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雑誌目次

雑誌文献

medicina20巻6号

1983年06月発行

雑誌目次

今月の主題 内科医に必要な救急治療

理解のための10題

ページ範囲:P.960 - P.962

座談会

救急医療施設の現状と問題点—とくに一次・二次救急施設を中心に

著者: 丸茂裕和 ,   大久保忠訓 ,   太田宗夫 ,   大塚敏文

ページ範囲:P.887 - P.901

救急医療施設の現状/救急医療施設の条件/急病患者の取り扱い/一次施設に必要な設備と機材/求められる医師像とその教育/三次からみた一次・二次救急のあり方/運営上の問題点/救急医療の将来像

救急のためのモニター

意識障害のみかた

著者: 古橋紀久

ページ範囲:P.902 - P.906

 意識障害は臨床家にとって,速やかにかつ適切に診療されなければならない重篤な症候の一つである.生命の危険にさらされていることが多く,診療上のわずかな誤りは患者の予後を大きく左右する.短時間内にチェックポイントを見落とすことのないように,一定の順序で診察する方法を身につけておく必要がある.

血行動態の観察

著者: 金子正光

ページ範囲:P.908 - P.911

救急疾患の特殊性
 救急患者は,その発症が突然で,多くは重篤な症状を呈しており,緊急性も高くその処置も症例により種々多様である.確定診断に時間をかけるよりも,むしろその時点での判断により治療が優先し,次々と適確な処置が要求されることが多く,また突然の発症により患者や家族から既往歴を聴取する余裕のないこともある.蘇生術を含む種々の処置を行いながら検査をすすめ,最終的な診断や治療法を決めなければならず,しかもこれに短時間の猶予しか与えられぬことも多く,臨機応変な対応が要求されるのも救急疾患の特徴である1)
 またいわゆる蘇生術は,心拍停止から3〜5分が予後を左右する重要な鍵であることから,いつでもどこでもただちにできる日頃の訓練ないしは条件反射的に行いうることが要求される手技である.

危険な不整脈

著者: 早川弘一 ,   藤井裕之

ページ範囲:P.912 - P.913

心電図モニターが必要な場合
 心室細動,心室頻拍,急性高度房室ブロック,長い洞休止が予測される場合には心電図モニター(連続監視)が是非必要である.これら致死的不整脈の発生しやすい状態としては,急性心筋梗塞,心筋炎,重症心不全,心臓術後,ショック,低酸素血症,アシドーシス,電解質異常などがある.原因がはっきりしないが,最近頻繁にAdams-Stokes発作をくり返す場合にも心電図モニターが適用される.さらに,広範囲な急性心筋梗塞,心筋炎,心筋症などでにすで心収縮の低下している場合には,心房細動,発作性上室性頻拍,軽度の徐脈がこれに加わると血行動態は急に悪化することがあるので,この場合にも心電図モニターが必要となる.

腹部X線像

著者: 斎藤和彦 ,   大澤忠

ページ範囲:P.914 - P.917

 ここでは,「救急」とは,いわゆる急性腹症だけでなく昏睡などをも含め,緊急に検査をすすめて原因を明らかにし,適切な処置を講じなければならない広範な病態と考えており,外傷は除いている.腹部X線検査のうち,どこででも容易に実施でき,しかも腹部全体を把握することのできる腹部単純写真を中心に述べる.

血液ガス分析

著者: 福井俊夫

ページ範囲:P.918 - P.919

 □血液ガス分析はなぜ必要か
 血液ガス分析とは血液中の酸素(O2)および炭酸ガス(CO2)の測定を行うことであるが,血液は肺でとり込まれたO2を組織に送り,組織代謝の結果作られたCO2を肺に送って体外に排泄しているわけであるから,血中のO2およびCO2を測定することは,肺が十分なO2摂取およびCO2排泄を行っているか否かを知る手段であるばかりでなく,生存に必要な組織でのエネルギー代謝がうまく行いうるか否かを推測する最も直接的な指標である.
 したがって,救急患者を診る場合,血液ガス分析を行うことは非常に重要で,呼吸循環の管理の上で最も大切な検査の1つであり,脈拍,呼吸,血圧などとともにvital sagnの1つといっても過言ではない.

酸塩基平衡と電解質

著者: 横山剛

ページ範囲:P.920 - P.922

 救急時に行われる緊急検査の中で酸塩基平衡と電解質は必須のもので,両者は24時間いつでも反復測定可能な状態にしておくことが望ましい.この両者の値が救急時の病態の把握,治療方針の確立,予後の評価の上できわめて重要な情報を提供してくれるからである.

