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雑誌目次

雑誌文献

medicina24巻7号

1987年07月発行

雑誌目次

今月の主題 肝・胆・膵疾患の画像診断 editorial

肝・胆・膵疾患における画像診断の発展

著者: 平松京一

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 上腹部臓器における画像診断は,臨床医の興味が最も多く集中する領域であるが,なかでも肝・胆・膵に関する画像診断はとくにその中心をなしているように思われてならない.今日のように実に多くのimaging modalityが開発されて,その進歩も著しい反面,この肝・胆・膵においては,いまだ未解決の問題点が数多く残されている.
 しかし,このように未解決の問題が残され,各modalityに診断能の限界が依然として存在すればするほど,これらの限界に対するチャレンジが意欲的に行われるのは当然のことである.

各検査法の進歩と限界 肝画像診断のすべて

単純X線写真に含まれる情報

著者: 岩田美郎 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.1144 - P.1148

 肝画像診断において単純写真の占める役割は,現在,従来ほど大きなものではない.超音波検査やCTなど侵襲が少なく,なおかつ疾患に対して特異的な情報を得ることのできる手技が長足の進歩を遂げたからである.しかしながら,画像診断における単純写真の重要性が低下したわけではなく,スクリーニング検査として全体を観察し,鑑別診断を掲げ,個別へと向かう各種画像診断の入口に位置する単純写真の意味は不変である.実際の日常診療においては,単純写真に所見がないということがほとんどであるが,これは疾病の診断においては欠くことのできない重要な第一歩なのである.また,時に単純写真は,ガス像や石灰化など,その疾患に特異的な情報を提供することがある.これは,他の検査による代用の難しい,単純写真固有の分野である.
 以下,正常肝単純写真,とくに隣接臓器との関係と肝の大きさの評価,さらに病的過程としての肝内ガス像と石灰化に焦点を絞って述べる.

超音波検査

著者: 佐藤通洋

ページ範囲:P.1150 - P.1155

 最近10年間の超音波診断装置の著しい進歩により,現在では超音波検査は肝画像診断の重要な一部門を受け持っている.とくにX線CT, RI検査,血管造影,また最近登場したMRIといった高価な画像診断法に比べ,安価で無侵襲,しかも手軽に操作できる超音波装置はきわめて広く普及しており,病変のスクリーニングだけでなく,鑑別診断,超音波ガイド下の手技や術中検査などに幅広く用いられている.超音波検査の利点と欠点を表に示す.

CTスキャン

著者: 森山紀之

ページ範囲:P.1157 - P.1163

CTスキャンの進歩
 Computed Tomography(以下CT)は,英国のG. N. Hounsfieldによって1968年に考案され,1971年Dr. J. Ambroseによって臨床的に使用された.わが国においても,1975年頃から設置され稼動しはじめた.初期の装置では撮影時間は2〜4分と長く,このために,CTは主として体動の少ない頭部領域の検査に利用された.CTは管球の動きと検出器の位置関係により,第1世代から第4世代に分類されている.第1世代のCT装置では撮影時間は2〜4分を必要とし,ほとんど頭部領域でのみ使用されていた.第2世代のCTでは撮影時間が20秒前後となり,腹部領域でも使用されるようになった.第3,第4世代のCTでは撮影時間が1〜9秒となり,肝領域画像診断の主力検査の1つとなった.
 検査方法についても,造影剤を使用しない単純CT,ヨード系造影剤の点滴静注後の検査,造影剤の急速静注を行いながら検査を行う急速静注法(bolus injection法),急速静注法を行いながら経時的にCT撮影を行うDynamic CT1)が開発された.特殊な検査法としては,血管造影を行いながらCT検査を行うAngio-CTや,経動脈的にリピオドールの注入を行い,その後にCT検査を行う方法も開発された.肝領域のCTの進歩には,機械の進歩とともに,これら撮影方法の開発も見逃すことのできない重要なことである.

