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雑誌目次

雑誌文献

medicina22巻11号

1985年11月発行

雑誌目次

今月の主題 生体防御と感染症

理解のための10題

ページ範囲:P.2022 - P.2024

重要用語の解説(アルファベット順)

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1922 - P.1923

ADA;adenosine deaminase アデノシン・デアミネース.血球中に存在するプリン代謝に関する酵素.この酵素が欠損していると,プリン代謝の中間産物が蓄積してくる.このため,T細胞,B細胞ともに発生障害をきたし,重症複合免疫不全症となる.(堀論文 ⇒p.1961)

貪食細胞の機能

遊走能

著者: 安倍千之

ページ範囲:P.1930 - P.1932

 貪食細胞は普通の状態でもあらゆる方向に動いている(random movement).その速度は約10μm/分であり,この運動性をchemokinesisと呼ぶ.種々の化学物,遊走因子chemotactic factorに出会うと,その因子に向って直線的に移動する.このような能力を遊走能chemotaxisと呼ぶ.直線運動の原動力となるのはレセプターによる遊走因子の濃度差の認識機序による1).好中球,好酸球,マクロファージの遊走能に焦点を絞って論を進めたい.

貪食能

著者: 大田雅嗣 ,   斎藤政樹

ページ範囲:P.1934 - P.1935

 Metchnikoffが生体防御機構としての食作用に着目して以来,免疫系での貪食細胞の機能について研究が進められてきた.多核白血球(polymorphonuclear leukocyte)やマクロファージ(macrophage)は種々の感染症に対する生体防御という重要な働きを担っている.これらの細胞の主要機能は,病原菌など生体内に侵入した異物を,一連の複雑な過程により殺菌・消化処理することにある.この過程は表に示すように,大きくわけて7つの段階から成る.まず生体内に細菌などの異物が侵入すると,侵入部位へ貪食細胞が動員されるが(migration),この貪食細胞の運動方向は,走化性因子(chemotactic factor)の濃度勾配によって決定される(走化性,chemotaxis).貪食細胞が異物に到達すると,主としてオプソニンを介した異物粒子の認識が行われ(recognition),細胞表面に異物粒子が固定された後,細胞内に取り込まれ(ingestion),貪食空胞(phagosome)が形成される.ここでは解糖系の代謝変化が起こり,食作用に必要なエネルギーが供給される.貪食空胞はリソゾーム(lysosome)と融合してファゴリソゾーム(phagolysosome)となり,リソゾームの内容物は空胞内に放出される(脱顆粒).

殺菌作用

著者: 宮田昌之 ,   粕川禮司

ページ範囲:P.1936 - P.1938

 貪食細胞は,細菌など異物が体内に侵入した場合,これを殺菌し消化する役割を担う細胞群であり,好中球,単球,マクロファージ(組織球,Kupffer細胞)などがあげられる.これらの細胞は細菌を貪食し,食胞(phagosome)を形成する.食胞にリソゾームが融合し,食胞リソゾーム(phagolysosome)を形成する.貪食細胞には,表1のごとく2種類のリソゾーム顆粒が存在する.食胞にはまず特殊顆粒が結合し,そのあとアズール顆粒が結合して活性酸素やリソゾーム酵素を食胞内に放出して殺菌,消化を行う.これらの殺菌作用は表2に示すごとく,酸素に依存する過程と,依存しない過程に大別される.

免疫機能

T細胞

著者: 横田俊平

ページ範囲:P.1939 - P.1943

 免疫応答系は,多様な免疫担当細胞の細胞間相互作用,液性因子とそのレセプターとの反応系より成立しているが,免疫応答性の統御にはT細胞が中心的役割を演じていることが知られている.T細胞はいくつかの機能的サブセットに分けられるが,このサブセットは膜表面抗原により分類が可能である(表).このT細胞の特異的抗原刺激に対する免疫応答は,膜表面のレセプター(T細胞抗原レセプター)で抗原だけでなく自己の主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibilitycomplex;MHC)の遺伝子産物をともに認識することから始まり,B細胞において膜型免疫グロブリン分子が抗原レセプターとして機能するのと対照的である1).抗原と自己MHC分子とを認識したT細胞クローンは効率よく増殖・分化するが,この機能をT細胞増殖因子;interleukin-2(IL-2)が担っている.
 本稿では,T細胞における抗原認識機構とT細胞抗原レセプターの遺伝子構成について,またT細胞の増殖・分化におけるIL-2およびIL-2レセプターについて最近の知見をまとめる.

