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雑誌目次

雑誌文献

medicina19巻2号

1982年02月発行

雑誌目次

今月の主題 感染症と免疫

理解のための10題

ページ範囲:P.284 - P.286

感染症の診断

発熱の鑑別診断

著者: 町野龍一郎

ページ範囲:P.210 - P.212

 医師を訪れる患者は,まず体温を測ることによって大きく平熱患者と発熱患者に分けられる.さらに発熱の程度により,微熱,中等熱,高熱に区別される.第一線の実地診療では,1〜3日の短期間の発熱が大部分であるが,4日以上発熱が続けば,体温表を作ることが望ましい.
 一方,体温表はおおまかに平熱性熱型,微熱性熱型,中等熱性熱型,高熱性熱型に分類される(表1).それぞれの熱型は,それぞれの疾患群と結びつく性質がある(図1).これが熱型による鑑別診断の基礎である.

病態スクリーニング検査の考え方

著者: 河合忠

ページ範囲:P.214 - P.215

 感染症を診断する場合,もっとも確かな方法は病巣から病原体を分離・同定することである.しかし,分離菌が必ず病原体であるとは限らない.また,感染後日時が経過したり,検査以前に抗生物質などが投与された場合には病原体の検出が不可能となる.このように,患者から病原体を分離・同定することがすべての感染症で可能なわけではない.そこで,感染症の間接的な診断法として,病原体の感染によってひき起こされる生体反応を検索することが行われている.生体反応に基づく臨床検査は大きく,①非特異的反応と,②血清学的反応に分けることができる.前者の非特異的反応はとくに病態の把握に役立ち,以下に主としてこの点を中心に述べる.血清学的反応によるのが,他項でとりあげられる血清診断である.
 感染症においては,感染病巣あるいは遠隔臓器に多かれ少なかれ組織の破壊があり,それに対応した生体反応が現れる.臨床的に重要な検査所見としては,血液像の変化,赤沈値の亢進,および血漿蛋白の変動である.これらの変化は感染症に特有なものではないが,くり返し検査することによって病態像を把握するのにきわめて有用である.

血清診断

著者: 伊藤忠一

ページ範囲:P.216 - P.217

 感染症の診断にとって最も重要でかつ確定的なことは,Kochの3原則を待つまでもなく病原微生物を検出し同定することであるが,すべての感染症でこれが可能であるとは限らない.ここに感染症における血清検査の臨床的意義がある.
 微生物に感染し発病すると,感染宿主にはいろいろの変化が起こる.その1つが免疫応答反応であり,血清診断は免疫応答にその基礎をおいている.

エンドトキシン検査

著者: 河合忠 ,   田村弘志

ページ範囲:P.218 - P.219

エンドトキシンの構造と生物活性
 エンドトキシンは,グラム陰性桿菌の外膜を構成する成分の1つであり,分子量が約100万のリポ多糖で,図1のような構造をもっている.エンドトキシンの生物活性は多岐にわたり,表1のごとくまとめることができる1).これらの生物活性のほとんどすべてが分子量数千のLipid Aに局在しており,この部分の化学的修飾によって生物活性と化学構造との関係が解明され始めている.

好中球機能検査

著者: 粕川禮司 ,   宮田昌之

ページ範囲:P.220 - P.222

好中球の機能
 好中球機能には,大きく分けて,遊走能,貪食能,殺菌能の3つの機能がある.
 遊走能 好中球は,それ自身で随意的遊走運動をしているが,遊走因子(chemotactic factor)に出合うと,その因子に向かって直線的に移動する.この遊走因子には,細菌が出す菌体外成分や細胞の内容物などとともに,抗原抗体反応により活性化した補体成分があり,C3a,C5a,C567成分は白血球遊走因子の活性をもっている.

