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雑誌目次

雑誌文献

medicina18巻8号

1981年08月発行

雑誌目次

今月の主題 心エコー法の現況 基礎知識

原理と装置の選び方

著者: 尾本良三

ページ範囲:P.1318 - P.1320

心エコー図の原理1)
 心エコー図法はすでに十分に広く普及しており,とくに原理の説明というのは不要ではないかと思われるほどである.しかし,ものの順序としてごく簡単に述べる.ここでは主としてシェーマをもって示したい.
 心エコー図が得られるしくみも,音響インピーダンス(音速×密度)に差のある2つの媒質の界面からエコーが発生するという超音波パルス反射法の一般的な原則に基づいている.心臓の場合,血液と心内膜や弁構造との間,心筋と心外膜との間,心膜と周囲組織との間などで,エコーを発生するに十分なだけの音響インピーダンスの差があることが知られている.すなわち,ビームの通過するすべての心臓の構造(音響インピーダンスの差のある界面)からエコーが発生することになる.しかし,隣接する2つのエコーが強いと,追い込み現象のため2つのエコーが融合して分離不能となる.

Mモード心エコー図法の利点と欠点

著者: 羽田勝征 ,   坂本二哉

ページ範囲:P.1322 - P.1325

 今日,心エコー図法は心疾患の診断および機能評価にとって欠くべからざる検査法として確立されており,心電図検査なみにルチン化しつつあるのが現状である.心エコー図といえば,かつてはMモード心エコー図のことを意味し,もっぱらシングルビームによる記録がすべてであった.しかしこの方法による観察は"ice pick view"であるために,検査対象の求め方が恣意的になり,また心臓すべてをカバーできない弱点を有していた.この数年,高速スキャニングによる断層心エコー図法が一般化し,心臓の構造物がより的確に,より広範囲に検出されるようになっている.
 現在行われている心エコー図検査は,まず断層エコーにより,心臓全体と各構造部の動きを観察し,その上でシングルビームの方向を画面上に設定し,Mモード心エコー図を記録する方法である.この方法により,Mモード心エコー図のみの記録から生ずる欠点がカバーされ,また,Mモード法における新しい解釈が可能になった.しかしながら,断層法がMモード法にとってかわるものではなく,Mモード法の捨てがたい魅力は依然として存在する.以下はこのMモード法の利点と欠点を列挙するものである.

心断層法の利点と欠点

著者: 田中元直

ページ範囲:P.1326 - P.1328

超音波心臓断層法
 心臓に接する胸壁上に探触子を装着して,心臓に向けて細い超音波ビームを投入しつつ,ビームを左右に振って心臓部を走査する.その間に心臓構造物の各部分から戻ってきた反射波(エコー)を同じ探触子で捉え,ビーム方向とブラウン管上の輝線の方向とを対応させつつ,得られたエコーを輝度変調で表示すると,ブラウン管上には超音波走査によって形成される走査面と同一面で心臓部を切断したときの断面と同じ断面像を表示することができる.この方法を超音波心臓断層法(略して心断層法)と称している.
 心断層図を得るための超音波走査法としては,電子式走査法と機械式走査法がある.

心エコー図のおとし穴—誤診と限界

著者: 吉川純一

ページ範囲:P.1329 - P.1331

「超音波病」の発生
 超音波診断法は,非観血的に即時に心内動態や形態を知りうる方法として,1970年代に入ってから急速に臨床に取り入れられ,いまや循環器疾患の診療に欠くことのできない検査法となってきた.しかし一方では,表示された画像を教科書や論文の教えるままに判読し,その内部に潜むトリックに気づかないまま心エコー図診断が下される傾向が増してきた.このように心エコー図所見を過信した場合,困ったことに「超音波病」または「心エコー図病」なる一種の誤診が生まれることになる.さらに,超音波の物理学的特性や装置・探触子の分解能,被検者側の条件(たとえば肥満や肺気腫など)などを考えた場合,心エコー図診断に一定の限界が存在することは当然のことといえる.
 超音波病は主にMモード心エコー図診断に際して出現しうるが,断層図診断においても出現しうる.この超音波病を防ぐには,検者の経験や検査時の注意,努力も重要であるが,何よりも大切なのは心エコー図診断の限界を悟ることと思われる.

