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今月の主題 癌治療の最前線 化学療法
Transcatheter Chemo-Embolization
著者: 神前五郎1 岡村純2
所属機関: 1大阪大学医学部・第2外科 2大阪大学医学部・外科
ページ範囲:P.1014 - P.1015
文献購入ページに移動従来,肝癌に対する姑息的治療としては全身投与,または動注による化学療法と肝動脈結紮術の2つがよく行われ,1年以上生存例も報告されてきた.しかし延命効果としての生存率を論ずるに足るだけの成績をあげるに至らず,肝癌の治療は大きな暗礁に乗りあげ,異なった治療の登場に期待がかけられていた.
14年前の脊髄動静脈奇形の治療,ひきつづいて消化管出血の治療のために用いられた経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)が,9年前ごろより腎癌の治療に応用されるに至った.このTAEを原発性肝癌に応用したのはGoldstein1)であるが,系統的な治療として行い,よい成績をあげているのは本邦山田ら2)である.筆者らは1979年来濃度dependentな薬剤を用いた抗癌剤one shot動注とTAEの併用(表題にあるtranscatheter chemo-embolizationのchemoは化学療法剤の動注を意味するchemoであって,化学療法剤に浸漬したあるいはそれを内包した塞栓材料を使うというchemo3)でないので,誤解されないことを望むが,とにかくこの言葉を以下TCEと略する)を非切除肝癌58例に行って1年生存率は56.2%4)と,これまでになかったよい成績があげられるようになった.
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