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今月の主題 筋疾患とその周辺 神経筋接合部の疾患
ボツリヌス中毒
著者: 高守正治1 奥村誠一1
所属機関: 1金沢大学医学部・神経内科
ページ範囲:P.276 - P.277
文献購入ページに移動 ボツリヌス菌(clostridium botulinum)は芽胞を形成する嫌気性グラム陽性桿菌で,きわめて強力な蛋白毒素を産生する.ボツリヌス中毒にはボツリヌス食中毒,創傷ボツリスム,乳児ボツリスムがある.ボツリヌス中毒の中で最もよく知られているボツリヌス食中毒は,本菌あるいは毒素に汚染された食物を摂取することにより起こる.創傷ボツリスムは創傷部位の本菌感染によって起こるが,きわめてまれである,乳児ボツリスムは本菌芽胞を経口的に摂取することにより起こるとされ,乳児の突然死との関係が示唆されている.ボツリヌス毒素は分子量約150,000の神経毒と分子量約500,000の赤血球凝集素より成る.中毒の原因となるのはこの神経毒で,末梢神経系のコリン作動性神経筋シナプスに作用し,アセチルコリン(ACh)の遊離を阻害し作用を発現する.毒性はきわめて強く平均致死量は5〜50ng/kgと言われている1).
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