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雑誌目次

雑誌文献

medicina21巻9号

1984年09月発行

雑誌目次

今月の主題 膠原病—最新の知識

膠原病—今日の考え方

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.1532 - P.1533

 リウマチ学,臨床免疫学は,その発足から十分な期間を経過し,現在内科学のなかで重要な位置を占めるようになった.そのひとつの原動力になったのは"びまん性膠原病"の概念の提唱にある.
 慢性関節リウマチとSLE,おそらくその橋渡しとなっているシェグレン症候群を集め,さらに強皮症,結節性多発動脈炎,各種の血管炎,多発筋炎と皮膚筋炎,好酸球性筋膜炎,またリウマチ熱のように最近では稀な病気を含めたという見方は,1942年当時主張できなかったすばらしく重大な発見であり,検査技術の進歩につながっている.

理解のための基礎知識

免疫グロブリン

著者: 東隆親

ページ範囲:P.1534 - P.1535

 免疫グロブリン(Ig)は,抗原投与によって得られる抗体と,共通する構造をもつ蛋白質に対する総称であって,抗体として,特定の抗原との反応性を見出せなくても,構造上の特徴が,表 に示したものと共通すれば,Igとして分類される.Igの基本的な構造は,2本のH鎖と2本のL鎖が非共有結合とS-S結合によって結ばれた4本鎖構造である(図1).Igには,IgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5つのクラスが存在し,各クラスのIgの構造は,このような基本構造の範囲内で少しずつ異なっており,これが各クラスのIgに特有な機能発現と密接に関連している.4本鎖構造と同様に重要な構造上の特徴はドメイン構造である.図1に円筒で示してあるのがドメインとよばれる構造単位で,2層のβ-構造がS-S結合で結ばれたimmunoglobulinfoldとよばれる構造をもっている.各ドメインは,それぞれ,独自の機能をもっているが,その機能発現にはドメイン間の相互作用が重要で,VL-VH,CH1-CL,CH3-CH3の間には非共有結合による相互作用が(CH1とCLの間にはS-S結合も存在する),CH2-CH2間には鎖間S-S結合が存在して,ドメイン間相互作用に寄与している.IgGを例に,Igの代表的な機能と構造の関係を述べることにする.

免疫担当細胞

著者: 奥村康

ページ範囲:P.1536 - P.1537

 生体の免疫応答は大別して,ツベルクリン反応のような遅延型免疫反応に代表されているB細胞や免疫グロブリンが関与せず,T細胞やマクロファージを主体としたいわゆる細胞性免疫とよばれる反応と,抗原に対する免疫グロブリン産生といったB細胞系を主体とした液性免疫とよばれる反応系が知られている.しかし,それ以外にT細胞でもB細胞でもない細胞群(nonT,nonBまたはnull cell)が関与した特異性の定かではない反応系も明らかにされつつある.また周知のごとく免疫応答に関与する細胞群はその表面マーカーの相違から,T細胞,B細胞,null細胞,単球またはマクロファージと大別されるのみならず,これら細胞群をさらに細かく分類することが可能となり,たとえば,T細胞といってもいまでは何種類にも分別分離することが可能になってきた.
 B細胞が抗体産生細胞の前駆細胞であるということは,鳥類のBリンパ球の分化に不可欠な臓器であるファブリキュウス嚢を生下時に摘出すると鳥が無ガンマグロブリン血症になる事実から以前よりよく知られていた.またB細胞の分化と成熟後のB細胞による抗体産生は,T細胞の働きと全く独立して考えられていたのであるが,マウスの新生児期に胸腺を摘出すると動物が成熟後T細胞の機能欠損がおきるのみならず,ある種の抗原たとえば半赤血球,等に対するB細胞による抗体産生が著しく低下するという事実が見出された.

