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今月の主題 糖尿病診療の現況 トピックス
膵移植の現況と展望
著者: 高見実1 出月康夫1
所属機関: 1東京大学医学部・第2外科
ページ範囲:P.82 - P.84
文献購入ページに移動 膵移植の歴史は古く,すでに1893年にヒツジの膵組織片を糖尿病性昏睡の少年の皮下に異種移植したという最初の膵移植の報告がみられる.1960年に入りAzathioprine(AZA)の発見により腎・心臓などの各臓器移植の臨床応用が盛んとなり,膵移植も1966年第1例の臨床報告がなされ,すでに20年の月日が流れようとしている.本稿では,膵移植のかかえる問題点を明らかにし,わが国での臨床応用の可能性について述べてみる.
膵移植には,血管吻合を用いる膵臓移植と,内分泌腺組織であるラ島のみを移植するラ島移植の2つの方法がある.後者のラ島移植においては,純粋のラ島が多量に分離回収できる小動物では目覚ましい進歩がみられるものの,ヒトを含めた大動物では膵臓の豊富な繊維成分のため純粋なラ島が十分量分離回収できず,臨床においてはその成績はきわめて不良である.1984年6月までに166例の臨床報告があるものの,インスリン注射から完全に離脱できた症例は1例もない.現在欧米においては,前者の血管吻合を用いた膵臓移植が主体となっており,本稿でも同移植方法について述べる.
膵移植には,血管吻合を用いる膵臓移植と,内分泌腺組織であるラ島のみを移植するラ島移植の2つの方法がある.後者のラ島移植においては,純粋のラ島が多量に分離回収できる小動物では目覚ましい進歩がみられるものの,ヒトを含めた大動物では膵臓の豊富な繊維成分のため純粋なラ島が十分量分離回収できず,臨床においてはその成績はきわめて不良である.1984年6月までに166例の臨床報告があるものの,インスリン注射から完全に離脱できた症例は1例もない.現在欧米においては,前者の血管吻合を用いた膵臓移植が主体となっており,本稿でも同移植方法について述べる.
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