非特異的防御機構

オプソニンなどの血清因子

著者: 大国寿士

ページ範囲:P.225 - P.227

 生体に侵入した異物を,細胞が摂取することにより,この異物に対する生体の防御が成立するとしたMetchnikoffの卓越した認識に基づき,感染防御における食作用(phagocytosis)の重要性にその理論的根拠が与えられ,また細胞性免疫の概念に対する基盤が確立された.そして食作用の反応機構は,基本的には異物に対する食細胞(phagocytes)の認識に深く関わっているであろうという考えへと発展した.確かに食細胞は直接ないしは間接的にselfとnon-selfあるいはselfとeffeteself(変化した自己組織)を認識し,その認識機構は生物学的にきわめて重要な問題をはらんでいるが,そのメカニズムスの全貌はいまだ十分に明らかにされていない.
 一方,感染防御に対する生体の反応は,非特異的ならびに特異的の2つに大別され,前者はとくに先天免疫ないしは自然免疫(innate immunity of natural immunity)とも呼ばれるが,この免疫機構の成立には多くの因子が参加しているようにみえる.

インターフェロン

著者: 海老名卓三郎

ページ範囲:P.228 - P.229

インターフェロン(IFN)の種類
 インターフェロンには,現在その抗原性の違いにより3種類があることが知られている(表).このうちIFN-αとβは遺伝子工学により,その遺伝子全構造が決められ,166個のアミノ酸から成り立っていることがわかった.先ほどの国際ウイルス学会で,IFN-βにおいて1つのアミノ酸が変わっただけで(141番目のcysがtyr)細胞への吸着ができず,抗ウイルス活性を示さなくなることが発表された.動物細胞で産生されたIFNは蛋白に糖がついた糖蛋白と考えられるので,遺伝子工学によって大腸菌で産生させたIFNが単純蛋白であることから,その生物活性が心配された.ところがGoeddelらは,人白血球由来IFNのDNAを,プラスミドのpBR 322に挿入し,大腸菌で産生させたIFNが脳心筋炎ウイルスのサルへの感染を防御したことを報告し1),糖がなくても生物活性があることがわかった.スイスのWeissmanのグループは,白血球由来のIFN-αと遺伝子工学によって得た大腸菌産生のIFN-αを,ワクシニアウイルスのサルへの感染系で比較したところ,ともに感染を防いだが,発熱などの副作用は大腸菌由来のIFNのほうが少ないことを示した2).すなわち,遺伝子工学によって大腸菌で産生させたIFN-α,IFN-βが臨床に使える見通しがついた.

NK細胞

著者: 押味和夫

ページ範囲:P.230 - P.231

NK細胞とは
 natural killer(NK)細胞とは,抗原によってあらかじめ感作されることなく,試験管内で標的細胞を障害するリンパ球である.ヒトNK細胞は細胞質に小顆粒を有する大型のリンパ球で,末梢血白血球中に数%含まれ,その臓器分布をNK活性でみると,末梢血や脾臓に多く,リンパ節に少なく,骨髄や胸腺には認められない.ヒトNK細胞は非付着性,非貪食性で,表面免疫グロブリンは陰性であるが,抗T抗体で認識される抗原やIgGのFc部分に対するレセプターを有し,ヒツジ赤血球と弱い親和性を持つものが多い.これらの成績から,NK細胞がT細胞系に属するリンパ球であることが推測されるが,胸腺欠損のヌードマウスにNK活性が高いことなど種々の点で成熟T細胞とは異なっている.マウスの骨髄細胞由来の前単球にNK様活性があることや,ヒトの単球と共通の抗原がNK細胞に存在することから,NK細胞には単球,マクロファージ系の細胞が含まれる可能性が否定できない.
 NK細胞はADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)によって標的細胞を障害する細胞と同一か,少なくとも重複する細胞集団に属する細胞であると思われる.ADCC作用はIgG・Fcレセプターを介して,NK作用はこれとは別の未だ性状不明のレセプターを介して,標的細胞に作用するとみなされている.

食作用

著者: 安倍千之

ページ範囲:P.232 - P.233

 感染防御機序において,細胞の食作用がその第一歩として働き,生体は非免疫および免疫の回路を介して対応している.皮膚あるいは粘膜といった感染防御機構の障壁を突破して組織内に侵入した細菌などの異物に対し,非特異的細菌因子や単球,マクロファージ,多型核白血球などの食細胞の集合が起こる1).食細胞の分化,異物認識,食作用機序,移動,殺菌作用,免疫,抑制と増強といった話題について論を進める.