救急治療の実際

心肺蘇生法

著者: 川田繁

ページ範囲:P.924 - P.925

 心肺蘇生法実施の遅れは不可逆性の脳損傷を招く.その許容時間は4〜5分である.したがって,最近は心肺脳蘇生法ともいわれる.本稿では心肺蘇生法の基本手技と注意点,pitfallについて述べる.

ショックと心臓喘息

著者: 木全心一

ページ範囲:P.926 - P.927

ショック
 ショックの臨床診断上とくに大切なのは,末梢循環不全徴候である.入院して来たらまず手足の末梢をつかんでみて,冷めたく,じとっと冷汗をかいているときはショック状態の可能性があると考えなくてはならない.
 血圧をついで測定する.収縮期血圧が80mmHgを割っているときはショックであることが多く,ただちに治療が必要である.血圧に関して気をつけなくてはならないことは,高血圧の症例が収縮期血圧が110mmHgくらいでもショック状態となっていることもあるし,拡張型心筋症では平常状態でも90mmHgを割っていることがある.血圧は末梢循環不全の症状を伴うか否かで判定しなくてはならない.

急性呼吸不全

著者: 工藤一大 ,   沼田克雄

ページ範囲:P.928 - P.929

 急性呼吸不全の原因となる疾患は多く1),またその定義については一定した見解はない.しかしわれわれは,急性呼吸不全状態にある患者に対しては,速やかな診断と治療を行う必要がある.治療には,おのおのの原因疾患に特異的なものもあるが,救急処置としての治療には共通点が多い.ここでは急性呼吸不全の共通の病態に対する救急的処置について主に述べる.

クモ膜下出血

著者: 大谷光弘 ,   戸谷重雄

ページ範囲:P.930 - P.932

 クモ膜下出血は突然発症し,とくに迅速,適切な診断,処置が要求される重篤な疾患である.治療は外科的処置が優先するところから,クモ膜下出血に遭遇したなら,その原因疾患,病態に対して常に外科的処置の適応を考慮して対処しなければならない.

脳卒中

著者: 荒木五郎

ページ範囲:P.934 - P.936

 脳卒中救急処置で最も大切なことは,呼吸の管理といえよう.すなわち気道を確保することによって救命しうる場合が少なからずあることを銘記しなければならない.しかし救急処置を行う前に,患者の意識状態とvital signを把握することも重要なことである.意識障害の診かたについては別に詳述されているので,vital signから検討することとしたい.
 vital signでは呼吸の状態,血圧,脈拍,体温をチェックする.舌根沈下によって気道がなかば閉塞され,呼吸が浅くなっているか,あるいは喘ぐように苦しそうになっているときは,ただちに気道確保の手段を講ずる.呼吸型についてはPlumは脳ヘルニアの進展に伴うCheyne-Stokes呼吸,中枢神経性過呼吸,無呼吸性呼吸,失調性呼吸に注目している.Cheyne-Stokes呼吸は予後は必ずしも不良ではないが,中枢神経性過呼吸以下は予後は不良である.またvital signのほかに眼球位置・運動異常,瞳孔不同を観察することにより,病型,予後を鑑別することも可能である(図).

心筋梗塞急性期

著者: 深見健一 ,   平盛勝彦

ページ範囲:P.938 - P.940

 急性心筋梗塞症(AMI)は急性期死亡率のきわめて高い重篤な疾患である.死亡の大半は発症後数時間以内の早期に起こり,多くは心室細動(Vf)などの重症不整脈による1,2).うっ血性心不全,心原性ショック,心臓破裂なども重大な死因である.これらの合併症の発現は,梗塞巣の大きさ,発症後の心負荷などにより左右される1).したがってAMI発症時の救急治療の目的は不整脈死を予防し,梗塞範囲をできるだけ小にとどめ,合併症の発現を防止することにあるといえる.急性期治療の適否は死命を制するのみならず,慢性期の心機能,長期予後をも左右する大きな因子となることから,迅速かつ的確な判断と処置が必要となる.

解離性大動脈瘤

著者: 田村康二

ページ範囲:P.942 - P.943

 本症は激しい疼痛に始まり,急変する臨床像を示すので,診断とその治療にあたっては,内科医と外科医とのよい協力が必要である.しかしながら,予後は残念ながら現在のところではまだよくない.したがって,本症に対する十分な知識をもって,まず本症を早く疑うことが,臨床医にとって必要なことと思われる.

