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雑誌目次

雑誌文献

medicina2巻10号

1965年10月発行

雑誌目次

ページ範囲:P.1467 - P.1467

 赤沈は最も古い検査法の一つであるが,欧米の臨床家たちは,今なお,この検査法の意義を十分に認めて活用している。一方,わが国では,この検査法が新しいものではないということから,非常におろそかにされているきらいがある。はたして赤沈は,検査法として意義の少ないものであろうか。新しい検査法がぞくぞく登場している現在,それらとの関連において,もう一度赤沈を見なおすことも意義深いことと考え,編集部では「赤沈100以上の症例」を広く原稿募集したところ,幸い,たくさんの応募をいただいた。さらに,これらの症例をめぐって,赤沈では権威であられる三友義雄先生を囲んで,第一線の臨床家の先生方にお集りいただき,赤沈についての話合いをもった。
 今月号では,これらを合わせて,赤沈の小特集として,読者の皆さまにおとどけする。

亜急性甲状腺炎,リウマチ熱,腎悪性腫瘍

著者: 安藤幸夫

ページ範囲:P.1468 - P.1471

 症例1.
亜急性甲状腺炎
 43歳の主婦

腎腫瘍・伝染性単核細胞増多症・子宮がん

著者: 磯貝行秀 ,   橋本信也 ,   市場謙二

ページ範囲:P.1471 - P.1474

 症例4.
腎腫瘍
 女性,67歳。

亜急性細菌性心内膜炎

著者: 小林忠章

ページ範囲:P.1475 - P.1477

 症例7.
亜急性細菌性心内膜炎
 40歳家婦

狼瘡腎炎,粟粒結核

著者: 桑原益則 ,   水谷修

ページ範囲:P.1477 - P.1479

 症例8.
狼瘡腎炎
 20歳女子

ネフローゼ症候群,多発性骨髄腫

著者: 田中教英

ページ範囲:P.1479 - P.1481

 症例10.
ネフローゼ症候群
 16歳 女

赤沈をみなおそう

著者: 長畑一正 ,   三友義雄 ,   阿部正和 ,   日野原重明 ,   丸田守人

ページ範囲:P.1482 - P.1490

赤沈の歴史
 長畑(司会)きようは三友先生もおいでになるので,まず赤沈についての歴史的なことを,それから本邦のことは,先生の長い間のご経験で,おもしろいお話があるんではないかと思います。
 それから,私投稿原稿を読ませていただいたのですが,投稿は5つの病院から出ておりまして,そのなかの2組は,きよう出席いただいている阿部先生,日野原先生のところの病院から出ております。これは全部本誌に載りますから,必要点をお話の中に出していきたいと思います。

EDITORIAL

内科医のあり方

ページ範囲:P.1465 - P.1466

診断のポイント

婦人によくみられる出血性素因

著者: 大久保滉

ページ範囲:P.1491 - P.1492

 婦人には男子にくらべて紫斑をみることが多い。その診断について述べる前に出血性素因と紫斑とについて若干解説しておく必要がある。

心尖部で聞かれる収縮性雑音

著者: 太田怜

ページ範囲:P.1493 - P.1495

病的と判断するには
 心尖部で収縮性雑音をきいたとき,一番大切なことは,そのことだけで,弁膜症という診断を下さないことである。すなわち,収縮性雑音は心外性の原因できかれることもあるし,生理的にきかれるものも,かなり多いからである。病的状態では心臓になんらかの負担がかかつてきていることが多いので,収縮期雑音をきいたときは,たとえば,X-線検査や心電図を参照して,雑音以外に,心臓に負荷のあることを確かめた上で,この雑音を病的なものと判断した方がよい。たとえば,きわめて軽微な器質的僧帽弁閉鎖不全があつたとして,心尖部収縮期雑音以外に,まつたく異常所見を見出すことができなかつたばあい,その雑音を無害性のものと解釈しても,全体的な病気の診断は,むしろその方が正しいということができる。
 リウマチ性心内膜炎のとき,心尖部で著明な収縮期雑音がきかれる。しかし,治療によつて,この雑音は,だんだん弱くなつてゆくことが多い。そして,最後にはわれわれが日常きいている無害性収縮期雑音とまつたく変わりないものとなる。このとき,心陰影も正常で左房左室負荷像がなければ,器質的な弁膜症は残さずに治癒したと見るべきであろう。ただし,このような病歴がはつきりしていれば現在無害性雑音と思われるものも,真に無害性であるかどうか確証はないので,心臓の負荷像を丁寧にしらべる必要があるし,リウマチ活性の検査も,このような例では行なう必要がある。