補体系

著者: 稲井眞弥 ,   赤垣洋二

ページ範囲:P.234 - P.235

 19世紀末,補体は血清中に存在し抗体とともに殺菌または溶菌にあずかる易熱性の物質として発見された.補体に関する研究の著しい進歩により.補体はC1(C1q,Clr,C1sの3つの亜成分からなる),C4,C2,C3,C5〜C9の9つの補体成分,11種類の補体成分蛋白,補体の活性化やその生物活性に対する制御因子(inhibitor),およびalternative pathwayの反応にあずかる蛋白などにより構成される反応系であることで明らかにされている.
 補体はclassical pathway,alternative pathwayと呼ばれる2通りの経路で活性化される.classical pathwayは抗原抗体複合体,肺炎双球菌のC多糖体とCRPの複合体,ブドウ球菌のprotein AとIgGの複合体などにより活性化され,C1,C4,C2,C3,C5,C6〜C9の順序で反応がすすむ,alternative pathwayはザイモザン,グラム陰性菌内毒素のリポ多糖,グラム陽性菌の細胞壁などにより活性化され,C1,C4,C2の反応段階を経ず,C3より直接,反応がすすむ.このalternativepathway系には,C3〜C9の補体成分以外にB因子,D因子,プロパージンも関与し,C3b inactivator,β1Hグロブリンが活性化を制御している.

キニン系とその周辺

著者: 恩田昌彦 ,   代田明郎

ページ範囲:P.236 - P.237

 いずれの組織においても,細菌の感染によって細菌の増殖が起こると,病巣部には多かれ少なかれ炎症起転が起こってくる.
 炎症はそれ自体が感染防御機構の主体をなすものであるが,この炎症をmediateする物質として種々なもの,すなわち炎症のchemical mediatorがあげられている.これらのchemical mediatorは,生体に炎症をきたすような刺激が加わった際に生体反応の結果としてできる物質で,それによって炎症が発生し進展する.このようにして誘導された炎症は,感染の波及,さらには感染の回復にきわめて重要な役割を演ずるものである.

特異的防御機構

細菌感染

著者: 見明俊治 ,   武谷健二

ページ範囲:P.238 - P.239

 宿主に細菌が感染すると,免疫学的な感染抵抗性が成立する.この免疫は,体液性免疫と細胞性免疫の2つに大別できる.一般に,結核菌などの細胞内寄生性細菌は細胞性免疫を誘導し,それ以外の菌は体液性免疫を誘導しやすいものと考えられている.本稿では,生体の持つ抗原特異的感染防御機構について概説する.

ウイルス感染

著者: 中尾亨

ページ範囲:P.240 - P.241

 ウイルス感染に対する生体の特異的防御機構としては,①局所抗体,②液性抗体,③細胞性免疫,に大別される.
 ウイルスが人体に侵入して発症に至るまでの過程として,ウイルスが粘膜に吸着→侵入→成熟・組立て→放出をくり返して増殖していくが,粘膜への吸着,侵入に対して,局所抗体は大きな役割をなしている.

粘膜の防御機構

著者: 川名林治 ,   宮杜牧人

ページ範囲:P.242 - P.243

感染と発症
 感染症の成立のためには,①病原微生物,②感染経路と侵入門戸,さらに③感受性のある個体,が3大要因として知られている.
 病原微生物は,黄色ブドウ球菌,赤痢菌,梅毒トレポネーマ,インフルエンザウイルスなど,強毒のものとして従来から知られているもののほか,最近は,表皮ブドウ球菌,緑膿菌,セラチア・マルセッセンスやカンジダ・アルビカンスなど,日和見感染菌として注目される弱毒菌があり,多種である.

特殊な感染症

Opportunistic Infection

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.244 - P.245

 opportunistic infectionは日和見感染と訳されている.感染の成立は微生物と生体(宿主)との相互関係で決まる.生体側の感染防御能が低下すれば,病原性が乏しい,健康人にはほとんど無害な微生物でも感染することになる.かかる平素は無害な微生物(opportunistic pathogen)による感染が日和見感染といわれる.かつて弱毒菌感染という言葉が用いられたが,opportunistic infectionという英語がわが国に紹介されてからは,この英語または日和見感染という訳語が,わが国で広く使用されるようになった.
 opportunistic infectionは感染防御能の低下した生体に見られる感染であるから,かかる生体(compromised host,誘感宿主という訳語もある)は病院に多いので,病院感染として見られる場合が多い.また悪性腫瘍,白血病,膠原病などの重篤な基礎疾患を持つ患者の末期に,いわゆる終末感染として起こることも多い.あるいはまた,慢性感染症の化学療法中に菌交代症として見られることも少なくない.

