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雑誌目次

雑誌文献

medicina2巻9号

1965年09月発行

雑誌目次

EDITORIAL

新しいいのちの誕生に想う—修繕医学から保護育成の医学へ

著者: 木下正一

ページ範囲:P.1305 - P.1307

 おそらく本誌の読者は,医学の各方面に広く,かつ多彩であろうと想う。そういう読者層を心に描きながら,はなはだ狭い専門領域の片隅から,不勉強者の1産婦人科医が,その40年間にわたる臨床活動の中で考えてきた感想をここに記すことは,〈場所がらをわきまえぬ〉と笑われるかもしれないが,〈いや,そんなに無意義なことではないよ〉といわれるかもしれない。
 1ガツ,2ガツ,3ガツと-12ガツまで日本人は,来る月,迎える月をただガツガツ暮して過すのか? といわれるこの世の中でも,長袖の医家の家に生れ育つたせいか,私は幸にもあまりガツガツとばかり暮してきた憶えはない。

今月の主題

悪性腫瘍と発熱

著者: 小山善之

ページ範囲:P.1308 - P.1312

 悪性腫瘍における発熱の原因は,感染性の発熱を除くと,まだ不明の点がきわめて多いが,ここでは悪性腫瘍の発熱について,その頻度,腫瘍別頻度,熱型,発熱の原因,治療の影響などにつき,述べてみた。

不定愁訴症候群

著者: 阿部達夫

ページ範囲:P.1320 - P.1325

 不定愁訴症候群とは,全身倦怠,下肢重感,易疲労性,動悸,息ぎれ,しびれ感,頭重,浮腫など,いわゆる脚気様愁訴をもち,しかも器質的変化を認め難い一群の症候を総称したものである。この論文では,脚気の研究からはじまり,そして今日,不定愁訴症候群と呼ぶに至るまでのうつりかわりと,医師を困らせるこれら一群の患者をいかに診断し治療するかについて,今までに到達し得た考え方を述べてみた。

<話合い>発熱—その種々相を探る

著者: 佐々木智也 ,   小山善之 ,   鈴木秀郎 ,   小酒井望

ページ範囲:P.1313 - P.1319

 発熱というものは,非常にとらえどころのないものであり,そしてまた非常によく遭遇するものでもある。いつたい,発熱の裏にはどのようなものがかくされているのだろうか。

本態性高体温症

著者: 冨家崇雄

ページ範囲:P.1317 - P.1317

 本態性高体温症とは,体温値が高い状態が相当長期間継続し,しかもその高体温を説明しうべき何らの病的な原因も見当らないもの(この際自覚症状を伴うものも伴わないものもある)と一応定義されている。微熱問題のもつともやっかいなものの一つとして論じられる。報告者の考え方の相違により本態性高体温症,常習性高体温症,体質性高体温症,真性遷延性高体温症,植物神経性神経質性体温上昇など種々の名称で呼ばれている。
 おそらく先天性にせよ後天性にせよ,体温調節機構の変調により高体温とはなつているが,臨床的に病的とすべき何らの原因も見当らず,生存上作業上何の不都合もない。しかしその変調の原因は不明であるといつたものに用いられるようである。

Physical Diagnosis

高血圧症診断のコツ

著者: 中沢房吉

ページ範囲:P.1326 - P.1328

 患者の血圧を測定し,これが一般にいわれる正常血圧より高いというので,なんの顧慮もなく,吟味もせずにすぐ高血圧症(ここでは本態性高血圧症)と診断し,盲目的に強力な降圧剤を投与する医人は,いまはほとんどないと思う。ことに高血圧年齢に達しない若い人,あるいは異常の訴えや症状のある人などでは十分な考慮と検査が行なわれている現状であるから,つぎに筆者の述べることはおそらく蛇足であろう。だから高血圧患者を診るときに,どのような心がまえであるべきか,という筆者平素の考えかたをひととおり述べるにとどめる。しかもごくとおりいっぺんの設備しかもたない第一線の開業医家に自分がなったつもりで,頭の準備をすることにしよう。

診断のポイント

腎腫瘍

著者: 日野志郎

ページ範囲:P.1329 - P.1330

大部分が悪性腫瘍
 教科書的には良性と悪性に分けられるが,臨床的に問題になるのはほとんどが悪性腫瘍で,その頻度は全がんの1〜3%程度とされている。診断の面からは,つぎのように分類するのが便利であろう。

