,心血管系の異常も高率に発症する11,17).古典的膠原病には,リウマチ熱,全身性エリテマトーデス(SLE),全身性硬化症(PSS),結節性多発性動脈炎(PN),多発性筋炎(PM),皮膚筋炎(DM),および慢性関節リウマチ(RA)が含まれる.このなかで,心臓病変が最も顕著にみられるリウマチ熱については,すでによく知られているので,ここではそれ以外の膠原病について述べる,リウマチ熱以外の膠原病のなかでは,SLEが一般人口における有病率が最も高く,かつ心血管病変も顕著であり,従来から病理学的,臨床的研究が多数集積されている5,12).そこで,まずSLEについて比較的くわしく述べ,それと比較しつつその他の膠原病について解説する.また,近年注目されているOverlap症候群とmixed connective tissue disease(MCTD)についても触れる.
 表1に,文献および筆者らの成績に基づいて,これらの膠原病において臨床的に認められる心血管病変のおよその発現頻度の比較を示す.どの膠原病においても,大動脈やその分枝の大きい動脈,あるいは静脈系の障害はみられないか,みられても稀であり,本稿では心臓異常に重点をおいて述べる.

腎病変

著者: 長沢俊彦

ページ範囲:P.1010 - P.1011

 膠原病とその近縁疾患は,腎病変の立場からみると,表1に示す3つの群に分けることができる.一方,膠原病の腎病変は糸球体病変が最も多いが,血管,尿細管,間質にもそれぞれ単独,もしくは組み合わせによる病変を生じる.これらの病変により起こりうる腎症候を表2に示すが,その頻度は糸球体病変を反映して,1)から5)までのいずれかの症候を呈することが多い.

消化管病変

著者: 保科博登 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.1012 - P.1014

 膠原病の消化管病変はその頻度,病像,病理学的所見そして疾患に占める臨床的意義が疾患によって異なる.たとえば強皮症(PSS)ではその出現頻度は最も高く,かつ疾病特異的所見が多いことから,本症の早期診断ならびに確定診断上重要である.一方,全身性エリテマトーデス(SLE)や多発性動脈炎(PN)では頻度はPSSについで高いが,疾病特異性は少ない.しかし,治療および予後上その認識は重要である.なお,膠原病の消化管病変で注意すべき点は,治療による修飾である.すなわち,どこまでが疾患自体による変化で,どこからが治療による変化かをみきわめることも大切である.以上の2点をふまえて古典的膠原病6疾患の消化管病変について解説する.

神経病変

著者: 古明地智 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.1016 - P.1017

 膠原病は多臓器障害性の全身性炎症疾患である.したがって,神経障害も主要病変の一つになるが,その頻度や内容は膠原病6疾患ごとにかなりの差がみられる,中枢神経障害は全身性エリテマトーデス(SLE)(25〜75%〉で一番高率で,ついで,結節性多発性動脈炎(PN)(20〜30%)で多くみられる.リウマチ熱(RF)では小舞踏病が有名であるが稀である.それ以外の疾患では原疾患に基づくものは一般にはない.一方,末梢神経障害はPN(30〜50%)で最も高率にみられ,ついで慢性関節リウマチ(RA)とSLEで約10%以下に観察されるが,強皮症(PSS)ではごく一部症例に限られる.皮膚筋炎・多発性筋炎(DM-PM)ではきわめて少なく,RFではほぼ皆無といってよい.また,神経病変の占める臨床的意義も個々の疾患で異なっている.

座談会

膠原病の治療と予後

著者: 市川陽一 ,   水島裕 ,   阿部重人 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.1019 - P.1027

 膠原病の治療も,その疾患概念の変化,疾患の本質の究明と相まって,大いに進歩してきた.新たな各種薬剤の開発をはじめとして,病気の根本治療への試みが積極的にすすめられている.しかし一方で患者数はむしろ増加傾向にあるといわれ,より一般的な形での対応が迫られている.そこで本座談会では,臨床の第一線で活躍中の諸氏に,膠原病の治療上の問題点につき,実際的な側面からお話し合いいただいた.