補体

著者: 稲田進一

ページ範囲:P.1538 - P.1540

 生体は異物侵入,例えば細菌感染等があると,抗体を産生し,補体とともに防御反応を起こす.溶菌あるいは貪食細胞の補体レセプターを介した貪食等により生体から細菌を排除することになる.in vivoにおいて補体はきわめて重要な因子であるが,①免疫応答系に比し,特異性の低いこと,②補体系の活性化ならびに制御に関与する因子が多く複雑で難解と信じられたこと,等より論議の対象となりにくかった.しかし,近年補体学の進歩は目ざましく,補体の,①組織障害とのかかわり,②生体の防御機構としての側面,③免疫応答遺伝との関連等が明らかにされつつある.そこで以下膠原病における補体の役割を概説する.

結合組織—構造と代謝

著者: 近藤啓文

ページ範囲:P.1542 - P.1543

結合組織とは
 結合組織は個々の細胞,組織,あるいは臓器を包み,結合し,あるいは支持する組織である.肝などの実質臓器ではびまん性に存在して間質を構成し,実質細胞と血管との間を満たしている.そのほかに,皮膚,腱,靱帯,骨,軟骨,関節,血管,角膜などはほとんど全てが結合組織からなっている1)2)
 その形態は関節液から骨までと多様であるが,組成には共通している点が多く,細胞,基質,線維成分からなっている.発生学的にも中胚葉と共通している.炎症は結合組織を場としておこることが多く,その代表的なものがリウマチ性疾患,膠原病である.結合組織の組成を表に示し,解説する.

炎症反応

炎症の基礎

著者: 柳川明 ,   原本俊一 ,   水島裕

ページ範囲:P.1544 - P.1546

炎症の概念
 臨床医学において,炎症は最もしばしば遭遇する病態である.炎症とは臨床的にも,また組織学的にも定義しうるものであり,臨床的には,発赤(rubor),発熱(calor),疼痛(dolor),腫脹(tumor)の4大徴候と機能障害(functio laesa)が特徴とされている.
 病理学的には,充血,血管透過性の亢進,細胞浸潤とそれに引き続く食細胞の反応などとされており,言い換えれば,変性・滲出・増殖の3要素が主な形態的変化とされている.

組織破壊

著者: 富井正邦

ページ範囲:P.1548 - P.1549

 膠原病の組織破壊の主因は,免疫異常にもとづく過敏性反応(hypersensitivity reaction)と考えられる1).CoombsとGellは過敏性反応を4型に分類した.本稿では彼らに従い,4型の過敏性反応と組織破壊との関連を概説する.

検査

検査のすすめ方

著者: 柏崎禎夫 ,   加藤恵子

ページ範囲:P.1550 - P.1552

 詳細な病歴聴取と身体所見から膠原病の中のいずれの病気に該当するかを診断し,それを確実にするために種々の検査を施行する.同時に,疾患の活動性の有無とその程度ならびに障害臓器の種類と機能の障害程度を判定するためにも各種の検査をすすめる.主な臨床検査は,①急性期反応,②末梢血,③免疫学的検査,④病理組織学的検査と⑤臓器別検査に分けられる.

抗核抗体

著者: 秋月正史

ページ範囲:P.1554 - P.1559

 細胞核成分と反応する自己抗体をまとめ抗核抗体と呼ぶ.抗核抗体が検出されるヒトの疾患は多いが,とくに膠原病で詳細な研究が続けられてきた.すなわち,LE細胞現象の発見を端緒とした抗核抗体の研究は螢光抗体法など免疫学的手技の進歩,応用により大きく発展した.膠原病患者血清を用い,多数の抗核抗体が見出され,その臨床意義さらに対応核抗原の性状が明らかにされてきた.とくに抗核抗体の検索は膠原病の診断,予後推測,さらに治療効果の評価など臨床的に有用である.また逆に患者血清中の抗核抗体を用い,細胞核に含まれる高分子物質の同定,機能の解析が行われ,基礎医学や生物学の研究にも有用な情報を与えている.
 本稿ではとくに膠原病の臨床という立場より抗核抗体の臨床的意義につき解説を試みた.とくに多種類の抗核抗体より臨床的意義が明確なものに焦点をしぼつてみた.測定法,成績の解釈など臨床的に注意すべき点にも触れることとした.抗DNA抗体,など,以前よりよく知られているものについては秀れた解説書があるため,簡単に触れることとし,近年見出され,臨床的に重要な抗核抗体を詳細に述べることとする.