肺真菌症

著者: 福島孝吉

ページ範囲:P.1496 - P.1498

診断がむずかしい
 肺真菌症は稀な疾患の部類に属するが,依然として増加の傾向にあり,時々は出会うので,念頭にいつもおいていなければ,診断できないのであるが,念頭においても診断しにくいことが多い。本症には特有な症状が少ないのがその原因の一つであるが,数少ない特有な症状所見があつたなら見逃がさないことが肝要である。
 肺の真菌性疾患には,多く肺の局所的な弱点に乗じて発病し,慢性の経過をとる病型と,多く全身的抵抗減弱に乗じての発病で,血液疾患や腫瘍などの末期に発病し急性の経過で患者の生命を奪うものとがある。

治療のポイント

サイアザイドの副作用

著者: 加藤暎一

ページ範囲:P.1499 - P.1501

はじめに
 Thiazide剤は登場以来8年を経たが,なおその適確な効果に比し副作用の非常に少ない薬剤といえよう。数多い誘導体も,薬用量が異なるだけで,作用面で本質的な差はない1)。作用機序の要は腎の尿細管(主に近位)に作用し,亢進したNa再吸収をblockし,同時にCl,水の排泄を促進することであるが,この際ある程度Kの排泄増加は不可避であり,また尿酸の排泄が減少する場合が多い。
 出現当時は,本来の副作用としてはminorな胃腸障害,皮膚発疹の他は,上述した薬理作用の過度に現われたものとして低Kあるいは低Na血症その他大量でhypovolemiaのためかGFRの軽度低下,したがつて進んだ腎疾患でBUNの上昇などが強調されたにすぎなかつた。当時わが国ではKに対する関心がほとんどなかつたので本剤の使用によると思われる低K血症(K欠乏症)は多く見たが,他には急激な降圧のための脱力感,立ちくらみなどに限られていた。

胃・十二指腸潰瘍の食事療法

著者: 三辺謙

ページ範囲:P.1502 - P.1503

潰瘍の食事療法の理念
 胃・十二指腸潰瘍の治療は精神的および肉体的の安静と,食事療法とがもつとも重要で,種々の潰瘍治療薬剤が用いられている現在でも,この二つの重要性は失われていない。
 胃・十二指腸潰瘍の食事療法は,一方では物質欠損である潰瘍を庇護するという面と,もう一方では十分な栄養とカロリーを補給して潰瘍の治癒を促進しようという積極面とを兼ねたものである。この両面は,一見矛盾するようであるが,多少の考慮を加えさえすれば,うまく両立するのである。たとえば,食間および夜間の胃液分泌が少なくないことを考えれば,胃を空虚にすることは得策ではなく,胃液の塩酸を緩衝するような食事を頻回に与えて,胃を空虚にしないことの方がむしろ重要なわけであり,また,胃液分泌を刺激することが少ない流動性炭水化物は塩酸緩衝作用をもたないが,蛋白質は胃液分泌を促進するかわり,酸と結合する能力が大きいという利点があるという具合である。だから,潰瘍の食事療法にあたつては,むかしのような厳格な制限方式はすてて,積極的な庇護食事という観点から考える必要がある。

マクロライド系および類似抗生物質の役割

著者: 真下啓明

ページ範囲:P.1504 - P.1505

現況
 マクロライド系ないし類似抗生物質と考えられているものはErythromycin,Oleandomycin,Spiramycin,Lincomycin,Leucomycinなどであるが,これらのほかにもかつて用いられたCarbomycinなどがある。マクロライドという言葉は1960年Abraham & Newtonによって定義されたもので,大ラクトン環を持ち,diethylamino sugarあるいはamino基を持たない糖と結合しているものであり,上記諸剤中Erythromycin,Oleandomycin,Spiramycin,Carbomycinがこれに属する。しかし臨床的な立場からはPenicillin-G耐性ブドウ球菌感染症用という意義が重視されるので,マクロライド系および類似抗生物質として構造の異なるものもふくめて1群に考える場合が多い。
 これらの諸剤中本邦で日常用いられているのはErythromycin,Oleandomycin,Spiramycin,Lincomycin,Leucomycin,さらにNovobiocinなどである。