理解のための10題

ページ範囲:P.1028 - P.1030

カラーグラフ 臨床医のための内視鏡—パンエンドスコープ

食道のさまざまな変化

著者: 船冨亨

ページ範囲:P.1034 - P.1035

 細径前方視鏡の検査が多くなるにつれて,食道観察の機会も必然的に増加する.主な目的が胃・十二指腸であっても,食道をなおざりにはできない,ただ,やたらと時間をかけるのも被検者にとっては苦痛となる.

図解病態のしくみ 消化器疾患・17

胆石(1)—コレステロール結石の発生機序

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.1037 - P.1042

 胆石Gallstoneは,大別してコレステロール結石Cholesterol Stonesとビリルビン系結石Pigment Stonesの2つに分類することができる.この2大分類のうち,コレステロール結石は,欧米では最も頻度が高く胆石全体の約70%を占める.一方,ビリルビン系結石はアジアに多く,日本でもかつては,大部分の胆石はビリルビン結石(Calcium Bilirubinate)であった.しかし,最近日本でもコレステロール結石が比較的多くなり,とくに都市におけるコレステロール結石の頻度は急激に増加してきたし,将来さらに増加することが予想される.この増加の原因としては,食生活や生活様式の欧米化が考えられ,病因論と考え合わせて興味深い.
 このコレステロール結石の発生機序が最近明らかになり,その発生機序に基づく合理的治療としてケノデオキシコール酸(CDCA)やウルソデオキシコール酸(UDCA)が登場し,胆石症の内科的治療が可能になった.

図解病態のしくみ 循環器疾患・6

食塩と高血圧との関係

著者: 須永俊明

ページ範囲:P.1043 - P.1047

 食塩と高血圧との関係は,疫学の上からも,また臨床上も,ことに降圧療法に関連してなお,中心的な役割を果たしているようである.しかし,一方では,まだ両者の関係には,不明な点もいくつか残されている.

異常値の出るメカニズム・39

細菌尿

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 正常尿は本来無菌であるが,尿道や外性器から上行してくる細菌によって汚染されるため,通常の方法により排尿された試料では少数の細菌を混入している.外性器や尿道における正常菌叢は,解剖学的に近接している腸管に由来する腸内細菌が主体で,とくに大腸菌が多い。正常尿にみられる以上に多数の細菌の検出される場合を細菌尿と呼んでおり,尿路感染症に伴ってみられる.

臨床講座=癌化学療法

癌免疫療法の現況 その1

著者: 江崎幸治 ,   岡部健一 ,   小川一誠

ページ範囲:P.1053 - P.1056

 1969年 Mathéが小児急性リンパ性白血病患者にBCG免疫療法を報告1)して以来,いく多の臨床治験がなされ,免疫療法が,手術,化学療法,放射線療法につぐ癌治療の第4の位置を得つつあるとはいえる.しかしながら,臨床効果の点でいまひとつ確定したものが得られていないのも事実である.本章では,免疫療法の意義,種類,問題点などについて概説し,次号以下で,各種悪姓腫瘍における具体的成績について述べる.

神経放射線学

脊椎・脊髄疾患(最終回)

著者: 町田徹 ,   前原忠行

ページ範囲:P.1085 - P.1092

 脊椎・脊髄疾患に対する検査法は,単純撮影と脊髄造影が主である.もちろん,血管性病変については血管撮影が不可欠であるが,その必要性は頭蓋内疾患の場合に比べて低い.またCTも,脊髄疾患に関してはひとつの補助診断法としての役割を果たすに過ぎないようである,非常にX線吸収値の高い骨組織に囲まれた脊髄自体をCTで描出することは大変困難で,クモ膜下腔に注入された造影剤による陰影欠損として脊髄の形態を判断しているのが現状である.しかし,CT装置の改良,発達はめざましく,近い将来,造影剤を用いなくとも脊髄自体を描出することが可能になるものと思われる.
 以下,各疾患別に症例を供覧し,簡単な解説を加える.

