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天地人
203高地
著者: 天
所属機関:
ページ範囲:P.767 - P.767
文献購入ページに移動夏目漱石の小説の挿絵にでてくる明治の乙女の髪形は,例の203高地と呼ばれる廂髪である.それまでは,娘は桃割,人妻は丸髷の時代だから,当時としてはモダンな髪であった筈である.しかし,その乙女が成長してというよりは年を老って,乙女の域をとっくにすぎてしまっても,彼女らはこの髪形を捨てられないでいる.大正・昭和となって,その時々のモガ達が,耳かくしとなり断髪となり,やがてパーマの時代になっても,明治の乙女は相変わらず203高地を頭にいただいている.その頃は,明治の乙女も流石に老女だから,昭和初期となれば,203高地は老女の髪形である.老女の髪形として定着したとすれば,それはそれなりに意味があるだろうが,それを目的として定着したのではない.
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