救急を要する不整脈

著者: 杉本恒明

ページ範囲:P.944 - P.945

救急を要する不整脈
 救急を要する不整脈を表に示す.
 処置に際して最も注意しなければならないのは,慌ててはならないということであろう.緊急時にはただちに心臓マッサージを行う心構えがあればよく,まずは何が起こっているのか,何が起こりうるのか,を適確に判断することが必要である.急ぐあまりに誤った,あるいは不必要な処置,投薬を行って取り返しのつかない事態を生じることがあってはならない.

気管支喘息

著者: 可部順三郎

ページ範囲:P.946 - P.947

 喘息重症発作は救急治療の対象となることの多い病態であり,変化する状況に対応してつぎつぎと過不足のない処置を行う適確な判断と高度の経験を要求される.

消化管出血と穿孔

著者: 岡部治弥

ページ範囲:P.948 - P.949

消化管出血
 消化管出血は第一線の臨床医にとって稀ならず遭遇する重篤な緊急事態の1つであり,迅速かつ適切な処置を必要とする.死亡率は多数例の報告で1カ月8%前後である.原疾患はきわめて多く,出血の状態に応じて患者の症状も種々に異なるので,患者救命のためには,まず全身状態の把握と管理,出血源の解明および適切な止血処置を迅速に施行しなければならない.消化管出血の頻度は上部消化管に高く,とくに緊急処置を必要とする大量出血例は上部消化管からのものが圧倒的に多いので,以下上部消化管出血を対象としてその緊急対策を述べる.
 診断 病歴聴取は急性出血時には約3分の1の患者で有用な情報が得られるにすぎない.吐血,下血の性状や色調などによって出血部位の推定をする.吐血はトライツ靱帯より口側の出血であることを示唆するが,吐血を欠くメレナのみの場合も上部消化管出血を除外することはできない.

イレウス

著者: 山本修三

ページ範囲:P.950 - P.951

 イレウスは通常機械的イレウスと機能的イレウスに分けられ,前者は腸管の循環障害を伴う絞扼性イレウスと,これを伴わない単純性イレウスに分けられる.救急治療の面からみると,イレウスの中で最も緊急に処置を要するものは絞扼性イレウスであり,その診断と対応がイレウスを扱う際の重要なポイントとなる.

劇症肝炎と肝昏睡

著者: 涌井和夫

ページ範囲:P.952 - P.953

 肝昏睡は各種肝疾患にみられる重篤な臨床症状である.劇症肝炎での肝昏睡の対策は,他の肝疾患でのそれと根本的には同一である.各種の対策がある.実地臨床上,医療の行われる場によって,行える対策も実行不可能なものも出てくる.ここでは救急設備も整い,各種の人工肝,モニター類,特殊検査の可能な,人員も十分にある,たとえば肝不全ユニットが利用できるような所での問題ではなく,肝炎ウイルスによるcontaminationのおそれはあっても集中治療室を用いねばならなかったり,最低の所で酸素吸入の設備があるだけの,一般個室での医療を考えて話しをすすめることとする.

腎不全

著者: 伊良部徳次 ,   村上信乃

ページ範囲:P.954 - P.955

 腎不全とは腎機能の著しい低下,もしくは廃絶によって,体内環境の恒常性が維持できなくなった状態と定義づけることができる.
 救急診療の現場においては,乏尿または無尿を訴えて受診する場合もあるが,全身倦怠感,嘔吐,呼吸困難,意識障害などで受診することが多い.慢性腎不全では,腎不全状態に対するadaptationによりさほど急激な経過をとらないが,急性腎不全は経過が急激で,きわめて重篤な状態で受診する.しかも急性腎不全ではその原因となった疾患が存在し,かつ種々の合併症を有するので,診断,治療がより複雑であるうえに迅速な対応が要求される.