腹部単純写真の読み方

腹腔内液体貯留

著者: 平松慶博 ,   水野富一

ページ範囲:P.1093 - P.1098

 平松 今回は腹腔内の液体貯留のX線診断について解説していきたいと思います.一般に液体貯留をみるには背臥位の写真を読むことになりますが,その所見には,少量の液体貯留から大量まで,特徴的なものがいくつかあります.
 まず少量の液体貯留の所見について解説していただけますか.

画像診断と臨床

肝疾患(5)

著者: 北島武之 ,   黒田敏道 ,   川上憲司

ページ範囲:P.1099 - P.1104

症例1
患者 Y. S. 60歳 男性
主訴 上腹部痛,発熱

連載

目でみるトレーニング 49

ページ範囲:P.1105 - P.1111

外来診療・ここが聞きたい

肝障害を伴う再発性胃潰瘍

著者: 大貫寿衛 ,   赤塚祝子

ページ範囲:P.1060 - P.1064

症 例
患者 M. K. 50歳男性,公務員
現病歴 10年前に健康診断で胃潰瘍を指摘され来院,以来通院加療しているが,2年に1回くらいの割で再発をくり返し,軽い肝機能障害も併発している.性格は非常に神経質で,胃内視鏡検査の際,必ずジアゼパム投与を必要とする.アルコール(-),煙草15本/日

プライマリ・ケア

在宅ケアの実践と問題点(2)

著者: 萱場治 ,   岸本節子 ,   井出久 ,   鈴木荘一

ページ範囲:P.1114 - P.1119

 鈴木 では次に岸本さんに,保健婦さんの目を通してみた「在宅ケア」の現実と問題点をご指摘いただきたいと思います.

Clinical topics

最近の酸素療法

著者: 芳賀敏彦

ページ範囲:P.1058 - P.1059

 酸素が医療に用いられるようになってからの歴史は古い.しかし,近代呼吸管理が血液ガス測定の簡易化(電極による正確な,しかも短時間での測定)を伴って登場してからはたかだか10余年にしかならないが,これらの測定法を通じ,また呼吸器疾患の機能的理解と相まって酸素療法は,はなはだしく進歩した。

他科のトピックス

最近の消化管吻合器とその問題点

著者: 中山隆市

ページ範囲:P.1066 - P.1068

 消化器手術の目的は疾患の良悪を問わず,経口摂取の安全な再開をもって第1とする.そのためには縫合不全の防止と手術侵襲の軽減のため手術時間の短縮が重要な因子となる.したがって,消化器手術における器械吻合の意義は手術の安全性,確実性の追求と手術の簡便化に求められる.
 以下,便宜上,吻合器とは消化管内腔の吻合を,縫合器とは断端閉鎖を目的とする器械と仮りに定義し使用する.

オスラー博士の生涯・95

教師と学生(2)—1892年ミネソタ大学での講演の続き

著者: 日野原重明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.1070 - P.1074

 William Oslerは,1892年にはミネソタ州立大学に赴いて,上記の題で医学生に講演した.
 前号の内容は,大学における教育の諸問題をとり上げて訴えた講演の一部である.その続編としての本号には医学徒・医師としての生きかたを示したものである.

天地人

つき合い酒

著者:

ページ範囲:P.1069 - P.1069

 人間には,さまざまな生き方,考え方がある.そういう人間同志のつき合い方,すなわち自分と他人との関係ほどむずかしくて,また大事なものはない.一生のうちに接触する他人様の数に多寡はあっても,私ごとを含めた日常生活で,よほどの変人でないかぎり,この「つき合い」を避けることはできるものではない.
 平均的日本人のつき合い方は,どちらかというとワンパターンに近い.男同志のつき合いになると,ほとんど登場するのが酒である.会議や商談のあとなどには,酒席と称する酒つきのつき合いが準備されるし,とくに日本人は,酒の席ではじめてざっくばらんな話しあいに入ることが多い.

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VIA AIR MAIL

著者: 越前宏俊

ページ範囲:P.1076 - P.1080

机も椅子もない診察室.バイタルサインをとるナース.グラム染色をやるレジデント.日本とは違う私の見たアメリカの外来システムとそのレベル

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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