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雑誌目次

雑誌文献

medicina25巻2号

1988年02月発行

雑誌目次

今月の主題 炎症性肺疾患へのアプローチ Editorial

炎症性肺疾患へのアプローチ

著者: 塚本玲三

ページ範囲:P.188 - P.189

■炎症性肺疾患とは
 炎症性肺疾患はきわめて多岐にわたり,腫瘍と奇形を除くほとんどすべての肺疾患といってよく,気道あるいは肺の間質および実質の炎症を主体とする疾患である.原因別に分類すると表に示すように,感染,アレルギーあるいは免疫異常,物理化学的刺激によるもの,原因不明のその他の疾患の4群に分けられる.Wegener肉芽腫症,lymphomatoid granulomatosis,びまん性過誤腫性脈管腫症などは,炎症と腫瘍の中間型疾患とも考えられる.

病態と概念—診断,治療との関連から

肺の感染症

著者: 北原光夫

ページ範囲:P.190 - P.193

■肺感染症(肺炎症候群)の分類(表1,図)
 1.市中感染の肺炎
 市中感染として見られる肺炎として,Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌),Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ),Legionella pneumophilia(レジオネラ),Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌),Staphylococcus aureus(ブドウ球菌)などがあげられる.市中感染をさらに細分すると,bacterial pneumonia(細菌性肺炎)とatypical pneumonia(非定型性肺炎)となる.

びまん性間質性肺炎

著者: 谷村一則 ,   本間行彦

ページ範囲:P.194 - P.197

 びまん性間質性肺炎は,種々の原因により引き起こされ,その病理組織学的所見も多様である.胸部X線所見では,びまん性に,両肺に,粒状ときにスリガラス状,網状陰影がみられるのを特徴とする.臨床症状は,ほとんど症状のないものから咳嗽,息切れ,呼吸困難を高度に認めるものまである.症状の進行も非常に緩徐なものから急性に進行して呼吸不全により急激に死亡するものまで広範である.
 近年,びまん性間質性肺炎は増加の傾向にある.これは,環境などによる実質的増加と,これらの疾患に対する関心の高まりによると推測される.本症においても,診断技術の進歩は著しく,胸部CT,気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid, BALF)検査,血清免疫学的検査,67Gaシンチグラム,病理組織学的検査などが広く応用されるようになった.その結果,鑑別および確定診断が容易になりつつあるといえ,それに伴う治療方法の選択も的確に行われつつある.

免疫異常による肺疾患

著者: 岡田純

ページ範囲:P.198 - P.201

 肺疾患に免疫が関与したものは少なくない.その中には,免疫異常が肺を主座として起こるものと,全身性疾患の一部分症として肺に免疫異常による病変が生じるものがある.近年,免疫学の進歩や,気管支洗浄(BAL)などの検査の進歩に伴い,免疫異常が関与した肺疾患においても病因・病態形成が明らかにされつつある.
 免疫反応はCoombs & GellによりI型からIV型に分類されている.本稿では,免疫異常を,狭義の"アレルギー反応"であるI型を除いたII型からIV型の免疫反応とし,これらの免疫反応に基づく肺疾患を中心に疾患概念と病態生理について述べる(表1).すなわち,II型は肺の抗原に対す自己抗体による疾患,III型は免疫複合物が原因と考えられる血管炎などの疾患,IV型は細胞性免疫によるものと考えられている肉芽腫性変化を伴う疾患である.

診断法

鑑別診断のための身体所見のとり方のコツ

著者: 副島林造

ページ範囲:P.202 - P.203

■問診
 呼吸器の炎症性疾患の診断に際してもその第一のステップは問診であり,種々な症状が,いつから,どのような経過を辿って,どのように変化してきているのか,あるいはその背景因子としてどのようなものがあるのか注意深く問診する必要がある.気管支鏡検査やCTなど検査技術が進歩した現在においても診断の手掛りはまず患者の訴えに注意深く耳を傾けることであり,"Listen to the patient, he is telling you the diagnosis."のウィリアム・オスラー博士の言葉は臨床家にとって忘れてならないものである.
 もちろん,現病歴の問診と同時に既往歴,薬剤服用の有無,喫煙の有無,職業歴,旅行,特に海外旅行の有無,居住環境や犬,猫,鳥などペットの有無などについて問診する必要がある.オウム,インコなど愛玩鳥の飼育の有無はおうむ病診断の重要な手掛りになる1).東南アジアなど開発途上国への旅行後であれば,伝染病など特殊な感染症を考慮する必要があろう.