グラフ

顔色その他からみた僧帽弁狭窄症

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1454 - P.1455

 僧帽弁狭窄症の患者,特に女子で,心房細動をもち,僧帽弁閉鎖不全を伴うものの顔をみると,頬や耳殻の皮膚が赤くまたは赤黒くなっている場合が少なくない。唇の色も赤味がつよい。このような顔色の患者をみた場合は,僧帽弁狭窄症があると考えて間違いないことが多い。
 いろいろの心臓病や肺疾患のチアノーゼに比して,赤味がつよく,年数がたつと,黒ずんだ色素が顔の頬の皮膚に沈着する。

原子吸光装置

著者: 高原喜八郎

ページ範囲:P.1457 - P.1459

 血清や体液のような生体試料中の無機元素には,表1に示すごとき種類があり,それぞれの生理的意義についてはおおむねよく知られているものもあれば,一部にはなお不明の点も少なくない。これら元素の定量法は,炎光法によるナトリウム,カリウムを除いては,最近迄は多忙な臨床化学検査室に適した理想的方法は無かつたが,近時原子吸光分析装置の開発普及にともない,病院検査室にも原子吸光法が導入され始めた。この時点に当つて,原子吸光装置についてのグラフ解説が紹介されることは意義あることと思われる。
 原子吸光法の原理は図1に示すように,検体を2000℃前後の火炎中に噴霧せしめ,熱解離して原子状となつた目的元素の中へ,その元素で陰極がつくられているランプからのスペクトル線(励起光)を貫通すると,原子粒の密度に比例してスペクトル線の光量が特異的に吸収される現象(Fraunhoffer 線)を利用したものであつて,光電比色法とともに吸光光度法に属するものである。ナトリウム,カリウムの炎光分析はこれとは逆に発光分析であつて,原子吸光法においてはこの発光の影響を打消すための考慮がはらわれている。

神経疾患リハビリテーションの実際—用具,装具の実例

著者: 上田敏

ページ範囲:P.1460 - P.1462

 リハビリテーション上有用な用具,装具のいくつかを選んで図示する。
 傾斜台(tilt table)(図1,8)片麻痺,対麻痺ともに起立練習の初期にもちいる。長期臥床による起立性低血圧の治療,下肢伸展反射の促進,体重負荷による尖足矯正を目的とし,全身状態改善の効果もある。傾斜30°,5分からはじめ,毎日少しずつ傾斜と時間を増して1週間〜10日で直立位(80°),30分にもっていく。下肢のうつ血,チアノーゼ,血圧低下は多少ともみられるが,いちじるしければさらに期間をかけてゆつくりと馴らしていく。市販のもの(図8)の他,レントゲン透視台に手を加えたもの(図1)でも十分使用にたえる。

ファースト・エイド

急性肺水腫

著者: 猪尾力

ページ範囲:P.1506 - P.1508

肺水腫とは
 肺水腫は肺毛細管より,液性分の吸収を上まわる濾出が起こり,肺の間質および肺胞内に異常な水分の貯溜をきたした状態で,臨床的にはAlveolar Ventilationの障害のために,高度の呼吸困難,咳嗽,血性泡沫様喀痰,チアノーゼを呈し,時にはショックに陥り死を招く危険症の一つである。
 本症を続発する可能性のある基礎疾患は多彩である。ここではCameronの報告を挙げておく。(表1)