B細胞

著者: 岡田全司

ページ範囲:P.1944 - P.1946

 感染防御機構で重要な役割を担っている抗体はB細胞より産生される.このB細胞における抗体産生細胞への増殖・分化に関与するリンホカインが最近のB cell-ologyのトピックスの一つであり1),感染症における治療面でも,将来生体に応用されうる可能性があることより,これらのリンホカインについても述べてみる.

補体の働き

著者: 行山康

ページ範囲:P.1948 - P.1950

 補体の生体内での役割は,主に感染防御と炎症反応に作用することであり,広い意味で生体の恒常性維持に役立っていると考えられる.
 感染防御における補体作用は外来微生物に対して好中球,マクロファージが貪食することを促進する反応と,補体による殺菌反応の2つに大別される.さらに抗体の存在の有無,補体の反応系路の違いなどによって補体の生体防御作用の反応機構は微妙に異なってくる.一般にグラム陽性菌は免疫貪食反応によって処理され,グラム陰性菌は補体による殺菌反応を受けるとされている.

インターフェロン

著者: 海老名卓三郎

ページ範囲:P.1952 - P.1954

 インターフェロン(IFN)は当初抗ウイルス因子として発見されたが,その後の研究の進展に伴い,細胞増殖抑制作用や種々の免疫担当細胞に対する調節機能など,きわめて多彩な生物学的作用を示す物質であることがわかってきた.現在biological response modifier(BRM)の中で最も研究の進んだ薬剤の一つとして有用性が期待されている.

外界と接触する臓器の防御反応

消化管における感染防御反応

著者: 大貫寿衛

ページ範囲:P.1956 - P.1957

特異的防御反応
 免疫学的な特異反応の主役はIgAである.血清IgAが多少分泌に加わることは動物ではみられているが,ヒトでは明らかでなく,腸管で感染防御の働きを示すIgAは粘膜固有層内の形質細胞で作られる.この形質細胞は腸管のリンパ組織に由来するものと考えられており,IgA産生性形質細胞はIgG産生性形質細胞の20〜30倍存在するという.そしてIgAは同じ形質細胞内で作られるJ鎖によって二量体(dimer)を形成し,さらに粘膜細胞内で作られる分泌因子(secretory component;SC)の結合によって分泌型のsIgAとなる(図).SCは糖蛋白で,多量体の免疫グロブリンと結合し,これを粘膜表面に輸送することと,これを酵素などによる蛋白分解から守ることの2つの機能を持っている.

呼吸器における感染防御反応

著者: 塚本玲三

ページ範囲:P.1958 - P.1960

 空気中には無数の細菌,カビ,ウイルスなどの微生物,および塵埃が浮遊している.その空気をわれわれは毎日約1万l肺の中へ吸い込んでおり,絶えず感染の危険にさらされている.
 しかし,表1および図1に示すように,呼吸器の感染防御機構はきわめて複雑で巧妙にできているために,感染を発症することは少ない.

免疫能と感染症

免疫機能低下のメカニズム

著者: 堀誠

ページ範囲:P.1961 - P.1965

 免疫反応が円滑に行われるためには,T細胞・B細胞系の細胞機能(免疫担当細胞)および食細胞機能(非特異的免疫担当細胞)と補体機能が,綿密なネットワークを保ちながら正常に機能しなければならず,これらの機能の1つまたはそれ以上の箇所に異常があれば免疫不全の状態が出現する.その原因には原発性のものと続発性のものとがあり,後者には基礎疾患および各種の医原性によるものがある.臨床的には細胞性免疫能不全,抗体保有不全および食細胞機能の不全の状態として把握される.

生体防御低下患者にみられる発熱への対応

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.1966 - P.1969

 生体防御機能低下のある患者にみられる発熱に対して,われわれはいわゆる不明熱(FUO)なのか,単なる感染なのかをみきわめる姿勢を常に忘れてならないのは言うまでもない.生体防御機構が正常である場合,発熱の原因を追求する時間的余裕はあるが,生体防御低下の患者ではなるべく早く状態を把握し,診断を下し,治療を開始する必要がある.

