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雑誌目次

雑誌文献

medicina2巻11号

1965年11月発行

雑誌目次

EDITORIAL

内科医の悩み

著者: 吉利和

ページ範囲:P.1621 - P.1623

内科学とは?
 内科学とはどんな学問かとたずねられて,すぐに答えのすらすらと出てくる人はそう多くはあるまい。私自身も,みずからこういう問いを出して,それになんとか答えようとたびたび努力しているにもかかわらず,このような問いには,すぐに答えにくく,ちよつと考えて,さておもむろに口を開くことになる。しかもその答えは,しばしば他人を納得させるのに十分と思えないし,もつと困ることには,みずからも満足な答えが出たと思うことは,まことに少ないのである。
 このように書くと,内科学の諸先輩や,あるいは新進の若い学徒のなかには,"そんな不見識なことを…"といわれる方があるかもしれないが,私みずからは,いつも考えながら,いい答えが出ないということを告白せざるをえない。

今月の主題

代謝障害と脳症状—内科疾患に見られる意識障害

著者: 茂在敏司

ページ範囲:P.1624 - P.1628

 代謝異常と脳症状という問題は,いわば内科領域における神経病学の出発点の一つである。臨床的に代表的な問題の一つとして,他臓器疾患に由来する血液化学成分の異常や外来性毒物(麻酔剤,催眠剤を含めて)による意識障害を中心とする問題があげられる。ここにあげる4症例はそれぞれその詳細もしくは治療について末尾の文献に述べられたものであることをおことわりしておきたい。

<話合い>脳症状—意識障害を中心に

著者: 加瀬正夫 ,   時実利彦 ,   茂在敏司

ページ範囲:P.1629 - P.1635

 ひとくちに脳症状といつても,全身症状・局所症状など,実に多岐にわたるので,ここではとくに意識障害を中心にしながら,脳症状を考えてみた。神経生理学的には,現在までにどこまで解明されているのか,という基礎的なものから,日常の臨床ではどの点に注意すべきか,その鑑別診断にいたるまでのことにふれてみた。

慢性膵炎—診断と治療

著者: 築山義雄

ページ範囲:P.1636 - P.1639

 慢性膵炎の病像は多種多様であり,自覚症状に特異なものがない。腹痛その他不定の苦訴があり,他の疾患として説明しがたいときは一応本症を考える必要がある。既往に急性膵炎,アルコール常飲,胆道疾患などがあると,さらに疑いが濃い。本症は治療によく反応する軽症,早期のうちに十分治療を行なうことが望ましい。

Physical Diagnosis

腹部診察のコツ

著者: 日野貞雄

ページ範囲:P.1640 - P.1641

 胃腸疾患の診断は,最近,レ線や内視鏡検査が発達してきたため,触診・打診がその決め手となることはまれになつたが,診断の方向を決めるスクリーニングの場として,いぜんとして重要であるのみでなく,「あたたかい手」による診察は患者と医者との関係をよりよく深めるものである。

診断のポイント

ピリンアレルギー

著者: 村中正治

ページ範囲:P.1643 - P.1645

 ピリンアレルギーという言葉は日常しばしば用いられるが,その指す内容は使用者によりかならずしも一様ではない。第1にアンチピリンあるいはアミノピリン過敏症とともにアスピリン過敏症もこのなかに含めて考えられる場合が少なくない。しかしサリチル酸系統のAspirinとPyrazolone系統のAntipyrineとは化学構造上(表1)からも,過敏症状あるいはアレルギーでいう交叉反応から見てもけつして同じには取り扱えないので区別して考えるべきであろう。逆にPhenylbutazone(Butazolidin),Tanderilなどは明らかにPyrazolone系統に属するといえる。また現在ピリンアレルギーことにピリン疹という診断は極端ないいかたをすると,ピリンと名のつく薬剤が含まれている処方の薬剤の使用によつて固定疹,蕁麻疹などの過敏症状が生じた場合,ただちにつけられてしまう傾向がなしとしない。この傾向は統計上薬物アレルギーはPyrazolone系の薬剤によつてひき起こされる場合がもつとも多いといわれていることに原因があろうが,この点も反省の必要がある。筆者らが最近診察する機会をえたいわゆるピリンアレルギー150例を種々の面より検討した結果,以下のような過敏症者を含むことが判明した。

