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雑誌目次

雑誌文献

medicina19巻13号

1982年12月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医に必要な泌尿器科の知識

理解のための10題

ページ範囲:P.2546 - P.2548

内科的徴候

不明熱

著者: 阿曽佳郎 ,   田島惇

ページ範囲:P.2472 - P.2474

 泌尿器科領域における不明熱の原因として,基本的な病因は次の2点である.すなわち,1つは隠された何らかの因子によってひき起こされた尿路性器感染症であり,もう1つは腎癌である.
 尿路性器感染症の発熱の背景にある原因を把握しないかぎり,その発熱は臨床上しばしば不明熱として扱われる.また腎癌では,いわゆる三大症状である血尿,側腹部痛,腫瘤を示す以外に,尿路外症状としての不明熱,易疲感,体重減少を示すことが特徴である.したがって,不明熱を主訴とする腎癌は決してめずらしくない.

消化器症状

著者: 友吉唯夫

ページ範囲:P.2476 - P.2477

 泌尿器科疾患の中には,食欲不振,悪心,嘔吐,腹部痛などの消化器症状を示すものがかなりあり,ときにはそれが主症状であったり,前面に出てくる訴えであったりして,当初は消化器系疾患を疑わせることもあるぐらいである.
 泌尿器科疾患における消化器症状の発現機構をいくつかに分類して,具体的な疾患をそれに当てはめていくかたちで述べてみたい.

腰・腹部痛

著者: 大堀勉

ページ範囲:P.2478 - P.2480

 腰・腹部痛を訴える疾患は,消化器系をはじめ,整形外科領域,婦人科領域,循環器系,呼吸器系および神経系の疾患と非常に多いが,泌尿器科領域の疾患もかなり多い.したがってこれらの疾患を鑑別することはきわめて重要である.疾患によっては一定の部位に定型的疼痛を起こし診断が容易な場合もあるが,鑑別が困難な場合も多いので,疼痛の性状などを知っておくとともに,種種の検査を行う必要がある.

高血圧

著者: 池上奎一

ページ範囲:P.2482 - P.2483

泌尿器科で取り扱われる高血圧
 泌尿器科で治療される高血圧は,腎または副腎の病変に起因する二次性高血圧のうち,主として手術の適応となるものである.これらの中には,原疾患にもとづく諸症状が主体をなし,高血圧は症状の一部に過ぎないものも多いが,一方,高血圧が唯一または主要な症状で,高血圧に対する原因療法として手術が行われるものもある.本稿では主として後者に属する高血圧のうち,比較的頻度の高い疾患について述べる.

泌尿器科的徴候

肉眼的血尿

著者: 松田稔 ,   園田孝夫

ページ範囲:P.2484 - P.2485

 "肉眼的血尿"という徴候は患者が病院を訪れる大きな動機の1つであるが,その原因は実に多彩である.このため,これに対応する第一線の臨床医には広汎な知識が要求されるが,本稿ではこの徴候を有する症例に対する考え方,手近な診断法を,泌尿器科的疾患を中心に述べてみたい.
 ところで尿中の血液混入は0.1%の微量で肉眼的にそれと気付くといわれる.このためこれよりもさらに少量の血液を混じるだけの顕微鏡的血尿と,肉眼的な血尿との間に画然とした臨床的意義の相違を見出すことは困難である.事実,一時期には肉眼的血尿を呈しながら,経過とともに顕微鏡的血尿に移行したり,あるいは血尿を認めなくなることも多いので注意が必要である.

尿混濁

著者: 大井好忠

ページ範囲:P.2486 - P.2487

 尿混濁以外に自覚症状がなく来診することは少ない.乳糜尿症ではフィブリン塊の排泄に伴う尿路の症状,ならびに尿混濁そのものを自覚して来診する.尿路の何らかの自覚症状の発現とともに,尿混濁に気付いて来診する症例は多い.このような場合の尿混濁は,血尿を除けば膿尿,血膿尿,塩類尿が多い.稀に精液尿,糞尿がみられる.膿尿,血膿尿では尿路または副性器の特異的・非特異的感染症が示唆される.塩類尿または濃縮尿では有意な尿中白血球は証明されない.生活歴の詳細な問診も診断上大切な手がかりとなる.精液尿,糞尿では既往の手術の聴取を怠ってはならない.主として尿混濁の成因と診断的事項,ならびに治療法針について述べる.