機械的防御の破綻と感染

熱傷後の感染症

著者: 相川直樹 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1970 - P.1972

 熱傷は熱の物理的作用による体表組織の損傷であり,感染症の合併率がきわめて高い病態である.皮膚の損傷のため体表における機械的防御能が破綻し,病原体が侵入することが主として問題となるが,感染症の発症と重篤化には,熱傷に起因する複雑な生体防御機構の異常1)が関与している.

静脈内留置カテーテルと感染

著者: 小林寛伊

ページ範囲:P.1974 - P.1975

 最近は,静脈内にカテーテルを留置する症例が多く,その目的も,単に点滴や薬剤投与の経路としてではなく,高カロリー輸液,悪性腫瘍の治療など,長期間にわたって留置する症例が増加している.このような症例においては,compromisedhostの場合がほとんどであり,血管内と環境とが直接つながっている静脈内留置カテーテルによって惹起される感染が,1つの大きな問題となっている.

カンジダ食道炎

著者: 相澤信行

ページ範囲:P.1976 - P.1977

 カンジダ食道炎は,主に血液学的悪性腫瘍の患者,抗生物質やステロイド治療中の患者に多く発症し,播種性真菌症の約10%を起こすといわれており,その早期診断,治療が重要である.

貪食細胞と感染

機能低下と感染

著者: 松浦良二 ,   小林正夫

ページ範囲:P.1978 - P.1979

 貪食細胞の機能低下,すなわち食細胞機能異常症には原発性と続発性のものがある.日常的には続発性のもののほうが病態として多く存在するが,原発性のものも次第に多く報告されつつある.原発性食細胞機能異常症の概容を表に示す.
 食細胞の最も大切な機能は殺菌であり,その破綻の結果,種々の微生物(細菌,真菌)に対して易感染性を示す.ウイルスに対する抵抗性は概して正常である.慢性肉芽腫症(CGD)は食細胞機能異常症の代表であり,かつ頻度も最も多い(本邦で80数例に及ぶ).本稿ではCGDを主に概説する.

顆粒球減少と感染症

著者: 雨宮洋一

ページ範囲:P.1980 - P.1981

 顆粒球減少症の原因の多くはiatrogenicで,とくに白血病を代表とする造血器系悪性腫瘍では,total killcell理論に基づいた強力な放射線・化学療法で寛解導入を計るため,必然的に顆粒球減少に伴った重篤な感染症を高頻度に合併する.確かにこの顆粒球減少に併発する感染症はiatrogenicではあるが,寛解までの限定された期間内の合併症であるため,積極的な予防・治療法が試みられ,それは取捨選択の歴史であり,今後もいくつかの変遷をみながら試行錯誤が行われていくであろう.

日和見感染症

肺炎

著者: 舟田久

ページ範囲:P.1982 - P.1983

肺炎にみる日和見感染の特徴
基礎疾患と日和見病原体
 肺炎は日和見感染症のなかで最も高頻度にみられるものの一つで,細菌,真菌,ウイルスや原虫と,多岐にわたる平素無害な日和見病原体が原因になりうる.基礎疾患の種類や病期,さらに抗癌剤や免疫抑制剤による治療が加われば感染を起こしてくる病原体に変化がみられるものの,全体としてグラム陰性桿菌が最も多い.急性白血病や悪性リンパ腫では,寛解導入期の顆粒球減少に伴って緑膿菌,クレブシエラ,大腸菌などのグラム陰性桿菌や黄色ブドウ球菌の感染がみられ,この減少が持続すればアスペルギルス,カンジダやムコールの感染を合併しやすい.多発性骨髄腫では,液性免疫不全に伴って肺炎球菌やインフルエンザ菌などの有莢膜菌の感染が多い.寛解維持療法中の急性白血病,悪性リンパ腫,末期癌,臓器移植,尿毒症,後天性免疫不全症候群(AIDS)やHodgkin病では,細胞性免疫不全を背景にサイトメガロウイルス,ニューモシスチス,クリプトコッカス,非定型抗酸菌,ノカルジアの感染がみられる.