RA—テスト,ローズ反応

ページ範囲:P.1331 - P.1332

小児のひきつけ

著者: 石塚祐吾

ページ範囲:P.1333 - P.1335

 「ひきつけ」という言葉は,おもに一般の人が用いる言葉で,国語辞典を見ても「けいれん」と同義語と解される。
 「けいれん」の診断については,多くの人がいろいろの雑誌の特集号や著書に書いておられるが,ここでは私なりに,小児の実地診療に多少ともお役にたつように,経験をもととして記してみたいと思う。

治療のポイント

脳卒中の生活指導

著者: 福井圀彦

ページ範囲:P.1339 - P.1340

脳卒中リハビリテーションの考え方
 脳卒中患者の指導にはPhysiatristを始めとするmedical teamからpsycho-social teamに至る各種のチームワークが必要であることはいうまでもない。しかし患者の全身的な状況,麻痺の程度,種類,年齢,男女別,心理的状態,家庭的,社会的状況などによつて,リハビリテーションプログラムは異なり,チームワークの組み方も一様ではない。したがつて脳卒中の生活指導と一口にいつても,いろいろな段階あり手段ありで,要はいかにすれば,その患者を,単に身体面のみならず,社会における一個の人間として最高のレベルまで能率よくもち上げることができるかが,team approachとしての腕の見せどころであろう。
 そのためには一般的内科的諸検査を十分行ない,リハビリテーションプログラム実施に伴う各種の危険度を判定すると同時に,筋力テスト,A D. L. 検査,関節可動範囲検査,心理テスト,知能,言語テスト,社会的調査などを十分に行なう必要がある。

抗甲状腺剤の使いかた

著者: 清水直容

ページ範囲:P.1341 - P.1343

 抗甲状腺剤とよばれるものは,ふつうmethyl-thiouracil(商品名Methiocil)やmethimazole(1-methyl-2-mercaptoimidazole,商品名Mercazole)など,下図に示したような化学構造式をもつものでthiourea及びimidazoleの誘導体である。このほかにpropylthiouracilがあるがアメリカでおもに使われており,その使いかたは,methylthiouracilと同様で日本では最近市販された(商品名Thiuragyl)。
 これらThiouracil系の抗甲状腺剤の作用機序としてはつぎの3点で甲状腺ホルモンの合成を阻害することが知られている。

グラフ

前眼・外眼の変化と内部疾患

著者: 原田政美

ページ範囲:P.1294 - P.1295

 その昔,前眼・外眼病変の王座を占めていた梅毒や結核は,近年ほとんどみられなくなつた。これに代つて登場したのはベーチェット病である。これは眼・粘膜・皮膚症候群と名づけられているように,眼症状としてのぶどう膜炎のほかに口腔アフタ・陰部潰瘍・結節性紅斑などを伴い,さらに発熱・神経症状などが反復して現われる全身病である。最近この種の患者が急増し,失明や死亡例も多い。まずこれを紹介し,その他参考になりそうな症例をいくつか掲げてみたい。

出血時間測定

著者: 安部英

ページ範囲:P.1297 - P.1299

 出血時間 出血時間とは耳たぶまたは指(通常左環指)頭にメスあるいは平たい針で切創をつけ,流出する血液を30秒ごとにろ紙で吸いとるとき,ろ紙に着く血液が漸次少なくなつてついになくなる(すなわち止血する)までの時間をいう。このさい切創の大きさおよび深さは3mm×2〜4(平均3)mm程度がよく,最初の30秒の血斑の大きさと出血時間とはかならずしも平行しない(しかし一般にはこの血斑の直径が1〜2cmのさい,検査成績もきれいで出血時間値も再現性があるので,この程度の切創がすすめられている)。正常人での値は2〜3分で,病的の場合には延長する。これはDuke法といつて通常行なわれている方法であるが,このほか前搏の血圧を一定にしてつくつた切創より出血する時間をはかるIvy法がある。この出血時間は出血部位の組織トロンボプラスチン量,皮膚の弾力性,および血中血小板の数や性能,血漿凝血因子量などによつて左右され,出血性素因の綜合的判定に不可欠の検査法である。以下出血時間測定の手技を述べるが,このほかの注意として,検査前に耳たぶをもんだり,温めたりすることは無用であるが,測定前15〜30分間,室温15〜20度のところに休ませておくことが望ましく,また食事直後では出血時間も短縮するので,できるだけ空腹時に測るようにしたい。

