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雑誌目次

雑誌文献

medicina19巻4号

1982年04月発行

雑誌目次

今月の主題 狭心症とその周辺

理解のための10題

ページ範囲:P.674 - P.676

狭心症の種類

異型狭心症

著者: 片桐敬 ,   新谷博一

ページ範囲:P.600 - P.601

 異型狭心症(variant form of angina pectoris)は,1959年Prinzmetalらにより古典的狭心症(いわゆる労作狭心症)から分けられた狭心症の一型であり,安静時,夜間から早朝にかけて好発し,発作時の心電図に一過性ST上昇を示すことを特徴とする1).異型狭心症は欧米よりむしろ本邦において多数例が報告され,研究面でもすぐれた報告がみられる.1977年第41回日本循環器学会総会で本症に関するパネル・ディスカッション2)が催され,病態生理,治療面での進展がみられている.

不安定狭心症

著者: 木全心一

ページ範囲:P.602 - P.603

 狭心症という1つの立体的広がりをもった疾患を,どの断面で切るかによって分類が異なってくる.最も一般的なのは,労作によって分ける分類で,労作狭心症と安静狭心症に分けられる.この分類の基礎には,心筋酸素消費量の増加があるか否かがあるが,朝の洗面とか排便という日常動作で生ずるのを,どちらに入れるか議論がある.
 また,冠状動脈造影の普及により,冠状動脈の器質的狭窄とスパスムという,狭心症の発生機転より分けようとする立場もある.この立場から一歩踏み出して,労作狭心症と安静狭心症にそのまま,器質的狭窄と,スパスムをかさねようとすると無理がでてくる.労作狭心症の多くは,同じ程度の労作でも朝に頻発する.これは朝は冠状動脈のトーヌスが亢進している可能性を示唆している.

安定狭心症の予後

著者: 加藤和三

ページ範囲:P.604 - P.606

 狭心症は種々の観点からいろいろに分類されているが,近年は主として症状の安定性,進行性に基づく安定狭心症/不安定狭心症の分類が広く行われている.すなわち,狭心症のうち最近3〜4週間以内に新規に発症,再発ないしは症状の増悪をみたものを不安定狭心症とし,それ以外の安定した状態にあるとみなされるもの(安定狭心症)と対比する立場である.
 この分類は心筋梗塞の発生,急死の危険の大きい状態にあるものを,そうでないものと区別することを目的としており,後者である安定狭心症の予後は当然のことながら,不安定狭心症のそれより良好とみられる.しかし,一口に安定狭心症といってもその重症度,冠動脈障害の程度には大きな幅があり,それによって経過・予後に差を生じる.また合併症,危険因子や治療の適否,さらにA-Cバイパス術などによっても大きく左右される.

虚血性心臓病の診断

狭心症の問診

著者: 太田怜

ページ範囲:P.610 - P.611

 診断というものが,患者の病名を定めるということだけでなくて,同時にならばどうすればよいのかを決断するということになると,問診は不可欠のものである.つまりその場合は,問診が病名決定のためになされるのではなくて,その患者の背景を知るためになされるものであり,そのことが病名決定後の処置に大いに関係するからである.
 しかし,現在一般に行われている問診は,主として病名決定のためのものである.となると,問診不要のものも沢山ある.たとえば,像帽弁狭窄などは,仔細に聴診して心エコー図でもとれば,問診などしなくても確実にそれと診断できる.ところが,病名決定のためだけでも問診が不可欠な疾患がただ一つだけある.それが狭心症である.もちろん狭心症という病名決定のための補助手段も数多くあるが,しかし狭心症に関しては,問診が今でも主流であることに間違いない.

心電図—Holter ECGモニターによるもの

著者: 道場信孝

ページ範囲:P.612 - P.615

 Biometryとしての心電図の長時間記録(Holter Moniter:HM)は,Holterによってはじめられたが,その後多くの改良が加えられて,今日では日常の臨床で,非侵襲検査の有力な手段の1つとなっている.
 HMはもともと不整脈の診断のために開発されたものであり,その意味では十分な臨床的評価を得ているが,虚血の診断については当初のテープ心電計の特性が低周波性の信号に対して応答が不十分であったため,STの評価では限界があった.しかし,今日市販されているHMシステムのすぐれたものでは,臨床的にほぼ満足しうるST解析が可能である1).ここではIHDのマネジメントにおけるHMの使用目的,適応,運動負荷法との対比について述べる.