診断・治療

治療の基本的考え方

著者: 市川陽一

ページ範囲:P.1560 - P.1564

 膠原病の治療法は決して完成したものではなく,治療に関する基本的考え方については臨床医あるいは研究者一人一人によって異なっているものと思われる.そこで,教室で経験することのできた症例を思いうかべて筆者なりに,基本的考え方をまとめてみた.

全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 佐藤真紀子 ,   鳥飼勝隆

ページ範囲:P.1566 - P.1569

 SLEは,膠原病の代表的疾患で多臓器障害を特徴とする.その臨床症状は多彩で,しかも主要症状が全て同じ時期に揃うわけではなく,寛解再燃を繰り返し,長い経過の間に揃ってくるため,受診時に必ずしも全ての症状が発現しているとは限らない.例えば,蛋白尿,円柱尿のみ気づかれ急性糸球体腎炎として診断されてしまうこともありうる.また個々のSLE患者は,SLEにみられる多彩な症状,検査所見の様々な組み合わせを持っており,その診断確定は困難なことが多く,施設によって診断が異なるおそれもある.その上SLEの発症に自己免疫異常が関与するとされているが,病因は未だ明らかではない.例えば,感染症の場合の原因菌,もしくはウイルスの分離の如き,診断の決め手となる所見がない.そのため旧くから様々な診断基準が工夫されてきた1〜4).SLEの治療は,副腎皮質ステロイド剤を中心とした抗炎症剤によって症状を寛解させるのが基本である.副腎皮質ステロイド剤の必要量も臨床症状や病型によって異なるので,個々の症例の臨床像を正確に把握することが重要である.

強皮症(PSS)

著者: 富永教洋

ページ範囲:P.1570 - P.1571

 強皮症(PSS)の病変は全身の結合組織の炎症性,線維性,変性性の病変で,病因は不明である.血管病変をともなった病変は皮膚,滑膜から,食道,腸管,心,肺,腎などの内臓に分布し,特に心病変,悪性高血圧,肺高血圧などは予後に重大な影響を与える.
 皮膚硬化の所見から,PSSの診断は比較的容易であるが,近年はその亜型診断や病型診断がより重要となってきた.なぜならその亜型により予後の異なる重大な特徴的臓器病変をもつからである.したがって早期診断こそ重要であるが,現在のところ困難である.

多発性筋炎(PM)と皮膚筋炎(DM)

著者: 西海正彦

ページ範囲:P.1572 - P.1573

多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)の診断基準
 表にBohanとPeterのPMおよびDMの診断基準1)を示す.これが国際的に,頻繁に用いられている.

結節性多発性動脈炎(PAN)とその近縁疾患

著者: 橋本博史

ページ範囲:P.1574 - P.1575

 結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodosa, PAN)は,中・小動脈の壊死性血管炎を特徴とする膠原病である.
 これには,いくつかの近縁疾患があり,それらは,アレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA),ウェゲナー肉芽腫(WG),他の膠原病に伴う血管炎(SLE,悪性関節リウマチ,強皮症など)などである.これらの診断は,生検材料による病理組織学的所見によるところが多く,臨床診断は必ずしも容易ではない.ここでは,PAN,AGA, WGの診断と治療について述べる.

Sjögren症候群

著者: 山県元

ページ範囲:P.1576 - P.1577

 シェーグレン症候群(Sjs)は,1933年Henrik Sjögrenにより報告された,涙腺と唾液腺の分泌低下を特徴とする慢性炎症性疾患である.RA, SLEなどの結合織疾患の他,慢性甲状腺炎,原発性胆汁性肝硬変症など,自己免疫疾患を合併することが多く,各種の自己抗体が血中に検出されることから,自己免疫疾患としても分類されている(表1).一方,近年,本症の基本的な病態が系統的な外分泌の炎症として理解されるようになってきており,そのため,外分泌腺の分泌低下のみ認められる乾燥症候群(sicca complex)を中心に,リンパ網内系組織,腎,筋,肺などのリンパ球浸潤を主体とする病変(腺外症状)を伴う症例,さらにわが国では稀な悪性リンパ腫合併例,また結合織疾患を伴う例と,分けられるようになった.以下乾燥症状を中心に述べることとする.

