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雑誌目次

雑誌文献

medicina22巻13号

1985年12月発行

雑誌目次

今月の主題 めまいの臨床

理解のための10題

ページ範囲:P.2648 - P.2650

めまい・平衡障害の診断

めまい診断のための問診

著者: 吉本裕

ページ範囲:P.2562 - P.2566

患者の訴えるめまいは医学的定義にも該当するめまいか否か
 めまいの定義は枚挙にいとまがない位多いが,大同小異である.著者は,「めまいとは空間における身体に関する見当識(すなわち,空間識)の障害の自覚」と定義している.ただし,患者の訴えるめまいのなかに,必ずしもこのような医学的定義にあてはまらないものも含まれている.患者の訴えるめまいという観点からめまいを分類すると,表1のようになる.医学的定義にあてはまるめまいには,回転感,浮動感などといった訴えが含まれる.
 患者の訴える症状がめまいか否かという問題について,Alpers(1960)のことばをここに記しておく.すなわち,"めまいとは無関係な紛れやすいほかの症状と混同しないようにするためには,めまいの定義をつねにしっかり念頭においておくことが必要である.しかしながら,患者自身はめまいの定義については知らないので,医師の側から答えを引き出す必要がある.この場合,患者のいうめまいが何を意味するかを注意深く記録することが最も重要である.患者の訴えを正確に知るために,問診に多くの時間や努力を費やしても決して無駄ではない.なんとなれば患者の訴えている症状が医学的にもめまいに該当するものであるか否かによって,当然,引き続いて行う問診や諸検査の方針もそれに沿って変えてゆかなければならないのである"

眼振の検査法

著者: 徳増厚二

ページ範囲:P.2568 - P.2571

眼振の種類,名称
 自動的,反射的に持続する律動的な眼球の往復運動(to and fro eye movement)を一般に眼振(nystagmus)という.眼球の偏位を緩徐相,戻りを急速相として区別できる衝動性眼振(jerky nystagmus)に対して,正弦波様の往復運動を振子様眼振(pendular nystagmus)と呼ぶ.
 往復運動の方向が左右,上下の場合をそれぞれ水平性,垂直性とし,視軸のまわりの回転を回旋性という。衝動性眼振では急速相の向かう方向で,右向き,上眼瞼向き,時計まわりなどと呼ぶ。
 眼振検査では眼振波形,方向,振幅,頻度,リズムを観察し,頭位による誘発や,半規管刺激による眼振では眼振出現までの潜時,眼振持続時間,随伴するめまいを調べる.眼振緩徐相速度は眼振の強さの重要なパラメータである.

異常眼球運動の検査

著者: 坂田英治

ページ範囲:P.2572 - P.2574

異常眼球運動の検査の占める位置
 「めまい」という訴えに伴う他覚的所見は「平衡障害」に代表される.
 ふつう平衡障害というと,歩行時によろめいたり倒れたりする身体の平衡障害を意味することが多いが,眼球の動きについても同様に「平衡障害」という考えをもつことができる.

体平衡の検査

著者: 時田喬 ,   五島桂子

ページ範囲:P.2576 - P.2579

基本的な体平衡検査
 日本平衡神経科学会では1970年平衡機能検査の標準的方法を提示している1).体平衡の検査として次の検査が含まれている.
 1.直立検査(立直り反射検査)

めまい診断のための聴力検査

著者: 神崎仁

ページ範囲:P.2580 - P.2582

 □めまい疾患における聴力検査の目的(表1)
 1)難聴の有無,特に感音難聴の存在を証明することが重要である.聴力が正常であることの確認は前庭神経炎,良性発作性頭位眼振(BPPN)の診断に必要である.また感音難聴がなければ典型的なメニエール病とは断定できない.聴力型と疾患の関係は特異的ではないが,かなり特徴的なことがある.
 2)内耳性障害が後迷路性障害(第8神経より皮質までの障害)かの鑑別.感音難聴が確認されれば,補充現象検査,語音弁別能,自記オージオメトリなどの心理学的聴力検査や他覚的検査であるアブミ骨筋反射(SR)の検査,聴性脳幹反応(ABR)などによって内耳性か後迷路性かを鑑別する.