排尿困難

著者: 三木誠

ページ範囲:P.2488 - P.2489

 排尿困難とは,正常な排尿が円滑に行われない状態をいう.すなわち尿意を感じて努責しても容易に排尿が開始されず,また排尿が始まってもその終了までに長時間を要する状態である.前者を排尿開始の遅延(遷延性排尿),後者を排尿時間の延長(苒延性排尿)という.この両者は同時に発生することが多く,かつどちらかがより強く出現することのほうが多い.そして当然のことながら,尿線細小,尿線中絶,放出力の減弱,残尿感などの症状も伴っている.排尿困難が極端に強まれば,尿意があってもまったく排尿できないという尿閉の状態になる.
 ところで,膀胱炎などで排尿痛が強い場合に,排尿困難を訴えて来院する患者があり,事実排尿痛の強い場合は括約筋部内に攣縮が起こり,排尿困難(painful voiding)をきたすこともあるが,一般には排尿困難といえば疼痛のほとんどない排尿困難(difficult voiding)のほうが多い.

尿閉と無尿

著者: 田崎寛

ページ範囲:P.2490 - P.2491

 尿閉(urinary retention)とは尿が膀胱に貯留したまま排尿されない状態であり,無尿(anuria)とは同じく尿量はゼロであるが,尿が膀胱まで到達していない状態である.したがって両者の鑑別は,膀胱に尿が存在するか否かの一点にしぼられる.これは簡単のようであるが,症例によってその臨床像は異なり,鑑別の難しい例も多い.その対策の具体的な問題について解説する.

頻尿

著者: 坂本公孝

ページ範囲:P.2492 - P.2494

 成人の1日尿量は平均1,500ml,膀胱実動容量は200〜300mlであるから,1日の排尿回数は5〜7回となる.しかし,夜間には膀胱感覚が減退しているので,睡眠中は排尿しないか,せいぜい1回である.したがって昼間覚醒している間は,4〜5時間に1回の割合で排尿するのが普通である.この排尿の間隔が短かくなった状態が頻尿であるが,正常排尿回数と頻尿の間には定義上のはっきりした差があるわけではない.したがって,診療の現場では,以前より排尿の回数がずっと多くなってきたか,夜間でもたびたび排尿に起きるようになったかどうかで,頻尿の存在を判断する.

尿失禁

著者: 土田正義 ,   森田隆

ページ範囲:P.2496 - P.2498

 膀胱は尿道との協調作用によって無意識的に尿を貯留する機能を持っているが,そのいずれかが機能的あるいは器質的障害を起こすと,抑制意志に反して尿が漏れる状態が起こり,これを尿失禁と呼んでいる.尿失禁を正しく評価することは,適切な治療を行う上できわめて重要である.男子と女子ではcontinence(尿禁制:尿の漏出を抑える作用)の機序が異なり,男子では精阜より上位の膀胱頸部と前立腺部尿道からなる近位内尿道括約筋と,精阜より遠位にある平滑筋性尿道と外括約筋からなる遠位尿道括約筋の2つの領域の緊張が,continenceの最も基本的な役割を演じている.一方女子においては尿道は非常に短かく,尿道粘膜周囲の筋構築も男子に比べて弱い.女子の尿道抵抗は尿道粘膜,平滑筋尿道,外尿道括約筋の要素によって保たれている.しかし女子尿道平滑筋は輪状筋に乏しく,正常の若い女子尿道において尿道内圧の30%を占める外括約筋の緊張もまた,ほとんどの場合分娩による損傷のため減少するといわれている.