臨床診断

弁膜の診断―房室弁

著者: 石川恭三 ,   平田俊吉

ページ範囲:P.1332 - P.1336

 房室弁には僧帽弁と三尖弁の2種類があり,これらの弁膜がリウマチ熱や細菌性心内膜炎に罹患して生じる弁膜症は,日常の臨床に際してしばしば遭遇する重要な疾患である.心エコー図は房室弁の動態を検索する上にきわめて有用であり,種々の房室弁異常の診断に広く利用されている.
 本稿では,房室弁の判断のポイントに焦点をおいて,症例を中心にして鮮説を加えていきたいと思う.

弁膜の診断―半月弁

著者: 藤井諄一 ,   湊明

ページ範囲:P.1338 - P.1344

 近年,リアルタイム超音波心断層法が広く利用されるようになり,従来のMモード心エコー図との併用により超音波法による心疾患の診断能力は飛躍的な進歩をとげた.ことに,複雑な解剖学的位置関係から必ずしも診断が容易ではなかった心基部大血管の半月弁異常も,最近では心断層法により,その障害弁尖の区別と障害の程度までも詳しく知ることができるようになった.以下に,大動脈弁および肺動脈弁異常の診断の現況について解説したい.

感染性心内膜炎

著者: 加藤洋 ,   吉川純一

ページ範囲:P.1346 - P.1349

 抗生物質の発達,手術の進歩により感染症心内膜炎(infective endocarditis)の予後はかなり改善されたものの,今なお重篤な疾患であることには変わりがない.それだけに早期でかつ正確な診断が望まれる.感染性心内膜炎における疣贅の診断には,疣贅を直接観察できる唯一の方法である超音波検査法が不可欠なことはすでによく知られた事実である.今回,症例を中心に感染性心内膜炎の超音波診断について述べる.

心筋症―肥大型

著者: 戸嶋裕徳 ,   陣内重三

ページ範囲:P.1350 - P.1353

 特発性心筋症idiopathic cardiomyopathy(ICM)とは原因の不明な心筋の疾患をいい,臨床病型により心筋の肥厚した肥大型hypertrophic cardiomyopathy(HCM)と左心室の拡張を伴ったうっ血型(または拡張型)congestive (or dilated) cardiomyopathy(CCMまたはDCM)とに分類される1)
 肥大型心筋症はさらに左心室内の圧較差(20mmHg以上)の有無により閉塞性と非閉塞性とに分けられる.しかし,安静時には圧較差がなくても負荷によって圧較差を生じる症例もあり,閉塞性と非閉塞性との間にはっきりとした一線があるわけではない.

心筋症―うっ血型

著者: 琴浦肇 ,   渡部良次

ページ範囲:P.1354 - P.1357

 心筋症は原因不明の心筋疾患であって,肥大型とうっ血型に分類される1).厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班(班長 河合忠一教授)の診断の手引によると,うっ血型心筋症の基本病態は心筋収縮不全であるとする.本症では拡張末期,収縮末期ともに左室腔が拡大しており,心室壁の収縮運動が低下し拡張末期圧が上昇する.僧帽弁閉鎖不全を合併することもある.診断の手引の中にも,心エコー図および左室造影の所見として左室腔の拡大と駆出率の低下があげられている.