RI検査

著者: 内山暁 ,   藤本肇

ページ範囲:P.1164 - P.1169

各種画像診断の中での肝核医学画像の役割
 肝の非侵襲的検査法として肝シンチグラフィが臨床検査の中で大きな役割を果たしていたのは,1960年代から1970年代の前半までである.X線CTと超音波検査法が普及しその精度が向上してからは,すべての肝疾患に核医学検査を行う時代はおわった.しかし,それでは現在ではもう肝の核医学検査はまったく不要であろうか.結論からいえばそうではない.肝シンチグラフィの役割は狭まったとはいえ,その生理学的画像であることの特徴を生かした使い方が強調さるべき時代になったといえよう.以下に静態イメージング,体軸断層イメージング,動態イメージングなどの検査法を用いて,核医学検査の特徴を明らかにしよう.

血管造影検査

著者: 中塚春樹 ,   高島澄夫

ページ範囲:P.1170 - P.1174

 肝疾患に対する血管造影の歴史は古く,種々の肝疾患の血管像が報告されており,その診断能の優れていることは広く認められている.ただ最近のUS, CTなどの非侵襲的な検査法の発達に伴い,血管造影の価値はやや低下したかのようにみられがちであるが,逆に肝腫瘤性病変の発見の機会の増加に伴い,血管造影の対象症例も増加し,それが読影力の一層の向上につながっている.さらに血管造影装置,技術の向上によりその精度も一層上昇しており,血管造影は現在もなお肝疾患の有力な検査法としての地位を占めている.とくに本邦では肝細胞癌の頻度が高いため,その検索のために血管造影も高頻度に行われ,正確な診断が要求される.
 本稿では,肝血管造影法の概略と造影所見,さらにはその長所,短所,pitfallなどについて述べる.

胆・膵画像診断のすべて

単純X線写真におけるレントゲンサイン

著者: 今西好正 ,   石川徹

ページ範囲:P.1176 - P.1182

 近年,超音波検査,CT,ERCPなどによる画像診断の発展は目覚ましく,胆道系や膵臓の疾患に対する診断に大きな役割を果たしている.とくに,超音波検査は,胆道系の診断に関してはその有用性が認められている.
 しかしながら,日常診療においては,腹部単純写真が最初に撮影されることが多く,その読影が正しく十分に行われることが,次に何をなすべきかを決定するのに不可欠である.このことを考えると,画像診断の原点ともいうべき腹部単純写真は,その重要性をますます増してきているように思われる.

超音波検査

著者: 東義孝

ページ範囲:P.1184 - P.1187

 超音波診断の進歩は,装置の進歩とともにあったといってよい.すなわち,約10年前にリニア電子スキャナが実用化されて,解像力と操作性が飛躍的に向上した.その結果,超音波診断が爆発的に普及し,多くの知見が集積された.しかしその装置の性能も2,3年前にピークに達し,最近は新しいスキャン方式の開発や,特殊用途の装置の開発に主力が注がれている.
 超音波診断の利点と欠点を,胆・膵領域に焦点を絞って列記してみると,表1のようになる.

CTスキャン

著者: 小久保宇 ,   板井悠二

ページ範囲:P.1188 - P.1192

 CTスキャンの出現は,超音波検査とともに,胆・膵領域の画像診断に大きな変化をもたらした.現在,CTスキャンが胆道系・膵疾患の診断に寄与する部分は大きいが,万能というわけではなく,他の検査法と同様に,CTスキャンも長所と短所を合わせもっている.したがって,その得失を理解することによって,胆・膵疾患の診断にあたり,より有効にCTスキャンを利用することができると思われる.これらの点をふまえながら,胆道系・膵のCT診断について概説する.