GOTの高いとき

著者: 林康之

ページ範囲:P.1646 - P.1647

 血清GOT(Glutamic Oxalacetic acid Transaminase)の測定は方法の簡易化とともに普及し,活性値の正常か病的増加かのみを区別する簡易スクリーニングキットまで市販されるようになつた。もちろん診療にあたつてGOTのみを検査する場合はほとんどないが,GOTの高いときの診断の進めかたを考えてみよう。

うつ病

ページ範囲:P.1648 - P.1650

治療のポイント

消炎酵素剤の現況

著者: 織田敏次

ページ範囲:P.1651 - P.1652

 消炎,あるいは抗炎症(anti-inflammatory or anti-phlogistic)という言葉がわれわれの耳にもごく親しみやすいものになつてきたのは,やはりコーチゾン,ハイドロ・コーチゾンのあのような顕著な薬理作用が明らかにされてからのことと思う。これらのステロイド剤が抗炎症ステロイドとよばれるのもそのためである。
 また,ブタゾリジンの誘導体のように,non-steroidal anti-inflammatory drugという言葉も最近は聞かれるようになつた。そうだとすれば,消炎酵素剤もこの範疇にはいることになる。

更年期障害の精神衛生—その指導

著者: 小此木啓吾

ページ範囲:P.1653 - P.1654

更年期の精神障害
 一応60歳以上を老人とすると,45歳前後が更年期Klimakterium,それ以後老年Seniumまでを,初老期Preseniumとよぶ。この更年期には,心身両面のさまざまの要因がからみ合つて,一般に,更年期精神障害といわれるような,精神衛生上の困難が起こることが多い。
 その症状は,神経症的なもの,心身症的(psychosomatic)なもの,性格反応的なもの,さらには,精神病的なものも含まれるが,その特徴をあげると,①精神的な不安定がひどくなり,気分,感情の変調,動揺しやすさ,いらだち,怒りつぽさなどが著明になる。

小児の急性腹症

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.1655 - P.1656

 急性腹症とは急性に起こる激しい腹痛を主徴とする腹部疾患に対する総括的な呼称であり,緊急手術を要するかどうかということを中心にして考えられている。
 いつたい小児の急性腹症はどのくらいの頻度で起こるものであろうか?筆者らは第1回日本小児外科学会総会に昭和29年から38年にいたる10年間に墨東病院外科で経験した小児の急性腹症について発表したのでそのデータを引用してみよう。もちろんすべて手術例である。

吸入療法

著者: 中川圭一

ページ範囲:P.1657 - P.1658

 吸入療法は呼吸器疾患に対する局所療法である。その適応症は呼吸器感染症,気管支閉塞性疾患である。
 戦前においてはアルコールランプを使用する蒸気吸入療法がもつぱら行なわれていたが,最近ではネブライザーによる噴霧(エロゾル)吸入療法が盛んになつてきた。ネブライザーは硬質ガラスかプラスチック製で,このものも中に薬液を入れ空気または酸素をある圧力で送り込むと0.5〜2.5μの大きさのエロゾル粒子となつて薬液が噴霧される。この程度の大きさの粒子は吸入されると気管支の奥まで到達されることになつているので,合理的である。このネブライザーをエアコンプレッサーにつなげて噴霧する方法とIPPB(吸気時間間歓的陽圧換気装置)でやる場合とある。後者はべネットバルブを使つて息を吸う時だけ酸素を肺の中に押し込み,吐く時は楽に吐けるようにしてあり,同時にネブライザーを通じて薬液がエロゾルとなり気管支の奥まで到達し得る装置である。

