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雑誌目次

雑誌文献

medicina19巻9号

1982年09月発行

雑誌目次

今月の主題 腎疾患診療のトピックス

理解のための10題

ページ範囲:P.1634 - P.1636

診断

CT

著者: 川村寿一

ページ範囲:P.1558 - P.1563

 従来から,腎面像診断の主役はX線検査であり,ことに排泄性腎盂撮影(IVP)は腎疾患診断のスクリーニングとしての位置を占めてきた.通常,X線撮影像により腎を前後方向(前額面)から把握することに慣れてきたが,腹部CTの導入により腎を横断面からとらえられるようになって,新しい次元から腎の形態検査ができるのみならず,同一平面で腎と周囲臓器との関係も明らかにされた.
 CTは腎機能に関係なく腎イメージがえられることを特徴とし,IVPに使う造影剤に対する副作用がなければ容易に用いられる.しかし,被曝線量の多いことは考慮しておかねばならない.

超音波検査

著者: 川村寿一

ページ範囲:P.1564 - P.1572

 腎機能に左右されないで,腎形状の描出のために,腎の超音波診断は患者に負担をかけないで,手軽に行える利点をもっている.X線検査を除いた画像診断法のうちでは,本法は各種腎疾患診断のスクリーニングに用いられている.しかし,腎の生体内に占める位置から,必ずしも常に腎の全貌を描出できるとは限らない.

RI(レノグラム)

著者: 小磯謙吉

ページ範囲:P.1574 - P.1575

 1956年Taplinらによって放射性同位元素がはじめて腎疾患の診断に用いられた.以後,新しい標識化合物の開発,測定器機の進歩によって現在この分野は腎・尿路疾患の診断,治療効果の判定,臨床経過の追求などにもその適用範囲が拡大してきている.現在,この分野は①レノグラフィー(renography),②腎映像診断(renal imaging),③腎機能検査(renal function study),④膀胱撮影(radionuclide cystography)に分類することができる.本稿ではレノグラフィーを中心に概説する.

腎生検—とくにIgA腎症

著者: 大野丞二

ページ範囲:P.1577 - P.1580

腎生検の意義
 1951年Iversen,Brun1)により腎生検がはじめて腎疾患の診断に導入されて以来,本法の腎臓病学の発展への貢献度はきわめて大きく,腎生検なしに今日の腎臓病学は考えられない.
 すなわち原発性ならびに2次性糸球体疾患や間質性腎炎の診断,重症度の判定,治療法の決定,予後の推定などにきわめて重要な情報を提供し,かつ免疫血清学的手法をはじめ各種検査法の進歩と相まって病変の成立病理の理解の上でもその果たす役割はきわめて大きい.

蛋白尿の分析

著者: 大山邦雄 ,   本田西男

ページ範囲:P.1582 - P.1583

 腎疾患と蛋白尿の関係はRichard Bright以後多くの検討がなされている.化学的,免疫化学的な技術の進歩により尿蛋白の分析も急速に発展した.一方,腎生検法の進歩により糸球体腎炎の診断も著明な発展をみ,組織変化と蛋白尿の関係について多くの検討がなされている.本稿では糸球体腎炎における組織変化との関連で,主に糸球体性蛋白尿と最近問題となっている腎組織由来蛋白尿について述べることにする.

薬物療法

ステロイド療法

著者: 酒井紀

ページ範囲:P.1584 - P.1586

 副腎皮質ステロイドは,腎疾患のなかでもネフローゼ症候群を呈する糸球体疾患の第1選択薬剤として,今日広く用いられている.
 その結果は,ネフローゼ症候群の治療成績を著しく改善させてきたが,しかし,ステロイド剤の投与量,投与方法,および副作用の対策などに未解決の問題も多い.

免疫抑制剤

著者: 長沢俊彦 ,   北本清

ページ範囲:P.1588 - P.1589

 糸球体腎炎は,遺伝因子と環境因子(細菌,ウイルス感染など)をtriggerとして免疫ネットワークの失調が起こり,糸球体局所においてI〜IV型アレルギー反応を生ずるために発症すると考えられている.免疫抑制剤はステロイド剤とともに,この免疫プロセスにおいて抗体産生抑制という本来の作用を発揮し,さらに糸球体局所における抗炎症作用を介して糸球体腎炎の治療に有効とされている.免疫抑制剤はステロイド剤にひき続いて,糸球体腎炎の有力な治療薬剤として登場し,一時かなり脚光を浴びたが,最近では糸球体腎炎の病型と免疫抑制剤の効果の対比が進み,意外に有効な病型の少ないことが認識され,かつ長期使用に伴う副作用もクローズ・アップされ,慎重に適応症例を選択して使用すべきであるというのが一般的な見解となっている.