X線診断

著者: 平松慶博

ページ範囲:P.204 - P.209

■胸部X線写真の適応
 近年CTスキャンなどの高価なX線装置の普及に伴い,一般の患者がX線検査を受ける機会も増加している.それに従って,患者のX線被曝に対する意識も高まってきている.少し咳があるとか,熱があるとかということで簡単に胸部のX線写真を撮影することは,決して好ましいことではない.多施設にまたがって受診している患者も多く,X線検査の受け過ぎではないかという疑問をもっている患者も多い.患者の症状,臨床所見などをよく考えて,はじめてX線撮影の指示を出すべきであるが,施設によっては血液検査と同じような気楽さで,X線検査を施行しているのが現状であろう.しかしながら,まったく症状のない早期肺癌の診断において,X線写真は依然として大きな役割をはたしており,胸部X線写真の価値は少しも減じてはいない.
 肺の炎症性疾患に罹患しやすいのは,小児と老人であるが,この両者においては,まったく異なったアプローチをしなければならない.つまり,放射線感受性の高い小児においては,なるべく放射線被曝を少なくする努力が必要である.一方,老人においては,肺野の病変を見た場合には,常に肺癌の可能性を念頭におく必要があるため,かなりの頻度で断層撮影などの精密検査へ移行することが多い.

CTスキャン

著者: 原田積夫 ,   栗林幸夫

ページ範囲:P.210 - P.212

 ■適応
 炎症性肺疾患は通常胸部単純および胸部断層写真によって評価されることが多いが,最近CTスキャン(以下CT)の空間分解能が向上し,種々の炎症性肺疾患の評価にCTが用いられるようになってきている.CTによる炎症性肺疾患へのアプローチとしては概ね下記のような場合に有効である.
 1)炎症性陰影,無気肺の抽出とその性質,分布の評価

核医学検査

著者: 越智宏暢 ,   波多信

ページ範囲:P.213 - P.215

 各種肺疾患の核医学検査としては,肺換気血流シンチ,エアロゾール吸入シンチ,ガリウムシンチなどが一般に行われている1).しかし,日常よくみられる急性細菌性肺炎や肺化膿症の場合は,胸部X線写真や臨床症状などから診断されることが多く,画像診断として核医学検査が行われる機会は少ない.
 炎症性肺疾患の核医学的診断法としては,67Ga-citrateによるシンチグラフィが比較的多く用いられており,病巣の拡がりや病期の判定,治療効果の判定に利用されている.しかし核医学の最も重要な役割は,胸部X線写真で異常陰影が出現する以前の病変の早期検出,および異常陰影がみられる症例においては,その病巣が活動性か否かの診断にあると考えられる.

喀痰検査

著者: 佐々木英忠

ページ範囲:P.216 - P.217

 正常な気道においても気道粘液分泌量は1日100mlあり,飲み込まれて喀痰とはならない,細菌感染,アレルギー反応およびその他の刺激によって生じる炎症時には気道粘液分泌量が増加し,喀痰となり排出される.喀痰の存在は気道炎症の存在を意味し,喀痰には肺内で生じている炎症の病因を診断するための情報が組み込まれているといえる.