グラフ

Raynaud現象

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1610 - P.1611

 Raynaud現象は四肢の小動脈あるいは細動脈に一過性の収縮をきたし,その結果指趾にPallor,Cyanosisなど皮膚色調の変化を呈する症候群である。そして動脈収縮が緩解されるとつづいて反応性充血がおこり,指趾はいわゆるRuborの状態を呈する。この現象はRaynaud病に特有で,冬季や気温の低い早朝などに指趾を寒冷に曝露する場合にみられるが,その他外傷(凍瘡・振動工具病など),膠原病(硬皮症・リウマチ・結節性動脈周囲炎・汎発性狼瘡など),神経疾患(脊髄空洞症・脊髄前角炎・進行性筋萎縮症など・肩腕症候群など),閉塞性動脈疾患(閉塞性血栓血管炎・閉塞性動脈硬化症など),血液疾患(寒冷凝集素病・白血病・赤血球増多症など),中毒(重金属・麦角など)などにも合併する。

免疫電気泳動法

著者: 高月清

ページ範囲:P.1612 - P.1617

 免疫電気泳動法は電気泳動とゲル内沈降反応との組合せで原理的には単純な方法であるが,この方法の導入により血清蛋白質に関する研究は急速に進歩した。従来のチセリウスまたは濾紙電気泳動法ではアルブミン,α1,α2,β,γ各グロブリンの5種の成分しか区別できなかつた血清蛋白にも本法では最高30種あまりの成分を証明し得る。
 しかし,定量的方法ではないから臨床診断上の直接的価値は限られている。とくに重要視されるのは多発性骨髄腫,原発性マクログロプリン血症およびこれらの類縁疾患における異常Immunoglobulinの検索とその分類である。現在の段階では,慢性炎症,肝硬変,膠原病などの高γグロプリン血症には本法を用いても診断的価値はない。
 一方,研究分野では目的とする蛋白質の同定,鈍度の吟味などによく用いられる。ここではImmuneglobulin系における検索を中心として免疫電気泳動法の有用性を紹介してみたい。

ファースト・エイド

糖尿病患者の昏睡

著者: 和田正久

ページ範囲:P.1662 - P.1663

診療方針
1)ファースト・エイド
 a)診察と検査

器械の使い方

尿比重計の使いかた

著者: 斎藤正行

ページ範囲:P.1659 - P.1661

 尿の比重を測定する臨床的目的は大きく2つに分けることができる。第1は腎機能,第2は尿中の固形含量いかんを知ることである。前者は腎障害の早期に腎尿細管の濃縮力がおかされること,それによつてひき起こされる尿中固形含量比の減少を,手軽な比重計をもつて表現しようとするものであり,後者は糖尿病などのような,多量に糖を含むことによる固形量の増加を,同様に比重をもつて表現しようとするのである。
 ここでわれわれが知りたいのは結局尿中の固形含量ということになるが,この固形含量を直接測定することはきわあて繁雑である。最近凍結乾燥という手段が容易とはなつたがそれは生産ペースにおいてであつて,一刻も早くそのデータを診療に用いたい,またどんな僻地でも実施できる必要のある臨床検査としては,直接尿中固形量を測定することは無理がある。幸い固形含量(solute)と他の物理的性質たとえば比重とか屈折率がかなり相関があり,とくに比重はきわめて手軽にどこででもできることから,むかしから固形量の表示として広く実用に供されていた。ところが手軽に簡単にできるものは安価でなければならないという不思議な世のなかの習慣があり,さらに少量の尿中においても浮上するものという実用性から,小型,安価なチャチなものが常識となつてしまつた。

正常値

血清乳酸脱水酵素(LDH)

著者: 林康之

ページ範囲:P.1664 - P.1665

正常値
 血清乳酸脱水酵素(Lactic acid dehydrogenase)の正常値はGOT,GPT,アルカリフォスファターゼなどにくらべて1桁高いことが同じ逸脱酵素の測定でありながら,いくらか違った感じを与える。表1に示した正常値は,もつとも臨床検査室に普及率が高いと考えられる比色法(ヤトロン社製キットを用いた)で1,300例の健康人について求めた成績である。すでにしばしば述べたとおり,健康人のサンプリングをできるだけ厳密に行ない,成績を推計学的に整理したところ,次の結果が得られた。
 (1)健康人血清LDH値は50〜400単位である。