器具の使い方

知覚検査

著者: 平山恵造

ページ範囲:P.1509 - P.1511

触覚の検査
 筆がしばしば用いられる(図1-a)。指で触つたのでは正しくないとか,筆をそのまま使用してはいけないとか,毛を2,3本にしたのを用いろとか,綿を細くとがらせたものがよいとか,器具の選択についての意見はいろいろであるが,問題は器具を一つだけ選定することよりも,場合により目的にかなつた器具を選び,それを使いこなすことである。
 患者がすでに触覚鈍麻に気づいているなら,検者は指を以つて検査を行なつても,その判定を誤まることはない。しかし患者自身は触覚鈍麻を自覚せず,触覚鈍麻の有無によつて診断が左右されるような場合なら,触る強さを変え体の左右対称部を比較したり,上下で比較したり慎重でなくてはならない。腕や下肢などの有毛部では2,3本の筆の毛で検査すると皮膚に筆毛が達しないためかえつて正確な結果が得にくくなる。とくに頭の有髪部では筆自体が検査に適当でない場合すらある。こういう場合にはむしろ先端の滑らかな棒のようなもので触る方が正確な答を得ることがある。また患者の物事に対する鋭敏さも大いに知覚検査の結果に影響を及ぼすから,一概に筆毛の2,3本にしたものが検査に適当であるとはいいきれない。

正常値

新生児,乳児および幼児の正常血液像

著者: 岡田太皓

ページ範囲:P.1566 - P.1569

 小児の正常血液像は成人のそれと異り年齢により差異がある。そして,その差異は発育のさかんな新生児,乳児および幼児期においていちじるしい。故に発育期の小児の正常血液像について十分な知識をもつことは小児の正常な発育を知るのに必要なばかりでなく,病的な場合における小児血液の特異な反応を理解するのにも必要なことである。以下各血液成分について各年齢の正常値およびその意味について述べる。

この症例をどう診断する?・3

出題

ページ範囲:P.1445 - P.1445

■症例
31歳 女性 体重45kgm 身長153 cm
 主訴:4〜5日前からの下肢の浮腫ならびに全身倦怠感。

討議

著者: 金上晴夫 ,   田崎義昭 ,   和田敬

ページ範囲:P.1577 - P.1582

日常診察に必要なことをやつていれば  診断できる症例
 和田 私の症例をやる前に,ちよつとお断わりしておきたいのは,私がわざわざある所見を伏せてあることです。これは,日常の診察上かならずすべきことで,これをはつきり認めれば診断はそれでズバリと当るわけなんです(笑)。
 田崎 しらべなければいけないものとは,腋窩とか,陰部の毛の状態などのことですか? それらは薄かつたですか。

神経疾患リハビリテーションの実際・III

対麻痺(2),四肢麻痺,失調症

著者: 上田敏

ページ範囲:P.1563 - P.1565

対麻痺(2)
 起立から歩行へ 前号でのべた車椅子上生活への習熟と並行して起立,歩行の練習をはじめる。また初期から始められた上肢のP. R. E.,下肢のR. O. M. 維持練習はこれらの時期にも継続される。push-upには上肢強化の意味も大きく,装具着用はR. 0. M. 維持をたすける。
 起立;長期臥床した対麻痺では起立性低血圧が起こりやすい。また腹筋,肋間筋麻痺があれば立位で横隔膜が引下げられ,呼吸困難をおこすことがある。しかし一方立位には 1)下肢伸展反射の促進,2)下肢骨の脱石灰化の予防,3)尿路のうつ滞の防止,感染予防,4)褥創の治癒促進,5)心理的効果,ひいては全身状態の改善などいろいろ良い効果がある。副作用を押さえつつ起立の効果を発揮させるには片麻痺と同様傾斜台(tilt table)がもつともよい。最初30°,5分程度からはじめ反応を見ながら毎日少しずつ増して,直立位(80°),30分までもつていく。低血圧,下肢チアノーゼが強い場合,両下肢を弾力包帯で巻いたり,呼吸困難には腹帯,軟性コルセットで腹部,とくに下部をしめる必要があることもある。多くの場合は次第にこれらは不要になる。

症例 心電図のよみ方と臨床(2)

老人の心筋硬塞

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1545 - P.1548

 前回の症例は,胃腸の精密検査を目的として入院した,患者の心電図の胸部誘導のV2,V3のTが尖つて高いことから,高位後壁心筋硬塞と診断された症例であつた。
 今回の症例も,どうして心筋硬塞が発見されたかを物語る老人の例である。

肺がんとまちがわれた症例(1)