心電図—運動負荷試験

著者: 杉下靖郎

ページ範囲:P.616 - P.618

 虚血性心疾患の診断における心電図所見の重要性はいうまでもない,その中でも,運動負荷試験における心電図は重要な意味を有する.

心電図—虚血性心疾患にみられる脚ブロック

著者: 岡田了三

ページ範囲:P.619 - P.622

 虚血性心疾患の心電図診断には,通常異常Q,ST低下,T陰転などが役立ち,脚ブロックが合併すると,むしろ心筋虚血域の診断が不正確になる傾向がある.しかし脚ブロックの出現は,重篤な不整脈の前駆疾状となることや,虚血域の拡がりが異常に大であることを示すこともあるので,その臨床的意義はかなり重要である.
 図1は84歳,男で,従来高血圧があり3年前には心電図はA左端のように左心室肥大所見を示した.以後ときどき狭心症発作をくり返した.2.5年前に心電図はA中央のように前壁中隔梗塞所見となり,1ヵ月前にはA右端のように左脚ブロックとなった.QRSは幅の増人に比して波高は低い.その後次第に衰弱して死亡した.

心電図—虚血性病変による不整脈

著者: 外畑巖 ,   平田幸夫

ページ範囲:P.623 - P.627

 虚血性心疾患は高頻度に不整脈を合併する.また不整脈による突然死症例の基礎疾患の大部分は虚血性心疾患により占められており,心筋梗塞急性期のみならず安定型狭心症,陳旧心筋梗塞などの虚血性心疾患慢性期の患者においても不整脈の発生は大きな臨床的意義を有し,その評価は予後の推定や治療方針の決定に不可欠である.
 虚血性心疾患における不整脈の成因としては,傷害心筋の異常な電気的活動,虚血領域における電気的活性の不均一性,心室瘤のような限局的異常収縮部位の存在によって生ずる異常張力,虚血の程度の一過性変化や自律神経緊張の変化などの因子が複雑に関与する.この結果,虚血心における不整脈の発現様式は多彩であり,またほとんどすべての型の不整脈をもたらし得る.

心電図—ST・T偏位

著者: 金沢知博 ,   小野幸彦

ページ範囲:P.628 - P.631

 狭心症の病態は多彩であるが,基本的には一過性で可逆的な心筋虚血の表現にすぎない.
 心電図は,このような心筋虚血の発生を感度よく捉え,その程度,部位,ひろがり,さらに臨床経過を知るうえで,きわめて重要な客観的情報を提供する.したがって,狭心症の確実な診断のためには,まず狭心発作時の心電図が記録されなければならない.

心エコー図—動的運動負荷

著者: 松崎益徳 ,   楠川禮造

ページ範囲:P.632 - P.635

 近年,急速に発展してきた心エコー図は,Mモード法に超音波断層法two dimensional echocardiographyが加わり,心臓の大部分を定性的のみならず定量的にも観察することが可能となってきた.現在,非観血的に心腔の大きさや壁挙動,その壁厚の変化を経時的に計測できる方法は,心エコー図しかないといっても過言ではなく,とくに冠動脈疾患患者の急性な左室挙動の変化を,経時的に記録できることの臨床的意義は大きい.
 冠動脈狭窄を有する患者において,その狭窄血管により供給される心筋の挙動は,その心筋の酸素需要量と心筋への酸素供給量とのバランスにより規定される.過去に心筋梗塞の既往がなく,現在,虚血が進行していない時期には,狭窄冠動脈の支配下にある局所心室壁でも,その挙動は正常であることが多い.このような例は,局所心筋の酸素需要量と供給量とのバランスがcriticalなレベルで保たれているためである.したがって,このような患者では,安静時に心エコー図や心室造影などによる心室壁挙動の観察からは,狭心症を診断することは困難である.しかし,局所心筋の酸素需要量と供給量の両者いずれかを変化させ,そのバランスを崩すことにより局所心筋は容易に虚血に陥り,壁挙動にも異常が出現する.