抗凝固療法

著者: 東條静夫

ページ範囲:P.1590 - P.1591

 腎糸球体障害は,多くの場合免疫学的機序により発症し,その過程において,血液凝固線溶系が補体系,キニン・カリクレイン系とともに密接に関連し,さらに糸球体障害の進展,悪化に際しても,血液凝固線溶系が重要な役割を演ずるものとされている.
 かかる趨勢下に,現今諸種の腎糸球体障害に抗凝固・抗血小板療法が試みられている.

降圧薬,利尿薬

著者: 飯野靖彦 ,   椎貝達夫

ページ範囲:P.1592 - P.1593

 高血圧症治療における降圧薬の進歩は近年めざましいものがあり,作用機序に特徴をもったいくつかの薬剤が利用できるようになった.それに対して,利尿薬における進歩は現在ほとんど認められない.このことはすでにloop利尿薬で通常の浮腫はほとんど治療可能であり,それ以上強力な,あるいは作用機序の異なる利尿薬を必要としないためであろう.

慢性腎不全に対する保存療法

著者: 小出桂三 ,   遠山純子 ,   井上昇 ,   越川昭三 ,   秋沢忠男 ,   高橋健 ,   山根至二 ,   日高三郎 ,   田所昌夫

ページ範囲:P.1594 - P.1597

 血液透析を中心とする血液浄化法の進歩はめざましく,慢性腎不全患者に大きな福音をもたらした.しかし,わが国の慢性透析患者数は,昭和56年末ですでに40,000名を越し,なお毎年4,000〜5,000名の増加がつづいている.このため,透析医療費の増加は社会的問題となっており,慢性腎不全の進行を抑え,透析患者の増加をおさえる治療法の開発は社会的要請とさえなっている.また,慢性腎不全患者の心理として,できることなら透析療法の開始を遅らせたり,あるいはさけたいという強い願望がある.したがって慢性腎不全の保存的療法としての薬物療法の目的は,腎不全の進行を抑制し,慢性腎不全患者が透析に入るのを遅らせることにあると考えられる.従来の慢性腎不全の薬物療法は,主として腎不全の異常病態を是正するためのものであったが,最近,尿毒症の有害物質を除去し,腎不全の進行を抑えることを目的に,経口吸着用炭素製剤が開発された.
 本稿では,まず慢性腎不全に対する保存的療法としての薬物療法について記述し,ついで,現在筆者らが研究中の経口吸着用炭素製剤(AST 120)の昭和57年4月末現在における臨床治験成績の概要を報告したい.

透析療法

腹膜透析(CAPD)

著者: 石田裕一郎 ,   川口良人 ,   宮原正

ページ範囲:P.1598 - P.1601

 CAPDとはcontinuous ambulatory Peritonealdialysisの略であり,本邦では持続性可動性腹膜透析と呼ばれている.本項ではCAPDの歴史,方法,臨床上の評価,合併症,将来について述べる.

重曹透析

著者: 高橋健 ,   越川昭三

ページ範囲:P.1602 - P.1603

 近年,透析療法の進歩に伴い円滑な透析を妨げる臨床症状の発現を最小限度におさえる無症候透析を目標にいくつかの新しい治療法の検討がなされている.Hemofiltrationなどの新しい血液浄化法や高Na透析や重曹透析(以下BC透析)などがその代表例である.
 BC透析については,歴史的に振りかえれば,透析技術の開発初期にKolffらにより使用されたものの再検討にすぎない.KolffらはHCO3とCaやMgを混和するとpHの上昇により炭酸塩の沈殿が生じてしまうため,透析中CO2をbubblingし,pHの上昇を抑えて沈澱の発生を防ぐ方法を用いた.透析液のアルカリ化剤としては,その後Mion1)らによりアセテートが開発され,その使いやすさ(滅菌作用,溶解性,および経済性)から一般に広く用いられるようになった.アセテートは肝,筋,腎皮質などでAcetyl-CoAをへてTCA cycleに入りCO2とH2Oに変換されるが,体内での代謝処理能力以上にアセテートの流入のある場合や,その処理能力の低下している肝障害時などでは血中アセテート濃度が増加する.一般的には血中アセテート濃度が10mEq/lをこえると,その血管拡張作用により末梢血管抵抗が減少し,血圧低下などの透析不均衡症候群の一因となると報告されている2)

