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文献詳細

雑誌文献

medicina21巻12号

1984年12月発行

臨時増刊特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第3集

Ⅱ.糞便検査

22.便脂肪

著者: 田内一民1

所属機関: 1順天堂大学医学部・臨床病理学

ページ範囲:P.2130 - P.2131

文献概要

異常を示す疾患(表1)
 便中の脂肪は食物残渣としての脂肪,消化管細胞由来の脂肪と腸内細菌の代謝に由来する脂肪とに区別して考えられる.その大部分を占めるのは食物由来の不消化,非吸収脂肪であり,中性脂肪,グリセリド,脂肪酸が大部分である.脂肪酸の構成はパルミチン酸,オレイン酸,ステアリン酸,ミリスチン酸,リノール酸,リノレン酸の順に低くなっている.ただ糞便中の脂質成分比をみてもその由来を知ることはできず,現在のところ便脂肪の検査というと糞便中脂肪の定性,定量および脂肪負荷による吸収障害の判定に利用されるのみである.また,便脂肪の検査は表から推察できるとおり慢性疾患で,便脂肪検査が診断の決定的資料となりうる場合は少ない.
 表1は脂肪便を示す頻度の高いと思われる疾患を便宜的に,①消化液(胃液,胆汁,膵液)の分泌障害または異常によるものと,②続発性および原発性の吸収不全とに分けてみた.消化液の不足による脂肪便は,消化不能なための食物残渣由来の脂肪性下痢便で,摂取した脂肪塊がそのまま便中に混在する.吸収障害による場合は,膵液,胆汁と小腸上部の滞留時間が長ければ,少なくとも食物脂肪の鹸化,乳濁が便で観察されるであろう.Zollinger-Ellison症候群では,胃液過剰分泌により上部小腸粘膜の傷害とともに膵リパーゼ活性を阻害するための消化不良性下痢である.同じような水性下痢にWDHA症候群があるが,こちらは便中脂肪量は少ない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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