自動血球計算

著者: 富田仁

ページ範囲:P.1300 - P.1302

 メランジュール,計算盤,顕微鏡を用いての血球数の算定法は,過去100年の歴史をもつている。その間いくたの自動血球計算の方法が試みられたが,精度において劣り,目算法を駆逐するに至らなかつた。しかるに最近のエレクトロニクスの進歩によりついに自動血球計算は実用の域に達した。現在市販されている計数器の種類をその原理の上から分類し概説すればつぎのようになる。
 1.血球の光学的特性を利用したもの

ファースト・エイド

高血圧性脳症

著者: 五島雄一郎

ページ範囲:P.1344 - P.1345

 高血圧性脳症という病名を初めて記載したのはOppenheimerおよびFishbergであり,一般には高血圧にもとづく,一時的脳循環障害により脳症状を呈する症候群をいつている。
 高血圧性脳症の救急処置を述べる前に,その成因について,簡単にふれておく。このことは治療上はなはだたいせつなことである。

器械の使い方

吸入器の使い方

著者: 清原迪夫

ページ範囲:P.1346 - P.1347

原理と種類
 吸入器は,気道の所期の部位に薬液を効率よく到達させ,治療効果をあげるために用いられる。
 そのためには,上気道から肺胞に至るまでの形態と機能について理解されていることが必要である。吸入器もこの要求に沿つて設計され,使用される。

正常値

肺活量と時間肺活量

著者: 金上晴夫

ページ範囲:P.1404 - P.1406

肺活量
 肺活量はふつう最大吸気位(できるだけ深く吸いこんだ位置)から,ゆつくりできるだけ多く吐き出させた量をいう。肺活量を測定するにはいろいろな装置があるが,もつとも代表的なものは,ベネデクト型レスピロメーターである。
 これには9Lと13.5Lの2種類がありどちらでもよい。しかし臨床医が第一線で使うのには,簡単なVitalorというフイゴ型のものでもよい。

この症例をどう診断する?・2

出題

ページ範囲:P.1285 - P.1285

■ 症例
72歳,男性,貿易商
 主訴:左上下肢の運動障害,

討議

著者: 和田敬 ,   金上晴夫 ,   田崎義昭

ページ範囲:P.1418 - P.1423

 和田 72歳の男性で,主訴は左上下肢の運動障害ということですね。糖尿病があるので動脈硬化は促進していると思います。酒客であるということですが,私これは非常に重視すべきことじやないかと思うのです。なぜかと申しますと硬膜下血腫を起こすことが多いからです。酔つぱらつているので,ぶつけたというようなことを覚えてない。しかも,数日から数週・数カ月とか,まれには,数年後に症状を現わしてくるのですね。この患者には外傷はありましたか。
 田崎 5月に倒れた時頭は打たなかつたが,腰を打撲しております。家人もころんでから足がきかなくなつたと考え,最初某大学病院の整形外科につれて行つていますが外傷性のものではないといわれたとのことです。老人やアルコール中毒者では,きわめてわずかな外傷や,あるいは外傷の既往が明らかでないのに硬膜下血腫を起こしますので,この患者にも一応考えておくべき疾患ですね

神経疾患リハビリテーションの実際・II

対麻痺・1

著者: 上田敏

ページ範囲:P.1348 - P.1350

 対麻痺には脊髄炎,クモ膜炎,脊髄腫瘍,外傷性脊髄損傷によるもの,また脳性小児麻痺の対麻痺型,脊椎被裂など先天性のものがある。またギランバレー症候群,多発性神経炎が対麻痺型をとることも多い。リハビリテーション・プログラムはこれらにほぼ共通している。ここではまず完全麻痺についてのべ,不全麻痺はその後にふれる。
 一般的にいつて,対麻痺はその麻痺の高さ(髄節レベル)によつてリハビリテーションのゴール(到達目標)がほぼ推定される。いいかえれば対麻痺では片麻痺とことなり,かならずしも麻痺そのものの回復を期待せず,上肢と躯幹の残された機能の強化により(また装具の着用により)失なわれた機能を補なうことが根本方針である。また対麻痺では下肢装具を着用すれば松葉杖歩行は全例原則的に可能である。上肢による日常生活動作(Activities of Daily Living,A. D. L.)にもほとんど問題はない。しかし片麻痺とちがつて,対麻痺では歩行とA. D. L. の独立だけでは問題が終わらない。褥創の予防(skin care)と膀胱障害対策とが最初から社会復帰後まで一生を通じて必要となるのである。