高Na透析

著者: 前田憲志

ページ範囲:P.1604 - P.1606

 不均衡症候群防止の意味から,高Na透析液が使用されるようになり,臨床上の効果をあげている.この方法の普及とともに,透析液はそのNa濃度により3つに大別されるようになってきた.すなわち,低Na透析液,等張Na濃度透析液,非生理的高Na透析液であり,おのおの特徴をもっている.症例の状態にあわせてこれらをうまく応用することによって,いわゆる透析困難症を防止し,全身状態の改善を促進することができる.

透析の合併症と対策

著者: 丸茂文昭

ページ範囲:P.1608 - P.1609

 血液透析の合併症は,透析治療行為と直接かかわる急性合併症と,長期血液透析患者に徐々に現われる慢性合併症とに分けられる.

糖尿病性腎症

著者: 原茂子 ,   三村信英

ページ範囲:P.1610 - P.1612

 近年透析療法の進歩に伴い,糖尿病性腎症腎不全例に対しても積極的に透析療法が行われ,原疾患別にみても慢性腎炎(CGN)についで第2位を占めるにいたっている.しかし長期生存率からみると,CGN例に比し不良である.
 当院での成績を中心に,糖尿病性腎症透析療法の現状と問題点を述べる.

膠原病による腎障害

著者: 詫摩武英

ページ範囲:P.1613 - P.1615

膠原病の腎障害
 数多い膠原病のうちで,全身性紅斑性狼瘡(SLE),全身性強皮症(PSS),結節性動脈周囲炎(PN),Wegener肉芽腫,Schönlein-Henoch紫斑病,Sjögren症候群,Goodpasture症候群の腎障害が臨床的に重要視されている.
 これら諸疾患のうち,PSSは悪性腎硬化症の組織像で,高血圧,蛋白尿,急速に腎不全に至ることがある.しかし現在透析中のPSS例は僅少である.PNは臨床的に細分類される傾向があるが,古典的なKussmaul-Maier型PNでは,腎の症状は肉眼的血尿,蛋白尿,発熱,高血圧などがある期間持続し,いわゆる腎梗塞のそれが主体であって,腎不全に至ることは比較的少ない.Wegener肉芽腫では最初に鼻咽頭の症状,次に腎障害,末期に肺病変が現れる順序を踏む.腎は剖検で細小動脈のPN像,糸球体係蹄の壊死,半月形成,肉芽腫などが記載されている.臨床経過は急速進行性腎炎(RPGN)のそれである.現今では鼻の症状で診断され,ステロイドが投薬されて,腎および肺への病変の波及が防止されるので,透析例はごく少数である.Schönlein-Henoch症候群では,腎生検組織についてIgA腎症との異同が論議されている.両疾患の発症年齢,他臓器の症状,難治性ネフローゼ,RPGN,腎不全に至る頻度を検討すれば,共通点は少ない.

その他の治療法

血漿交換療法

著者: 雨宮秀博

ページ範囲:P.1616 - P.1617

 1975年,LockwoodらによりGoodpasture症候群に対し血漿交換療法(Plasma Exchange,以下PEx)が行われ,これを契機として種々の腎炎にPExが試みられるようになった.この背景にはPEx施行に必要な血漿蛋白製剤や連続的血漿分離装置などの技術的進歩とともに,腎炎の免疫学的な発症機序に関する研究の進展が重要な役割りを果たしている.現在,腎疾患の多くは,腎糸球体基底膜抗体または尿細管基底膜抗体により惹起される腎炎と,免疫複合体(Immune Complex,以下IC)により生ずる腎炎とに大別されている.前者は,Goodpasture症候群,後者はループス腎炎がその代表的な疾患である.これらの抗体やICを除去できれば,理論的には腎炎の発症,進展を予防することが可能となろう.さらに,腎炎の進展には補体系や凝固系,その他の血中に存在する炎症促進因子の関与も考えられており,PExはこれらの物質をも除去低下させうるため,その効果が注目されている.
 本項ではPExの効果発現機序,腎疾患における成績などについて概略する.