めまい診断のための神経学的検査法

著者: 宇高不可思 ,   亀山正邦

ページ範囲:P.2584 - P.2586

 「めまい」は回転性めまい(vertigo)と,非回転性めまい(dizziness,ふらつき,よろめき,眼前暗黒,脱力感などをふくむ)とに分けられる.一般に,末梢前庭系の障害ではvertigoが,中枢神経系の障害に伴う場合にはdizzinessが多いとされているが,例外もまれではない.
 「めまい」を伴う疾患ないし病態は多岐にわたる(表)1,2)が,放置してよいものから,重篤な中枢神経疾患に至るまで,予後はさまざまであり,正確な鑑別診断が重要である.「めまい」をとくに重視しなければならない場合として,①vertigoがあり,かつ悪心,嘔吐を伴う場合,②反復する場合,③聴神経その他の脳神経の異常を伴う場合,があげられる2).本項では,「めまい」を訴える患者の診察に際し,ルーチンに行うべきベッドサイドでの神経学的検査法について,簡単に述べることにする.

側頭骨X線検査法—単純撮影,断層撮影

著者: 蜂屋順一

ページ範囲:P.2588 - P.2590

 めまい,平衡障害のみられるときに行われる側頭骨X線検査のうち,最も基本的な単純撮影と通常断層撮影について要点を解説する.

脳血管造影検査,CT検査

著者: 古瀬信 ,   国技悦夫

ページ範囲:P.2592 - P.2594

脳血管造影検査
 脳幹,小脳半球,虫部,内耳道などの血流は椎骨-脳底動脈系によって支配されているが,血管造影によりこれらの血管系を描出して,めまいや平衡障害の原因が解明されることは頻度としてあまり多いものではない.椎骨-脳底動脈系の解剖にも多くのvariationがあるため,一側の椎骨動脈が閉塞していても側副路が発達して明らかな症状が現れない場合も多い.しかし,優位である太い方の椎骨動脈がC1-C2levelで,首の回転時に圧排され,血流障害を来たし,検査中に失神した例も経験している.そのほか,椎骨動脈,後下小脳動脈(PICA)の動脈硬化性狭窄によるWallenberg症候群なども,しばしば血管造影の対象となる.一般的に0.5mm以下の血管の閉塞性変化は血管造影では描出できない.
 CT検査が普及されて以来,腫瘍や炎症などの診断に血管造影が偉力を発揮することもほとんどなくなった.腫瘍の摘出前に血管系の解剖を描出し,支配血管や周囲血管の走行や蛇行の有無を確認したり,血管増性の有無などをあらかじめ知る目的で,血管造影検査が行われるのが一般的である.まれに,蛇行した血管や動脈瘤が聴神経鞘腫と誤診されることもあり,中耳腔にstapedial arteryなどの残遺例も報告されていることを考えると,全く必要のない検査と無視することもできない.

めまい・平衡障害を主訴とする各種疾患

メニエール病

著者: 二木隆

ページ範囲:P.2596 - P.2597

 フランス人医師Prosper Ménièreが1861年,めまいは当時Trousseauらによって言われていた脳のうっ血ではなくて,内耳から来ると報告したのを記念する意味を含めて,Ménière's syndrome(メニエール症候群)として用いられはじめたが,現在ではむしろMeniere's disease(メニエール病)として用いられることが多い.一般的にいって「中枢性のめまいではなさそうだ」と推定されると内科医の方は気軽に"メニエール症候群",あるいは"メニエール病"という診断をつける傾向があるが,耳鼻科医はむしろstrictに考えて診断をしている.
 その実態は現在のところ「特発性内リンパ水腫」であるとされており,厚生省特定疾患メニエール病調査研究班(班長:渡辺勈)の診断基準(表)に従って,「メニエール病確実例」という名を使い,それに近いものは「メニエール病不確実例」とするなどしている.

末梢前庭性めまい

著者: 野末道彦

ページ範囲:P.2598 - P.2600

 末梢前庭性のめまい疾患といわれるものの中には,メニエール病,めまいを伴う突発性難聴,良性発作性頭位眩暈症,前庭神経炎,内耳炎およびいわゆる耳性眩暈などが含まれる.
 すなわち内耳および前庭神経の障害によって起こるめまい疾患がその主たるものである.以下にそれぞれの疾患につき,典型的症例をあげて述べる.

聴神経腫瘍

著者: 小松崎篤

ページ範囲:P.2602 - P.2606

 聴神経腫瘍は,元来,内耳道内の第8神経に由来する末梢神経腫瘍である.しかし,腫瘍が進展すると内耳道内に充満するのみならず後頭蓋窩に進展し,小脳橋角部腫瘍として小脳や脳幹を圧迫し,いわゆる脳腫瘍の症状を呈する.
 以前には,その早期診断は必ずしも容易ではなかったが,最近では神経耳科学的検査法,さらに,CT scanなどを含む神経放射線学的検査法の進歩により,比較的早期に聴神経腫瘍の診断ができるようになり,したがって,治療成績も向上している.