この症例をどう診断する?・4

出題

ページ範囲:P.1601 - P.1601

■症例
43歳,男
主訴 頭痛,不眠

討議

著者: 梅田博道 ,   田崎義昭 ,   金上晴夫 ,   和田敬

ページ範囲:P.1731 - P.1736

激痛をどう考えるか
 梅田 5年前に,突如として左の手が激痛を起こして,左の肩甲骨下に痛みがきた。こういうわけですね。
 和田 そういうわけです。左の手にきたんじやなくて,左の腕を伸ばしたとたんに,という意味です。

診断問答

全身性の硬直と頭痛を主訴とする患者の診断

著者: 高階経和

ページ範囲:P.1728 - P.1730

第1部
 医師A--やあ,先生だいぶすずしくなりましたが,ひところはだいぶ暑い日がつづきましたね。一時は,私たちまでが,体に疲労感をおぼえるようになりましたよ。
医師B--まつたく,おつしやるとおりですね。ところで,今日はちよつと時期はずれになりますが,夏の話題とでもいつたケースの話でも,しましようか?

臨床医の悩みに迫る診断問答

—市川平三郎・山田達哉・土井偉誉著—「胃X線診断の実際—早期胃癌発見のために」を読んで

著者: 川上武

ページ範囲:P.1666 - P.1668

胃癌の見落しに悩む臨床医
 戦後の医療技術革新は,わが国の疾病構造にも大きな変化をもたらした。多くの急性伝染病・感染症は克服され,肺結核症も幾多の社会的問題を残しているが,その医学的圧力は昔日の比ではない。
 これらに代つて,脳卒中・悪性新生物(癌)が死因別死亡順位の上位に進出し,これとの闘いが医学・医療の当面の課題となつてきた。脳卒中・癌を医療技術の面よりみると,本質的解決からはほど遠いとしても,ある程度は臨床医の射程距離内に入つてきたわけだが技術発達の制約から,臨床医にとつてその重みは必ずしも一様ではない。

症例 心電図の読みかたと臨床(3)

見おとされる心筋硬塞症の発病初期の心電図所見

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1701 - P.1704

 第1回は高位後壁の心筋硬塞,第2回は左室下面と側面の心筋硬塞症の症例を紹介した。いずれも発作直後のものではなかつたが以下は発作直後にはどんな心電図が現われるか,ということを示す症例である。

肺がんとまちがわれた症例(2)

不定型肺炎

著者: 金上晴夫

ページ範囲:P.1705 - P.1708

一般的な診断の決め手
 呼吸器疾患を取り扱う医師にとつては,ウィルス性肺炎や不定型肺炎はしばしばその診断をまごつかせるやつかいなしろ物である。というのはウイルス性肺炎にしろ不定型肺炎にしろきわめて多彩な陰影を示すためである。たとえばある場合には肺結核の早期浸潤とまちがいやすい陰影を示し,ある場合には空洞をつくつて空洞性肺結核とまちがわれ,また,ある場合には滲出液を伴つて湿性肋膜炎とまちがわれる。しかし大多数の症例では自覚症状も少なく,胸部レ線所見も短期間のうちに消失してしまうことが多い。もちろんそのなかには発熱,胸痛,せき,たんなどの症状も多く陰影も比較的ながくつづく場合もあるが,この短期間で陰影が消失するという点が診断の決め手になることが多い。かつて大学の学医として多くの学生の健康管理を担当していたときには,3週後に胸部レ線写真を再検討して消失しているかどうかによつて肺結核との第一次鑑別を行なつていたが,大きなまちがいがなかつたようである。このように陰影がしだいに小さくなるか,短期間のうちに消失するということが,私の経験した不定型肺炎の特長であると考えてきた。

他科との話合い

胆石症—切るべきか切らざるべきか

著者: 福田保 ,   山川邦夫

ページ範囲:P.1709 - P.1714

 胆石を溶かす薬や方法はないのか,ということは,だれでも一度は考えることであろう。しかし現在のところそれも不可能事で,つまるところ"切るべきか,切らざるべきか"が問題になつてくる。ところがこの問題にしても,いつ切るか,切つてはいけない場合とはどんな時か,ということになると,むずかしい問題もいろいろ出てくる。

