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天地人
レコード今昔
著者: 楽
所属機関:
ページ範囲:P.315 - P.315
文献購入ページに移動私がレコードを聴き始めたのは幼稚園の頃のことだから,55〜6年も前になる.雲母の振動板の付いたサウンドボックス,ゼンマイ仕掛けの蓄音器で,すさまじいスクラッチノイズの中から聴こえてくる「軍艦マーチ」や「軽騎兵序曲」に手をたたいたものである.本格的に音楽に興味をもってレコードを聴き始めたのは中学二年生の頃.最初に買ったのがストコフスキー指揮,フィラデルフィア管弦楽団によるドボルザークの「新世界」.以後レコード音楽のとりこになってしまったが,当時の地方都市ではナマの西洋音楽を聴く機会は皆無に近かったので,音楽を聴くこと即レコードを聴くことだった.しかしレコードの値段が何とも高い.昭和15年に上京した頃,六畳一間,二食付きの下宿料が25円だったが,ビクター12吋赤盤が3円50銭.ベートーベンの交響曲一曲で一月の下宿代の7〜8割が飛ぶ勘定になる.これを思うと現在の音質の良いステレオ盤が2,800円というのは安いと思う.
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