症例 心電図の読み方と臨床(1)

見おとされた心筋硬塞症の1例

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1385 - P.1388

 日本では,心臓病による死亡数や,心筋硬塞症の頻度は欧米に比べるとはるかに少ない。これは,実際に少ないのか,実地医家による発見が少なく,誤診されているためであろうか。私は,これらの頻度は,欧米よりは少ないが,私たちが思いこんでいるよりもずつと多いものと思う。心電図をタイミングよくとり,これを熟読すれば,神経痛とか,胃病とか,かるい狭心症と診断されているもののなかに,本ものの心筋硬塞が少なからず混つているものと思う。

緑色腫を思わせ,著明な腹部膨満を示した—Ganglioneuroblastomaの1例

著者: 星昭二 ,   真具晃 ,   小関要

ページ範囲:P.1389 - P.1393

いとぐち
 近年,抗生物質の研究,進歩により,感染症のために死亡するものは,成人のみでなく,小児においてもかなり減少をきたし,悪性新生物によるものが,死因統計のうえで,上位を占めるにいたつている。そのために,小児の悪性新生物に関する研究・対策が,しだいに重要視されてきている。
 小児の悪性新生物は,成人のそれに比して,かなり異なり,白血病,脳腫瘍,神経芽細胞腫,Wilmsの腫瘍などが多く,特長的のものである。Dargeon1)によると,年々,小児の悪性腫瘍は,増加をきたし,これらのなかで,神経芽細胞腫は重要な部位を占めているといわれている。われわれは,臨床的に著明な,腹部膨満,骨転移像を示し,組織学的には,一部に神経節細胞腫を認めた神経芽細胞腫の興味ある例を剖検する機会をえたので報告する。

他科との話合い

東京横浜喘息からいわゆる四日市喘息まで—公衆衛生学者と臨床家とのあゆみより

著者: 児玉威 ,   北博正 ,   三上理一郎 ,   吉田克己 ,   長岡滋

ページ範囲:P.1394 - P.1401

 「くさい空気が流れてくると,急にいきがとまりそうになる。いそいでお医者さんのところへかけこむと,となりのおじいさんも,むかいのおばあさんもかけこんできた。」という四日市の患者のなまなましい訴えは,東京から訪ねた臨床家をおどろかせた。
しかしこの問題は,皮相的にはとらえられないし,またとらえてはならない。そこでこの座談会が企図されたのである。

基礎医学

電解質バランス—検査データの読みかた

著者: 河合忠

ページ範囲:P.1407 - P.1411

 電解質バランスの異常は「内科的緊急疾患」とよばれ,その異常を正しく把握し,適切な処置を与えることによつて劇的な回復が期待される。電解質バランスの異常を診断することは従来考えられているほど困難ではない。比較的精密な検査成績が急速にえられる現在では,臨床所見を正しくとらえ,検査データを正しい順序で読むならば電解質バランスの様相が容易に把握される。ここでは血清電解質の検査データをいかに読むかについて,実際に見られた症例を中心に説明する。

If…

医療の現物給付でなく医療費給付に—日本医学協会会長癌研究所所長 吉田富三氏に聞く

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.1354 - P.1355

大学,病院,開業関係の3本柱
 長谷川 新に旗あげされた日本医学協会は大学関係,勤務医関係,開業医関係の3本立てで構成されておりますね。
 吉田 大学関係者と病院勤務医と開業医の3本の柱からなりたつております。最初は大学と病院を主とするような論議もありましたが,完全な3本の柱からなりたつております。地方へ行きますと,よく「私は一介の開業医ですが…」というようなことを聞きますが,私は「一介の開業医」などという言い方はやめなさいと言うんですよ。開業の人が卑下することはない,もつと矜持を持つべきです。協会は社団法人にするつもりですが,社団法人になると開業の人も参加者がふえると思います。