インポテンツ

著者: 長田尚夫

ページ範囲:P.2500 - P.2501

定義
 インポテンツの定義については多少のニュアンスの違いがあるが,「性欲,勃起,性交,射精,オーガスムのいずれか1つ以上欠けるか,もしくは不十分なもの」という金子の定義が広く用いられている.したがって,性欲がないもの,性欲はあるが勃起できないもの,腟挿入に必要な勃起力に欠けるもの,勃起しても射精に異常があるもの,異常性欲のために性交や射精に障害をみるものなど,性行為に関するいろいろな障害が含まれる.しかし,インポテンツは陰萎と訳されているように,臨床的には勃起障害が圧倒的に多く,同意語として用いられている.射精障害がこれに次いでいる.

検査法の知識

分腎機能検査法

著者: 川村寿一

ページ範囲:P.2502 - P.2506

総腎機能と分腎機能
 ある疾患において腎機能を問題にする場合,総腎機能としてと,分腎機能としての2つの評価法がある.前者の場合,両腎が等しく障害される疾患(急性・慢性糸球体腎炎,ネフローゼ,腎盂腎炎,免疫疾患に伴う腎症,糖尿病性・高血圧性.痛風性腎症など)や病状の進行とともに,あるいは手術を契機にして,間接的に腎機能に影響を及ぼすと考えられる疾患(心疾患,肝・胆道疾患,下垂体・副腎疾患,下部尿路疾患,薬剤性腎障害など)において用いられる.一方,後者の場合,偏腎性疾患,あるいは両側性であっても障害に左右差のある疾患(腎血管性高血圧,腎腫瘍,腎結石,水腎症,膀胱尿管逆流現象,下部尿路疾患など)において,患側腎の機能を知りたいときに用いられる.
 しかし,分腎機能という場合でも,患側のみを問題にしないで,反対側(健常側)の腎機能との対比において,総腎機能のなかで分腎機能を理解することが大切である.

前立腺触診

著者: 千野一郎

ページ範囲:P.2508 - P.2510

 前立腺触診は泌尿器科医にとってはきわめて重要な診察法であるとともに,内科的一般診察においても是非行うべき診察法であることを強調したい.これは後述する前立腺の疾患を知るばかりでなく,経直腸的診察により,直腸,肛門,肛門括約筋などの病変を知り,また多くの情報を与えてくれる.

X線検査

著者: 多田信平 ,   加藤仁成

ページ範囲:P.2512 - P.2516

 泌尿器疾患の診断におけるX線検査の比重の人きさは改めていうまでもないことである.本稿では,その基本となる腹部単純撮影と経静脈性尿路撮影について述べる.

膀胱機能検査

著者: 小柳知彦

ページ範囲:P.2518 - P.2519

 尿を失禁なく不随意下でも保持し,排尿に際しては随意的にスムーズに残尿なく完結させるのが本来の膀胱機能である.このためには末梢,脊髄,さらに高位中枢を含めた神経機構,および膀胱,尿道,括約筋などの解剖学的構築のいずれもが正常で,さらにこれらの下部尿路機能にあずかる神経筋機構が一体となってorderlyに運営されなければならない.
 尿失禁(failure of holding urine),排尿障害(failure of emptying bladder)などの膀胱機能異常は以上の神経・筋機構のいずれに障害があっても生じうるもので,その原因はきわめて多岐にわたる.膀胱機能障害が再発性・難治性尿路感染症の原因となったり,膀胱尿管逆流(VUR)を介して,あるいはしからざる場合でも,腎盂腎炎,萎縮腎,高血圧,腎機能障害などの重篤な尿路合併症の主因ともなりうるから,膀胱機能異常の臨床的意義は大である.一方種々の内科的疾患,とくにShyDrager病,Parkinson氏病,多発性硬化症などの神経内科的諸疾患の初発症状が膀胱機能異常であることも稀ではなく,その意味からも膀胱機能検査にて異常の有無を的確に把握,処置を講ずることが重要となってくる.