基礎医学

リウマチ熱の診断に用いられる血清学的反応

著者: 鈴田達男

ページ範囲:P.1718 - P.1721

 血清学的反応はリウマチ熱の臨床診断法としてはもつとも重要なものの一つである。と同時に,病因をさぐる有力な手がかりとしてもさかんに用いられる。しかも,他の疾患と比べると,血清学的反応によるリウマチ熱の診断には,反応の意義を十分理解することと,検査成績の正しい読みがとくにたいせつである。

If…

不変不滅!"生命の畏敬"—シュワイツァー病院から帰国した 高橋功氏に聞く

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.1670 - P.1671

帰国の途につくときは元気だつたシュワイツァー
 長谷川 飛行機が今朝着いたばかりなのに寝る間もなくの応待でたいへんでございましたね。奥様はご一緒でなかつたのですか。
 高橋 家内は,私の休暇帰国に同行することをシュワイツァーが認めてくれたんですが,夏にはヨーロッパからランバレネ訪問客が多いので秘書が出発を延ばしてくれといつたので残つていました。ですから,私に代わつてシュワイツァーの死水をとつてくれました。シュワイッァーの最後に居合わせることができずまことに生涯の痛恨事ですが,家内が残つたことはせめてもの慰めです。

海外だより

素早く自分の道を選ぶ医学徒たち—The Royal Victoria Hospitalの生活から(2)

著者: 阿部和夫 ,   阿部サナエ

ページ範囲:P.1672 - P.1674

「あなたのなさつたインターン生活を,どう思つてらつしやるの? ちようど10年たちましたけれど。」
 「ぼくは東一で有益なインターンをしたといまも思つている。おそらくアメリカやカナダでのインターンのうちでも,ごくよいほうに属するんじやないかな。ただし,医学部を出たての実地修練という意味ではね。」

洋書の紹介

最近の循環器病学書から

著者: 坂本二哉

ページ範囲:P.1678 - P.1679

Kossmann, C. E, 編:
Diseases of the Heart and Blood Vessels. No-menclature and Criteria for Diagnosis. 6th edition, Little, Brown & Co., Boston, 1964, 2,200円(A5版,463頁)。
 本書は1928年の第一版以来古い歴史をもち,1929年の第二版,1932年の第三版,1939年の第四版を経,われわれにもつとも身近な参考書の一つであつた第五版は1953年の出版である。しかし近年における循環器病学の長足の進歩に伴い,大幅な改訂の必要に迫られたことは,序文にも記されているように,必然の成り行きであつた。
 書名の示すように,本書は循環器病学の教科書でも診断学書でもなく,また一方,深遠な学理を披露する専門書でもない。一貫した著作の理念は,Kossmannを長とするNew York Heart Associationの規準委員会による心・大血管疾患の名称分類,およびその診断規準の提示であり,論争の的となるような内容や,臨床的に意味のない診断規準や論議には一切触れず,現時点におけるもつとも妥当性のある規準についてのみ述べたものである。

ニュース

国際的視野の39年度厚生白書

著者:

ページ範囲:P.1682 - P.1682

 厚生省は,昭和39年度厚生行政年次報告書(厚生白書)をまとめ,8月3日の閣議に報告了承をえてこれを公表した。
 今回の白書は,わが国の社会,経済が産業構造,就業構造の近代化,都市化の進展,人口構造の老齢化,家族構造の変化などさまざまな面で"巨大な規模の変動"を生じていることを浮きぼりにし,急速な経済発展に伴う国民生活のひずみ是正のため,経済開発と均衡のとれた社会開発の推進の必要性を強調すると同時に,現状の分析についても社会保険,健康水準などについて西欧先進諸国との国際比較のなかで問題点をとらえ,将来の方向を指摘しているのが特徴である。

薬物の安全対策

著者:

ページ範囲:P.1683 - P.1683

 最近,アンプル入りカゼ薬事件,サリドマイド事件などの続発で,薬物の副作用に関する国民の関心がとみに高まつているが,さる5月のWHO(世界保健機構)の総会においても,アメリカ代表から国際的な薬物副作用の監視機構の設置が提唱され,この問題は国際的な重要課題としてとりあげられようとしている。
 WHOでは,すでに昨年2月にモスクワで開かれた欧州WHO会議において,つぎのような安全計画の実地方法を採択している。