心筋シンチグラム

著者: 西川潤一 ,   飯尾正宏

ページ範囲:P.636 - P.638

 虚血性心臓病に対する核医学的検査法としては,心筋に取り込まれる放射性医薬品(以下RIと略す)を使用する心筋シンチグラムと,血管床内に比較的長く留まるRIを使用して心内腔を描出し,心機能,局所壁運動などを診断する心プール検査に大別できる.ここでは,心筋シンチグラムを中心に,虚血性心臓病の診断における核医学検査の役割を簡単に紹介する.

冠状動脈造影法

著者: 須磨久善 ,   鈴木章夫

ページ範囲:P.639 - P.642

 虚血性心疾患の診断,治療における冠状動脈造影法の占める位置は,まさに未開のジャングルに足を踏み入れる探検家の持つ地図に匹敵するものといえる.それだけに地図を作製する者の技術と考え方が患者の生命に大きな影響を与え,1回の造影の成否,できばえが予後を左右することにもなる.本法が真摯なphilosophyを持ち,正しいトレーニングを受けた医師たちによって広く施行されるようになってはじめて,虚血性心疾患の治療がすべての病める人の手に届き,ACバイパス手術が普及し得るといっても過言ではない.本稿の意図するところは冠状動脈造影に携ろうとしている医師たちが,本法のもつ重要性と危険性を正しく認識して,すばらしい地図を安全に作製することができるようになることを切に念じるものである.
 技術的な面における詳細は各expertのtext bookを参考に,正しい指導を受けられたい1〜3)

治療

虚血性心臓病の運動療法と食事指導

著者: 藤田良範 ,   長谷川武志

ページ範囲:P.644 - P.645

 虚血性心臓病に対する運動療法は,冠状動脈硬化の予防や治療に役立つことが古くから知られており,近時その重要性もますます認識されている.冠硬化促進因子である高脂血症,糖尿病,肥満,高血圧などに対しては食事療法が最も重要であり,心臓病の予防と治療上,運動療法とならんで食事療法の重要性も指摘されている.

抗狭心症薬

著者: 鈴木恵子 ,   戸山靖一

ページ範囲:P.646 - P.647

 抗狭心症薬antianginal drugはいうまでもなく狭心症の治療に用いられる薬剤である.これは,①狭心症発作時の治療薬,②狭心症発作予防薬に分けられる.
 また薬剤の種類別では,①亜硝酸薬,②βブロック薬,③抗カルシウム薬,④冠血管拡張薬,⑤血小板凝集抑制薬,⑥抗トロンボキサンA2薬とがある.

血小板凝集抑制剤の使い方

著者: 山崎昇

ページ範囲:P.648 - P.650

 虚血性心疾患の発症進展における血小板凝集の病態生理学的意義については,多くの議論があるが,いまだ一定の見解は得られていない.しかし,冠動脈内膜の破綻とアテローマの崩壊,そしてそこから発生する血栓,さらには血管攣縮などが重要な因子と考えられている.
 1976年,Weiss & Aledortらによりアスピリンに血小板抑制作用のあることが報告されてから,心筋梗塞の発症,再発予防にアスピリンがひろく用いられてきた.

ACバイパス手術の適応

著者: 伴敏彦

ページ範囲:P.651 - P.653

 狭心症の外科的治療法である大動脈-冠動脈バイパス手術(aorto-coronary bypass,ACバイパスと略す)は,本邦においても着実にその地位を占めつつある.麻田らの報告によれば,1980年度には,1,235例のACバイパス手術が行われ,全心臓手術の約1/10を占めるに至っており,冠動脈造影法の普及により,さらにその数は増加するものと思われる.実際筆者らの施設でも,最近では年間200例余の体外循環症例の1/3が虚血性心疾患の手術である.
 しかし虚血性心疾患は,冠硬化症を原因としているものであり,ACバイパス術を行っても,将来の冠動脈硬化症の進行によって,あらたな病変の出現が起こりうるものである.したがって,ACバイパス術はあくまでpalliative operationであり,radical operationではないことを銘記することが肝要である.