中枢神経系の感染症

著者: 高木誠

ページ範囲:P.1984 - P.1986

基礎知識
 Immunocompromized hostにみられる中枢神経系の感染症は,通常みられる感染症に比し,原因となる病原微生物は多岐にわたり診断がむずかしい.はじめに,これらの病原体を診断する上で重要な基本的事項について述べる.

軟部組織の感染症

著者: 渡辺一功

ページ範囲:P.1988 - P.1990

 軟部組織とは皮膚,皮下組織,筋膜,筋肉を含めたものであるが,軟部組織の感染症を記述するにあたり,主に皮膚病変を中心に述べていくことにする.
 皮膚は一般に細菌の侵入に対して抵抗力をもっている.皮膚表面に到達した微生物に対して生体はまず皮膚表面における非特異的因子により防御を行うが,この防御機構が破られ,微生物が真皮に達すると,種々の特異的,非特異的防御因子を動員してその排除が行われる.皮膚表面の防御機構としては表皮角層のバリアー,角層の剥離,乾燥,皮脂由来の不飽和脂肪酸,リゾチームなどがあり,非病原性細菌による細菌干渉現象(bacterial interference)も病原性細菌の増殖を抑制している.

補体欠如と感染症

著者: 矢田純一

ページ範囲:P.1992 - P.1993

補体系とその活性化の概略
 抗体が抗原(細菌)と結合すると,そのFc部に補体第1成分が結合し活性化される(Clq・Clr・Cls).補体第4成分(C4)はClsによって分割されC4aとC4bになり,C4bは抗体に結合する.補体第2成分(C2)はC4bに結合し,Clsの作用でC2aとC2bに分割され,C2aがC4bに結合したまま残る.C4b・C2a複合体は補体第3成分(C3)を分割しC3aとC3bとにする.C3bは細菌膜に結合する.C3bに第5成分(C5)が結合し,C4b・C2a・C3b複合体の作用でC5aとC5bに分割され,C5bの多くは細菌膜に結合する.C5bは第6,第7成分(C6,C7),ついで第8,第9成分(C8,C9)を結合しC5b〜9の細胞膜破壊構造を形成する.このように第1成分から逐次活性化されるルートを古典経路という.
 C3の一部はB因子の結合を受ける状態になっている.それにはD因子が作用してB因子をBaとBbに分割する.C3・Bb複合体はプロペルジンで安定化する.これはC3に作用しC3a,C3bに分割する.C3bは1因子とH因子の作用によりただちに不活化され,反応はそれ以上進まない.

よくみられる免疫機能低下状態と感染症

糖尿病と感染症

著者: 渥美義仁

ページ範囲:P.1994 - P.1997

 糖尿病患者の予後を左右する合併症は時代とともに大きく変化し,インスリン実用以前に多かった感染症による死亡は,インスリンと抗生物質が広く用いられるようになってから著しく減つている.済生会中央病院における1953年から1980年までの糖尿病患者の剖検210例でも,最初の10年間には感染症死が44%と最多死因であったが,1973年以降では6%と激減している(表1).
 しかしながら,糖尿病患者の日常生活の面からみると,今日でも肺炎,尿路感染症,結核,足壊疽などの感染症は入院を要したり,入院期間を長くする原因として,いまだに大きな問題である.

腎不全と感染症

著者: 山本勝 ,   相澤純雄

ページ範囲:P.1998 - P.2001

 腎不全患者における感染症は,近年すぐれた抗菌薬が開発されたにもかかわらず,減少傾向がみられなく,現在でも死因の上位を占めている1).これは血液透析やCAPDなどの治療法に伴う感染の機会が増加することも一因であろうが,易感染性であることが最も重要な要因である.したがって,通常あまり重症化することのない日和見感染や,結核,ウイルスなどによっても全身的な重症感染症をきたすことも稀でない.また一般細菌においても,メチシリン-セフェム耐性黄色ブドウ球菌などの多剤耐性菌が増加している.
 ここでは腎不全における感染症について概要を述べてみる.

老年者の感染症の病態

著者: 島田馨

ページ範囲:P.2002 - P.2005

 老年者の感染症についてまず起炎菌の問題を,次いで病院内感染の問題をとりあげ,最後に老年者の宿主条件と感染の際の生体反応を含めて,感染症の対策を考えてみたい.