Vanishing tumor

著者: 金上晴夫

ページ範囲:P.1549 - P.1552

早期発見,早期手術のために
 最近がんに対する一般の関心が高まり,がんの疑いのもとに外来を訪れる患者が激増している。肺がんの場合もその例外ではない。せきが出る,胸がいたむ,あるいは血痰が出たといつて呼吸器科の外来を訪れる患者が多くなつて来たが,これは大変喜ばしいことである。これまで,結核腫あるいは肋膜炎という診断で結核の治療をうけ,かなり長く治療したにもかかわらず肺の陰影がますます増大したので,はじめて肺がんを疑い,外来に送られて来るが,その時にはもはや手のつけようがないといつた場合をしばしば経験している。そのような患者をみて第一に考えることは,なぜ肺がんを第一に疑つて外来に送つてくれなかつたのかということである。肺がんの治療の原則があくまで早期発見,早期手術である現在,一刻も早く肺がんの診断をつけて手術を行なう以外に患者を助ける方法はないのだから,悠長に患者の経過を観察して診断をくだすということは許されない。外来を訪れるたくさんの患者のなかには,すでに手遅れの患者もいるが,なかには肺がんの疑いのもとに紹介された患者が肺がんではなくて,じつは肺化膿症であつたり,結核腫であつたり,不定型肺炎であつたり,また心不全によるVanishing tumorであつたりすることもある。

他科との話合い

更年期障害—正しい診断正しい・治療のために

著者: 九嶋勝司 ,   日野原重明

ページ範囲:P.1553 - P.1558

 いわゆる更年期障害は,その症状も多様であり,他の疾患がまぎれこんでいることもある。更年期障害を正しい治療に導くためには,どのような視点でとらえたらよいのだろうか。

基礎医学

臨床家に必要な血液型の知識

著者: 徳永栄一

ページ範囲:P.1559 - P.1562

 輸血の副作用をはじめとして,血液疾患を考える上で,臨床家が知つておくべき事柄はかなりあるが,生体に傷害を与え,したがつて臨床的に大きな意味を持つ不完全抗体および検出に際しての臨床上の諸注意,ABO,Rhなどについて触れてみた。

診断問答

脂肪食摂取後の腹痛を主訴とする患者の診断

著者: 高階経和

ページ範囲:P.1574 - P.1576

第1部
 医師A--今日は,この位です。別に先週から珍しいケースも入院していませんし。
 医師B──それじやあ,わたしが最近に見た患者の話でもしましようか。32歳の家庭の主婦で,わたしのところへ来る2週間まえに,急に心窩部の疼痛がおこり,その後,腹部全体に拡がつたようでした。この症状は,ちようど,患者が,天婦羅を食べた直後におこつたということなんですが--。

If…

"学如富賈在博収仰取俯拾無遺算"—北大名誉教授 中川諭氏に聞く

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.1514 - P.1515

「金色夜叉」は読んだ
 長谷川 お医者にならなかつたら,どんなコースを進まれたとお思いですか。
 中川 父は医師だつたが,私は本来医師志望ではなかつた。当時は日露戦争後で,中学を卒業すると士官学校か兵学校へ,あるいは高校の三部へ行くのが大体のコースでしたがね。私は工科系の志望を持つていたから,エンジニヤになつていたかもしれません。今日,どつちがよかつたかわかりませんね。

海外だより

カナダの病院に学ぶ—The Royal Victoria Hospitalの生活から(1)

著者: 阿部和夫 ,   阿部サナエ

ページ範囲:P.1520 - P.1522

「Royal Victoria Hospitalの建物は,外観は大英帝国の名残りをとどめて荘重なのに,内部は意外に近代的ね。」
 「ヴィクトリア女王の特別の許可を得て,Royal Victoriaという名をつけたんだそうだ。」

ルポ

心療内科からリハビリテーションまで—福岡市・長尾病院を訪ねて

ページ範囲:P.1518 - P.1519

 福岡市の市街地から,南に向けてタクシーで約15分。紫紺色にけむる油山を前方に眺望する郊外地。人家はまだまばらで,新しく建つたものも多く,まもなくここにも家が建ちそうだといつた気配の空地が,ここかしこに点在している。そのような家と空地の間の砂利道を,ほこりを立てながら迂回していくと,突然のように目の前に広い空地がひらけ,その向うに,3階建ての(実は4階建てだが,前方からはよく見えない)モダンな建物を発見し,一しゆんとまどう。草いきれが,かすかにあたりにただよつている。
 背には樹々の緑を背負い,前面には夏の陽ざしを浴びてくつきりと建っ。これが今年4月に創立された長尾病院である。