救急処置

導尿

著者: 江藤耕作

ページ範囲:P.2520 - P.2521

 膀胱内に尿が充満しているにもかかわらず,自力で排尿できない場合,あるいは検査(とくに細菌学的検査)のための膀胱尿採取,残尿量の測定などのために,経尿道的にカテーテルを膀胱まで挿入する処置を導尿という.
 導尿という処置は泌尿器科医の専門的手技ではなく,一般臨床医のすべてがマスターしておかなければならない手技の1つである.

膀胱穿刺

著者: 津川龍三

ページ範囲:P.2522 - P.2523

概念
 膀胱穿刺とは,恥骨上部の皮膚から針をもって膀胱を穿刺し,尿を体外に導く処置である.Paracentesis of the bladderといわれる.

留置力テーテル法とその管理

著者: 熊澤浮一

ページ範囲:P.2524 - P.2525

 何らかの理由で自然排尿ができない場合は尿道にカテーテルを挿入して排尿させることが多い.膀胱部が緊満状態でカテーテル挿入が困難な場合は膀胱部の穿刺法も行われるが,現在各科領域で頻用されているのはバルーンカテーテルの尿道留置法である.内科系では主として長期臥床患者,尿閉や尿失禁患者に,外科系ではこれらに加え術後患者にも用いられている.さらに正確な尿量測定が必要な麻酔中,手術中,手術直後などのある一定時間の留置も好んで行われている.高齢化,治療・手術・麻酔の進歩とともにこのような症例は年々増加してきている.
 カテーテルを尿道に留置しておれば1日何回もの導尿操作は必要なく,排尿状態の観察も容易であり,看護側からはメリットが多い.しかし尿路感染を発症する危険性が高くなるのが問題である.これに対する予防対策法も数多く検討されており,中にはかなりの効果をあげるものも開発されている.

治療とその考え方

膀胱炎症状

著者: 小川秋実

ページ範囲:P.2526 - P.2527

 膀胱炎では排尿時,とくに排尿の終わりごろに尿道に痛みを感じ(排尿痛),尿意を頻繁に生じて排尿回数が多くなる(頻尿).ひどくなると排尿後も尿意が消えず,絶えず強い尿意が続く(尿しぶり).排尿痛が軽度のときは排尿後不快感として訴えることもある.このような症状を膀胱炎症状(または膀胱刺激症状)と称する.
 排尿痛と頻尿は,膀胱または尿道が炎症,結石,腫瘍などによって刺激されるために起こる症状である.すなわち,膀胱炎症状は膀胱炎以外の多数の疾患で起こるので,膀胱炎症状があっても必ず膀胱炎であるとはいえない.また,本当の膀胱炎であっても,化学療法で簡単に治る急性単純性膀胱炎のほかに,腫瘍,結石,結核などが基礎にあるために生じた続発性膀胱炎のこともある.この場合は基礎疾患を治療しないと膀胱炎症状は改善しない.したがって,膀胱炎症状があれば安易に膀胱炎と診断して化学療法だけを行うことは重大な誤りであり,場合によっては基礎疾患が進展して重篤な転帰に至ることもある.正しい鑑別診断が必要なことはいうまでもない.

尿路感染症

著者: 名出頼男

ページ範囲:P.2528 - P.2529

 尿路感染症はその感染部位によって病態も異なれば治療方針も異なり,また治療の効果判定(薬剤のみに関してではない)も異なってくる.
 大まかに上部尿路感染症と下部尿路感染症に分類し,後者は男子性器感染症,なかでも前立腺炎をその一部に加えて考慮することが肝要である.

前立腺炎

著者: 河村信夫

ページ範囲:P.2530 - P.2531

 前立腺炎には急性のものと慢性のものがある.ともに症例数は少なくないが,内科の先生をおとずれる症例の多くは急性前立腺炎であろうと思われる.特殊性の炎症の場合は,その感染経路から考えても,内科よりむしろ泌尿器科へはじめから受診してくることが多いであろう.
 細菌性急性前立腺炎は,頻尿,排尿痛などのあることから,しばしば内科医に膀胱炎と診断されている.しかし男性には単純な膀胱炎はめったに起こるものではないことを頭においておかねばならない.膀胱炎として治療されても,前立腺炎が治ってしまうことがあるが,やはり本態をよくみきわめて,適切な薬剤を投与することが,障害を残さず速く治す道であると考えられる.