Overlap症候群とMCTD

著者: 東條毅

ページ範囲:P.1578 - P.1579

 膠原病の分類は,未だ完全なものでない.重複症状は複雑なためにその把握は主観に陥り易い.したがって分類にも論議がある.
 重複症状を示す例は古くから知られ,重複症例とかOverlap症候群と呼ばれてきた.これに対してMCTDは,抗RNP抗体陽性の重複例として提唱された.そこで従来のOverlap症候群との異同が,問われることとなった.

膠原病関連疾患

成人発症スチル(Still)病

著者: 谷本潔昭

ページ範囲:P.1580 - P.1581

 成人発症Still病は,Bywatersらが1)新たに提唱した概念の疾患で,若年性関節リウマチ(juvenile rheumatoid arthritis,JRA)は一般に全身型(systemic type Still病),少関節炎型(pauciarticular type),多関節炎型(polyarticular type)に分けられるが,この全身型が成人になって発症するものを,成人発症Still病とよぶ.成人発症Still病は当初稀な疾患と考えられていたが,近年になりそれほど稀な疾患ではないことが判明し,本邦でも本疾患に関する報告が急激に増加してきている.

Shulman症候群

著者: 吉田浩

ページ範囲:P.1582 - P.1583

 1974〜1975年,Shulmanは四肢に強皮症様皮膚病変と皮下硬結が比較的急速に発現し,末梢血では好酸球増多とγグロブリンの上昇がみられ,組織学的に筋膜の肥厚と単核球浸潤の認められた症例を"Diffuse fasciitis with eosinophilia"として報告した1).このような症例に対して,Rod-nanらはEosinophilic fasciitisの名称を冠し2),Sclerodermaのなかの1型とみなした,一方,本疾患の最初の記載者,Shulmanの名を付し,Shul-man症候群とも呼ばれ,progressive systemicsclerosis(PSS)との明らかな相違点からも,その疾患独立性が提唱され,今日まで約80例の報告がなされている.

リウマチ性多発筋痛症(PMR)

著者: 狩野庄吾

ページ範囲:P.1584 - P.1585

 リウマチ性多発筋痛症polymyalgiarheumatica(PMR)は,頚・肩・腰部の痛みとこわばり,赤沈の高度促進,少量の副腎皮質ステロイド剤著効を特徴とする疾患である.患者は高齢者が多く,50歳以下の発症は稀である.
 歴史的には,PMRはsenile rheumatic gout(Bruce,1884年),anarthritic rheumatoid syndrome(Bagratuni,1956年),polymyalgiarheumatica(Barber,1957年)などの病名で報告されてきた.

将来への展望

遺伝要因

著者: 五島寛 ,   笹月健彦

ページ範囲:P.1586 - P.1587

 膠原病の発症に遺伝要因が関与していることは古くから推測されてきたが,その遺伝様式や関与する遺伝要因の詳細は不明の点が多い.一方,膠原病とHLAの統計学的相関が次々に報告され,これを利用した膠原病の発症にあずかる免疫遺伝学的要因の解明が期待されている.ここでは,膠原病が多因子遺伝性疾患である根拠,および膠原病とHLAの相関を中心にした免疫遺伝学的要因を考察する.

モデル動物

著者: 吉木敬

ページ範囲:P.1588 - P.1590

 Klempererによって,結合組織のフィブリノイド変性という共通の病理所見に基づいて提唱された膠原病の病因として現在注目されているのは自己免疫疾患説である.膠原病の病因の解明について過去膨大な数の研究業績があるが,近年になって徐々にその成果がみられるようになってきた.その理由の一つは勿論近年の細胞免疫学のめざましい進歩によっているが,膠原病の自然発生モデル動物,誘発モデル動物も病因の解明に大きく貢献してきた.ここではヒトSLEの代表的な自然発生モデルであるNew Zealand(NZ)マウスについて,その病因解明における最近の研究成果を概説する.