海外だより

EXPLORE AND DREAMその2—New Orleansより友へ

著者: 黒島晨汎

ページ範囲:P.1362 - P.1363

〈重苦しい雰囲気の人種差別〉
 Charity Hospitalはその名称から想像がつくように,州によつて貧しくて十分な医療を受けることの出来ない人々のために運営されている病院ですが,同時に両医学部の臨床教育,臨床研究の場としての役割を受持つています。19階3,000ベッドを有する巨大な病院ですが,ぼくがアメリカ南部における人種差別の具体的な姿を初めて見たのは,この病院においてでした。いまでもその時の驚きをはつきりと覚えています。病院の患者用の玄関はどこも「白人用」「黒人用」の文字が刻まれていました。急患用の玄関でさえないことではありませんでした。待合室,便所,病室は勿論区別されていました。ぼくがここで過去形を使つたのは,最近これらの区別を示す文字が削りとられたからです。これはアメリカの人種問題において歴史的事件といわれる1964年7月の公民権法の施行に伴つて起きた変化の一つなのです。しかし現在でも,白人は従来白人用であつた玄関を,黒人は相変らずもとの黒人用の玄関を使用しているのです。病室は病院側の配置処理によつて,その80%が差別を撤廃されたと最近の新聞が報じていました。ところで,ぼくには,この玄関が現在でも相変らず区別されて使用されていることを,それが単なる惰性であると考えられないような重苦しい雰囲気がここでは感じられるのです。

最も印象に残つた本

新しい戦懐「悪の華」—Charles Baudelaire Les Fleurs du Mal

著者: 松井好夫

ページ範囲:P.1364 - P.1365

 ボードレールの著作は,すべて私のこころに深い感銘を与えているが,そのうちもつとも印象に残つている本といえば,詩集「悪の華」である。私はこの詩集を初めて手にしたとき,これに対するVictor Hugoの「新らしき戦懐」という言葉が,真にボードレールを理解したうえの言葉だつたか,あるいは単なるおせじだつたか,私にはわからないが,とにかく,それはこの詩集にぴつたりの言葉であることだけは確かだと思つた。
 なんとなれば,そこにはボードレール以前においては,他のいかなる詩人たちも,口にしえなかつた画期的,独創的な詩句がいたるところにちりばめられていたからである。

座談会

転換期に立つ小児保健

著者: 松村龍雄 ,   中山健太郎 ,   宮崎叶 ,   国分義行 ,   松島富之助 ,   今村栄一 ,   船川幡夫

ページ範囲:P.1356 - P.1361

 母子保健法案の審議の問題をきつかけに,母と子の健康があらためて見なおされようとしております。ここではとくに小児保健の現状と予想される今後のコース,あわせて小児科医のビジョンとはどういうものであるかを探つていただきました。

話題

糖尿病の眼合併症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.1368 - P.1368

 糖尿病による眼合併症には,糖尿病性網膜症,白内障,虹彩炎,視神経炎や,麦粒腫,眼窩膿瘍のごとき感染症,眼筋麻痺や屈折異常,調節衰弱のごとき,神経または機能障害などが古くから知られているが,合併する頻度の高いものは,網膜症,白内障,屈折異常などである。
 屈折異常とは,短期間のうちに近視となつたり遠視となつたりするもので成人ではふつうは起こりえない現象であり,血糖値の変動と関連があるといわれているが,眼内液(とくに房水)の屈折率の変化や,調節筋の異常などに由来するものらしい。しかしこれらは眼鏡を使用することにより支障を取りのぞくことができるが,いかにしても視力障害をのぞきえないものは網膜症である。

Bed-side Diagnosis・1

A case of Acute Chest Pain Simulating Myocardial Infarction in a Middle Aged Man

著者: 和田敬

ページ範囲:P.1351 - P.1352

この連載をはじめるに当って
 Bed-side Diagnosisと題して,英文の診断討論をのせることにしました。英会話は米国のインターン,レジデントが日常使用しているような簡単なもので,何もあらたまって難かしいものではありません。英会話を学ばれる以外に,多少なりとも医学知識の向上のお役に立てば幸いと思っております。この方式のものはModern Medicineにも毎号掲載されて米国でも好評をはくしています。本誌での症例は著者の経験した症例を英文化したものです。