気管支肺胞洗浄

著者: 安岡劭 ,   大串文隆

ページ範囲:P.218 - P.220

■気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage,BAL)により採取される成分
 BALは生理的メディウムを気管支一肺胞系に注入,回収することによりこの領域を洗浄する方法である.近年,気管支ファイバースコープの導入により,BALが比較的容易に実施されるようになり,呼吸器疾患の病態の解析や診断のために本法が応用されるようになった.この通常の診断的BALにおいては,(亜)区域気管支より末梢の領域が洗浄される.
 気道一肺胞系には,健常者においても主に外界や上位の気道から侵入してくる種々の有害因子に対する生体防御成分が局在している.この領域の炎症性疾患では,これら生体防御成分の量的,質的変動に加えて,炎症関連物質が出現する.

肺生検

著者: 難波煌治 ,   工藤秀雄 ,   東賢次

ページ範囲:P.222 - P.223

 従来肺生検は肺感染症の細菌学的検索,肺癌の診断,びまん性肺疾患の診断および病状の把握のために行われてきた.最近では気管支スァイバースコープおよびその附属器具の進歩により,経気管支肺生検が多用されるようになっている.そのほか経皮的針生検,胸腔鏡下肺生検などが行われている.

病理組織学的検査

著者: 斎木茂樹 ,   内田和仁

ページ範囲:P.224 - P.227

 病理医が生検材料を扱うとき,臨床的にどのような病気が疑われ,どのような病気が否定され,何を目的としてこの生検が行われ,どこから採取されたか,という情報が必要である.また,この生検目的に十分応えるためには,その材料が種々の病理検査に最適な状態で提出されることが望ましい.
 このことを踏まえて今回は,肺生検を施行後,その検体を「具体的にどう扱ったらよいのか」,また,その後に「どのような病理組織学的検査を行ったらよいのか」といった点を検討し,現在病理で行いうる検査法について述べる.

胸水検査

著者: 西川博 ,   安藤正幸

ページ範囲:P.228 - P.230

 胸水は炎症性呼吸器疾患のみならず,各種肺疾患,さらには全身性疾患に伴い出現する.したがって,胸水検査の第一の目的はその原因疾患を鑑別することにある.そこで本稿では胸水の鑑別を中心に,胸水を採取した時の日常検査の留意点について述べる.

肺機能検査

著者: 鈴木俊介

ページ範囲:P.232 - P.233

 肺機能検査は呼吸器疾患の診断においては補助的なものであるが,個々の疾患においては臓器(肺)障害の部位診断やその障害の量的把握には重要な役割を果たしている.また,患者の経過観察においても,肺機能検査は胸部X線などで検出できない変化を把えることができるので,有用な検査法の1つといえる.
 本稿では,主な疾患について肺機能検査の特徴的変化を述べ,また経過観察に有用な検査項目についても言及する.

診断のポイントと治療 感染症

細菌性肺炎

著者: 本田一陽

ページ範囲:P.234 - P.236

■診断のポイント
 典型的な肺炎の診断は日常診療上さほど困難ではない.すなわち肺における臓器炎症反応の結果,悪寒,発熱,胸痛,咳嗽,喀痰,呼吸困難,チアノーゼなどが主症状としてみられ,理学所見ではラ音聴取,局所呼吸音の減弱が,また胸部X線写真でラ音聴取部位に一致した浸潤陰影が認められると,臨床的には肺炎と診断され,直ちに起炎微生物の検索が開始される。さらに非特異的炎症反応としてのCRP増加,ESR亢進,血清タンパク分画でのα2グロブリンやγグロブリン分画の上昇に加え,核左方移動を伴った白血球増多が認められれば,細菌性肺炎の可能性が強く疑われる.
 しかし次のような非典型的臨床像を示す肺炎は無症候性肺炎(silent pneumonia)として看過されやすいので注意を要する.