RI検査—胆道系

著者: 牧正子 ,   山﨑統四郎

ページ範囲:P.1194 - P.1197

放射性医薬品
 胆道シンチグラフィには,古くは131I-ローズベンガルや131I-BSPが用いられていた.1970年代に99mTcで標識した種々の化合物が開発され,被験者の被曝の軽減とよりよい画像が得られるようになり,再び胆道シンチグラフィに対する関心が高まった.胆道シンチグラフィ用放射性医薬品に求められる条件としては,①血中から肝への摂取が速やかで高率であること,②肝から胆道系への移行が速やかであること,③尿中排泄率が低いこと,④高度黄疸例でも肝に摂取され,胆道系に移行すること,などがある.
 現在用いられている99mTc標識物には,99mTc-iminodiacetic acid(IDA)系と99mTc-pyridoxylidene amino acid系とがあり,その主なものを表1に示した.血清ビリルビン値が,99mTc-HIDAでは5〜6mg/dl,99mTc-PIでは7〜8mg/dlを越えると,これらの放射性医薬品は肝への摂取が不良となり,胆道機能の評価は困難となる.またこれらは,尿中排泄率も比較的高い.99mTc-BIDAは血清ビリルビンが30mg/dlでも胆道系の描出は可能であり,尿中排泄率も低いが,肝から胆道系への移行が遅い.99mTc-PMTは99mTc-BIDAには劣るが,かなりの高ビリルビン血症例でも肝への摂取はよく,胆道系の描出が可能であり,肝から胆道系への移行は速やかであり,尿中排泄率は低い.

RI検査—膵

著者: 山﨑統四郎

ページ範囲:P.1198 - P.1201

 膵シンチグラフィは,一般に形態診断法として位置づけられており,現在のようにX線CT,超音波検査,MRIなどの有用な検査法が普及した時代には,必ずしも広く用いられる検査とはいい難い.しかし膵シンチグラフィは,膵局所の外分泌機能を反映したイメージングであるから,単なる形態診断法ではなく,膵臓の局所での代謝機能を表すものである.その結果として,腫瘍部が欠損として示されたり,炎症のために膵がまったく描出されないなどの所見が得られる.
 膵シンチグラフィが最近好まれなくなった1つの理由として,本検査に広く使われてきた75Seの物理半減期が120日とかなり長いことがあげられる.しかし,サイクロトロンの普及に伴い,物理半減期20分の11Cを標識したアミノ酸を利用した膵シンチグラフィが一部の施設では行えるようになってきた.

PTCとERCP

著者: 有山襄 ,   須山正文 ,   小川薫 ,   猪狩功遺 ,   長岩治郎 ,   藤井大吾

ページ範囲:P.1202 - P.1207

 経皮経肝胆道造影(percutaneous transhepaticcholangiography;PTC)と内視鏡的膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatogra-phy;ERCP)は,本邦で安全に施行できるように実用化された検査法である.両検査法は膵胆道疾患の診断と治療に重要な役割を果たす.PTCとERCPの手技は確立され,安全度の高い検査法として広く行われている.

血管造影検査

著者: 井筒睦

ページ範囲:P.1208 - P.1213

 超音波検査やCTスキャンなど非侵襲性画像診断法は著しく進歩し,胆道・膵領域でのその果たす役割はきわめて大きくなっている.
 血管造影は侵襲性という欠点を有するものの,質的診断や悪性腫瘍の伸展度診断の情報は多く,手術適応の決定や手術術式の選択に依然として欠くことのできない検査法である.

疾患別による画像診断アプローチ

肝癌の早期診断

著者: 打田日出夫 ,   大石元 ,   大上庄一 ,   藤田いずみ ,   尾辻秀章 ,   広橋伸治 ,   阪口浩 ,   松尾敏和

ページ範囲:P.1214 - P.1221

 各種画像診断法の発達と普及により,肝癌の早期診断も可能になり,日常診断においていかにして小さな肝腫瘤性病変を見落とすことなく拾い上げ,正確な鑑別診断と進展度診断により,的確な治療方針に直結するかが大きな関心事になっている.しかし,現実には,診断装置や診断技術などにより,必ずしも理想に近い状況にあるとはいえず,また,条件が満たされていたとしても,診断困難例に遭遇することがあるのも事実である1〜5)
 肝癌の画像診断法には超音波診断(US),CT,血管造影,MRIなどがあり,これらのすべてを駆使して効率的に診断を進めることが大切であるが,小さな病変では1つのmodalityでしか診断できない場合もある1,3,4).本稿では,小さな肝癌の診断における各画像診断法の基本的事項と限界について,症例を呈示して概説する.