腎移植と術前輸血

著者: 落合武徳

ページ範囲:P.1618 - P.1619

腎移植の現状
 日本移植学会の行っている腎移植臨床登録によると,1981年12月末までに日本で行われた腎移植の総計は2,059回で,そのうち死体腎移植は358回,生体腎移植は1,701回である.1978年から80年までの3年間は1年間約250例であったが,1981年の1年間には356例が行われた.このうち死体腎移植は1979〜1980年までは年間約50例であったものが,1981年はアメリカからの輸入腎があったりして118例に増加した.1980年に行われた腎移植の成績は,生体腎移植の1年生存率94.4%,移植腎の1年生着率77.4%,死体腎移植の1年生存率73.9%,移植腎1年生着率39.8%である.最近の腎移植後の生存率は施設によっては100%近いところもあり,手術そのものは安全に行われるようになってきている.
 移植腎の生着率の向上をさまたげている最大の原因は,免疫反応によってひき起こされる拒絶反応にある.今日までに拒絶反応を克服するために種々の努力がなされてきた.腎移植の成績に影響を与える因子として,donorやrecipientの年齢,性,人種,赤血球型,recipientの臨床状態,移植腎の状態,透析期間,recipientの患腎摘出の有無,脾臓摘出の有無,HLAの適合度,免疫抑制剤の種類などが考えられている.

慢性腎不全に対する食事療法と管理

著者: 阿部裕 ,   安東明夫 ,   三上裕司 ,   藤井正満

ページ範囲:P.1620 - P.1621

 腎不全とは,原因となる基礎疾患や種類に関係なく,腎機能の極度な低下により体液恒常性維持が不可能となった病態で,その発症のしかたにより急性と慢性を分かつ.慢性腎不全は,当然,腎疾患の慢性の経過によって生じるもので,その治療大綱は次の5点にある.すなわち,①体外からの負荷量の調節,②腎不全進行・増悪因子の除去,③合併した他臓器症状への対症療法,④人工臓器による内部環境の積極的是正,⑤臓器移植である.
 保存的管理下の慢性腎不全患者では食事療法が中心となり,その主目的は大綱の①であるが,他の治療目的の成否を左右する重要な因子でもある.また,最近では病態栄養学的見地から食事療法の重要性が指摘されているが,本稿ではこの病態栄養学的にみた腎不全の特性を述べ,これを食事療法の指針としたい.

座談会

腎疾患最近の話題

著者: 酒井糾 ,   加藤暎一 ,   東間紘 ,   広瀬賢次 ,   杉野信博

ページ範囲:P.1623 - P.1633

学校検尿と地域活動 実施方法とその組織/異常の発見とその後のfollow 小児腎疾患のパターンの変化 検尿の実施方法にも問題が/検査法の進歩による変化も 糖尿病腎症の早期診断と進行の防止 早期発見には蛋白尿の検出が第一/網膜症が出てからでは遅すぎる/進行防止は可能か/移植腎にも糖尿病性変化が起こる 糖尿病性腎症の病態と取り扱い 管理がむずかしい/タイプによって進行に差があるか/小児の糖尿病腎症 妊娠,出産と腎障害 腎機能からみて/形態面からみて/妊娠月数が進んだものに対して 小児の腎不全 成長自体が悪影響を/filtration fractionのバランスをとる/小児透析の進歩糖尿病性腎不全の食事管理 熱量の制限に固執することはない 腎移植の現状と展望 組織適合性検査と移植成績/拒絶反応の早期診断/化学的拒絶反応/原疾患の再発/新しい免疫制御の方法と成績/期待される免疫抑制剤

カラーグラフ 臨床医のための腎生検・9 糸球体病変・9

ループス腎炎

著者: 坂口弘

ページ範囲:P.1638 - P.1639

 SLEでは臨床的になんの腎症状がみられなくても,光顕,螢光,電顕で詳しくみれば糸球体にはなんらかの異常がある.光顕ではループス腎炎はほとんど変化のないものから,変化の強いものまでいろいろで,dense deposit GN以外のあらゆる型の腎炎のすべての時期の組織変化がみられる.そしてまた,後に述べるヘマトキシリン体以外,ループス腎炎と同様の組織像は他の膠原病でも頻度は少ないがみられる.したがって腎組織から"この人はSLE"である.という診断はできず,あくまでSLEと臨床的に診断されたものの腎の障害度を調べるのがSLEの腎生検の目的である.このように,症例ごとに腎生検をする時期によって組織像が少しずつ異なるので,いろいろな分類がされているが,わが国で広く使われているのはmesangial,focal,diffuse proliferative,membranousと分けたBaldwinのもので,筆者らはこれにminimal changeを加えて使っている.最近WHOでもう少し細かい分類が出された.
 図1はdiffuse proliferativeのもので,HE標本で係蹄壁が赤染,肥厚しwire-loop lesionと呼ばれている.これは図2の電顕でわかるように,内皮下にdensityの高いdepositの沈着したことによるもので,このdepositはメサンギウムにも沈着している.

