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海外だより
勤勉で競争意識の激しい研究者たち—ウイスコンシン大学生化学教室より
著者: 尾形悦郎12
所属機関: 1東大吉利内科 2ウイスコンシン大学
ページ範囲:P.724 - P.725
文献購入ページに移動ウイスコンシン大学は,シカゴの北西,車で約3時間,4つの湖に囲まれた町,マヂソンにある。アメリカ一美しい大学都市,と人々はいう。事実,湖畔は,白い桟橋につながったさまざまなボート,木陰で読書する人,釣糸を垂れる人,はるか対岸に木々の間から見える州庁のドーム,葦の間を一列に進んで行くあひるたち,日の出,日沈の時,四季それぞれに飽かぬ眺めだが,ことに晩秋紅葉の時の美しさは,何に例えようもない。毎朝,大学の樹木林の中を遠まわりして研究室へ行くドライブは,異国での数少ない楽しみの一つである。
大学は,なかでも一番大きな湖,メンドウタ湖畔一帯を占める。州立大学の常として,高校卒業のだれでもが入学できるので,実に数万の学生が構内を右往左往しており,学期始めの昼時には,交通整理の巡査が立ち,大学周辺のキャフェテリアは満員で,昼ぬきとなる学生もでてくる。学期終り頃には大分淘汰され,卒業頃にはちようどよくなるという。クリスマス休暇には,この学生たちのほとんどが,サァーツとどこかへ消えてしまう。街は急に森閑となり,今度は,とり残こされたように居残っている外国人ばかりが,やたらと目につきだす。大部分が大学関係者で,日本人も二百人を越すというが,構内を歩くと,普段でも,おなじみのモンゴリアン系の風貌に何回となく,すれ違う。
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