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文献詳細

雑誌文献

medicina2巻1号

1965年01月発行

文献概要

EDITONRIAL

辺地の医療

著者: 和田武雄1

所属機関: 1札幌医大・内科

ページ範囲:P.25 - P.27

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絵画的異国情緒と旅愁の裏がわに
 北海道をさらに北へ向って網走市まで行くと,その近くに原生花園がある。そこを訪ねる人はまず一様に「黒百合はどれ」と聞くそうである。また目の前にひろがるトーフツ湖一帯の景色や,咲き乱れる花をいだくようにもり上つた砂丘の連なりが,絵画的異国情緒を漂よわすとか,旅愁を誘うとかいつて讃えられる。だがわたしが思うには,砂丘の向うにつづくオホーツク海の鉛色のうねりこそ見るべきもので,それによつて夢のような感傷がグッと引き緊められることを見落す人が少なくない。そこの花は遅い春から早い夏にかけて盛りとなるが,そのような時分にもこの海の印象はまことに重苦しい。ましてや流水がそこを閉ざす頃においては想像にあまりあるものがあろう。
 羽田を飛び立つと1時間でチトセ空港に着く。そこは火山灰台地で南は沼沢地につづいて勇払原野がひろがる。そのあたりは作物の実りも少なく,白樺や柏すら満足に育たない荒地である。しかしあの可憐なスズランはそうした土地にしか花をつけないのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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