外国の文献から

心筋硬塞後の耐糖力,他

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1680 - P.1680

 心筋硬塞の患者にはしばしば耐糖力の障害がみられるが,これは一般に十分認められているところである。しかしながら,なぜ両者が関連しているのかという点になると,不明な点が少なくなく,またこの場合の耐糖力の攪乱状態を近代的方法で評価したという話は,ほとんど聞かない。そこで,心筋硬塞後の患者50名のあいだに糖尿病および前糖尿病がどれだけの頻度であるかを知るために,耐糖力とプレドニゾンーブドウ糖耐容力の検査を実施してみた。その結果判明したのだが,上記50名中,糖尿病をもつていたのが14名,前糖尿病をもつていたのが2名で,硬塞後まもなく一過性の糖尿病をもつていたのが,そのほかに8名あつた。これにたいして,コントロールとして設定した50名のなかに,糖尿病をもつていたのは,わずか4名にすぎなかつた。

"痛み"のシリーズ・1

顔面痛—定型的な痛み

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.1722 - P.1723

 顔面痛は,種々の疾患に伴つてみられるが,痛みの仕組みや原因については,なお不明なまま残されているところが多い。しかし,患者は,この症候のために,不快な感覚と,不快な感情を起こして,なんらかの対策をもとめている。臨床医にとつて,この診断と治療は,きわめて困難な部類に属するが,対策をたてる前に,解剖,生理,心理の三面からの考察が必要である。それにしても,頭部,頸部の神経支配や,内部血管の走行は複雑で,痛み刺激に対しての心理的な影響も大きいので,むずかしい問題が多い。
 これを,定型的な痛みと不定型の痛みとに分けて取り扱うことが,当面臨床診断と治療面において合理的と考えられる。そこで今回は,「定型的な痛み」,第2回では「不定型な痛み」,第3回には「偏頭痛」という順で「痛み」について述べてみたい。

統計

アメリカにおける結核罹患と死亡

著者: 滝川勝人

ページ範囲:P.1642 - P.1642

 第2巻・第7号と第8号において,日本における最近の結核罹患と死亡の状況について述べましたので,今回は近着の資料より,アメリカにおけるその状況についてながめてみましよう。なお,アメリカにおいては活動性結核のみ,患者数および罹患率の算定に数えられております。
 1953年に始まるこの10年間に,毎年報告された結核患者数と死者数は逐年減少傾向にあります。(表および図1参照)

簡易臨床検査のやり方と評価

無胃管胃液検査法

著者: 石井暢

ページ範囲:P.1608 - P.1608

 胃液検査法には胃管法と無胃管法とがある。胃管法たとえばKatsch-Kalk法などでは胃液を採取しながらその状態の変化を観察することができると同時に胃内容からとくに細胞,血液,食物残渣なども検査できる利点がある。しかしなにぶんにも長い胃管を嚥下させるという被検者に与える苦痛が大きい。したがつて,よほどの適応がないかぎりこれを実施することは困難で,また方法自体短時間で多数の人を検索することができない。
 予防医学的に多数の対象からあるいはドック的な健康診断では単に胃液の酸度の程度を知るだけでもきわめて大きな意味をもつ。このためには被検者の負担をできるだけ軽減し,しかも相当高い確率で推定できる簡単な方法があればよい。

Bed-side Diagnosis・2

An Unusual Case of Congestive Heart Failure in A Middle Aged Woman

著者: 和田敬

ページ範囲:P.1724 - P.1725

 Dr. A (Medical Intern):Good morning, Dr. B. With your permission, * I would like to show you a case for your rounds this morning since Dr. C is absent.
 Dr. B (Medical Consultant):Good morning, Dr. A. I am very glad that you are going to show me a case, but, what has happened to Dr. C? I hope he is not sick.