虚血性心臓病(心筋梗塞を含む)―診断法としての役割

著者: 井上清 ,   植田桂子

ページ範囲:P.1358 - P.1363

 今から10年前,筆者らが初めてMモード心エコー図法を急性心筋梗塞例に応用し,梗塞部位心室壁の収縮運動異常を観察した(Inoue:Circulation,1971).当時の装置は最近のものに比べて解像性能が劣ってはいたが,この報告は昨今の梗塞に伴う心室壁運動異常すなわちventricular asynergyを非侵襲かつ視覚的に捉え診断する梗塞心エコー図法普及の嚆矢となったものである.
 虚血性心疾患領域での心エコー図診断法の役割は最近重視されており,装置と検査手技の進歩に伴ってその応用範囲も拡充され,単に虚血性心疾患の存在を疑う手がかりとしての心室壁asynergyの検出のみに止まらず,積極的に梗塞の部位と大きさを判定する,梗塞に合併する心室瘤を診断する,冠動脈の狭窄・奇形・動脈瘤を発見するなどの方面へ拡充されてきている.この辺の背景や詳細は最近のKotlerの総説1)にゆずるので参考にしていただきたい.

虚血性心臓病(心筋梗塞を含む)―心機能の面から

著者: 遠藤哲 ,   真柴裕人

ページ範囲:P.1364 - P.1367

 超音波検査法は,Mモード法,断層法,ドップラー法に大別される.とくに前二者は,手軽さに加えて豊富な情報が得られることから著しい普及を示した.ここでは,Mモード法と断層法による虚血心の心機能評価について略記する.

心室中隔の診断

著者: 延吉正清 ,   西村健司

ページ範囲:P.1368 - P.1372

 心室中隔は心外膜によりその運動を制限されず,しかも左右両心室の共通壁を形成しているため,右心系・左心系に影響を及ぼす諸種の心疾患において多彩な変化を呈する.しかし,中隔は右室側に凸な弯曲をもつため,その詳細な分析には血管造影などによって得られる一平面に投影されたprofile像では不十分であり,心室中隔の断層像が得られる心エコー図は,きわめて重要な情報を提供する.本稿では,心エコー図による心室中隔観察上の要点,および種々の異常をきたす心疾患につき概説する.

先天性心疾患―中隔欠損

著者: 日比範夫 ,   神戸忠

ページ範囲:P.1374 - P.1377

UCGによる検討
 中隔欠損を有する先天性心疾患におけるMモード法UCG(以下UCG)は,血行動態などを示す間接的所見にとどまることが多い.心房中隔欠損症〔ASD;一次口欠損症(ECD)を含む〕では右室容量負荷所見(心室中隔奇異性運動,右室拡大,三尖弁の易記録性など)が認められ比較的特徴ある所見となるが,欠損そのものの判定は必ずしも容易ではない,また心室中隔欠損症(VSD)では左室容量負荷所見(左室・左房拡大,心室中隔・左室後壁運動の亢進など)を呈する他の疾患との鑑別が困難で,欠損を直接検出することはさらにむずかしい.一方,Fallot四徴症,総動脈幹遺残症(truncus),大血管転位症(TGA)などの複合心奇形症例ではVSDの合併がほぼ必須で,しかも大欠損であるため,UCGでも欠損の有無は判定可能である.

先天性心疾患―大血管の異常

著者: 吉岡史夫 ,   加藤裕久

ページ範囲:P.1378 - P.1382

 心エコー図は,小児循環器領域においても必要欠くべからざる検査法となってきている1,2).これは,新生児や乳幼児を取り扱う小児科医にとって,患児に痛みやリスクを与えないで反復でき,しかも,かなりの正確さで心内構造を評価できるメリットをもつからである.最近の断層心エコー図の導入により,心内構造の評価が立体的に把握できるようになり,心血管造影と同等または場合によってはそれ以上の評価ができるようになってきている3〜5).本稿では,大血管の異常を示す疾患について,断層心エコー図所見を中心に述べる.