肝癌の術前における画像診断

著者: 岡本英三 ,   曲直部裕一 ,   加藤年啓 ,   山中若樹

ページ範囲:P.1223 - P.1227

 肝臓外科の発達,肝癌高危険群に対する検診の普及に伴い,近年,肝癌に対する肝切除の機会は急増している.術前の画像診断において,腫瘍の占拠部位,ならびに進展範囲を正確に把握し,根治的切除が可能か否かを診断することが,治療の選択上重要である.本稿では,当教室において経験した症例に基づいて,肝切除を前提とした術前術中の画像診断について述べる.

肝癌の画像診断とInterventional Radiology

著者: 塩山靖和 ,   山田龍作

ページ範囲:P.1228 - P.1233

 Interventional Radiologyは,医学の新しい一分野であり,"画像診断学的検査法を利用して,病変部に近づき,解剖学的あるいは機能的な病態を治療すること,および病理学的診断を得るために,組織または液体を摂取すること"と定義されている.肝癌に対しては,表に示すようにさまざまな手法が行われている.わが国ではとくにTAEが盛んであり,外科的治療と遜色ない良好な成績を収めている1)
 本稿では,これらInterventional Radiologyの手法によって生じる,肝癌の画像診断上の変化について述べることとする.TAEなど各手法の理論,手技,成績の詳細については成書に譲る.

転移性肝腫瘍の検出

著者: 亀山富明 ,   高島力 ,   松井修

ページ範囲:P.1234 - P.1239

 肝は肺とともに,消化器をはじめとする種々の部位に生じた悪性腫瘍が最も転移を起こしやすい臓器である.この肝転移の有無や拡がりを知ることは,治療方法を選択する上で大切である.これに対する画像診断法の役割は大きく,各種診断法の画像所見と検出能について臨床医はよく理解しておく必要がある。

肝の良性腫瘍とその鑑別

著者: 森田穰 ,   斉藤博哉

ページ範囲:P.1240 - P.1249

 肝臓は他臓器に比較して腫瘍発育の多い臓器ではあるが,肝原発良性腫瘍は悪性腫瘍に比してきわめて少なく,日常臨床上遭遇することは稀である.本症の鑑別診断の基本的概念は,良性・悪性の鑑別,良性腫瘍間の鑑別,真の腫瘍と腫瘍類似病変との鑑別の3点にある.
 本稿では,WHO,Edmondson,Hensonらの分類を参考に作製した肝良性腫瘍の分類(表1)に基づき,画像診断所見を中心に症例を呈示するとともに,先述した概念に基づく鑑別診断の要点を概説する.

門脈圧亢進症の診断

著者: 中村仁信 ,   橋本勉 ,   沢田敏

ページ範囲:P.1250 - P.1256

 門脈圧亢進症は,門脈系の血行動態の異常のため門脈圧が上昇し,それに伴って多彩な病状を呈する症候群である.門脈圧は,健常人では100〜150mmH20であるのに対し,門脈圧亢進症では220mmH20以上に固定されている.門脈圧亢進症の原因となる疾患は,奥田らによれば1),頻度の高い順に肝硬変,特発性門脈圧亢進症,肝外門脈閉塞症などで,とくに肝硬変は全体の64%を占めている.本稿では,まず門脈圧亢進症に共通してみられる画像所見を述べ,次に各疾患の概略と画像の特徴を述べる.

その他のびまん性肝疾患—肝炎,脂肪肝,ヘモクロマトーシス

著者: 久直史

ページ範囲:P.1258 - P.1263

 びまん性肝疾患に対する画像診断方法としては,単純X線写真以外に超音波検査,X線CT,RI検査,MRIなどが挙げられる.これらの画像診断方法はいずれも組織学的レベルでの肝実質の変化を直接表すものではないが,超音波検査は超音波パルスの反射の強さ,CTはX線吸収値,RI検査はKupffer細胞の貧食能,MRIは組織中のプロトン密度と,それぞれ異なった情報を基にして画像が得られている.
 どのような病態に対してどのようなアプローチ方法が最も適切かという点に関しては,もうすこし結論を待たねばならない分野も残されているが,ここでは肝炎,脂肪肝,ヘモクロマトーシスといった,びまん性肝疾患に対する現状での画像診断のアプローチについて述べることにする.