病巣感染としての習慣性アンギーナ

著者: 斎藤英雄 ,   野田寛

ページ範囲:P.246 - P.247

病巣感染とは
 病巣感染とは,細菌を有する限局性慢性炎症巣の存在によって惹起される疾病で,この場合炎症巣自体はたいした症状を示さないか,あるいは時にわずかに活動する程度であるのに,この病巣と直接連絡のない遠隔の部位に,一定の器質的組織変化ないし機能的障害を呈する反応,すなわち2次疾患が起こることを意味する(Gutzeit-Parade1939).
 この原病巣として扁桃は,歯牙,副鼻腔,中耳,気管支,胆嚢,虫垂,大腸,前立腺,子宮付属器,リンパ節などとともに,とくに重視されてきている.

感染アレルギー

著者: 佐野靖之 ,   宮本昭正

ページ範囲:P.248 - P.249

 すべての感染症には多かれ少なかれアレルギーの関与がみられ,病原微生物曝露の時間や量と宿主の免疫状態の個体差に応じて,一方の極には純粋な感染症があり,他方の極には純粋な免疫があって,その中間にさまざまな反応性病態が存在すると考えられる.感染アレルギーは,一般に病原微生物の体成分,毒素ないしその産生物が抗原として作用することにより,感染宿主に免疫グロブリンやリンホカインでmediateされる体液性および細胞性免疫反応過程が生じ,特異的抗原抗体反応の結果惹起されるアレルギー症状といえよう.このほか,病原体に対する抗体と組織成分の共通抗原性による交叉アレルギーが組織障害を起こすことがあり,溶連菌感染による心筋炎あるいは糸球体腎炎などが知られているが,他項で述べられているので触れない.
 アレルギー反応は,GellとCoombs1)によりI型(アナフィラキシー型-IgE抗体),Ⅱ型(細胞溶解型-補体),Ⅲ型(Arthus型-免疫複合体),IV型(遅延型-細胞性免疫)に分類されている.感染アレルギーで主役を演じているのはⅢ型とIV型であるが,本稿においては主にⅢ型アレルギー反応に属する過敏性肺炎,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,PIE症候群など,呼吸器と関係の深いものについて述べる.

Slow Virus Infection

著者: 飛田清毅

ページ範囲:P.250 - P.251

概念
 通常の急性あるいは慢性のウイルス感染のほかに,著しく長い潜伏期ののちに発病する一連のウイルス性疾患があって,これをスローウイルス感染症(slow virus infection,遅発性ウイルス感染症)と総称する.スローウイルス感染は,表1のように定義される.
 現在知られているスローウイルス感染症の主なものを,表2に示す.

慢性肉芽腫症

著者: 松浦良二 ,   臼井朋包

ページ範囲:P.252 - P.253

定義
 慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease:CGD)は,食細胞の活性酸素生成能の欠損により,酸化的殺菌機構が破綻し,乳幼児期から反復する重症細菌感染を主徴とする疾患である1)

なまけもの白血球症候群

著者: 松浦良二 ,   臼井朋包

ページ範囲:P.254 - P.255

定義
 なまけもの白血球症候群(lazy leukocyte syndrome:LLS)とは,骨髄から末梢血中への動員障害による好中球減少症と,末梢血好中球のランダム運動と走化能低下により,乳幼児期より細菌に対して易感染性を示すものをいう.

Chediak-Higashi症候群

著者: 赤羽太郎

ページ範囲:P.256 - P.258

 Chediak-Higashi症候群は,先天性好中球機能不全症のひとつとして分類され(表),細菌感染症を反復する疾患である1).常染色体性劣性遺伝を示す.

感染症の予防と治療

予防接種の現状

著者: 平山宗宏

ページ範囲:P.260 - P.261

 昭和51年に予防接種法が改正となり,予防接種の種類や接種時期などが実状に合うように改められたが,その後5年の間に痘瘡の根絶宣言がWHOから出され,種痘が全世界的に中止できるようになり,わが国でも正式に定期接種から削除されたのをはじめ,改正時に定期採用がきまった風疹,麻疹が52年,53年と相次いで実現した.そしてかねてから改良の要望されていた百口咳ワクチンの精製品も実用化され,任意接種ながらおたふくかぜワクチンも登場した.このように,予定されていた事項がほぼ出揃った折であるので,これらのうち主な話題について述べる.