心臓ならびにその周辺の腫瘍

著者: 吉田清 ,   吉川純一

ページ範囲:P.1384 - P.1387

 心臓外科の急速な発展に伴い,種々の心臓腫瘍も外科治療により容易に救命しうるようになってきた.それゆえ,心臓腫瘍の的確な定性的診断のみならず,その形状,大きさ,運動などを分析する定量的診断もきわめて重要となってきた.その要求に超音波診断法は十分にこたえるものであり,従来生前診断困難であった心臓腫瘍は,超音波診断法の登場により最も診断が容易な疾患となった感がある.
 心臓に発生する原発性腫瘍としては,左房粘液腫が圧倒的に多い.粘液腫は,稀に右房あるいは心室から発生することがある.粘液腫に次いでよくみられる良性腫瘍は,壁在性に発生するrhabdomyomaである.rhabdomyomaは小児の原発性腫瘍の中で最も多いものである.以上の二者以外の良性腫瘍としては,fibroma,lipoma,angioma,teratomaなどがあるが,これらはきわめて稀な疾患である.原発性の悪性腫瘍としては,fibrosarcoma,rhabdomyosarcomaなどがある(原発性心臓腫瘍の約20%).

心室瘤と動脈瘤

著者: 別府慎太郎

ページ範囲:P.1388 - P.1391

心室瘤
 心筋梗塞に続発する心室瘤は,従来心血管造影法により診断されてきたが,心エコー図によってはじめて,広く日常臨床の場において,瘤の部位や大きさなどの情報が認識されるようになった.
 心室瘤の概念と診断のポイント 真性心室瘤と仮性心室瘤に分けて考える.前者は後者に比し頻度も多く,一般に心室瘤とは前者を指す.

心膜疾患—いわゆるecho-free spaceについて

著者: 和田敬 ,   本田守弘

ページ範囲:P.1392 - P.1398

 1972年,Feigenbaumの"Echocardiography"によって,心エコー図の臨床的応用が急速に高まった.心臓内部組織,とくに僧帽弁の形態とその動きを捉える心エコー図は,従来の方法に比べてまったく斬新的である.さらに,この方法によってpericardial effusionの診断に大きな期待が持たれるようになった.

超音波の新しい応用

コントラスト心エコー法

著者: 天野恵子

ページ範囲:P.1399 - P.1401

 超音波法,ことに近年導入された実時間心断層法は,心構造の空間的関係を2次元表示することにより,形態および動態についての情報を容易とした.さらにコントラスト法を併用することにより,心臓内血流に関する情報を重畳させることも可能となった.

ドプラ法

著者: 榊原博 ,   宮武邦夫

ページ範囲:P.1402 - P.1405

 超音波を運動物体に入射すると,ドプラ効果により反射体の運動速度に応じて反射波の周波数が偏位する.したがって,この周波数偏位(Doppler shift)を測定することにより反射体の運動速度を知ることができる注1)
 この超音波ドプラ法の原理は里村(1956年)により微小運動を検出する目的で考案された.これは,仁村らにより心臓弁動態の解析に用いられ,初めて医学への応用が行われた.また,里村は血流によってもドプラ効果が生じることを見出し,これにより血流計測を行いうる可能性を示した.後に,血流によるドプラ効果は流動する血球からの散乱によることが,加藤らにより明らかにされた.

座談会

このエコー図から何がわかるか

著者: 吉川純一 ,   坂本二哉 ,   永沼万寿喜 ,   太田怜

ページ範囲:P.1406 - P.1419

 心エコー図は,心臓内部の構造と機能に関して,きわめて多くの情報を与えてくれるが,そのためには,得られた超音波の反射エコーがなにをあらわしているのかの同定が第一歩である.一般には,他の方法で病変を推定し,それを根拠にして心エコー図をながめるので,このことにはさしたる支障がないが,そのような情報なしに,いきなり心エコー図をながめると,初学者には一種の混乱がある.そのような難しさがどこにあるのかというのを心エコー図の初見からさぐり,専門諸先生からご矯正いただいたのがこの座談会である.