胆道腫瘍とその鑑別診断

著者: 荒井保明 ,   木戸長一郎

ページ範囲:P.1264 - P.1270

 胆道系悪性腫瘍の多くは,急速に進行する予後の悪いものであり,その治療成績も現在のところ悲観的なものである.予後に最も重大な影響をもつものは診断の時期であり,またその治療法決定のためには進展範囲の診断が必要である.このため,胆道腫瘍を見出してこれを診断し,次の進むべき方向を決定する画像診断の役割はきわめて重大である.ここでは悪性胆道腫瘍を中心として,これと鑑別すべき胆道疾患について述べる.

胆道胆石の画像診断

著者: 土屋幸浩 ,   大藤正雄 ,   矢澤孝文 ,   中村広志

ページ範囲:P.1272 - P.1277

 胆石症の診断には,数多くの検査法が応用される.超音波,腹部単純撮影,X線-CTなどのいわゆる画像診断法および排泄性胆道造影(経口法,経静脈法),直接胆道造影(PTC;経皮的胆道造影,ERC;内視鏡的胆道造影)などの造影診断法が代表的である.とくにPTCやERCは,治療にも用いられる.
 従来,胆石症の治療は外科手術が主体であったが,最近では内科的治療によっても良好な成果をあげられるようになってきた.すなわち,胆石の治療では胆汁酸製剤による胆石溶解療法や内視鏡による胆石除去法が行われ,胆石に合併した重症胆管炎や胆嚢炎に対しては,経皮的や内視鏡的ドレナージによってほぼ確実に炎症の鎮静化をはかれる.

膵癌早期診断へのチャレンジ

著者: 井戸邦雄 ,   平松京一

ページ範囲:P.1278 - P.1283

 膵疾患の画像診断は,X線CT,超音波断層などの非侵襲性検査の発達に伴い,膵の形態を容易に把握することが可能となった.血管造影は,超選択的動脈造影の技術の向上,種々の薬理学的動脈造影の出現に伴い,膵固有動脈の描出が容易になり,かなり小さな動脈,静脈の変化を把握できるようになった.しかし,これら画像診断の発達した今日でも,早期膵癌の診断には多くの問題点が残されている.
 膵癌は腹部臓器癌のうちでも最も早期発見の困難な癌であり,その切除率も一般に膵頭部癌で30%,膵体尾部癌で15%位と低いものである.また,切除されても予後は必ずしもよいものとはいえない.これらの問題点は,早期膵癌の診断の難しさによるものである,本稿では,早期膵癌診断の可能性を各画像診断から解説していく.

膵癌の術前における画像診断

著者: 矢野真 ,   中山和道 ,   嬉野二郎 ,   桑原義明

ページ範囲:P.1284 - P.1290

 膵癌の術前における画像診断の目的は,大きく2つに分けられる.1つは質的診断(鑑別診断)であり,もう1つは進展度(進行度)診断である.質的診断には,超音波(US),逆行性膵胆管造影(ERCP),血管造影などが有用とされ,進展度(進行度)診断には,上部消化管造影(GI),コンピューター断層撮影(CT),US,血管造影などが有用であろう.本稿では,US,CT,ERCP,血管造影を中心に,膵癌の術前における画像診断について述べてみたい.

急性膵炎と慢性膵炎

著者: 黒田知純 ,   吉岡寛康 ,   徳永仰 ,   小塚隆弘

ページ範囲:P.1292 - P.1296

 画像診断の最近の進歩は目覚ましく,急性あるいは慢性膵炎の画像診断は,従来の腹部単純撮影を中心とした補助的なものから,超音波検査(US),Computed tomography(CT)あるいは内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)を中心としたものになり,臨床診断においてその占める位置は著しく重要なものになった.
 本稿では,急性膵炎と慢性膵炎,およびそれらの合併症に対する画像診断の進め方と,それらの主要所見について概説する.