糖尿病性昏睡と低血糖

著者: 七里元亮 ,   鮴谷佳和

ページ範囲:P.956 - P.959

 糖尿病患者が昏睡に陥った場合,①ケトン性昏睡,②高浸透圧非ケトン性昏睡,③乳酸アシドーシス,④低血糖性昏睡,⑤糖尿病患者に合併する他疾患による昏睡,を念頭に入れて鑑別する必要がある.なかでも,低血糖性昏睡(薬剤性低血糖症)との鑑別が重要かつ緊急を要するが,一般的に,発症までの経過,低血糖症状と血糖値(50mg/dl以下)から容易に鑑別しうる.
 かかる昏睡患者の治療原則は早期発見と早期治療にあり,刻々変化する患者の病態を絶えずチェックし,情報を的確に把握し適切な処置を行う必要がある.

Current topic

胆汁酸と病気(1)—腸肝循環の病態生理(対談)

著者: 大菅俊明 ,   多賀須幸男

ページ範囲:P.1000 - P.1015

 多賀須 今日は,熱心に胆汁酸を研究しておられる大菅先生にお話をいろいろうかがいたいと思います.
 胆汁質という言葉は近頃はあまり耳にしなくなりましたが,Hippocratesと並ぶ古代医学の巨人であるGalenus以来,胆汁は重要な体液のひとつとされてきました.しかし胆汁の主成分のひとつである胆汁酸は,最近まで臨床家からは縁遠い存在であったように思います.胆汁酸をDemarçayが発見したのが1838年ということですから,調べてみると緒方洪庵が大阪に適塾を開いた年です.取り扱いが面倒なこの物質が随分古くから知られていたことに驚かざるを得ません.

カラーグラフ 臨床医のための甲状腺生検

未分化癌の細胞診所見(2)—小細胞癌

著者: 藤本吉秀 ,   小原孝男 ,   平山章

ページ範囲:P.964 - P.965

 甲状腺未分化癌のうち,クロマチンに富む核を有し,細胞質の少ない小型の腫瘍細胞が充実性に増殖するものを小細胞癌と呼ぶ.当然,組織学的に悪性リンパ腫との鑑別が問題となるが,光顕的に次のような所見が小細胞癌を示唆するものとされている.すなわち,上皮様構造を有すること,多形性に富むこと,線維性結合織に囲まれた充実性増殖を示すこと,転移リンパ節にリンパ濾胞や胚中心が残存すること,などである.実際には鑑別が非常に難かしく,小細胞癌の確定診断のためには,電顕的に腫瘍細胞のhemidesmosomeを証明する必要がある.
 臨床的には,小細胞癌も巨細胞癌と同じく急激に増大し,隣接臓器に浸潤性に増殖するため各種の症状を伴う.小細胞癌は巨細胞癌と異なって分化癌と同程度に女性に好発し,腺腫や分化癌からの移行が少ない.また,治療面でも多くの巨細胞癌と違って,放射線外照射療法や化学療法に著効を示すものがあり,長期生存の期待ができる場合が少なくない.このような臨床像は悪性リンパ腫にも共通している.

グラフ 臨床医のための電顕写真 血液・2

急性前骨髄球性白血病

著者: 小川哲平

ページ範囲:P.974 - P.978

 急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia, APL)は,末梢血および骨髄が異常な前骨髄球で占められ,著明な出血傾向と低フィブリノゲン血症を伴って,急激な経過をとり,出血の著しい急性白血病の特殊な型のものとされていた.しかし近年抗白血病剤の使用とともに,汎発性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,DIC)に対するヘパリン療法によりその治療成績は著しく向上し,寛解率も60%を越えるに至った.このAPLの白血病細胞は不整形の核を示し,多数のペルオキシダーゼ陽性顆粒を有する.粗大な大型のアズール顆粒を有するのが特徴的と考えられていたが,小型の顆粒のものも報告されるようになり,アウエル小体の束faggot(bundles of slender Auer rods)の発見が重要となった.またt(15q+,17q-)の染色体異常を示すなど特異な点が多く,比較的に稀なものと考えられていたが,FAB分類ではM3とされ,非リンパ性急性白血病の約11%を占め,しばしば見られる急性白血病である.さらに抗白血病剤の使用とともに汎発性血管内凝固(DIC)に対するヘパリン療法など他種の白血病と異なった特有の治療法があるため,その診断は重要である。

肺癌を疑うX線像 症例編・4

小細胞癌を疑う腫瘤型

著者: 雨宮隆太 ,   山田隆一 ,   斉藤雄二 ,   於保健吉

ページ範囲:P.980 - P.985

 肺の小細胞癌は縦隔と肺門部のリンパ節の腫大が特徴であり,Barnardが"Oat celled sarcoma of themediastinum"(1926年)として肺原発の悪性腫瘍であると発表した.それ以前は増大する転移リンパ節を原発巣とし,縦隔腫瘍と考えていた.本腫瘍は早い時期に広範に全身転移し,発症時すでに臓器転移のみつかることが多い.
 今回は小さな腫瘤影,すなわち,比較的早い時期の小細胞癌が急激に進展した症例を示す.

