文献詳細
新薬情報
アバン〔武田薬品〕 一般名:イデベノン—脳代謝・精神症状改善剤
著者: 清川重人1 水島裕1
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学・第1内科
ページ範囲:P.1730 - P.1731
文献概要
老齢人口は,近年,著しく増加しており,新しい老年病治療薬の開発,なかでも脳血管障害(脳卒中)に対する治療薬の開発が強く要望されている.また,その後遺症の1つとして,記憶障害(痴呆)が重要な社会的,医学的問題となっている.武田薬品では,この記憶障害を含めた脳卒中後遺症治療薬を目標として,強力なミトコンドリア機能賦活作用を有するベンゾキノン系化合物の合成に着手した.またこれと並行して,脳卒中易発症系高血圧自然発症ラット(SHRSP)の作出,ひき続き,記憶障害モデルの作製に努め,その後,多数合成されたベンゾキノン系化合物の中から,上記病態モデルを用いた薬効評価により,アバン(図1)が最も期待する薬理活性を有することを見出した.
アバンは,脳エネルギー代謝を改善し,脳内グルコース利用率を亢進するという点ではホパンテン酸カルシウムに近似した薬剤であるが,その作用機序である脳ミトコンドリアの電子伝達系に作用して呼吸活性を賦活するという点では,ホパンテン酸カルシウムとは大きく異なる新規な薬剤と考えられる.臨床試験においては,脳血管障害を有する患者の諸症状に優れた効果を示した.また,痴呆を呈した患者の周辺症状に対する効果も認められ,安全性も高いことから,本剤は今後,高齢化社会に対応した新薬ではないかと思われる.
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