尿路結石の治療と予防

著者: 高崎悦司

ページ範囲:P.2532 - P.2533

 尿石症の成因については多くのものがあげられているが,実際に個々の症例について成因を求めるのは今日でも困難な場合が少なくない.しかし少なからざる患者,ことに尿石を多発する症例については注意深く検索すると,その原因と思われる病態を把握できるものである.一般的には尿石形成の機序として,①尿石原基(stone embryo)の存在,②結石析出の促進因子,③結石形成の抑制因子,の組み合わせによると考えられるが,今日では2番目の促進因子の解明がかなり行われ,ことに代謝的な方面からの追究が進んでいる.尿石の再発はしばしば経験され,筆者の700例尿石患者の追跡調査(平均追跡期間8年8カ月)でも,追跡しえた422例中172例(40.8%)に再発,多発を認めているので,尿石症の治療にあたっては再発をも考慮し,その成因,ことに代謝異常の存在に配慮して適当な措置を行わなければならない.
 尿石はその種類(化学的組成)によって成因が異なるので,まず尿石の一般治療方針を述べてから各種類の尿石ごとに,現在比較的明らかにされている因子について簡単に触れながら,再発予防も含めた治療方法を記述する.

老人の排尿障害

著者: 小柴健

ページ範囲:P.2534 - P.2535

 高齢化社会の進行とともに,泌尿器科領域においても老人の占める割合は年々増加しつつある.前立腺肥大症や前立腺癌はもとより,脳血管障害や末梢神経障害に伴う排尿障害も老人医療の領域ではゆるがせにできない問題となっている.一方これら排尿障害に対する根治的な保存療法はいまだなく,留置カテーテルや採尿器の使用にたよっている老人も少なくない.しかし可能なかぎりその原因を外科的に除去して,快適な熟年生活を営めるよう治療することは,泌尿器科医に課せられた重要な任務といえよう.

座談会

内科医に必要な泌尿器科の知識

著者: 岡本重禮 ,   吉田修 ,   服部孝道 ,   町田豊平

ページ範囲:P.2537 - P.2544

内科と泌尿器科の接点 泌尿器科的な問題をもった患者は多い/泌尿器科学の変貌 やってほしい検査法下着を脱がせることには抵抗が/50歳以上の男性患者には必ず直腸診を/尿道カテーテルは内科医自身で/直腸診のポイント/積極的に患者の全体像を把握する姿勢が大切 初期診療はどこまで必要か 尿閉の場合/導尿はプライマリ・ケアに必須/卒前からの教育の問題 見逃されている泌尿器疾患 前立腺癌,腎癌に高い誤診率/専門的な技術や知識は必要ない/腎癌を取り扱うのは内科が多い 泌尿器症状の取り扱い方泌尿器症状は自ら訴えない患者が多い/薬剤による排尿障害/留置カテーテル管理は特殊技術か/カテーテル操作はプライマリ・ケア手技/合併症としての泌尿器症状 セクソロジーにおける内科・泌尿器科の協力 医者の側にも遠慮と誤解が/医者が問題点を聞き出す 卒前・卒後教育の中での位置づけ 医学の進歩に伴ってプライマリ・ケアも進歩する/教育体制にも問題が 尿路感染症の扱い方 泌尿器科へ送るケース/難治性,再発性,小児は全例泌尿器科へ

カラーグラフ 臨床医のための腎生検・12 糸球体病変・12

巣状病変

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.2554 - P.2555

 巣状腎炎focal glomerulonephritisという用語は以前から臨床でも病理でも使われていた.歴史的に有名なのは亜急性心内膜炎(SBE)のときのfocal embolic GNである.
 糸球体の侵され方がほとんどすべて(80%以上)の場合をdiffuseといい,それ以下をfocal,1つの糸球体をとって全体に病変のみられるものをglobal,その一部のものをsegmentalというが,focal lesionまたはfocalGNという場合は糸球体はfocal,segmentalに病変のみられるものである(図1).