小脳萎縮症(脊髄小脳変性症)とめまい

著者: 福武敏夫 ,   平山惠造

ページ範囲:P.2608 - P.2609

 「めまい」は神経内科の外来でも比較的多い愁訴の一つであり,しばしば脳血管障害をはじめとする小脳〜脳幹系病変の重要な症候である.ただし,「めまい」といっても広くあいまいな概念であり,狭義の「めまい」,すなわち眼振を伴い,「回転感」や「物が流れてみえる」感覚を訴えとする"vertigo"の他に,姿勢保持機構・中枢性平衡障害による「ふらつき」,ことに「歩行時のふらつき」や脳幹網様体の一過性機能不全による「立ちくらみ」のような,回転感を伴わない"non-vertigo"まで含まれる1)ことが多い.これらの他にoscillopsia(動揺視)も「めまい」として訴えられることがある.
 変性疾患である各種の小脳萎縮症(脊髄小脳変性症)でも時に「めまい」の訴えはあり,またいくつかの総説や教科書的著作においても,「めまい」を起こす疾患分類にあげられている.しかし,著者らの日常診療の経験では,小脳萎縮症の患者において,病歴上,「歩行時のふらつき」や「立ちくらみ」の訴えは多いが,それらの要素と区別するように患者に説明して問診すると,「めまい」の訴えは少ないように思われる.今回,当科自験例についてretrospectiveに病歴調査を行い,この点を確かめてみた.

神経内科よりみためまい—脳血管障害を中心に

著者: 濱口勝彦

ページ範囲:P.2610 - P.2612

 めまいを訴える患者は多く,患者自身の選択か,あるいは病院の案内係の指示に従って,耳鼻科,神経内科,脳外科,婦人科など各科を受診するようになる.たとえば耳鳴を伴えば耳鼻科に,頭痛を伴えば神経内科または脳外科に,更年期の女性では婦人科を訪れるようになる.めまいが主訴のことが多いが,ときにめまいが主訴でなく,たとえば頭痛が主訴でそれにめまいを伴うという場合もある.ここでは神経内科よりみためまいという題を与えられているので,患者がめまいを訴えたときの一般的なみかた・考え方をまず述べ,次に脳血管障害でのめまいについて述べることにする.

脳神経外科よりみためまい—脳腫瘍・外科的脳血管障害を中心に

著者: 植村研一

ページ範囲:P.2614 - P.2616

 めまいを起こす脳腫瘍といえば,小脳橋角部腫瘍と側頭葉腫瘍のみを連想しがちだが,それ以外のテント上腫瘍でもめまいが起こる1,2).めまいを起こす外科的脳血管障害といえば,以前は小脳出血だけが考えられていたが,近年,めまい患者の中にも脳血管手術の対象となるものがその他にも沢山あることが分かって来た1,2,3,5).そこで本稿では,脳腫瘍とそのような外科的脳血管障害によるめまいについて,症候論的鑑別診断を中心に,解説する.

血圧とめまい

著者: 島津邦男 ,   大久保毅

ページ範囲:P.2618 - P.2619

 なんら支障なく日常生活を送っている者が,込み合った乗り物の中や,急に立ち上がったときなどにめまいを覚える,その原因として血圧の関与,特に血圧下降を考慮せざるをえないことがある.めまいは全くの自覚症状で,客観的な把握やなんらかの器具を用いた定量的分析は困難である.したがって,もっぱら問診により患者が訴えている内容を,表1に挙げた真性めまいと仮性めまいのいずれか,またどちらに近いかを判断する1).そして失神型に分類されれば,先ず体血圧の関与が大きいと考えられてきた.

めまいの治療

薬物療法—内科の立場より

著者: 高橋昭

ページ範囲:P.2620 - P.2622

 神経内科領域で「めまい」を訴える患者は多い.しかし,その内容は甚だ多岐にわたり,外界回転性の真性めまい(rotatory vertigo)から,眼前暗黒感(black-out),失神(syncope),ふわふわ感(faintness),不安定感(unsteadiness)など多種多様である.他に合併している神経症候の聴取とともに,患者の訴える「めまい」の内容の正確な把握は診断上必須のステップである.
 典型的な真性めまいでは,外界が回転したり,一方へ流れたりすると訴える(objective vertigo)場合と,患者自身が傾斜したり,まわったりすると訴える(sub-jective vertigo)場合とがあるが,両者の区分は診断上特に重要ではない1)

薬物療法—耳鼻科の立場より

著者: 松永亨

ページ範囲:P.2624 - P.2627

 めまいの治療,とくに薬物療法を耳鼻咽喉科の立場より述べるにあたり,まずめまいの治療について肝要点を述べ,ついでめまい治療薬を列記し,末梢性めまいを中心に実際の治療について記述する.

