講座 臨床ウイルス学・2
韓国型出血熱—腎症候性出血熱
著者:
柴崎浩一1
市田文弘2
所属機関:
1日本歯科大学新潟歯学部・内科
2新潟大学医学部・第3内科
ページ範囲:P.1495 - P.1500
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発熱,高度の蛋白尿,腎障害,出血性素因などを主徴とする出血熱は古くからユーラシア大陸に風土病的に存在し,それぞれの発生地域によりEpidemic hemorrhagic nephrosonephritis(ソ連),Nephropathia epidemica(スカンジナビア),Epidemic hemorrhagic fever(日本,中国)などとして報告されてきた.本症は1951年韓国動乱時における国連軍兵士の間での大流行以来,世界的に注目をあびるようになり,韓国型出血熱(Koreanhemorrhagic fever, KHF)と呼ばれ,とくに韓国において精力的に研究がすすめられている1).本邦においても1960年から1970年にかけて大阪地区で約120名の患者発生が報告された2).しかし,1971年以降の発生例はなく,その存在すら忘れ去られようとしていた矢先,東北大学,新潟大学3)を初めとする医科系大学において,実験動物のラットを使用している研究者の間に再び本症の発生がみられ,医学研究の面にも大きな支障をきたしたことは記憶に新しく,ましてその発症様式がこれまでに報告されてきた農山村型や都市型とは異なり,実験動物のラットを介した実験室型(研究室型)であったことは社会的にも大きな反響を呼び起こした.