座談会

膠原病をめぐる諸問題

著者: 谷本潔昭 ,   原まさ子 ,   奥平邦雄 ,   秋月正史

ページ範囲:P.1591 - P.1600

 秋月 膠原病が提唱されてからそろそろ50年ぐらいになります.この間に誤診の原因となるなどかえってマイナスになったとする考えもありました.しかし実際の臨床では非常に定着した言葉になり,臨床家にとり,また研究者にとっても有用な情報を提供してきたと考えております.
 Klempererは膠原病は女子に多いことより,アレルギーではないのではないかと教えました.しかしその後基礎の生物学,とくに免疫学が進歩して,臨床の観察と結びつき,生体に不利益な免疫反応が膠原病の組織障害をひき起こすことが明らかになりつつあります.病因の追求,診断に最近の免疫学の進歩が大きな貢献をしてきたわけであります.

Current topics

HTCA(Human tumor clonogenic assay)による抗癌剤感受性テストの現況

著者: 西條長宏 ,   星昭夫

ページ範囲:P.1634 - P.1643

 早期発見,早期治療の努力にもかかわらず,『がん』による死亡は増加の一途をたどり,死亡率の1位を占めるに至っている.この事実は局所療法(手術療法,放射線療法)の限界を示すとともに,今後は全身療法としての化学療法の成否が,癌全体の治療成績を左右することになると示唆している.現在の癌化学療法は,多数の症例を対象とした臨床研究に基づいた医師の経験により行われている.しかし大多数の腫瘍に対する化学療法の有効率はきわめて低い現状である.一般的には化学療法が開始され,無効とわかれば中止されることが多い.これは時間の無駄であるとともに,患者は抗癌剤による副作用のみを経験することになる.さらに臨床の経験によると,初回化学療法が無効な場合,次の化学療法の有効率はきわめて低いことが知られている13).したがって,有効な抗癌剤および効果のない抗癌剤の種類を投与前に明確にすることはきわめて重要である.この目的で化学療法の臨床効果を予言するためさまざまなinvitroおよびin vivo testの研究が展開されてきた.

グラフ 複合心エコー図法

後天性心疾患(4)心筋症

著者: 伊東紘一 ,   鈴木修

ページ範囲:P.1602 - P.1605

症例8 34歳,女性
  18歳のときに検診にて心雑音を指摘されるも,自覚症状なく放置.28歳のとき,動悸,運動時のめまいが出現して第1回入院.心臓カテーテル検査などにて診断確定し,薬物投与開始.その後,心房細動をくり返し,34歳のときに再入院となる.身体所見では,第3肋間胸骨左縁にて駆出性収縮期雑音(Levine 3/6)および心尖部での全収縮期雑音(Levine 2/6)を聴取.CRT=59%,心電図は左室肥大所見および心房細動を呈する.

胸部X線診断の基礎

撮り方と読み方(9)

著者: 新野稔

ページ範囲:P.1614 - P.1620

 臨床診断において,生体内部の生理状態,病態像をどうしたら正確に把握できるか.この目的の実現に向けて,日常診療の場においても画像診断は,最近の各種先端技術の進歩をとり入れ,急速に変化しつつあるのが現況である.
 最近,画像診断の表現の定着化は進み,客観的な診断情報として,画像取得とその処理技術は日常診療に不可欠な手段となっている.

画像からみた鑑別診断(鼎談)

後腹膜腫瘤(2)

著者: 野間健司 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.1622 - P.1632

症例
  患者 43歳,男性.
  主訴 左季肋部痛,全身倦怠感,体重減少.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.1607 - P.1613

講座 図解病態のしくみ びまん性肺疾患・9

各種間質性肺疾患診断のポイント

著者: 赤柴恒人 ,   堀江孝至

ページ範囲:P.1659 - P.1665

 肺の間質に病変を起こす一群の疾患は,間質性肺疾患と呼称されるが,これらの種類は非常に多く,内容は多彩である.しかし基本的には臨床症状,胸部X線,肺機能などに多くの共通点をもっている.すなわち臨床症状としては乾性の咳,労作時の呼吸困難が主体であり,胸部X線上,粒状影,輪状影のびまん性散布を認め,肺機能上は拘束性障害と拡散障害を呈し,その病変の終末像が肺線維症であることなどである.今回は代表的な間質性肺疾患について,その診断のポイントについて述べてみる.

