今月の主題 自律神経失調症—心身症としての考え方・扱い方
自律神経失調症とは
老年期にみられるもの
著者:
勝沼英宇1
新弘一1
瀬川美津子1
田村彰彦1
南條悦子1
所属機関:
1東京医科大学・老年病学教室
ページ範囲:P.1758 - P.1759
文献購入ページに移動
加齢とともに老人はいわゆるpolypathologyという特殊病態に変わり,潜在的に多疾患を保有し,多彩な症状が現われる.これらの症状は,1つの疾患単位として何れか特徴づけられる症状であり,症状に応じた数の病名がつけられるのが普通である,これに対し,全身症状あるいは神経,循環器,呼吸器,消化器,皮膚系など広範囲にわたるような多彩な症状を呈していながら,病原の本態を把握できない一連の症候群がある.このような症候群は青壮年者にもみられるが,老人により多く遭遇し,その数も実に多数で,しかも症状は経過中も一定しておらず,不定で自律神経器質障害を認めないのを特徴とする.阿部らは患者が訴えるこれら一連の不定愁訴に対して不定愁訴症候群と命名した.この不定愁訴群は,自律神経器質障害を伴わず,自律神経の機能失調に由来するとして,これを自律神経失調症候群と呼称している.したがって,阿部らのいう自律神経失調症候群は不定愁訴症候群と同一であり,かつ自律神経失調症でもあると理解される.
しかし,老人は老年期の病態生理から,身体的にはまったく健康であることは少なく,大半の老人は臓器機能の低下を示し,それに伴って自律神経も機能のみならず,器質的病変も大なり小なり加わっていることが推測される.