理解のための10題

ページ範囲:P.1420 - P.1424

カラーグラフ 臨床医のために内視鏡—パンエンドスコープ

胃・十二指腸粘膜にみられるさまざまな表在性の変化

著者: 北村明

ページ範囲:P.1426 - P.1427

 上腹部愁訴があるもののみでなく,胃の検診を希望するものに広く細径前方視鏡検査を施行していると,約半数近くに何らかの変化を発見できる.出血性小びらんを含む表層性変化と,萎縮性胃炎を中心とする種々の慢性胃炎は高頻度に観察される.今回はこのような粘膜の変化のさまざまな所見を集めてみた.

図解病態のしくみ 循環器疾患・8

低レニン性高血圧とMineralocorticoidとの関連

著者: 須永俊明

ページ範囲:P.1429 - P.1433

 血漿レニン活性が,高血圧症の分類や病態を考える上で重要な因子となっている.血漿レニン活性は,いろいろな状態で低下を起こすが,この中で,低レニン性本態性高血圧症が,注目されている(表1).
 また,レニン活性から,高血圧症の分類がなされ,表2のようになっている.

臨床講座=癌化学療法

癌免疫療法の現況—その3:固形腫瘍の免疫療法

著者: 江崎幸治 ,   岡部健一 ,   小川一誠

ページ範囲:P.1435 - P.1440

 固形腫瘍における免疫学的研究は,主として悪性黒色腫について多くなされている.これは悪性黒色腫では時に自然寛解があるといわれ,なんらかの免疫の関与が考えられること,また実験面では悪性黒色腫細胞の培養系の樹立が比較的容易であり,腫瘍細胞を用いての特異的免疫反応の検索がされやすいこと,化学療法が奏効しがたいなどの理由が挙げられよう.そして急性白血病とともに免疫学的研究の対象として使用されることが多く,特異的免疫反応も陽性とする報告が多い.これら悪性黒色腫での成果をもとに各種の固形腫瘍に対して免疫療法が試みられている.
 固形腫瘍の免疫療法としては,①手術後のadjuvantとして免疫療法単独で,または化学療法との併用で使用するもの,②進行癌に化学療法との併用で使用するもの,③局所免疫療法,の3つがある。本稿では以上の項目につき,比較的報告の多い悪性黒色腫,乳癌,肺癌を中心に記述する.

腹部単純写真の読み方

急性虫垂炎

著者: 平松慶博 ,   水野富一

ページ範囲:P.1457 - P.1463

 平松 今回は急性腹症の,とくに虫垂炎のX線診断についてお話を聞きたいと思います.急性腹症のX線診断には,立位と臥位の2枚を撮るのが原則です.

画像診断と臨床

腎疾患(2)

著者: 木戸晃 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.1465 - P.1472

症例1
 患者 K. L. 76歳女性
 主訴 微熱,発汗

連載 演習

目でみるトレーニング 51

ページ範囲:P.1473 - P.1479

外来診療・ここが聞きたい

肺炎をくり返す陳旧性肺結核

著者: 池本秀雄 ,   赤塚祝子

ページ範囲:P.1441 - P.1445

症例
 患者 T. I. 67歳 男性 無職
 現病歴 昭和44年,肺結核に罹患し3者併用の治療を受け軽快したが,右上肺野に硬化空洞が残存,半年に1度くらいの割で肺炎を併発,2〜3週間の入院加療を必要とした.昭和54年12月頃より尿糖が出現,精査の結果糖尿病と判明,レンテインスリン24Uの投与でコントロールされている.ツ反は陽性で結核菌は検出されず,痰からは常に緑膿菌・真菌(Candida)が少数認められている.酒(-),タバコ(-)

第154回呼吸器臨床談話会

びまん性肺陰影を呈する疾患における経気管支肺生検(TBLB)の意義について(その2)

著者: 谷合哲 ,   吉岡一郎 ,   倉島篤行 ,   北村諭 ,   赤柴恒人 ,   工藤翔二 ,   古家堯 ,   芳賀敏彦 ,   岡安大仁 ,   鈴木俊雄 ,   松井泰夫 ,   可部順三郎

ページ範囲:P.1483 - P.1488

 吉岡 倉島先生はTBLBを多数の例に経験されておられますので,TBLBの技術的な問題,確診率とか,合併症などの問題を,総括的にお話いただきたいと思います.
 倉島 表は1977年から79年の3年間の,国立療養所東京病院でのTBLBの内訳です,びまん性の肺疾患にnodular Iesionの例も含めて202例ありました.びまん性の疾患が106例,nodular lesionが71例です.合併症は,肺水腫が1例,気胸が2例,出血が18例です.