バルーンカテーテルによる冠動脈拡張術

著者: 山口洋 ,   細田泰之

ページ範囲:P.654 - P.659

 I.内科医の立場から(山口 洋)
 外径の漸増するカテーテルを狭窄病変部に挿入し拡張しようとした試みは,Dotter, Judkins(1964年)1)により下肢動脈ですでに成功を見たが,Gruntzigは先端にバルーンを付けたdouble-lumen balloon dilating catheterを考案し,はじめは下肢動脈から2),次いで冠動脈の器質的狭窄に試み,その成功例を報告した(1977年)3)
 カテーテルを経皮的に挿入し動脈狭窄部を修復する技法であることから,Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty(略してPTCA)と名づけた4).その後,この技法は欧米各地で試みられ,ACバイパス術にかわり得る新しい冠血行改善術として注目されてきたが,実際は,その成功率,適応条件(患者の選択),それ以上に,合併症の問題で1つの壁に突き当たり,その功罪が真剣に検討されねばならない現況である5)

鼎談

狭心症と無痛性虚血性心臓病の薬物治療

著者: 春見建一 ,   村田和彦 ,   太田怜

ページ範囲:P.661 - P.671

労作性狭心症の場合 第1選択はナイトレート/ニトロールなら1日4回各1錠/プロプラノロールなら1日3〜4回各20mg/だめなら他の薬をかぶせる/若い人は症状に応じて減らす/ニトロ舌下錠は1日の錠数がかなり多くても大丈夫 狭心症を主訴とする大動脈弁閉鎖不全,狭窄症の場合 閉鎖不全,狭窄で狭心症が起これば手術/重積状態なら入院させてどんどんかぶせる/冠スパスムが原因ならCa拮抗薬/塗布剤も有効 不安定狭心症の場合 入院させてCa拮抗薬+ナイトレート+ヘパリン/抗凝血薬は本当に効くか/β遮断剤は使っていいか/強力な薬物療法は心筋梗塞を予防する 無痛性の虚血性心臓病の場合運動負荷が陰性なら他疾患を疑う/心電図の変化だけなら治療しない/いまのペルサンチンの使い方は正しいか/冠動脈造影で狭窄があれば冠拡張薬を/心電図に変化がなければペルサンチン+アスピリン/老人健診でST・T変化がみつかったら/フォローは1〜3ヵ月に1回の心電図で 心筋梗塞が治った後 原則的には薬を続ける/無痛性虚血性心臓病から心筋梗塞になる人は少ない/薬物治療は本当に必要か/代謝賦活剤は有効か

カラーグラフ 臨床医のための腎生検・4 糸球体病変・4

膜性増殖性糸球体腎炎

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.680 - P.681

 この型の腎炎は主として年長の小児にみられるが,成人でも数は少ないがみられる,臨床的に特徴的なのはいつまでも補体が低値を示すことで,低補体性腎炎とも呼ばれる.
 膜性増殖性腎炎(MPGN)は今回述べるtype Iと次回に述べるtypeII(dense deposit GN),typeIIIに分けられている.

連載 演習

目でみるトレーニング 59

ページ範囲:P.683 - P.689

画像診断 心臓のCT・4

心室瘤

著者: 太田怜 ,   林建男

ページ範囲:P.690 - P.694

 心室瘤は,心電図上ST上昇がいつまでも持続することによって,それと推測できるが,単純な心X線像で心室瘤を知るのは実際には困難である.しかしCTによれば,左室の不規則な辺縁から容易にそれを認めることができる.もちろん造影剤を併川することによって,菲薄になった中隔や心室壁をより明確に見出し得るが,それについてはenhanced CT像のところで後述するとして,ここでは単純CT像で認め得た心室瘤の例を供覧する.

画像診断と臨床

心大血管(I)

著者: 小林進 ,   福田国彦 ,   川上憲司

ページ範囲:P.697 - P.705

症例1(図1〜7)
 患者 L. S. 61歳 男性
 現病歴 昭和53年6月下痢を主訴に某医受診した際,左下腹部腫瘤を指摘された.昭和53年7月精査目的にて当科受診した.