アルコールと感染症

著者: 相澤好治

ページ範囲:P.2006 - P.2009

 アルコール中毒者で重症感染症に罹患しやすいことは,古くから観察されている.しかし,アルコール摂取と易感染性についての明確な関係を示す実験的,あるいは臨床的知見はきわめて乏しい.これは,アルコール自体の生体防御機構への影響を,アルコール中毒に伴うことの多い肝硬変症,栄養不良,意識異常などの合併症の影響から分離することができないためと思われる.またアルコール中毒者の生活環境,ライフスタイル,衛生学的諸因子は健常者とかなり異なることが想像できるので,臨床医学的あるいは疫学的調査結果の解釈には慎重にならざるをえない1)
 本文では,それらの因子を考慮しつつ易感染性の機序を考察し,さらにアルコール中毒者で罹りやすい感染症について述べる.

鼎談

抗生物質の使い方

著者: 島田馨 ,   渡辺一功 ,   北原光夫

ページ範囲:P.2010 - P.2020

抗生物質選択の指標
 北原(司会) 私たちが抗生物質を使う場合まず悩むのは,数ある抗生物質の中で何をどのように使ったらよいかということで,この最初のステップでも現在かなり混乱があるかと思います.そこで,まずはじめに感染症のある患者をみたとき,先生方はどのような基準で抗生物質を選択していらっしゃるか,その指標についてお聞かせいただけたらと思います.

カラーグラフ 皮膚病変のみかたとらえ方

ベーチェット病Behcet's diseaseの皮膚症状

著者: 石川英一 ,   北畠雅人

ページ範囲:P.2026 - P.2027

概念
 ベーチェット病(以下B病と略)は,トルコのBehcet,H.イスタンブール大学教授により提唱された疾患名で,口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,外陰部潰瘍,眼のブドウ膜炎を3主徴とする.
 上述の3症状に加えるに,結節性紅斑様皮疹,皮下の血栓性静脈炎,皮膚の被刺激性の亢進,毛嚢炎様皮疹が診断上重視される1).また診断,病勢悪化の判定には針反応が有用である.全身所見としては発熱,関節痛,関節炎,頭痛など膠原病に共通してみられる症状を,検査所見では,悪化時CRP強陽性,白血球増多,血沈亢進をみる.

グラフ 胸部X線診断の基礎

撮り方と読み方(23)

著者: 新野稔

ページ範囲:P.2036 - P.2049

肺癌の進展度とX線像
 UICC・TNM分類規約は肺癌の病期を潜伏期,1a期,1b期,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ期の6段階に分類している.II期は一般的な手術療法の適応となっており,Ⅲ期以上は進行癌に属し,Ⅱ期とⅢ期では予後が大きく分かれるため,その鑑別診断は重要な意義をもっており,正診率の向上が必要となる.
 病期を決定するTNM分類において,T因子は原発巣の浸潤範囲を,N因子は肺門・縦隔リンパ節転移を,M因子は遠隔転移を示しており,腫瘍進展程度を確定し治療方針の決定につながる読影診断が要請される.ことにT3.胸壁・縦隔浸潤の有無,N2・縦隔リンパ節,M1・遠隔転移の判定にはX線単純写真のみでは限界があることを銘記しなければならない.

画像からみた鑑別診断(鼎談)

悪性リンパ腫(ホジキン病)

著者: 佐藤哲夫 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.2050 - P.2060

症例
 患者 39歳,男性.会社員.
 主訴 全身のリンパ節腫脹,盗汗.

Current topics

Roentgenologically Occult Lung Cancerの診断法

著者: 小野良祐

ページ範囲:P.2062 - P.2070

 わが国において,肺癌は年間2,100人以上の死亡原因となっている.この死亡者数をひき下げるには,肺癌の早期発見と治療が行われなければならない.
 早期発見は喀痰細胞診により可能である.早期の病巣は幅が数mmであり,100micrometer程度の厚みしかない.このような癌病巣は通常の胸部X線写真,CTあるいは核医学などの検査では見出し得ない.このようなroentgenologically occult lung cancer(以下occult肺癌)は,気管支ファイバースコープでも局在診断は不十分である.そこでlaser fluorescence bronchoscopeの診断システムを開発し,臨床に応用したので報告する.