文献抄録

喘息と情動—その原因と治療—Med j Aust I: 961-967 (June 25) 1955

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1726 - P.1726

はじめに
 最近,糖尿病を一つの症候群syndromeと考える人がわが国でも増えている。喘息についてもまた,しかりである。というよりもむしろ,喘息は一つの症状symptomだといつたほうがよいかもしれない。
 さて,喘息の病理であるが,これは細気管支のけいれんとその部分的閉塞であることは,周知のとおりである。しかし,この病理をひき起こす原因は,はたして何であろうか。一言にしていえば,アレルギーである。花粉その他,空中の塵などがアレルゲンになることは,だれでも知つている。しかし,案外忘れられているのは,細菌またはその産物がアレルゲンになつている場合である。いわゆる"喘息状態"にある患者に,抗生物質を投与したところ,その喘息状態がみごと雨霧消散した,などというのは,つまりこの感染によるアレルギー状態の場合なのである。
 また,情動が喘息発作と相当密接な関係にあることは,医師,とくにホーム・ドクターの,つとによく知るところである。しかし,このような,喘息の心因性は,喘息の基礎的メカニズムというよりは,むしろ,これを惹起する誘発装置ともいうべきもののようである。
 つぎは,「喘息と情劾」T. wright(Queengland Institute of Medical Research, Brisbane, Australia)よりの抄訳である。

"急性糸球体腎炎の予後"—"JAMA"(July 7) 1965

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1727 - P.1727

 小児では,連球菌感染後の急性糸球体腎炎の予後は一般に良好である,とされている。ところが,急性糸球体腎炎にかかつているとみなされている小児が,時に経過不良のことがあるのである。この場合は,その小児がほんとうに急性糸球体腎炎にかかつているのか,それとも急性糸球体腎炎に酷似している病気にかかつているか,それが問題なわけである。予後決定の第一歩が病状を正しく診断するにあることはいうまでもない。
 LiebermanとDomellの両氏は,一定の診断基準を設けるために,"ロサンゼルス小児科病院"で急性糸球体腎炎と診断された患者の記録のうち,1937年から1960年にわたるものを,再調査してみた。調査した患者のうち,その後の経過を追求検討したのは,486名にのぼつた。

トピックス

ソ連の新薬開発—モスコー・ニュース 7月24日,1965年より

著者: グリゴリー・ペルシン ,   北上幸雄

ページ範囲:P.1675 - P.1675

 ソ連では1917年の社会革命が行なわれて以来数百種にのぼる重要な新薬が開発されてきたといえる。
 最近の35年間を例にとつても,150種以上の新アルカロイド系新薬が公認され,そのうちの多くのものは臨床に役立てられている。これらのものの中では,プラチフィリン-アンチコリン・エステル製剤,ガランタミン-ポリオ後遺症の治療薬,セクリニンおよびエチノプシン-中枢神経刺激剤,パチサルピンおよびブレビコリン-利尿剤,ナノフィンーガングリオン麻酔剤,それに南米土人が使用する毒物-クラレに似た製剤である-コンデルフィン,エラチン,メリクチンおよびディプラチン(後者は半合成によつて得られている)があり,またコルカミン-皮膚がん治療薬,トリアカンティン-反発作薬およびその他多くのものがある。

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きのう・きょう・あした

著者: 和田武雄

ページ範囲:P.1669 - P.1669

×月×日
 厚生白書が発表された。今年も平均寿命の延長が伝えられるが,長生きでは,たしかに日本も先進国の第一線に並んだことになる。だが2,3日前「こんなことになりました」といつて辞令片手に挨拶まわりに来た人のことを思い出す。「○○附を命ずる」○○附とは何をするところ,と気のきかない問いをした時のことが,忘れられない。ユニホームをぬいだこの人は,きのうも,きようも車の波を眺めている。いつ読んだ小説だつたかに,"Das Leben strömt"とあつた文字が追つかけ,脳裡をかすめる。
 そういえば来春の大学卒業生が大変就職難で困るということも聞かれる。医学の進歩が社会にもたらすあすの問題には,原爆ほどのことはないにしても,人間個々の医学としてのみこれを研究しても,人間の集団に対する医学的配慮の欠けは大きいおとし穴をつくりそうに思えてならない。公衆衛生という学問にはまず"公衆"という教育が先だといったS君の言葉が,いま分るような気がする。世界観のしつかりした医学教育・医学研究を考えねばなるまい。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集

60巻10号(2023年9月発行)

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60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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