連載 演習

目でみるトレーニング 66

ページ範囲:P.2557 - P.2563

画像診断 心臓のCT・12

動脈瘤

著者: 太田怜 ,   林建男

ページ範囲:P.2564 - P.2568

 動脈瘤は現在大動脈造影法によって確診されている.しかし,動脈瘤のあるところに壁在血栓の付着しているときなどは,その場所でかえって造影像が狭小化している場合などがある.このようなとき造影CT法を行えば,動脈内腔と血栓と動脈壁とを区別して描記できるので便利である.
 解離性大動脈瘤のときも,造影CTにより真腔と偽腔との間の隔壁をうつしだすことができれば,それが診断のきめてとなる.

画像診断と臨床

高血圧症

著者: 山田治男 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.2573 - P.2580

症例1(図1〜IO)
患者 M. W. 29歳,女性,会社事務員
主訴 頭痛,肩こり,意識障害の精査

今月の焦点 対談

遺伝子工学—その基礎と臨床応用へのポテンシャル

著者: 井川洋二 ,   河合忠

ページ範囲:P.2582 - P.2593

 河合最近遺伝子工学という言葉がしばしば新聞,雑誌を賑わしておりますが,医学の面でもたいへん注目されております.そこで,遺伝子工学が発達してきた経緯についてうかがう手始めとして,細胞の中での遺伝子の働きのあたりからおうかがいしましょう.

講座 臨床薬理学 薬物療法の考え方・15

腎機能障害時の薬物投与法(3)

著者: 中野重行

ページ範囲:P.2597 - P.2602

 腎機能障害時の薬物投与法に関しては,次のようなことが重要である.すなわち,第1に,腎臓は多くの薬物あるいはその代謝産物の主たる排泄にたずさわる臓器であるので,腎機能障害時にはこれら薬物あるいはその活性代謝産物の排泄が遅延しうること.したがって,腎機能障害時には薬物投与設計に工夫を加える必要が生ずる.第2に,薬物の中には腎毒性を有するものがあり,そのために腎機能障害を生じうること.したがって,腎機能障害時には,これら薬物の投与はさしひかえ,代りの薬物を選択することが望まれる.
 腎機能障害時における薬物投与設計に関する基本的な考え方,およびその具体的な方法については,前回(19巻10号)詳細に述べた.今回は,腎毒性を有する薬物の種類,腎機能障害時の薬物投与設計を行う際に活性代謝産物の存在を考慮しなければならない薬物の種類,その他補足的事項について記すことにする.

異常値の出るメカニズム・56 酵素検査・16

血清OCTとグルタミン酸脱水素酵素(GLDH)

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.2603 - P.2608

臓器分布と細胞内局在性
 今回は肝ミトコンドリアのマーカー酵素である2つの血清酵素をとりあげた.

コンピュータの使い方・6

情報検索

著者: 開原成允

ページ範囲:P.2609 - P.2614

医学情報の増加
 最近の医学知識の増加は年々著しく,ある人の試算によれば,1945年から1970年の間に医学知識は3倍に,臨床知識に限れば,1930年から1975年の間に実に11倍になったという.
 もう一つ例をあげてみよう.図1は医学文献の題名を掲載した索引誌である「Index Medicus」の重さを,D. T. Durackが年次的にグラフにしたものである.重量はほぼ論文数に比例すると考えられるから,医学情報の生産が年々飛躍的に増加していることがわかる.