鼎談

肝・胆・膵画像診断の進歩

著者: 大藤正雄 ,   打田日出夫 ,   平松京一

ページ範囲:P.1298 - P.1309

 平松(司会) 最近,医療の進歩が非常に急速な中でも,とくに画像診断の進歩は,ここ数年来,目を見張るものがあります.とりわけCTスキャンと超音波の出現が,今日のテーマである肝・胆・膵の画像診断を根本的に変えてしまった気がします.そのステップ,つまりdecision treeが本当にいま変わってしまいました.さらに,核磁気共鳴(MRI)などが加わることによって,機能とか,代謝などに関する情報が得られるようになってきつつあります.
 今後どのように変わっていくのか,私たちも本当に予想がつきませんが,肝・胆・膵の画像診断というのは,腹部の画像診断の中でも臨床家の注目の的になっている領域です.私たちは,昭和30年代から肝・胆・膵の画像診断に携わってきたわけですが,ここで肝・胆・膵の画像診断を振り返りながら,非常に苦労した時代から今日の現状,そして将来の展望と,盛りだくさんのテーマではありますけれども,大いに話し合っていきたいと思います.中には診断ばかりではなくて,診断の技術を応用した各種治療ということまで話が及べば,さらに楽しい話になるのではないかと思います.

グラフ MRIの臨床

肝疾患における超電導MRI

著者: 伊藤亨

ページ範囲:P.1314 - P.1318

 MRIは特殊な撮像方法を除いては撮像時間が長いため呼吸停止下における撮像が困難であり,それが主たる原因となって上腹部においては頭頸部ほどの鮮明な画像は得られない.しかしその特異的な濃度分解能によってもたらされる画像は魅力的であり,CTを凌駕する部分も多い.ここでは,主として肝の腫瘤性病変を中心に,CTとの対比をしながら述べてゆきたい.使用機種は超電導装置Signa(General Electric社製,1.5 Tesla)である.T1強調画像としてPS 600/25,プロトン密度強調画像,T2強調画像としてSE 2000/20,SE 2000/60(これら2つは同時に得られる)を得ている.撮像時間は,前者が10分16秒,後者が17分10秒である.

消化管造影 基本テクニックとPitfall

胃(11)—微小病変,Ⅱb病変

著者: 西俣寿人 ,   西澤護

ページ範囲:P.1320 - P.1326

 西澤 病変が小さければX線診断もそれだけ難しくなってきます.10mm以下,あるいは5mm以下というものを見つければ,それだけで早期癌あるいは粘膜内のものだという診断もつくと思います.そういう意味で,微小病変の診断は重要です.また,いわゆる平坦なⅡb型というものを探せば,これまたほとんどm癌と考えてよいと思います.そういうわけで,胃癌の診断の限界を見極める,あるいは早期癌の中でもその初期像を見つけようというためには,どうしても微小病変あるいはⅡb型の早期癌というものを探す努力をしなくてはなりません.
 もう1つ,次回に予定している胃底腺領域から発生するスキルスの早期診断,すなわち胃底腺領域の未分化の微小癌を探すということにもつながってくると思います.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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55巻7号(2018年6月発行)

特集 ここさえ分かれば—輸液・水・電解質

55巻6号(2018年5月発行)

特集 プロブレムから学ぶ感染症診療—すぐに役立つ厳選シナリオ30選

55巻5号(2018年4月発行)

特集 明日のために解くべし!—総合内科問題集

55巻4号(2018年4月発行)

増刊号 プライマリ・ケアでおさえておきたい—重要薬・頻用薬

55巻3号(2018年3月発行)

特集 —クリニカル・クエスチョンで学ぶ—循環器薬の使い方

55巻2号(2018年2月発行)

特集 —デキる内科医の—神経内科コンサルト

55巻1号(2018年1月発行)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

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