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今月の主題 意識障害へのアプローチ 意識障害の基礎知識
意識の生理学
著者: 宇川義一1 岩田誠1
所属機関: 1東京大学医学部・脳研神経内科
ページ範囲:P.1826 - P.1828
文献購入ページに移動 意識という言葉は日常何気なく用いられているが,正確に定義することは容易ではない.これは意識という言葉が,医学・哲学・心理学などさまざまな立場で用いられていることに起因している.しかし医学用語としての意識に限定してもなお,この言葉の定義は困難であり,古くから多くの医学者によって試みられてきたにもかかわらず,未だ十分満足する定義は見出されてはいないのである.
Cobb(1958)による"awareness of environment and of self"という定義は,かなり多くの人に受け入れられ,広く支持されているが,異論を唱える者も少なくない.現在臨床医学において,意識は「覚醒レベル」と「意識の内容」とに分けて考えられている.神経生理学的立場では,主に前者を判定する方法として,「意識とは内界外界からの刺激に対する反応性である.」という見解に基づいて,多くは生理学的に検出できる反応を用いた研究が行われている.この方法は,動物実験において合理的であるが,人間に適用する場合,認識,記憶,注意の集中などの要素をはっきり分離できず限界がある.また,人間と動物で意識の維持機構が同じかどうかについても明らかではない.
Cobb(1958)による"awareness of environment and of self"という定義は,かなり多くの人に受け入れられ,広く支持されているが,異論を唱える者も少なくない.現在臨床医学において,意識は「覚醒レベル」と「意識の内容」とに分けて考えられている.神経生理学的立場では,主に前者を判定する方法として,「意識とは内界外界からの刺激に対する反応性である.」という見解に基づいて,多くは生理学的に検出できる反応を用いた研究が行われている.この方法は,動物実験において合理的であるが,人間に適用する場合,認識,記憶,注意の集中などの要素をはっきり分離できず限界がある.また,人間と動物で意識の維持機構が同じかどうかについても明らかではない.
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