手術療法

著者: 北原正章 ,   北嶋知智

ページ範囲:P.2628 - P.2630

 耳鼻咽喉科医が主として扱う耳性めまいのうち,手術的治療の対象となるものには,①中耳炎の波及(内耳炎)によるめまい,②聴神経腫瘍,③良性発作性頭位眩暈,④メニエール病,がその主たるものである.本稿では特にメニエール病の手術治療を中心に述べる.

座談会

めまいをめぐる諸問題

著者: 渡辺勈 ,   濱口勝彦 ,   植村研一 ,   小松崎篤

ページ範囲:P.2631 - P.2647

 小松崎(司会) 今日はめまいに関係の深い耳鼻咽喉科,神経内科,脳神経外科の先生方にお集まりいただきました.めまいの患者が目の前にいる場合に,実際に臨床の場でどういうふうに対応するかという非常にpracticalなお話をうかがいたいと思います.
 「めまい」は非常に多くの臨床の科にまたがっているものですから,適切な診断が必ずしも十分になされているとは限らないのではないかと思います.そんなことを含めまして,各科がオーバーラップしている部分も含めて,各科よりみためまいにはどんなものがあるか,ということを先生方におうかがいしたいと思います.

カラーグラフ 皮膚病変のみかたとらえ方

湿疹病変のみかた

著者: 石川英一 ,   田村多絵子

ページ範囲:P.2652 - P.2653

 湿疹(または皮膚炎)は内因,外因によって発症する非伝染性,表在性,炎症性の皮膚疾患の総称で,掻痒を伴う.湿疹の臨床的診断にあたっては,皮膚病変(皮疹)の発生部位,分布に注意するとともに,とくに細かい変化(原発疹,およびそのあとの皮疹の変化)を見分けることが必要である.次に日常経験することの多い湿疹別にポイントとなる皮膚病変を述べる.

グラフ 胸部X線診断の基礎

撮り方と読み方(24)

著者: 新野稔

ページ範囲:P.2662 - P.2675

 今回は,びまん性散布性陰影の「びまん性」の意味を述べ,現在でも粟粒結核に遭遇する機会があるので,その特徴像と鑑別点を列記する.ことにびまん性散布性陰影の診断には病変の場の特徴があるように感じられる.また,今まで断層写真の基本的なことを述べていないので,断層撮影像の暈けの注意点に言及し,臨床的応用の諸問題につき解説する.さらに,肺野の基本的異常影をBurgenerらの分類で紹介し解説する.
 最後に本連載を終るにあたり,X線像読影力の向上について私見を述べる.

複合心エコー図法

後天性心疾患—心内膜炎

著者: 伊東紘一 ,   鈴木修

ページ範囲:P.2676 - P.2678

症例15 60歳 男性
 6カ月前より発熱と筋肉痛あり,近医にて抗生剤の投与を受けた.しかし3カ月前に高熱をくり返すようになり入院する.血液培養の結果,Strep-tococcus sanguisが検出された.心雑音が聴取され,心音図にて全収縮期雑音よりMRが示唆された.

画像からみた鑑別診断(鼎談)

膵癌,転移性肝癌

著者: 田中照二 ,   多田信平 ,   川上憲司

ページ範囲:P.2680 - P.2688

症例
 患者64歳,男性,会社役員.
 主訴 腹部膨満感.

演習

目でみるトレーニング(5題)

ページ範囲:P.2655 - P.2661

—内科専門医による—実践診療EXERCISE

頭痛/右上腹部痛,発熱

著者: 小林祥泰

ページ範囲:P.2689 - P.2692

 38歳の男性,不動産業.生来健康.7月7日頃よりとくに誘因なく頭重感出現,次第にズキズキする痛みとなってきた.7月10日より右後頭部から頭頂部にかけて,間歇的に激しくさしこむような,電気が走るような痛みが出現してきたため近医受診したが,改善しないため7月15日当科受診し入院.とくに感冒症状もなく,悪心,嘔吐,発熱もなし.
 一般身体所見:身長170cm,体重70kg,体温37℃,血圧120/80mmHg,脈拍60/分整.胸部,腹部も正常.C2領域に水泡形成(-),皮疹(-).浮腫(-).リンパ節腫張(-).