今月の焦点 対談

Oncologyとは何か

著者: 北原光夫 ,   片山勲

ページ範囲:P.706 - P.717

 北原 今日は,アメリカにおいて行われているOncologyすなわち腫瘍学というものについて,向こうで病理,とくにリンパ腫の権威であると同時に,癌の治療面にも詳しい片山先生とともに,簡単にご紹介してみたいと考えております.
 まず臨床的な面での癌の良専門医の役割は何かという問題からはじめたいと思いますけれども,片山先生アメリカにおけるtumor boardつまり腫瘍委日会の役割と,その教育上の目的は何かという点についてお話しください.

講座 図解病態のしくみ 消化器疾患・26

Parenteral & Enteral Nutrition(5)—Protein-Sparing Therapy

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.719 - P.726

 先月号では,必要カロリー量および蛋白質量の算出法,そしてProtein-Calorie Malnutritionの合理的治療法の選択について述べた.今月号では,それらの治療法のうちの1つであるProtein-Sparing Therapyにっいて述べたい.このProtein-Sparing Therapyは先月号で述べたごとく,一過性の半飢餓状態にある患者で,しかも体重が理想体重の90%以下でないなど,栄養不良状態の程度が軽度である場合に,骨格筋からのアミノ酸の遊出を防ぎ,Protein-Calorie Malnutritionの出現の予防または増悪を防ぐ目的で施行される治療である.すなわち,このProtein-Sparing TherapyはMaintenance Prevention Therapyであり,重篤なProtein-Calorie Malnutritionの出現を予防するための早期療法であって,その臨床的意義は大きい.
 以下,このProtein-Sparing Therapyの病態生理,治療法の選択および適応,そして治療上のポイントなどについて述べたい.

図解病態のしくみ 臓器循環・4

肺循環—解剖,生理,病態のまとめ

著者: 須永俊明

ページ範囲:P.729 - P.733

 右心室から出た静脈血が,肺動脈系を通って,肺毛細血管に移行して,肺胞において,肺胞気との間で,ガス交換を行って,動脈血となって,肺静脈,左房を通って,左室に入って大動脈系に入ってゆく.これが肺におけるガス交換による動脈血化であり,肺の最も重要な機能である(図2).
 肺循環は,体循環と異なって,非常な特性を有している.それは,機能上からも考えられるように,(1)肺血管系の血管抵抗が小さい.(2)肺動静脈系では,動脈系に大量の血液を含んでいる.このために,動脈系の伸展性が大きく,収縮性が比較的少ない.(3)また伸展性が大きいことの他に,静水圧的な因子血流に大きい影響をあたえている.これらの循環上の特性を背景として,最も重要な機能であるガス交換による動脈血化を行っている.

異常値の出るメカニズム・48 酵素検査(8)

血清5'-ヌクレオチダーゼ

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.735 - P.739

5'-ヌクレオチダーゼの特徴とその測定
 欧米,とくにアメリカにおいては血清5'-ヌクレオチダーゼ(EC 3.1.3.5,5'-nucleotidase,系統名5'-ribonucleotide phosphohydrolase,以下5'-Naseと省略)の測定がアルカリホスファターゼ(AIP)と同様に広く行われているが,わが国で測定している臨床施設はまれである.この理由はまた後で述べることとし,まず本酵素の特徴と測定法とを簡単に紹介しておく.
 5'-Naseは5'-AMP(adenosine 5'-monophosphate),あるいは5'-IMP(inosine 5'-monophosphate)といった5'-リボヌクレオチドの加水分解(脱リン酸化反応)を触媒する酵素として知られている.

外来診療・ここが聞きたい

大動脈弁置換術後,頭痛と顔面麻痺のある例

著者: 井上清 ,   村山正昭

ページ範囲:P.740 - P.743

症例
患者 Y. S. 37歳 男
主訴 頭痛,右顔面神経麻痺

診療基本手技

中心静脈カテーテルの挿入法

著者: 高尾信廣

ページ範囲:P.608 - P.608

 近年,ベッドサイドにおいて目覚しい普及を示したものの1つとして中心静脈カテーテルがある.
 その絶対的適応として,①中心静脈圧測定,②高カロリー輸液,③緊急時の静脈確保があげられる.しかし,末梢静脈の確保が非常に困難な患者や,患者の体動が激しい場合などでも用いられるようになり,適応が拡がってきている.