簡易臨床検査のやり方と評価

血清コリンエステラーゼ

著者: 丹羽正治

ページ範囲:P.1292 - P.1292

 コリンエステラーゼ(Ch-E)には2種類あつて,その1つはアセチルコリンだけを特異的に水解して酢酸とコリンとにする真性Ch-Eで神経や筋肉組織にあつて刺激伝達を司つている。第2のものは偽性Ch-Eといわれ,アセチルコリンだけでなく,そのほかのコリンエステルも水解できる。これは血漿,肝および膵などに存在する。血漿中のこの酵素は肝から供給されるため肝実質の病変を反映し,血清アルブミン量にも比例している。日常の臨床検査で問題になるのはこの種の酵素である。

統計

届出より見た最近の性病患者の動向

著者: 滝川勝人

ページ範囲:P.1417 - P.1417

 医師が性病患者を診断したときは,性病予防法により,24時間以内に,文書をもつて,患者の居住地を管轄する保健所長を経て,必要な事項を都道府県知事に届け出るよう義務づけられております。
 この医師届出による,最近の性病患者の動向を見ますと,表1のようになります。すなわち,昭和23年には473,822人(592.3)を数えた性病患者も,その後は逐年減少をつづけ,とくに売春防止法の施行された昭和33年には,38,324人(41.7)と激減し,その後も減少傾向をつづけております。

文献抄録

"第2遣伝系"の発見—ガン発生機転との関係が深い—"JAMA" June 7, 1965 "医学ニュース"より

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1413 - P.1413

はじめに:
 ソビエトのプラズマジーンplasmageneは別として,従来の正統遺伝学では,遺伝子geneに相当するDNA(すなわちdeoxyribonucleic acidの略)は核内の染色体にあり,核外にはないものとされていた。核内のDNAのもつ遺伝情報は,メセンジャーRNAによつて核内から核外に運ばれ,蛋白質合成の場であるマイクロゾームmicrosomeのRNAに伝達されると,考えられていたのである。
 一方,細胞原形質中に多数存在するミトコンドリアmitochondriaは,そのなかに多数の酵素を蔵し,ここではもつぱら基質から自由エネルギーが抽き出される,と考えられていたのである。つまりミトコンドリアは,ミクロゾームのような合成工場にあらずして,エネルギーを発生する発電所である,というわけである。

最近のクモ膜下出血の治療—Lancet November 2,1963

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1412 - P.1413

 はじめに:
 激しい前頭部または後頭部の頭痛をもって突然はじまり,嘔吐,ショックとともに,ふつうは意識喪失をともない,頸部硬直がみられ,腰椎穿刺によつて髄液に血液をみるのはクモ膜下出血である。従来われわれは,髄液を適当量とつて液圧を下げ,これをもつぱら保存的に治療してきた。しかし,脳神経レ線学,神経外科,麻酔学の進歩にともない,これに外科的侵襲を加えることによつて,致命率を急激に下げることができるようになつた。
 以下は,その簡単なsurveyである。(浦田)

ニュース

集団事故に対する救急医療対策

著者:

ページ範囲:P.1366 - P.1366

 近年頻発している炭鉱爆発などの産業災害をはじめ,地震,大火,列車事故など,大規模な災害が起こった場合に,集団的に発生する傷病者に対する医療対策については,これまで国の方針もなく,また都道府県や市町村にも具体的な対策がなかった。このため,従来は日赤医療団の奉仕や,地方医師会の協力などによって,どうにか処理されていた。
 そこで,厚生省は,昨年秋以来関係医学会,団体,日本医師会の代表で「救急医療対策打合会」(座長 福田保順天堂大学教授)をつくり検討をすすめていたが,さる6月,各都道府県知事に集団事故に対する救急医療体制を早急に整備するよう通達した。

無医地区の実態

著者:

ページ範囲:P.1367 - P.1367

 国民皆保険下の医療制度における最大の矛盾は,保険料を納めながらも医療をうけることのできない無医地区の存在である。
 厚生省の定義によると,無医地区とは「人口,面積,地勢およびその周辺における医療機関の分布状況からみて,医療機関の設置を必要とする地区で,その中心からおおむね半径4キロメートルの区域の人口が300人以上のもの」とされており,さらにこれを,(1)第一種無医地区-周辺の医療機関を容易に利用できるもの,(2)第二種無医地区-医療機関が設けられても,その経営が事実上困難と認められるもの,(3)第三種無医地区-医療機関が設けられれば,その経営が可能と認められるもの,の3種類に分類されている。

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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