講座 図解病態のしくみ 腎臓病・11

尿路結石

著者: 高市憲明 ,   黒川清

ページ範囲:P.2081 - P.2086

 尿路結石は,多くは突然の腹痛,腰背部の激痛発作で現れることが多いが,疼痛の有無にかかわらず尿路の閉塞をきたしたり,感染をひき起こしたりする.尿路結石はまた無痛性の血尿,尿路感染症などの検索中に発見されることもある.結石は自然に排泄されることもあるが,外科的処置を必要とすることがあり,時には腎摘出を必要とすることもある.結石に伴う閉塞性腎症,腎盂腎炎,腎実質障害などから尿路結石症が腎不全の原因となることもある.尿路結石は初回発見時,適切にとり除かれ,あるいは排泄されたとしても,その後とくに何も対策をとらずに放置した場合,5〜10年以内に50〜60%以上の再発が認められる.一方,適切な治療がなされると劇的に再発率を低下させることが可能である.したがって尿路結石の病態生理を理解することは,治療を考える上でもきわめて重要である.今回は,主として病態生理に重点をおいて尿路結石について解説し,さらに治療に関しても簡単に触れる.
 尿路結石は,その構成成分から分類して,主として表1に示したようなものに分けることができる.この頻度については,本邦を含めた欧米先進国での成績には大きな違いはないようである.

Oncology・23

多発性骨髄腫

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.2087 - P.2090

 多発性骨髄腫(multiple myeloma)は形質細胞の悪性腫瘍であり,主として骨あるいは骨髄を侵す.他の腫瘍に比較して,臨床症状は多岐にわたる.つまり,腫瘍自体による骨の破壊,骨髄形成不全,脊髄圧迫症状などがみられる.また,異常蛋白のための腎障害,アミロイドーシス,血液粘稠度の上昇の出現,感染症の出現,あるいは高カルシウム血症のための腎障害,意識障害もみられる,したがって,myeloma症例を扱う場合,このような合併症の出現に常に目を向けていなければならない.さらに,myelomaをいつ治療するかという問題もある.myelomaの診断基準を満たしても,ただちに治療を要するわけではない.また,benign monoclonal gammanopathyとよばれる,まったく治療を必要としないものもある.

臨床ウイルス学・5

ヘルペスウイルス感染症

著者: 加地正郎 ,   庄司紘史

ページ範囲:P.2091 - P.2094

 ヘルペスウイルス科に属する一連のウイルスの感染は,臨床の面で最近とくに注目されている.その1つは,immunocompromised hostの増加に伴って,それらのhostにみられるこれらのウイルス感染症の増加,次にはいくつかの悪性腫瘍におけるこれらウイルスの役割,さらには,急速な展開をみせ始めている抗ヘルペス剤の登場である.

境界領域 転科のタイミング

慢性膵炎

著者: 山内英生 ,   宮川菊雄 ,   深谷雄一郎

ページ範囲:P.2072 - P.2076

 各種画像診断の開発,進歩により,膵疾患においても診断学的位置に占めるこれら診断法の重要性が高まっている.このような背景をもとに,慢性膵炎の診断基準も改正され1),症例数が増加している.1950年代から1980年代までの文献的集計を行ったWorning2)の報告によっても,慢性膵炎の発生頻度は1960年代に比べ1980年代では6.6倍に増加しており,成因についてはアルコールの占める割合が急増し,死亡率は16.8%から26.2%へと上昇している.進行性難治性疾患とされている本症の進行をいかに阻止し,治療するかは重大な問題である.本症の多くは内科的治療によっているが,その中には外科的治療を必要とする症例もある.本症は良性疾患であるため外科的治療は手術成績や遠隔成績,内科的治療との対比から検討されるべきものである.本稿では筆者らの手術成績を中心に,慢性膵炎の外科治療およびその時期について検討を加えたい.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.2029 - P.2035

—内科専門医による—実践診療EXERCISE

胸痛,呼吸困難

著者: 北祥男 ,   弘田雄三

ページ範囲:P.2077 - P.2078

 55歳の男性,家具店勤務既往歴として19歳時に肺結核の治療を受けたことがある.喫煙歴は20本/日30年間.
 入院13日前,同僚と机を運搬中に激しい前胸部痛が出現し,胸痛は数十分続き,胸部不快感,全身倦怠感は翌日まで持続した.2日後より仕事についていたが,10日後より歩行時に軽度の胸部圧迫感,呼吸困難が,11日後より38℃の発熱,咳嗽が出現し,ピンク色の泡沫状喀痰を喀出するようになった.しだいに呼吸困難は増強し,起坐呼吸の状態となり当院を受診した.