連載 演習

目でみるトレーニング 64

ページ範囲:P.1642 - P.1649

画像診断 心臓のCT・9

心室瘤(II)

著者: 太田怜 ,   林建男

ページ範囲:P.1650 - P.1655

 4月号に単純CTでも心室瘤の発見されることを書いたが,左室壁の変形の著明でないときは,それを単純像では検出できない.また,左室壁が単に非薄になっただけで,心室瘤形成にまでいたっていない症例では,やはり単純CTでそれをみつけ出すのは困難である.このようなとき,造影CTは,それらを確認するのに有力である.

画像診断と臨床

脳腫瘍

著者: 田口芳雄 ,   木野雅夫 ,   川上憲司

ページ範囲:P.1657 - P.1666

症例1(図1〜5)
 患者 T. N. 39歳,男性(N-1990)
 家族歴,既往歴 特記すべきことなし.

今月の焦点 対談

性病の現況と新しい考え方

著者: 小野田洋一 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.1668 - P.1680

 岡本 本日は「性病の現況と新しい考え方」につきまして,長年にわたって性病に関する診療および研究をされておられる小野田先生とお話を進めていきたいと思います.

講座 図解病態のしくみ 消化器疾患・29

Parenteral & Enteral Nutrition(8)—Enteral Hyperalimentation(1)

著者: 松枝啓

ページ範囲:P.1685 - P.1692

 前回までにTotal Parenteral Nutritionの実際について述べたが,今回よりこの項のもう1つの主題であるEnteral Hyperalimentationについて述べたい.このEnteral Hyperalimentationは最近の種々のLiquid Dietの開発により施行がより容易になってはきたが,それらのLiquid Dietの特徴と,消化管における栄養素の消化・吸収の病態生理を正しく把握することにより,はじめて合理的な治療が可能であることを忘れてはならない.
 したがって,今月号では,まず消化管における栄養素の消化・吸収の病態生理を述べ,ついで現在使用されている種々のLiquid Dietの特徴,および個々の疾患におけるLiquid Dietの合理的選択法について述べる.

異常値の出るメカニズム・53 酵素検査・13

血漿リポ蛋白リパーゼとLCAT

著者: 玄番昭夫

ページ範囲:P.1693 - P.1699

酵素反応形式と測定法の原理
 リポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase,LPL,EC 3.1.1.34)とLCAT〈エルキャット〉(lecithin:cholesterol acyltransferase,EC 2.3.1.43)がもつそれぞれの臨床的意義はいささか異なるが,両者は脂質代謝の面で密接に関連した酵素であるので,今回は両者を一括してとりあげてみることにした.

コンピュータの使い方・3

病院管理,オフィス・オートメーション

著者: 三宅浩之

ページ範囲:P.1701 - P.1705

 前回は病院へのコンピュータ・システム導入の第一歩として,患者登録から診療データ入力による医事業務システムについて解説したが,今回はそれらのデータを中心に,さらに病医院の中で利用活用することを目的とする病院管理から診療への応用について考えてみることにしよう.
 医事業務システムが,診療料金計算のように患者さんの目の前ですぐに計算するオンライン・リアルタイムの即時処理と,1カ月に1回データを整理してまとめて作成するレセプトのようなバッチ一括処理があるように,蓄積データの利用でもオンライン・リアルタイムが必要な処理と,必要なときに一括処理ですむものがある.前回にコンピュータの機能とプログラムの性格を説明したので,この2種の処理で対応方式が違うであろうということはおわかりいただけたと思うが,今回はこのような処理時間を考えながら話を進めてゆくことにしよう.

外来診療・ここが聞きたい

高齢発症の慢性関節リウマチの外来治療

著者: 塩川優一 ,   村山正昭

ページ範囲:P.1708 - P.1712

症例
患者 Y. M. 71歳,女
主訴 左4指PIP腫脹,右栂趾変形,関節痛

診療基本手技

経口的気管内挿管

著者: 𠮷岡成人 ,   西崎統

ページ範囲:P.1706 - P.1706

 急性呼吸不全,難治性心不全などの救急患者の処理をする場合,まず心肺蘇生術を行うのであるが,正確に,しかもすばやく行わなければならない手技の1つとして,経口的気管内挿管がある.今回は,筆者らが日頃行っている挿管のコツを述べることとする.