私の意見

医師・患者の関係を深めるために

著者: 鈴木寛一

ページ範囲:P.1513 - P.1513

 医学の有効性が飛躍的に高まり,医療を受ける側の人たちもこのことを信じて疑わない今日医師一患者の関係があらためて各方面で問題視されている。
 医師と患者の交流が「古きよき時代」のような親密さがなくなつたことについては医学的および社会的な要因があつた。

話題

脳の血管性疾患—その考えかたをめぐつて——第18回福岡臨床循環器研究会から

著者: 森博愛

ページ範囲:P.1523 - P.1523

研究会の成り立ちとあゆみ
 一昨年9月,九大医学部を中心として,近隣の官公立病院,県・市医師会などの臨床循環器病学に興味をもつものが集まり,相互の連絡を密にし,意見を交換し合う場として,福岡臨床循環器研究会を組織してすでに2年近い歳月がたつた。この間,毎月1回研究会を開き,適当な会員の方から,話題提供の意味で1時間くらい講演を聞いた後,約30分ほど隔意のない意見交換を行なつている。これと併行して,毎週金曜日午後5時からハート・カンファレンスを行ない,特殊検査(心臓カテーテル検査,心臓血管造影法),手術,剖検などにより確実な知見がえられた症例について,問題点の検討を行なつている。毎月の例会のテーマは,内科系と外科系が交互に担当し,相互の知識の断層を埋めるように努め,時には学外から講師を招いて,新しい気分を失わないようにしている。最近では,広島市民病院心臓外科部長田口一美博士の「人工弁の臨床」についての講演があり,会員の心臓外科グループとの間に活発な意見の交換が行なわれた。

ニュース

医用電子機器の安全対策

著者:

ページ範囲:P.1524 - P.1524

 最近,医療機関における各種医用電子機器の使用は,電子機器そのものの発達,医療機関に対する融資・補助金の拡大などにともなつて,急激に増加しているが,生体に直接使用する電子機器は生体に用いる薬と同様に十分な安全対策を講じる必要があると思われる。とくに,医用電子機器は本格的に開発され,実用化されるようになつてからまだ日が浅いため,患者と医療従事者の安全を確保し,機器の健全な普及を期待するには,その安全対策を十分に調査研究し,その成果を直ちに行政面に反映させる必要があると考えられる。
 医用電子機器の安全対策を確立するためには,(1)機器自体の安全性,つまり(イ)電気的安全性,(ロ)機械的安全性,(ハ)化学的安全性のほか,(2)使用上の安全管理,つまり(イ)医学的適応を誤まらないこと,(ロ)正しい使用方法を励行すること,(ハ)衛生的管理を怠らないこと,(ニ)計画的な保守点検と更新をすること,(ホ)万一に備えての応急処置の日常訓練をしておくこと,などに留意することが必要である。これらのうちとくに,化学的安全性については,たとえば手術室で常用する監視装置などでは,麻酔ガスの誘爆をおこす危険があつてはならないし,また,その周辺で化学薬品を扱わざるをえない機器は,化学薬品に容易には侵されない設計のものでなければならないのである。

社会開発懇談会の中間報告

著者:

ページ範囲:P.1525 - P.1525

 首相の諮問機関である社会開発懇談会は,7月23日,首相官邸で第3回総会を開き,「社会開発に関する中間報告」を決定,佐藤首相に提出した。この中間報告は,課題と方法を述べた総論,健康増進,教育の振興と能力の発揮,生活の場の改善,社会保障および福祉対策,消費者保護・支援,の6項目からなつており,同懇談会は今後さらに検討を加え,今秋の次期総会で本答申をすることになつている。
 この報告を提出するにあたつて懇談会は,(1)具体策のうち,多額の財政的裏づけを必要としないものは速かに実施する,(2)社会開発を本格的に推進するには,内閣の重点施策として社会開発面に思いきつた財政的投資が必要である,(3)長期的な社会開発計画を体系的に策定するため,適当な機関,組織を設置すべきである,などの基本方針を強くうち出している。このため,政府はこれにもとづき既定の予算で実施できるものはただちに関係各省庁で具体化し,また予算の裏づけを要するものは41年度から着手する意向である。