プライマリ・ケア

私たちのみたヨーロッパのプライマリ・ケア(2)

著者: 小野肇 ,   安田勇治 ,   菊地博 ,   萱場治 ,   渡辺淳

ページ範囲:P.1490 - P.1496

 渡辺(司会) 前回はヨーロッパのプライマリ・ケアの全体的な状況および各国別のご報告をいただきましたけれども,ここで少し問題を絞ってディスカッションしたいと思います.
 まずヨーロッパ各国の医療制度についてですけれども,どこの国でも自分の国が一番いいと思ってやってるわけです.イギリスはイギリスで日本よりもいいと思っているし,われわれはわれわれで日本が一番いいと思っているわけですよ.しかし,それでは進歩はないわけですので,こんどヨーロッパを回ってみて,むこうの医療制度で,われわれとしてなにか学ぶべき点,取り入れるべき点があるかどうかについてまず考えてみたいと思います.小野先生いかがですか.

Clinical topics

肺線維症—その概念と病因

著者: 米田良蔵

ページ範囲:P.1446 - P.1447

 肺線維症の病因について述べるには,肺線維症の概念について明確にしなければならない.
 肺線維症という疾患名は,いうまでもなく肺の線維化病変をとらえたものであり,病理形態学的な立場からみれば,多くの場合は組織の修復機転による終末的な病変を意味する.しかもこれが広範囲に起こり,臨床的に著しい障害として現われたものが肺線維症として理解されてきた.したがって肺線維症という疾患名は,単一の独立疾患を表現するものではなく,複雑な多種の病因による疾患群の終末病態を表現するもので,総括的疾患名であり,それぞれの疾患の本質を表現していることにはならない.

他科のトピックス

イアーバンク

著者: 兵庫イアーバンク

ページ範囲:P.1480 - P.1481

 兵庫イアーバンクが発足した.全国では初めてということで話題になっている.その成立と内容および目的を述べさせていただき,諸兄のご理解を得るとともに,今後第2号,第3号の設立への参考,足掛りとなれば幸いである.

オスラー博士の生涯・97

オスラー博士の代表的講演—「一つの生き方」その2―A Way of Life

著者: 日野原重明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.1450 - P.1454

 前号にはオスラー博士が1913年4月20日にエール大学に招かれて医学生に対して行った講演の前半を紹介した.
 本号はその続きで,医学生に自分の人生観(当時63歳)を通して学生生活を生きる道を示したものである.

天地人

ロマンチックなカメ

著者:

ページ範囲:P.1449 - P.1449

 以前に,月夜の晩に海岸に這い上り,砂地深く卵を生み落した後,別れがつらくて涙をボロボロ流すカメの話を書いたことがある.実は,余分な塩分を排出するための生理的現象であるといってしまえばそれまでだが,月の光にキラリと光るカメの涙はいかにもロマンチックな情景である.ところが,カメのセックスはもっとロマンチックなことも知っているだろうか.
 カメは,巨大な爬虫類が棲息していた頃からほとんど形を変えずに生きているから,おおよそ1億年近くも,急がず,自分の生活ペースを守りながら生き続けていることになる.また,どの動物よりもカメは長生きする.カメのいかにものんびりした生き方を,忙しく生きる現代人がぜひ学ぶべきなのかもしれない.そのスローぶりはカメの交尾行動にも現われているのである.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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