講座 図解病態のしくみ 腎臓病・12

腎血管性高血圧症

著者: 森晶夫 ,   張漢佶 ,   黒川清

ページ範囲:P.2695 - P.2700

 腎血管性高血圧症とは,腎動脈の主幹あるいは分枝の狭窄が起因となり生ずる高血圧症である.根治可能な二次性高血圧症として,臨床的に重要な疾患であり,臨床医は高血圧症患者(特に若年の場合)診療の際,鑑別診断として常に念頭においておく必要がある.
 その診断,治療に関しては,腎動脈造影法以後,digital subtraction angiographyやpercu-taneous transluminal angioplastyなどの技術の開発とともに,renin-angiotensin系に関する知見の進歩,およびangiotensin II拮抗薬の開発など,近年めざましい進歩があった.本稿ではそれらの進歩について,病態生理,診断,治療の3項目に分けて記述する。

Oncology・24

急性非リンパ性白血病

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.2701 - P.2704

 急性非リンパ性白血病(acute nonlymphocytic leukemia,ANLL)は幹細胞の疾患であり,幹細胞の成熟過程の異常により,形態学的に異なった白血病が出現する.たとえば,赤白血病や単球性白血病が典型的な例である.また,白血病細胞はある程度成熟するのも可能であるが,形態学的に白血球異常(pseudo-Pelger-Huet anomaly)を生じる.ANLLは比較的高い年齢層にみられ,ALLは一般にANLLより若い年齢層にみられる.

臨床ウイルス学・6

ウイルス性脳炎・髄膜炎

著者: 大石実 ,   高須俊明

ページ範囲:P.2705 - P.2712

 ウイルス性中枢神経疾患にはこれまで有効な薬剤がなかったが,単純ヘルペス脳炎および帯状庖疹の治療薬として,AcyclovirおよびAra-Aが最近広く普及した1).これらの抗ウイルス薬は発病初期に投与したほうがより有効なので,早期診断のための補助手段の1つとして,ELISA(en-zyme-linked immunosorbent assay)による単純ヘルペスウイルス抗体測定も普及してきている.早期診断の努力と新しい抗ウイルス薬の使用により,単純ヘルペス脳炎の致命率は大幅に低下した.それゆえ,新しい検査法・治療薬に関する知識が必要となっている.

海外留学 海外留学ガイダンス

FLEXと米国専門医試験

著者: 大石実

ページ範囲:P.2718 - P.2721

 米国の医師免許証を取らなくても,レジデント研修をすることはできる.しかし,院外処方箋を書くにはその州の医師免許証が必要であり,米国の専門医の資格を取る場合にも必要になることが多い.また院外麻薬処方箋を書くには下記に登録し,DEA numberをもらわなければならないが,このとき医師免許証番号が必要になる.
 Drug Enforcement Administration:P. O. Box 28083, Central Station, Washington D. C. 20005USA

CPC

呼吸困難と胸部X線上びまん性浸潤影を呈した30歳女性

著者: 河端美則 ,   和田雅子 ,   片桐史郎 ,   杉田博宣 ,   徳田均 ,   木野智慧光

ページ範囲:P.2730 - P.2737

症例
  患者:30歳,女性.
  主訴:咳,呼吸因難.

診療基本手技

胃ファイバースコープ挿入のポイント

著者: 西崎統

ページ範囲:P.2714 - P.2715

 上部消化管の診断法として,内視鏡検査はX線検査と並んで欠かすことのできない検査である.
 近年,ファイバースコープの普及により直視下に消化管の各部を容易に,しかも安全に観察し,生検もできるようになった.さらに治療や高度な診断手法まで行われている.

一冊の本

—Philip A. Tumulty 著 日野原重明・塚本玲三 訳—The EFFECTIVE CLINICIAN—新しい診断学の方法論と患者へのアプローチ—よき臨床医をめざして

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.2717 - P.2717

 私がジョンズ・ホプキンズ大学医学部のタマルティ内科教授の本に接したのは,1971年のことであった.この本をアメリカ訪問の際に本屋で見つけたのは,まずその標題が心をひいたことであった.中をめくってみると,オスラーほか11名のジョンズ・ホプキンズ大学医学部の歴代教授のスケッチと人物評があり,私の興味をひいた.
 この本の著者は,オスラーの直弟子ではないが,ジョンズ・ホプキンズ大学におけるオスラーの精神を心一杯に浴びて医師,研究者となり,オスラーの精神を今日の若き医学生に伝えようと努力したOslerianである.