文献抄録

血圧の管理によつて高血圧の合併症を防ぎうるか—M. Hamilton, E. N. Thompson T. K. M. Wisniewski

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1526 - P.1526

はじめに
 W. H. O. の"動脈性高血圧症および乏血性心疾患"という報告(1962)によれば,本態性高血圧の第1期つまり心・脈管系に器質的変化の証明されない時期の高血圧を治療すれば,第2期つまり心・脈管の肥大を伴うが他に器質的障害の証明されない時期への進展を阻止できるやどうかも分つていない,とのことである。
 私たちは十何年もまえから,本態性高血圧症の第1期の高血圧を"降圧剤"をもちいて下げてやれば,第1期から第2期への進展を阻止できると確信して,さかんに降圧剤を使用してきたが,上記のW. H. O. の報告がもし本当であるとすれば,これはたいへんなことである。

"失神"の診断のすすめ方

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1527 - P.1527

はじめに:
 失神または一時的意識喪失は,日常診療でしばしば見る症状である。そうしたばあい,私たちはどういう順序で,診断をすすめていけばよいだろうか。
 まず第一に心得ておくべきことは,日常診療ではどういう原因による"失神"がもつとも頻度が多いかということであろう。つぎは,年齢のいかんで,どういう"失神"がもつとも現われやすいか,ということであろう。第三は病歴を精確にとること,第四は"失神"状態に陥つている患者の状況をくわしく客観的に調べるということ,さいごは検査ということであろう。

統計

近年における主要検疫伝染病の発生状況

著者: 滝川勝人

ページ範囲:P.1512 - P.1512

 国内に常在しない伝染病の病原体が,船舶または航空機を介して,国内に侵入することを防止するために,国際的規模のもとに検疫制度が実施されております。現在わが国における検疫法においては,検疫伝染病として痘そう,コレラ,ペスト,発しんチフス,黄熱および回帰熱があげられておりますが,最近におけるこれら検疫伝染病のうち,前三者(またこれら三者がその大部分をしめております)についての世界における発生状況を,年次別・地域別にみたのが下の表であります。
 これでみますと,「コレラ」は依然として猛威をふるつており,しかもこれはすべてアジアにおいて発生をみております。また「痘そう」も減少傾向にあるとはいえ,まだ相当数の患者を出しており,これもアジアにおいて,総数の約4分の3の発生をみております。また「ペスト」もわずかではありますが,アフリカ,アメリカ,アジアを通じて発生をみており,今後国際間の交通が一層頻繁になるにつれて,検疫の重要性がますます高まつてきております。

簡易臨床検査のやり方と評価

ディスクによる感受性検査

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.1452 - P.1452

 結核菌以外の病原細菌の各種化学療法剤感受性検査には,臨床検査室ではもつぱら市販の感受性ディスクを使用している。国産の感受性ディスクには3濃度ディスク(栄研)と1濃度ディスク(昭和)の2種類があり,わが国の検査室ではこのうちのいずれかが用られている。
 感受性検査を希釈法で行なうと,1種類の菌について幾種類もの化学療法剤感受性をしらべることは,大変な手数であり,日常検査としては到底実施できない。ディスク法の出現によつて,はじめて感受性検査を日常検査として行なえるようになつたといえる。なお市販のディスクには,常用化学療法剤はすべてあるから,市販され始めたばかりの化学療法剤あるいは臨床試験中のものは別として,日常診療に必要な感受性検査は,すべて市販のディスクで事足りる。

Bed-side Diagnosis・2

A Peculiar Chest Pain Simulating Angina Pectoris

著者: 和田敬

ページ範囲:P.1572 - P.1573

In a Conference Room:
 Dr. A (Medical Resident):The patient is a 44-year-old dentist who complains of a chest pain. He always enjoyed good health until about three months ago when he began to notice some pressure-like sensation on his chest. At first, the patient did not pay too much attention to it until the sensation became more frequent and severe. There has been no contributory history in the past, nor any venereal disease. His blood pressure has been always normal. At any rate, his physician friend whom he consulted could not make any definite diagnosis in regard to the pressure sensation in his chest.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

特集 内科医が遭遇する皮膚疾患フロントライン—「皮疹」は現場で起きている!

60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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