特異的γグロブリン製剤と適応

著者: 早川浩

ページ範囲:P.262 - P.264

 ある病原体に対して高度に免疫されたヒト,あるいはその疾患の回復期にあるヒトの血清から,その疾患に対して特異的に抗体価の高い免疫グロブリン製剤を得ることができ,これを特異ヒト免疫血清グロブリン(HISGと略す)という.このような製品は,抗体含有量が通常のヒト免疫血清グロブリン製剤より高いので,それが無効の疾患にも特異的に有効であると考えられる.
 現在わが国で実際に使用され,あるいは検討されている製剤と,米国などにおいて検討されている主な製剤の要点は,表1に示すごとくである.このほかにも研究中あるいは計画中の数種類があるという.

静注用γグロブリン製剤と適応

著者: 堀誠

ページ範囲:P.266 - P.268

 静注用γグロブリン製剤は,正常人免疫グロブリン(筋注用製剤)を起源とし,その抗体活性をできるだけ損なうことなく,種々の操作を行って静注可能のものにした製剤である.筋注用γグロブリンを静注すれば,製剤中に含有されている凝集体の作用により補体系が活性化され,抗原・抗体反応によらないアナフイラキシー様症状が出現する危険があること,筋注したγグロブリンは吸収,局所での異化,組織への浸透の程度に個人差があり計画的に抗体を投与することがむずかしい,さらに急速に抗体補給の必要のある場合や,大量のγグロブリンを筋注しなければならない場合,出血性素因があったり新生児など患者側の要因によりそれが不可能なとき,などの理由で静注用γグロブリン製剤が用いられる.

座談会

感染症と免疫をめぐって

著者: 南谷幹夫 ,   中尾亨 ,   秋山武久 ,   河合忠

ページ範囲:P.271 - P.282

感染症の成立 変わってきた感染症の臨床パターン 抗生物質の影響/ふえてきた難治性感染症/冬の病気になった乳幼児下痢症/粘血下痢便―まず赤痢以外のものを考える 細菌の種類も変わってきている 耐性菌の出現/思いがけない菌が検出される/免疫不全症の関与/ふえている新分野の仕事 感染症の防御機構 最初の第一線は非特異的防御機構/副経路を使った補体の活性化/明確に区別できない特異的・非特異的防御機構 食作用インターフェロン Natural Killer(NK)細胞 特異的防御機構 液性免疫と細胞性免疫/抗体が効く疾患は何か/ウイルスの伝播様式 細胞性免疫機構 細胞性免疫の最近の進歩/皮内反応の免疫学的説明 粘膜面での免疫機能 インフルエンザ生ワクチン/lgAは本当に局所免疫の主役か/悪者扱いされすぎているIgE抗体産生調節機構 T細胞のsubsetの解明/人間の免疫中枢はHLAのDおよびDR領域/遺伝子工学を応用した治療も夢ではない 免疫強化剤による感染症の予防と治療 γグロブリン製剤/静注用γグロブリンの効果/transfer factor/その他の免疫強化剤

カラーグラフ 臨床医のための腎生検・2 糸球体病変・2

膜性糸球体腎炎(腎症)

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.288 - P.289

 臨床的にはステロイド抵抗性のネフローゼ症状を示す.表のように小児にもみられるが,大部分は40歳以上,50〜60歳代が多く,20〜30歳代がそれに続いている.一般には男のほうが女より多いといわれているが,あまり差はない.小児は成人に比べて著しく少なく,寛解するもの,組織変化のよくなるものが成人より多い.膜性腎炎は原因不明なidiopathicなものが70〜80%であるが,他は全身疾患に伴った2次的なもので,原病としてはSLE,肝炎,梅毒,薬剤などがあるが,2次的なもので日常みられるものはSLEによるものが多い.
 光顕では図1のようにすべての糸球体にびまん性の係蹄壁の肥厚がみられる.この肥厚は上皮下のdeposit(図3電顕参照)によるもので,そのdepositの間に基底膜から新生基底膜が出ており,これを銀染色(図2)でみると棘状にみえspike(s)とよばれている.spike(s)は何年もたったものはたがいにつながり,よじれたロープ状になる.一般的にメサンギウム細胞の増殖はごくわずかである.糸球体の一部に硬化(segmental sclerosis)を示すものは完全寛解が期待できないとされている.