新薬情報

ヘルペン坐剤125・250—〔住友製薬〕 一般名:アンピシリンナトリウム坐剤—合成ペニシリン製剤

著者: 水島裕

ページ範囲:P.2722 - P.2723

概略
 ヘルペン坐剤(Herpen Supp.)は,アンピシリン(ABPC)の坐剤であり,住友製薬および京都薬品工業の共同開発により,ABPCの直腸吸収を可能にした小児用の坐剤である.国内における抗生物質の坐剤としてはエリスロマイシンの坐剤があるが,小児科領域ではさらに吸収が良好で,異なる抗菌スペクトルをもつ抗生物質坐剤の開発が強く望まれてきた.その理由として,経口剤の場合は拒薬,胃腸障害が,注射剤の場合は血管確保,疼痛などの問題があり,坐剤にすることにより,これらの問題を解決できるからである.
 ヘルペン坐剤には吸収促進剤として直鎖の飽和脂肪酸〔カプリン酸ナトリウム(CA-NA)〕が添加されているが,この新しい吸収促進剤であるCA-Naの開発により,従来困難とされていたABPC坐剤が誕生したのである.CA-Naの吸収促進の作用機序は,直腸粘膜の細胞間隙を一時的に広くし,ABPCを吸収させると考えられている.

感染症メモ

抗ウイルス薬Acyclovir(Zovirax®

著者: 袴田啓子

ページ範囲:P.2724 - P.2724

 抗ウイルス薬であるAcyclovir(Zovirax®)が治験を終了し,近頃日本でも発売されたにあたり,改めて紹介しておきたい.
 Acyclovir(Zovirax®)はguanosineの非環状ヌクレオシドの同族体であり,ほとんどのヘルペスウイルスに対して抗ウイルス作用を発揮する.vitroでの実験では単純ヘルペスタイプ1≧単純ヘルペスタイプ2>水痘・帯状疱疹ウイルス>EBウイルス>>>ヒトサイトメガロウイルスの順に有効性が認められており,単純ヘルペスウイルス,(サル)水痘・帯状疱疹ウイルスへの有効性は治験でも確かめられている.

面接法のポイント【最終回】

面接と記録(2)

著者: 河野友信

ページ範囲:P.2726 - P.2729

 11月号で,医療の記録方法としてはPOSが最も優れていることを強調し,さらに,人間中心の医療を展開するためにPOSを補足するものとして,Leigh HらのPatient Evaluation Grid(PEG)を紹介した.
 本号では,さらに,全人的医療をおしすすめるtoolとしての医療記録を補強するために,若干のヒントと工夫を参考資料として提示したい.

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「medicina」第22巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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56巻8号(2019年7月発行)

特集 一歩踏み込んだ—内科エマージェンシーのトリセツ

56巻7号(2019年6月発行)

特集 抗菌薬をアップデートせよ!—耐性菌に立ち向かう! 適正化の手法から新薬の使い分けまで

56巻6号(2019年5月発行)

特集 糖尿病診療の“Q”—現場の疑問に答えます

56巻5号(2019年4月発行)

特集 しまった!日常診療のリアルから学ぶ—エラー症例問題集

56巻4号(2019年4月発行)

増刊号 一人でも慌てない!—「こんなときどうする?」の処方箋85

56巻3号(2019年3月発行)

特集 TPOで読み解く心電図

56巻2号(2019年2月発行)

特集 抗血栓療法のジレンマ—予防すべきは血栓か,出血か?

56巻1号(2019年1月発行)

特集 枠組みとケースから考える—消化器薬の選び方・使い方

55巻13号(2018年12月発行)

特集 これからの心不全診療への最新アプローチ—予防からチーム医療・先進医療まで

55巻12号(2018年11月発行)

特集 内科医のための「ちょいあて」エコー—POCUSのススメ

55巻11号(2018年10月発行)

特集 どんとこい! 内科医が支える—エンド・オブ・ライフ

55巻10号(2018年9月発行)

特集 クリティカル・ケアを極める—一歩進んだ総合内科医を目指して

55巻9号(2018年8月発行)

特集 もっともっとフィジカル!—黒帯級の技とパール

55巻8号(2018年7月発行)

特集 血液疾患を見逃さないために—プライマリ・ケアと専門医コンサルトのタイミング

55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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