海外留学 海外留学ガイダンス

ニューヨークとアイオワ

著者: 大石実

ページ範囲:P.2098 - P.2101

外国医科大学卒業生
 日本でいくら臨床研修をしていても,米国でレジデント研修をしないと,米国の専門医の資格は取れない.私も日本で6年間卒後研修をしていたが,米国の医師免許証や専門医の資格を取得するため,レジデントとして留学した.
 米国でレジデント研修をしている外国医科大学卒業生は,全レジデント数の約20%を占める.この比率は専門分野によりかなり異なり,整形外科,眼科,航空医学,救急医学,皮膚科,小児外科は10%以下であるが,リハビリテーション科,血液バンク科,大腸直腸外科,核医学,神経病理学,放射線治療科は30%以上である.アメリカ人に人気のある科のレジデント研修に応募する人は,よほど優秀でないと,有名な病院には採用されない.

一冊の本

「The Tragedy of the Baltic States」—(John Alexander Swettenham 著,Hollis and Carter, London, 1952)

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.2097 - P.2097

 「バルト三国の悲劇」と題した本書は,バルト海東岸に位置したエストニア,ラトヴィア,リトアニア三国の独立から消滅までの歴史を,公式文書と証言を中心に編集したドキュメントで,著者は第二次大戦後の西ドイツでバルト三国からの避難民収容所に勤務した退役軍人である.
 昨年,中曽根首相の「フィンランド化」という発言を巡って我が国で物議を醸したことがある.しかし,この発言に対してフィンランド政府から口上書としての抗議はあっても,フィンランド国民からの抗議は起る筈のないことは,通常の頭脳と神経の持主なれば,フィンランドで3日暮らせば判る筈である.1948年に締結された芬ソ友好協力相互援助条約は実に2003年迄有効となっている.鉄道線路の幅一つとってみてもフィンランドはソ連と同じ超広軌(1,524mm)である.ロシア帝国からソヴエト社会主義共和国連邦と国内体制は変っても,ロシア・ソ連の周辺諸国に対する脅威度は高まるばかりである.中ソの対立もネルチンスク条約(1689)以来のものであり,中ソの歴史は換言すれば中国にとっては被侵略の300年である.これに較べれば日中の対立は日清戦争(1894〜1895)前後から大東亜戦争の終結(1945)までのたかだか50年に過ぎないとも言える.

面接法のポイント

面接と記録

著者: 河野友信

ページ範囲:P.2102 - P.2104

 医療の技術革新とともに,医療の機械化がますます進み,コンピューター時代に突入した今,医療のヒューマニゼーションは焦眉の急として要請されている.
 そのためには,全人的医療の展開をおいてない.全人的医療の特質は,総合性と統合性にあり,実践面では個別的,多面的かつ継続的に,病人中心のチーム・アプローチがなされるところにある.

感染症メモ

急性咽頭炎

著者: 袴田啓子

ページ範囲:P.2105 - P.2105

 急性咽頭炎は細菌性のものもあるが,ほとんどはウイルス性である(表).細菌性の咽頭炎ではStre Ptococcus pyogenes(A群β溶血,溶連菌)によるものが最も重要で,ペニシリンが特効薬であり,合併症としてリウマチ熱と急性糸球体腎炎がある.
 症状はウイルス性では一般に咽頭痛は軽く,咽頭所見では浮腫と充血がみられる.炎症所見がより強く,滲出液(白いクリーム状)の存在と高熱,頚部リンパ節の圧痛があれば,まず溶連菌による咽頭炎と考えられるが,表のように,アデノウイルス,EBウイルス,単純ヘルペスウィルス,Vincent's anginaでは滲出液もみられ,鑑別が困難なこともある.付随所見としては,アデノウイルスの結膜炎,嫌気性菌の扁桃周囲膿瘍などがある.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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