Oncology・9

抗腫瘍剤使用時にみられる副作用

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1667 - P.1671

 抗腫瘍剤を投与するうえで注意すべきことは副作用である.抗生物質,たとえばペニシリンでは抗菌作用と人間の細胞への副作用との差が非常に離れており,therapeutic indexが広いという.アミノ配糖体(ゲンタマイシン)では副作用を示す血中濃度は12μg/ml以上であり,一般にゲンタマイシン3〜5mg/kg/dayの投与量では血中濃度は4〜8μg/mlである.ゲンタマイシンはペニシリンに比べて,はるかにtherapeutic indexが狭くなっている.抗腫瘍剤はtherapeutic indexがさらに狭く,腫瘍細胞に対して効果があると同時に,正常細胞にも強力な影響を及ぼし,骨髄抑制,脱毛などのさまざまな副作用がみられる.
 急性にみられる副作用は,速い速度で分裂している組織に最も顕著に現れる.たとえば,骨髄抑制,消化管への副作用(粘膜の脱落),脱毛があげられる.また,血管の外に漏れた場合,多くの抗腫瘍剤は組織にとって強い刺激作用をもち,組織の壊死を招く.

境界領域 転科のタイミング

僧帽弁狭窄症

著者: 江口昭治 ,   中沢聡

ページ範囲:P.1644 - P.1649

 僧帽弁狭窄症の内科から外科への転科のタイミングは,脳塞栓発生例,感染性心内膜炎合併例,急性肺水腫合併例などを別にすれば,本症の一般的手術至適時期ということになる.手術適応はその疾患の自然歴と手術成績,遠隔期予後との関係で論ずる必要がある.最近では,本症においても重症度の高い症例では,手術に耐えたとしても十分な回復が得られないことが判明している.以上の点をふまえて本症の「転科のタイミング」について述べてみたい.

ベッドサイド 臨床医のための臨床薬理学マニュアル

リドカイン

著者: 辻本豪三 ,   越前宏俊 ,   石崎高志

ページ範囲:P.1650 - P.1658

 リドカインは現在,心室性心頻拍,心室細動の治療,また急性心筋梗塞に伴う心室性期外収縮に対しCCUでは予防的に投与される(予防的投与の有効性はいまだ確定していないが).臨床上,頻用される抗不整脈薬であり,他の抗不整脈薬同様に,その効果および中毒とその薬物血中濃度は良い相関がある.その至適有効血中濃度域は狭く,中毒はしばしば重篤でかつその頻度も少なくない.中毒を避け,有効で安全な治療のために,薬物動態理論に基づく至適投与が必要とされ,それは特にこの薬物では直接の救命に通じる.

CPC

黄疸,貧血を主訴として来院,第2回入院3日後,呼吸困難と喀血で急激な転帰をとった35歳女性の例

著者: 飯塚登 ,   中村和之 ,   鈴木良一 ,   石毛憲治 ,   新谷卓弘 ,   藤岡成徳 ,   奥田邦雄 ,   大谷彰 ,   山口卓秀 ,   岡本浩一郎 ,   吉田象二 ,   吉沢煕 ,   坂口実 ,   柳沢孝夫 ,   安達元郎 ,   伊良部徳次 ,   酒井達也 ,   斎木茂樹 ,   小室康男 ,   沢田勤也 ,   近藤洋一郎 ,   長尾孝一 ,   石川隆尉 ,   浅田学

ページ範囲:P.1685 - P.1704

 本CPCはさる4月28日に旭中央病院で行われた第94回旭市・海上郡医師会 旭中央病院共催のCPCを旭中央病院の御好意により掲載させていただいたものです.

診療基本手技

—研修医のためのノート—食事のオーダー

著者: 西崎統

ページ範囲:P.1672 - P.1673

 今回は入院患者のオーダーの仕方のうち,とくに食事のオーダーについて,その出し方の注意点,ポイントを当院の研修指導をもとに解説する.