ポジトロンCT

心筋イメージングへの応用

著者: 宍戸文男 ,   舘野之男 ,   山崎統四郎

ページ範囲:P.987 - P.989

 放医研では1982年5月からポジトロジカーIIが臨床に利用可能となった.この装置は,BGO検出器を使用した多断層全身用ポジトロンCTとしては世界で初めての装置である.全身用ということで,筆者らは心筋のイメージングを試みている.トレーサはN-13-NH3を用いた.N-13-NH3は心筋の血流を示すという報告があり1),放医研でも手軽に利用できるため,まずこれを利用することとし,心筋梗塞の症例に試みた.

画像からみた鑑別診断(鼎談)

膵疾患—膵癌

著者: 銭谷幹男 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.990 - P.999

症 例
 患者 F. K. 65歳,女性.未婚,子なし.
 主訴 左背部痛.

誌上シンポジウム 医学教育を考える—より優れた臨床医の教育のために

体験して感じる研修システムの問題点

著者: 高尾信廣

ページ範囲:P.1028 - P.1032

 まず最初に,現在の聖路加国際病院の内科研修システムについて簡単に触れ,それからその問題点について述べてみたい.

講座 図解病態のしくみ 神経・筋疾患・6

運動失調,小脳障害—脊髄小脳変性症を中心に運動失調の病態,病型の解説

著者: 新島健司 ,   吉田充男

ページ範囲:P.1039 - P.1043

 運動失調(ataxia)とは,それぞれ個々の運動は可能であり,その運動を起こそうという意志も保たれるが,一連の運動は不器用となり,協調がとれなくなっていることをいう.主に小脳の障害により発現するので,小脳失調ともいうが,小脳皮質,その出入力系の障害にて発現する.

コンピュータの使い方・11

病院内の各部門におけるコンピュータ利用の動向—コンピュータの選び方と病院内各部門の利用の可能性と将来

著者: 坂部長正 ,   三宅浩之

ページ範囲:P.1045 - P.1051

 このシリーズは,医療の中でコンピュータを使用する具体的な例について解説するために企画されたものである.この便利な道具を実際に医師に使ってもらうためにはどうすればよいかが話題の中心である.そのためには,実例をわかりやすく解説するのも一方法で,これまでに多くの執筆者からいろいろの例示が出されてきた.しかし結論的にいえば,コンピュータを使う必然性が生じてくれば自然に使われてゆくものであって,指導するとか教えるとかいうものではない.確かに10年前は,コンピュータを使うというと何か特別の準備や技術が必要で,部屋一つにしてもかなりのスペースと,常時23°±1℃というような設備を要求された.しかし,最近のコンピュータはそれほど厳重な条件を作らなくとも,通常の生活環境で空調が行われている部屋があれば使えるようになってきた.もちろん,コンピュータ・センターとして,専任のエンジニアが常駐し操作するという大規模なものは相変わらず存在し,それはそれでより厳しい条件で運転されているのだが,幸いなことに医療の中ではいまのところ複雑な科学技術計算や画像データ処理のためのスーパー・コンピュータのように,1秒間に107回以上の演算(10メガFLOPS)を必要とする例は少ない.大部分はミニ・コンピュータ,パーソナル・コンピュータで十分である.

境界領域 転科のタイミング

閉塞性黄疸

著者: 高田忠敬

ページ範囲:P.1016 - P.1020

 胆石や腫瘍などによる肝外胆管の機械的閉塞によって発生する閉塞性黄疸(すなわち外科的黄疸)は,本質的には腸管のイレウスと同じく胆管のイレウスともいうべき病態であり,緊急外科的疾患として扱われるべきものである.しかしながら,外科的黄疸の初期には激しい症状を呈することが少なく,また臨床経過や生化学検査などでは肝内胆汁うっ滞性黄疸との鑑別が困難で,しばしば長期間経過観察され,一般状態の悪化をみてから初めて外科的黄疸としての検索や対策がとられる症例が多々ある1).なかには手術時期を失してしまう症例も存在し,そこに今回の「内科から外科への転科のタイミング」という問題提起がなされたものと思われる.本稿では,閉塞性黄疸に対する最近の診断治療の動向について述べてみたい.