図解病態のしくみ 消化器疾患・32

Parenteral & Enteral Nutrition(11)—Enteral Hyperalimentation(4)—Short Bowel Syndromeの新しい治療法

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.2615 - P.2620

 先月号で述べたように,"短腸症候群Short Bowel Syndrome(SBS)"の病態生理は複雑であり,その治療および社会復帰は非常に困難である.したがって,この短腸症候群の治療および社会復帰は,従来よりTotal Parenteral Nutrition(TPN)やTPNによるHome-Hyperalimentationによって試みられてきた,しかし,これらの治療法には,実用性,安全性,そして経済性において多くの問題が存在し,これらが短腸症候群の患者の治療や社会復帰をより困難なものにしてきた.
 一方,Enteral HyperalimentationはTPNに比較し,実用的,安全そして経済的などの利点がある.したがって,このEnteral Hyperalimentationを,短腸症候群の病態生理に基づいて合理的に施行することにより,短腸症候群の治療および社会復帰がより容易になることを示したい.すなわち,前回まで述べてきたEnteral Hyperalimentationの集大成として,Enteral Hyperalimentationによる短腸症候群の治療を考えてみたい.

外来診療・ここが聞きたい

末期癌患者の在宅医療

著者: 牧野永城 ,   村山正昭

ページ範囲:P.2624 - P.2627

症例
患者 T. M. 61歳,男
主訴 腹部不快感(いつも気持悪い)

診療基本手技

骨髄穿刺のコツと注意点

著者: 吉岡成人 ,   西崎統

ページ範囲:P.2622 - P.2623

 骨髄穿刺は血液疾患の診断や治療の効果,経過の判定に欠かすことのできない検査である.また悪性腫瘍の骨髄転移の有無などをみる目的でもしばしば骨髄穿刺が行われる.しかし適応を考え慎重に行わないと無意味な検査となり,かつ思わぬ合併症をもたらすことがある.今回は筆者らが日頃ベッドサイドで行っている経験から,骨髄穿刺のコツと注意点について述べることとする.

米国家庭医学の発展・4

プライマリ・ケアの普及をなにが阻害しているか—GPレジデンシー失敗の教訓

著者: 木村隆徳

ページ範囲:P.2634 - P.2635

 真に包括的診療をより広く普及するために問題となる点が3つあります(表).第1はプライマリ・ケア医の医療社会における地位が低いことであり,第2はプライマリ・ケアなるものの適切な概念,したがって教育の機会が十分でないこと,第3は実地診療の状態の問題であります.
 このうち,第2の教育概念に関しては次第に関心と理解が高まりつつあると思われますが,総合臨床医の正式な教育は日本においては一昨年やっと開始したばかりであります.米国では家庭医学なる総合臨床科が正式に発足してすでに13年目となり,全米の医学部の88%に設置され,家庭医学専門医養成のためのレジデントは急速に設置拡大され,そのレジデンシーの数は内科に次ぎ米国第2番目に多く386を数え,レジデントの数は内科,外科に次ぎ第3番目で6,344名で(レジデント1年生のみをとると第2番目に多数),これは全米レジデントの10.3%(レジデント1年生のみでは13%)を占めます1)

特別掲載

日本におけるバイオフィードバック研究—治療と教育に関して

著者: 平井久

ページ範囲:P.2637 - P.2641

 日本でバイオフィードバックの研究が始められてから,約10年になる.バイオフィードバックの研究には,基礎研究もあるが,近年脚光をあびるようになった治療と教育の場面における研究もある.本稿では,ここ約5年間における,この方面の治療研究を紹介し,若干の問題点にふれたい.

天地人

兎(ウサギ)雑感

著者:

ページ範囲:P.2629 - P.2629

 小学生の頃,兎を飼ったことがあった.白い毛に赤い眼をした兎が,子供心には何よりも可愛らしく映ったものだ.10歳の少女には猫の媚は分らない.犬ときたら,折角のスカートを無邪気に汚してしまう.
 その昔,因幡の白兎は,ワニをだまして皮をむかれ大層痛い目をし,大国主命に助けられている.兎君は,痛みに満ちたこのepisodeを以後の生活に益とすることが果して可能であっただろうか.

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VIA AIR MAIL

著者: 福井次矢

ページ範囲:P.2630 - P.2633

Accreditation Systemによって一定のレベルであることを厳しく審査される教育病院,大きい精神科医の役割,教えさせることで教育する姿勢など

「medicina」第19巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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