当直医のための救急手技・眼科系・3

眼底疾患,緑内障その他の診断,処置

著者: 土坂寿行 ,   清水千尋

ページ範囲:P.1676 - P.1677

 前号には細隙燈顕微鏡のみで診断が可能な疾患について記したが,今回は細隙燈顕微鏡検査に加えて,眼底検査,および眼圧測定などを必要とする疾患について記す.図1に示すように,細隙燈顕微鏡検査と合わせて眼底検査を行うと,隅角,毛様体など一部の組織を除いて,眼内はすべて直視下に所見をとることができる.当院の1年間の救急受診患者414名のうち,上記2種の機械を用いて主訴の原因となる所見がとれなかった症例は,眼窩内出血,視神経管骨折など11名,2.7%であり,この数値はこれらの検査の重要性を物語るものである.今回述べる疾患は眼底疾患,球後の疾患,緑内障,強角膜裂傷であるが,疾患は多岐にわたるため放置すると早急に失明につながる重症疾患を主に述べてゆきたい.

新薬情報

ユーエフティ(UFT)〔大鵬〕—一般名:テガフール・ウラシル配合剤—制癌剤

著者: 水島裕

ページ範囲:P.1678 - P.1679

概略
 代謝拮抗性制癌剤である5-FUは,胃癌に効果を示す数少ない薬剤であることから,本邦においてはこの誘導体の開発が盛んに行われている.UFTは,5-FU誘導体のテガフール(フトラフール)とウラシルの配合剤である.ウラシルの配合理由は,5-FUの不活性化の抑制であるが,UFTの最大の特徴は,正常組織に比し癌内5-FU濃度をかなり特異的に上昇させることにある.このため,臨床的にも優れた有効率を有し,5-FU系経口剤としては,幅広い制癌スペクトラムを示している.

ECHO

外妊のさいの自家輸血法について

著者: 今村好久

ページ範囲:P.1680 - P.1681

 Q 「メディチーナ」vol.21 no.6 p.1133の今村好久先生の論文で,腹腔内出血が多量な場合,吸引管中の血液をガーゼで漉して,点滴でもどすとあります.血液学(血液凝固学や輸血学を含めて)を専門にする私にとって,これは相当乱暴な方法とびっくりしました.救急とはいえ,一般当直医に勧められる方法とは信じ難く思います.感染とともに凝血塊の生成の危険があります.腹腔内の血液が清潔という保障もないでしょう.根拠の論文はあるでしょうか. (広島市,勤務医 35歳)

天地人

国際会議とInternational Conference

著者:

ページ範囲:P.1675 - P.1675

 5月の新緑が滅法美しいボルチモアの郊外で開かれたちっぽけな国際会議,confer-enceと言うよりmeeting,に参加した.我がジャパンも少しは地位が向上したので,こういうmeetingに招かれたり,dumb同然の身が座長を仰せつかったりする.
 座長席から眺めていると,いろいろ面白い.米国以外の出席者は20%前後である.まず,前方に群れをなして一団となっているのはフランス組である.彼らの英語は決して上出来ではない.チトトキシック(cytotoxic)を連発する.我々日本人は,異邦人が奇妙な日本語を操ったとて,クスクス程度に笑っても大声で嗤うなどというような失礼なことはしない.アメリカ人は,下手な英語には大声で嗤い,遠慮会釈なく質問を打切ったりする.こういう場合にもフランス組は臆することなく発言する.ボスが座長席に押し掛けて,英語以外の人間がいるのだから英語をゆっくりしゃべれと抗議を申入れたりする.まことに心強い限りである.ただし,効き目は全くない.一方,我が同胞も群れをなしているには違いないが,いかんせん数人宛の学校単位の群れである.イチャモンをつけてくれるようなボスは不在である.一度質問して言葉がうまく通じなかったりすると意気消沈する.