連載 演習

目でみるトレーニング 72

ページ範囲:P.967 - P.973

Via Air Mail アイオワ大学麻酔科における研修生活・3

疾患も職種も多様なアメリカ

著者: 松尾成吾

ページ範囲:P.1024 - P.1027

 今日は久し振りに暖かくて,春のようなので気分も軽やかになってしまう.この中西部の冬は本当に寒くて,12月から2月にかけては摂氏で0度以上になると,「暖かく」感じるほどです.昨年は今世紀最悪の寒さだったようで,恐怖を感じた位でしたから,今年はまだいい方なのでしょうけれども,やっぱり「冬」になると暖かい春が待ち遠しくなってしまう.
 大学の花 今日のこの町の人々の関心は,きっと今晩行われるアイオワ大学とオハイオ州立大学のバスケットボール試合にあると思います.先日は,全米で目下ナンバーワンを争っているインディアナ大学を負かしたものだから,なおさらのことです.中西部には,Big 10と言うリーグがあり,それぞれの州の人たちは,それぞれの大学の活躍に異常な(?)期待を寄せ,強烈な関心を示します.だから,こちらもある程度,選手の名前を覚えていないと,話しが通じなくなってしまうわけです.このアメリカにおける大学スポーツは想像を絶するもので,フットボールでは,各大学に7万人くらいは収容できるスタジアム(これがまた毎回満員になる)があり,バスケットボールでは,この町でも,毎回1万5千ほどの切符はすべて売り切れている.試合の質の良さもさることながら,この大学スポーツが大学にもたらしている利益も莫大なものだと思います.

アメリカの医療 特別掲載

米国のプライマリ・ケアをになう人々

著者: 北井暁子

ページ範囲:P.1033 - P.1038

 わが国でプライマリ・ケアの必要性が叫ばれるようになって久しいが,実際にプライマリ・ケアをどのように行うかという対策はあまり講じられていない.わが国には,またプライマリ・ケアのための特別の医師養成プログラムもないし,プライマリ・ケアを促進するための医師以外の専門家の養成機関もない.その理由の一つは日本にはこういう形のプライマリ・ケアが望ましいという方向づけがなされていないことにあるであろう.
 筆者は一昨年よりプライマリ・ケアの実情をその発祥の地米国にて調査しているが,本稿では,米国におけるプライマリ・ケアの現状とその現場での仕事の内容について紹介したい.

診療基本手技

腹膜透析の手技

著者: 岡田定 ,   西崎統

ページ範囲:P.1052 - P.1053

 腹膜透析は,適応さえ慎重に選択すれば,合併症も少なく,緊急時にも比較的手軽に行え,その効果も期待しうる手技である.当院内科では,上級医の指導のもとに病棟研修医が行う機会も多い.以下腹膜透析をこれから行おうとする方のために,基本的なポイントを解説する.

私の工夫

マイコンによるFisherの直接確率計算法

著者: 駒ケ嶺正純 ,   高木康行

ページ範囲:P.1056 - P.1057

 2×2表の確率を,Fisherの直接確率計算法によって求める場合,表1の確率は,
 P=N.1!・N.2!・N1.!・N2.!/N!・N11!・N12!・N21!・N22
によって求められる1)
 しかし,マイコンは,大きな数値をあつかうのは苦手であり,±1.70141×1038までの数しか扱えないものでは,表3のように,Nが比較的小さい場合でも,分子,分母を別々に求めるとerrorとなってしまい,答が得られない.

天地人

道草

著者:

ページ範囲:P.1023 - P.1023

 哲学者たり,理学者たり,
  詩人,剣客,音楽家,
  将た天界の旅行者たり,
  打てば響く毒舌の名人
  さてはまた私の心なき 恋愛の殉教者,
  エルキュウル・サヴィニアン・ド・
  シラノ・ド・ベルジュラック,ここに眠る.
  彼はすべてなりき,そしてまた空なりき,
  だが,もう逝こう……
 エドモン・ロスタン作,「シラノ・ド・ベルジュラック」・週報の場……天下に名だたる名訳といわれる辰野 隆・鈴木信太郎共訳の名せりふの一節である.記憶にあるままに記したので,誤りもあるかもしれないが,お許しいただいて.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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バックナンバー

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60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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59巻7号(2022年6月発行)

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特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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