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文献詳細

雑誌文献

medicina23巻3号

1986年03月発行

文献概要

今月の主題 アルコール障害 アルコールによる代謝異常

アルコールの水,電解質,微量物質への影響

著者: 谷川久一1 山内一明1

所属機関: 1久留米大学医学部・第2内科

ページ範囲:P.410 - P.411

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水,電解質
 アルコール摂取による尿量の増加は経験的によく知られており,この点について古くから種々の検討が加えられてきた.現在この利尿作用はアルコール飲料の種類,量には直接関係はなく,アルコール濃度の上昇時期に一致していること,また血中アルコール濃度の急峻な上昇の場合より,血中アルコール濃度が徐々に上昇する場合の方が利尿作用が強いことも明らかにされている.この利尿作用の機序については,視床下部下垂体系,特に抗利尿ホルモンの放出抑制によって生ずると考えられている.また,飲酒後の口渇感についても,慢性アルコール投与後で下痢,嘔吐のない場合の体内水分分布は全体水分量,細胞外液量,血漿量いずれも増加し,しかも血漿浸透圧は上昇している.したがって飲酒後の口渇感は血漿浸透圧の上昇や呼気から排泄されるアルコールによる口腔粘膜の乾燥によって生ずるものであり,脱水の指標とならないと考えられる.しかし,常習飲酒者においては下痢,嘔吐を伴うことが多く,この場合は,腸管からの水,電解質の吸収抑制1)と蠕動の亢進によるものであると考えられる.この腸管よりの吸収抑制の機序はNa-KATPase活性の抑制による能動輸送の低下である2)と考えられる.したがって下痢,嘔吐を伴う常習飲酒者では,脱水傾向,電解質低下傾向が出現する.以上の如くであり輸液を考える際にも個々の症例について十分な配慮が必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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