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文献詳細

雑誌文献

medicina23巻6号

1986年06月発行

文献概要

講座 臨床ウイルス学・9

肝癌とウイルス

著者: 服部信1 小林健一1 金子周一1 村上清史2

所属機関: 1金沢大学医学部・第1内科 2金沢大学附属癌研・生物物理

ページ範囲:P.1078 - P.1083

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序説
 臨床的にウイルス肝炎患者の経過を長年月追及すると,慢性肝炎,肝硬変を経て,肝細胞癌を合併する症例の観察されることを,米国のSheldonとJames1)が初めて発表したのは1948年のことである.他方,米国では,フィラデルフィア動物園で,動物の屍体を1901年から剖検した結果,1933年獣医Ratcliffe2)により,鳥類において,ウイルス肝炎,肝硬変,肝細胞癌が観察される事実が発表された.1968年この動物園からSchneiderは,ウッドチャックに肝炎と肝細胞癌の存在を発見し,ウイルス性であろうと類推した.1977年同じフィラデルフィアのフォックス・チェース癌研究所のSummersらにより,ウッドチャック肝炎,肝細胞癌を有する動物に,B型肝炎と構造の近いウッドチャック肝炎ウイルスを発見した.フランスのGalibertら4)は,Maxamらの方法を利用して,ウッドチャック肝炎ウイルスDNAの全構造を決定し,B型肝炎ウイルスDNA構造と類似している事実が明らかにされた.図1にB型肝炎ウイルスDNA(左)と,ウッドチャックウイルスDNA(右)の化学構造を示す.また,西岡により,1973年に国立がんセンター病院に,市田,石井,服部を集め,WHOの会議を開催し,肝細胞癌の患者血清中にいわゆるオーストラリア抗原が高率に含まれている事実を明らかにした.この主旨の発言をしたのは,西岡,市田,石井である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1189

印刷版ISSN:0025-7699

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