第166回呼吸器臨床談話会

Coin lesionの鑑別診断をめぐって

著者: 北村諭 ,   森成元 ,   岡安大仁 ,   岩井和郎 ,   杉山幸比古 ,   田中元一 ,   芳賀敏彦 ,   細川芳文 ,   鈴木光 ,   谷合哲 ,   巽浩一郎 ,   工藤翔二 ,   鈴木俊雄 ,   和泉孝志 ,   和穎房代 ,   林隆司郎 ,   白木るい子 ,   松井泰夫

ページ範囲:P.744 - P.760

 北村(司会) まず,coin lesionの定義ですが,胸部X線写真上,直径6cm以下の孤立性の肺結節を,通常肺のコイン型病巣,coin lesionと称する.その形状は多様であるが,類円形であることが多い,ということで表1にその診断基準を示しておきました.
 また,Fraserを基にして作ったcoin lesionの鑑別診断が表2です.

オスラー博士の生涯・105

古き人文学と新しき科学 その1—1919年5月,オクスフォードでの古典協会の会長講演

著者: 日野原重明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.768 - P.777

 この講演は,オスラーの死亡の7ヵ月前の1919年5月に,オクスフォードで催された古典協会(ClassicalAssociation)の総会の席上で,この協会の会長として行われた講演の全文であり,1919年のBritish Medical J.(1919年ii号)に掲載されている.
 この協会は,ギリシャ・ラテン語を心得た古典文学者を中心とする文化人の集りであるが,オスラーのうんちくが,その謙虚な言葉での講演ににじみ出ている感じである.この講演の原稿は病床にありがちのオスラーが半年間にわたって少しづつ書き上げたもので,彼の最も準備された最後の講演である.

天地人

203高地

著者:

ページ範囲:P.767 - P.767

 もう慣れてしまったが,男の子がベートーヴェンのような長髪になるとは思いもよらなかった.そのような親父にとって,高校生の息子の長髪は不快きわまりない.だから髪を短くしろというと,息子が泣いて厭がるそうである.緑なす黒髪の乙女ではあるまいし,それで泣く息子もどうかと思うが,高校生仲間ではごく当り前になっている息子の長髪に目くじらを立てる親父の時代感覚にも首肯しがたいところがある.髪型などは,所詮ネクタイの幅と同じことで,是非善悪で論ずるものではない.単なる流行にしかすぎないことではないか.
 夏目漱石の小説の挿絵にでてくる明治の乙女の髪形は,例の203高地と呼ばれる廂髪である.それまでは,娘は桃割,人妻は丸髷の時代だから,当時としてはモダンな髪であった筈である.しかし,その乙女が成長してというよりは年を老って,乙女の域をとっくにすぎてしまっても,彼女らはこの髪形を捨てられないでいる.大正・昭和となって,その時々のモガ達が,耳かくしとなり断髪となり,やがてパーマの時代になっても,明治の乙女は相変わらず203高地を頭にいただいている.その頃は,明治の乙女も流石に老女だから,昭和初期となれば,203高地は老女の髪形である.老女の髪形として定着したとすれば,それはそれなりに意味があるだろうが,それを目的として定着したのではない.

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VIA AIR MAIL

著者: 芦澤哲夫

ページ範囲:P.762 - P.765

学生時代から実戦的教育をつんだ米国人に混じり,語学に苦しみ,人種的偏見に悩み,癌の宣告に動揺し,不勉強を恥じながら送ったインターン生活

ECHO

著者: 松井瑞夫 ,   豊川裕之

ページ範囲:P.780 - P.781

 Q 岐阜県郡上市に住む某歌手は幼児期に罹患した高熱のために視力障害を起こしたと聞きましたが,たとえば単なる感冒などによる高熱のみで視力障害を起こすものでしょうか,実際は他に視力障害を起こすような原因,たとえば麻疹脳炎などがあったのかどうか.ただし,この歌手は脳神経症状は伴っていないようです.時々このような症例に遭遇しますので,眼科の先生にお答えをいただきたいと思います.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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