マイコプラズマ肺炎

著者: 水谷裕迪

ページ範囲:P.238 - P.239

 マイコプラズマ肺炎の病原であるMycoplas-ma Pneumoniae(以下M. P. と略)は,細菌と同様人工培地で増殖するが,表面は薄い細胞膜だけで,普通の細菌にみられる細胞壁を欠く微生物である.このため細胞壁の合成阻害を主作用とする抗生剤は無効,原形質に作用する抗生剤は有効で,これが治療上のポイントになっている.
 M. P. の潜伏期間は一般的に15〜25日と考えられているが,これによって起こる病状は極めて多彩で,不顕性感染も多く,肺炎の発症は感染者の30人に1人位の割合と考えられている.また発病の場合は,肺炎,気管支炎,上気道炎が一般的であるが,ギランバレー症候群,髄膜脳炎,Stevens-Johnson症候群,その他,表1)のような種々の合併症を起こす場合もあることが知られている.

日和見感染症

著者: 斎藤厚

ページ範囲:P.240 - P.244

 日和見感染症(opportunistic infection)とはopportunistic pathogensによる感染症であるが,分かりやすくいえば,通常は非病原性菌あるいは非病原体とされるもの(平素無害菌あるいは平素弱毒微生物)によって引き起こされる感染症を指し,その宿主はcompromised hostあるいはimmunocompromised hostと呼ばれるものである.
 Opportunistic pathogens(日和見感染菌あるいは日和見菌原体)とは健康人には通常ほとんど病原性(pathogenicity)を発揮しないもので,腸内細菌群をはじめとするグラム陰性桿菌群,緑膿菌を代表とするブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌群,嫌気性菌群,結核菌,非定型抗酸菌さらにカンジダ,クリプトコッカス,アスペルギルス,ムコールなどの真菌類,ヘルペスウイルス,サイトメガロウイスなどのウイルス群,およびPneumocystis cariniiやToxoplasmaなどの原虫類など多種多様の病原体が含まれる.

肺化膿症

著者: 渡辺古志郎

ページ範囲:P.246 - P.247

■肺化膿症の成因
 肺化膿症の発症には,一般に誤嚥が最も重要な因子として関与しており,またその成因には脳血管障害,アルコール中毒,てんかんなどによる意識障害や口腔咽頭の術後,胃食道の術後などの誤嚥を起こしやすい状態が挙げられている1).その他,最近では糖尿病,肺癌などの免疫不全に合併することが多くなってきている.

オウム病

著者: 水野紹夫 ,   田村昌士

ページ範囲:P.248 - P.249

 オウム病は,Chlamydia psittaci(以下,C. psittaci)によっておこる感染症で,主病変は肺炎であり,感染経路としては鳥類,主としてセキセイインコからヒトに感染する人畜共通感染症の一つである.わが国では,1957年に集中的にオウム病の報告1)があり,その後散発的に症例報告がみられ,感染源はセキセイインコ,オウム,十姉妹,カナリア,鳩などである2).最近,海外からの鳥類の輸入が盛んとなり,ペットブームを来すとともに,オウム病は増加傾向にあり,今日では必ずしも稀な疾患ではなくなってきた.一方,最近になって鳥類とは無関係にヒトからヒトに感染し,肺炎,気管支炎を起こす新しいC. psittaci変異株(TWAR株)3)が見いだされており,わが国でも後藤ら4)が,鳥類や哺乳動物と接触がなくて血清学的にオウム病と診断した10症例について考察を加えている.
 一般にオウム病は呼吸器症状の他に多彩な症状,所見がみられ,髄膜炎,敗血症などを併発し死亡する例も報告されている.診断は問診が唯一の手掛かりとなり,早期に適切な処置をとることが大切である.

肺結核および非定型抗酸菌症

著者: 塚本玲三

ページ範囲:P.250 - P.253

■肺結核
 肺結核は日常診療上遭遇することが多い疾患である.そして,診断も治療もポイントさえ知っていれば容易である.しかし,最近,結核患者を扱わない病院が増えており,そして結核診療の経験豊かな医師も減っており,実際の診療上問題となることが少なくない.