連載 演習

目でみるトレーニング 57

ページ範囲:P.291 - P.297

画像診断 心臓のCT・2

心房の拡張

著者: 太田怜 ,   林建男

ページ範囲:P.298 - P.301

 左房は,正面からみたとき,心臓の真後ろにあるので,単純なX線像では,その実際の大きさはきわめて解りにくい.

画像診断と臨床

縦隔腫瘍

著者: 小林進 ,   福田国彦 ,   川上憲司

ページ範囲:P.303 - P.311

症例1(図1〜6)
 患者 E. S. 50歳 男性
 主訴 顔面の浮腫

今月の焦点 対談

プロスタグランディンの臨床的意義

著者: 鹿取信 ,   塩川優一

ページ範囲:P.315 - P.329

 塩川 今日は「プロスタグランディン」について,わが国でもっとも先端の研究をしておられる鹿取先生に来ていただきました.私も臨床家の立場で,プロスタグランディンを応用することについて研究を行っています.そこで,プロスタグランディンの基礎と臨床ということで,この物質について話し合ってみたいと思います.しかし,非常に広般な問題ですから,限られた時間にどこまでお話しできるか,心配もしています.

講座 図解病態のしくみ 消化器疾患・24

Parenteral & Enteral Nutrition(3)—Protein-Calorie Malnutrition(その2)

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.331 - P.335

 先月号では,Protein-Calorie Malnutrition(PCM)の評価は従来の体重測定のみでは不十分であり,Triceps Skin Fold,Arm Muscle CircumferenceなどのAnthropometric Measurementsや,血清アルブミン,TIBC,TransferrinなどのVisceral Proteinの測定,さらにCreatinine Height IndexやNitrogen Balanceを測定することにより評価されるべきであることを述べた.そして,PCMの出現頻度は予想以上に高く,約50%の入院患者にPCMが出現していることも述べた.さらに,このPCMが,基礎疾患の治療効果の上がらぬ原因となるばかりか,死に至る重篤な合併症を併発する原因にもなることを述べた.
 このように,PCMは臨床上きわめて重要な問題であるにもかかわらず,その存在が認識されないことも少なくなく,その原因の1つにはPCMの臨床型として対照的なMarasmusとKwashiorkorの2つのタイプが存在し,同じPCMのカテゴリーとして認識されがたいことも一因と思えるため,今月号ではこのPCMの2大分類ならびにそれらの病態の相違について述べ,さらに,これらPCMの治療法の選択の方法について述べたい.

図解病態のしくみ 臓器循環・2

脳循環—解剖,生理,病態のまとめ

著者: 須永俊明

ページ範囲:P.337 - P.347

 脳循環を理解するために,脳血管の解剖と脳循環の生理と病態について,なるべく多くの表や図を用いて,解説しようと試みた.また,脳血流量の調節メカニズムについてのいろいろな因子の関与と,autoregulationと,これについてのメカニズムにも少しく触れた.

異常値の出るメカニズム・46 酵素検査(6)

血清酸ホスファターゼ

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.349 - P.354

酸ホスファターゼの臓器分布と細胞内局在性
 臓器分布
 酸ホスファターゼ(Acid phosphatase,AcP,EC 3.1.3.2)はアルカリホスファターゼ(AIP)とまったく同じで,次のようにリン酸モノエステルを加水分解する酵素である.
 リン酸モノエステル+H2O(AcP/pH5)→アルコール類+無機リン酸
 リン酸モノエステルとして使用されるフェニルリン酸(Kind-King法,単位はK・A単位),あるいはp-ニトロフェニルリン酸(Bessey-Lowryら法)についてもAIPの場合と同じであるが,しかしこの加水分解反応がpH約5の条件で行われる点がAIPと異なっている.