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外来診療Q&A

著者: 太田和夫

ページ範囲:P.1682 - P.1682

 Q 患者:51歳,女.主訴:易疲労感.昭和45年血尿にて通院検査,腎炎と診断.昭和50年頃より腹部の膨満感とともに,高血圧(BP 160/104),浮腫を認めた.
 57年両側腹部の小児頭大のTumorを自覚し,入院検査の結果,Polycystic kidneyと診断,現在利尿剤を内服中.血算:Hb 10.5g/dl,Ht 32%,RBC 396万,WBC 5,400.化学:TP 7.7g/dl,GPT 8,AL-P 6.2,LDH 310,総コレステロール 135,BUN 42.0mg/dl,Cr 3.0mg/dl.尿:蛋白(±),糖(-),RBC 1〜2/毎視野,WBC 3〜5/毎視野.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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60巻13号(2023年12月発行)

特集 一般医家のための—DOAC時代の心房細動診療

60巻12号(2023年11月発行)

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60巻11号(2023年10月発行)

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60巻10号(2023年9月発行)

特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか

60巻9号(2023年8月発行)

特集 症例から読み解く—高齢者診療ステップアップ

60巻8号(2023年7月発行)

特集 浮腫と脱水—Q&Aで学ぶジェネラリストのための体液量異常診療

60巻7号(2023年6月発行)

特集 整形外科プライマリ・ケア—内科医が知りたい整形外科疾患のすべて

60巻6号(2023年5月発行)

特集 Common diseaseの処方箋ファイル—臨床経過から学ぶ20症例

60巻5号(2023年4月発行)

特集 臨床医からみたPOCT

60巻4号(2023年4月発行)

増刊号 探求!マイナーエマージェンシー

60巻3号(2023年3月発行)

特集 令和の脳卒中ディベート10番勝負—脳卒中治療ガイドライン2021とその先を識る

60巻2号(2023年2月発行)

特集 慢性疾患診療のお悩みポイントまとめました—高血圧からヘルスメンテナンスまで

60巻1号(2023年1月発行)

特集 10年前の常識は非常識!?—イマドキ消化器診療にアップデート

59巻13号(2022年12月発行)

特集 令和の頭痛診療—プライマリ・ケア医のためのガイド

59巻12号(2022年11月発行)

特集 避けて通れない心不全診療—総合内科力・循環器力を鍛えよう!

59巻11号(2022年10月発行)

増大号特集 これからもスタンダード!—Quality Indicatorの診療への実装—生活習慣病を中心に

59巻10号(2022年9月発行)

特集 ちょっと待って,その痛み大丈夫?—“見逃してはいけない痛み”への安全なアプローチ

59巻9号(2022年8月発行)

特集 不安を自信に変える心電図トレーニング—専門医のtipsを詰め込んだ50問

59巻8号(2022年7月発行)

特集 日常診療に潜む臨床検査のピットフォールを回避せよ

59巻7号(2022年6月発行)

特集 抗菌薬の使い方—敵はコロナだけにあらず! 今こそ基本に立ち返る

59巻6号(2022年5月発行)

特集 ジェネラリストの羅針盤—医学部では教わらなかった28のクエスチョン

59巻5号(2022年4月発行)

特集 症例から学ぶ—電解質と体液量管理のベストアンサー

59巻4号(2022年4月発行)

増刊号 フィジカル大全

59巻3号(2022年3月発行)

特集 成人が必要とするワクチン—生涯を通した予防接種の重要性

59巻2号(2022年2月発行)

特集 意外と知らない? 外用薬・自己注射薬—外来診療での適“剤”適所

59巻1号(2022年1月発行)

特集 クリニカルクエスチョンで学ぶ糖尿病治療薬—糖尿病治療の新しい潮流

56巻13号(2019年12月発行)

特集 プライマリ・ケアのための—ポリファーマシー「超」整理法

56巻12号(2019年11月発行)

特集 内科医が押さえておくべき—検査の考えかたと落とし穴

56巻11号(2019年10月発行)

特集 不明熱を不明にしないために—実践から考えるケーススタディ

56巻10号(2019年9月発行)

特集 脱・「とりあえずCT」!—スマートな腹痛診療

56巻9号(2019年8月発行)

特集 みんなが知っておきたい透析診療—透析のキホンと患者の診かた

56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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