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文献詳細

雑誌文献

medicina19巻2号

1982年02月発行

文献概要

天地人

嘘かまことか

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.355 - P.355

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 誠心誠意嘘をつく……とは,いまは亡き二科会の領袖,東郷青児の言であったように思う.誠心誠意嘘で固めて女性を惑わし,誠意をもって嘘をついて別れる.既に交際の始まるときから別れを予想し,真心こめて嘘をついていくのが東郷式交際術,操縦術で,別れた後も,あまり恨まれることは無かったと聞いている.
 以前,私は一度だけ東郷氏に会ったことがある.といっても,面識があってのことではない.二科展の際に,私がかつて師事したことのある二科会の理事の清水刀根氏を上野の都美術館に訪ねた折,事務所にいた1人の偉丈夫が,「おーい,刀根,刀根さんはどこにいる」と,あちこち探し回ってくれたのだが,その人物が東郷青児であった.毀誉褒貶相半ばする画家であったが,戦後逸速く二科会を再建し,今日の基礎を築いた功績は大きい.誠心誠意嘘を……というのは,実はその嘘がいつかは真実となるものであったのかもしれない.嘘から出た実ともいう.ところで,氏の画業が近頃再び評価されてきているという.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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