対談 外来診療・ここが聞きたい

尿路感染をくり返す片側尿管拡張

著者: 杉野信博 ,   村山正昭

ページ範囲:P.370 - P.373

症例
 患者 F. A. 41歳 女
 主訴 左側腹痛,発熱

診療基本手技

直腸指診のポイント

著者: 西崎統

ページ範囲:P.312 - P.312

 直腸指診は下部消化器系の症状のある患者のみならず,泌尿器科系や婦人科系の症状のある患者においても欠かすことのできない診察法である.まして入院患者においてはルーチンの身体所見の1つとすべきである.この診察は外来の診察台,あるいはベッドサイドなどにおいても簡単に行え,しかも数多くのインフォメーションを得ることができる.まして,直腸鏡を行う前には内部の状況や走行を知る上において必ず行うべきである.
 そこで,もう一度,肛門・直腸部の解剖をよく理解しておく必要がある.

オスラー博士の生涯・103

科学のパン種 その2—ペンシルバニア大学のウィスター解剖・生物学研究所開所式での講演(1894年)

著者: 日野原重明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.356 - P.361

 アメリカ合衆国のジョンス・ホプキンス大学医学部内科教授,ウィリアム・オスラーは,1894年5月2日にペンシルバニア大学に竣工したウィスター解剖・生物学研究所の開所式の講演を行った.演題は,新約聖書にある句から取られた"パン種"という言葉である.前回では,この大学の解剖学に貢献したウィスター教授の輝かしい業績を述べ,科学の進展のために基本的に貢献した医学者の生涯を讃えた.以下はその講演の後半である.

天地人

嘘かまことか

著者:

ページ範囲:P.355 - P.355

 誠心誠意嘘をつく……とは,いまは亡き二科会の領袖,東郷青児の言であったように思う.誠心誠意嘘で固めて女性を惑わし,誠意をもって嘘をついて別れる.既に交際の始まるときから別れを予想し,真心こめて嘘をついていくのが東郷式交際術,操縦術で,別れた後も,あまり恨まれることは無かったと聞いている.
 以前,私は一度だけ東郷氏に会ったことがある.といっても,面識があってのことではない.二科展の際に,私がかつて師事したことのある二科会の理事の清水刀根氏を上野の都美術館に訪ねた折,事務所にいた1人の偉丈夫が,「おーい,刀根,刀根さんはどこにいる」と,あちこち探し回ってくれたのだが,その人物が東郷青児であった.毀誉褒貶相半ばする画家であったが,戦後逸速く二科会を再建し,今日の基礎を築いた功績は大きい.誠心誠意嘘を……というのは,実はその嘘がいつかは真実となるものであったのかもしれない.嘘から出た実ともいう.ところで,氏の画業が近頃再び評価されてきているという.

洋書紹介

—McConnell, I.,Munro, A. & Waldmann, H.—The Immune System;A Course of the Molecular and Cellular Basis of Immunity, 2nd ed.

著者: 河合忠

ページ範囲:P.264 - P.264

新しい内容をコンパクトにまとめる
 本書の初版は1975年に出版され,今回の第2版は6年後に出版された.免疫学は,現在もっとも進歩の著しい分野の1つであるから,本書の内容も初版から大きく改訂されている.しかし,本書の特徴としての"簡潔さ"を引き続き踏襲しており,"読みやすさ"という点からは大変優れたものである,活字の大きさのわりには行間を十分とり,見出しも解りやすいのが印象的である.
 内容は,ケンブリッジ大学病理学教室が担当している免疫学の上級コースを基礎にまとめたものとのことである.したがって,内容はかなりup-to-dateであり,豊富なものになっている.しかし,300ページあまりにまとめられているので,かなり濃縮された内容を簡潔な文章で表現されている.ということは免疫学を初めて学ぼうとする人には難解であろう.むしろ本文は,免疫学の基礎知識をもった人に新しい免疫学の考え方を説明するようなものとなっている.ただ,初学者でもある程度解るようにとのことで,各部の初めに要旨が簡潔にまとめられている.このように,本書の文章はじっくり一語一語を味わって読むような努力を必要とするであろうが,適切な単語で要領よく新しい内容をコンパクトにまとめてあるという点では,他に類書がないのではなかろうか.

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VIA AIR MAIL

著者: 木戸友幸

ページ範囲:P.364 - P.368

大空洞をもつ結核患者.使える静脈のない麻薬患者.ときには病室で発砲事件.市長の目の敵Kings County Hospitalは魅力ある患者の宝庫

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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