米国家庭医学の発展・1

家庭医の訓練はお粗末か—米国家庭医学専門医の診療の実態

著者: 木村隆徳

ページ範囲:P.1682 - P.1683

 米国の病院で研修の後,家庭医学専門医の資格をとり,米国で15年余りの臨床を経験された筆者に,7回にわたって米国の家庭医学の実情を紹介いただく.

CPC

上腹部痛,黄疸,無尿を主訴とし,発症から10日ほどで死亡した63歳男性の例

著者: 藤田道夫 ,   小高通夫 ,   浅田学 ,   安達元郎 ,   野水眞 ,   登政和 ,   吉田象二 ,   奥田邦夫 ,   小方信二 ,   中村和之 ,   長尾孝一 ,   村上信乃 ,   近藤洋一郎 ,   井出源四郎 ,   佐藤勝則 ,   松崎理 ,   伊良部徳次

ページ範囲:P.1729 - P.1745

症例 63歳 男性 造園業
初診 昭和57年1月7日 即日入院
死亡 昭和57年1月15日

オスラー博士の生涯・110

トマス・ブラウン卿—その1.人物について(1905年10月12日 ロンドン市Guy's HospitalのPhysical Societyでの講演)

著者: 日野原野明 ,   仁木久恵

ページ範囲:P.1714 - P.1720

 ウィリアム・オスラー(1849-1919)は17歳(1866年)の時,カナダのオンタリオ州のウェストンの大学予備校に入学した.ウィリアムの両親は,この学校の牧師ジョンソンの感化を非常にうけ,オスラーは父のあとをついで牧師になる心の準備をうけたのである.ジョンソン牧師は生物学にも秀で,オスラーをさそって一緒に動植物採集に出かけ,顕微鏡の美しい世界にオスラーをひきこんだ人である.
 ジョンソン先生は,17世紀の医師であり,宗教家,思想家であるトマス・ブラウン(1605-1682)の名著「医師の信仰」(Relisio Medici)を生徒によく読んで聞かせたが,オスラーは若き時代に心を打たれたこのトマス・ブラウンの原本(1862版のもの)を2年後に自ら求め,この本をその後の52年の生涯を通じて一時も座右から離さなかったという.

天地人

印刀さばき

著者:

ページ範囲:P.1713 - P.1713

 私は,30歳半ばの復員姿の男の左手に持たれた印刀の慎重かつ微妙な動きに見とれていた.昭和21年の春であった.戦災の跡も生々しい東京・渋谷の道玄坂,後に恋文横丁と呼ばれたあたりの入口に近い路傍であつた.闇市が賑い,街娼が袖を引いていたころである.男の右腕は戦火で失ったのであろうか,手関節から切り落とされて,カーキー色の袖口で隠されていた.男の前には,「ハンコ彫ります」とかいた看板ともいえないボール紙が置かれていた.彼の隣りに陣取った靴磨きと同じの三尺四方が彼の店ともいえるもので,騒々しい人通りであつた,注文があれば,その場で残された左手一本で彫り上げるのだが,私の頼んだ印鑑を仕上げるまでに20分とはかからなかった.私の姓名の名の方を平仮名で彫ったもので,字体も良く,すでに35年以上も気に入って使っている.9mm角の黄楊の印材に彫つた印鑑である.いまも道玄坂を歩くと,戦闘帽の日焼けした男の姿を思い出す.
 わが国で使われる印材は,象牙,水晶,水牛,つげ材が多い.他に篆刻や落款印用に石印材も用いられている.石印材は実用以外にも愛されていて蒐集家もいる.石印材の本場は中国で,揚子江の南,福建省寿山郷の寿山石,浙江省青田県の青田石,昌化県の昌化石などが有名である.これらの印材は印房の店頭にも見られるし,最近よく開かれる中国物産展などでも手に入れることができる.

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ECHO

著者: 平塚秀雄

ページ範囲:P.1681 - P.1681

 Q 内視鏡のテクニシャンになるための資格および手続上の制度,規則などについて御教示ください.

VIA AIR MAIL

著者: 福原俊一

ページ範囲:P.1722 - P.1727

 General Internal Medicineの生まれた背景,システム,特徴.侵襲的で高価な検査の適応は徹底的に議論する,アメリカ医療の倫理観など.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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