免疫異常による疾患

サルコイドーシス

著者: 泉孝英

ページ範囲:P.254 - P.256

 サルコイドーシスは,病理組織所見から命名された疾患名で,"壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(サルコイド)病変形成"を主徴とする原因不明の全身性疾患である.全身のあらゆる臓器に病変の形成される可能性があるが,主なる病変部位は,肺(縦隔・肺門リンパ節,肺)95%以上,眼30〜40%,皮膚5〜10%である.臨床症状(表)のみでなく,予後,経過において人種差,民族差の著明な疾患である.以下,肺のサルコイドーシス病変を中心に記載する.

過敏性肺(臓)炎

著者: 越智規夫

ページ範囲:P.258 - P.259

■わが国の過敏性肺炎
 1.夏型過敏性肺臓炎
 主として西日本で年間に数十例の発症があり,わが国の過敏性肺炎では最も多い.6〜11月(多くは7〜9月)に発症し,夏毎の反復発症をみる.職業・年齢・性別とは無関係.自宅の室内塵に含まれる真菌が原因で家族発生もある.約15年前から注目され,宮川のCryptococcus neoformansと反応する抗体発見により疾患概念が確立し,安藤らによりTrichosporon cutaneumが病因抗原と結論された.古い木造家屋と夏の高温多湿に関係があり,わが国以外からはまだ報告がない.

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

著者: 江藤尚

ページ範囲:P.260 - P.261

 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は気管支喘息に特異な肺病変と臨床経過を示す疾患である.本症は肺結核や肺癌と間違われやすく,PIE症候群とも本来区別すべき疾患概念であると考えられる.またCroftonらのpulmonary eosinophiliaの分類では,その中のPulmonary eosinophilia with asthmaに含まれるものの,Carringtonらの1)提唱した好酸球性肺炎やABPAの疾患概念が確立した現在は,あまりに包括的過ぎて現実的な意義を失いつつある.以下,症例を呈示し,診断の要点と治療について述べる.

リウマチ性肺炎

著者: 多田慎也

ページ範囲:P.262 - P.264

 慢性関節リウマチ(以下RA)は主として関節の進行性破壊病変を主徴とする膠原病であり,免疫異常に基づく病態が考えられているが,その原因は依然として不明である.本症は全身病であり,多臓器病変の合併が知られている.このRAにおける肺病変としては,1)胸膜炎,2)肺線維症あるいは間質性肺炎,3)Caplan症候群,4)血管炎・肺高血圧症,5)閉塞性細気管支炎の5型に分類される.
 本稿で述べるリウマチ性肺炎は肺線維症あるいは間質性肺炎に分類される病態であり,胸膜病変に次いで頻度の高いRAにおける肺病変である.これまでのRAにおける肺線維症・問質性肺炎に関する報告はEllman & Ball1)に始まり,多数のRA症例における検討がなされている.しかしその内容は1%〜5%と低率の合併から,32%〜60%と高率の報告まで広がりがある2).これは間質性肺病変に関する胸部X線上の変化を把握する評価基準の差にあると思われる.一方で,男性に多い,喫煙歴と相関を認めるなど,加齢による影響もふくめて,RAにおける肺線維症あるいは間質性肺炎を診断する際に慎重に考慮する必要がある.

Churg-Strauss症候群

著者: 水越和夫 ,   福井俊夫

ページ範囲:P.265 - P.267

 1951年,Churg & Straussは剖検例を主として13例のアレルギー性肉芽腫性血管炎を報告した.本症は,発熱,気管支喘息,好酸球増多および多臓器病変を有し,病理学的には壊死性血管炎と肉芽腫病変を認めることが特徴である.比較的稀な疾患ではあるが,その臨床像は興味深いものがあり,診断および治療について自験例をもとに解説する.

びまん性肺出血

著者: 滝口裕一 ,   橋爪一光 ,   栗山喬之

ページ範囲:P.268 - P.269

■概念と分類
 びまん性肺出血(Diffuse pulmonary hemorrhage,以下DPHと略す)は,肺微小血管から肺胞腔内へびまん性に出血を生じ,急性呼吸不全を来す病態である.従って単一の疾患を示すものではなく,表に示すような種々の疾患に伴って認められる1).比較的稀な病態ではあるが重篤な経過をとるため,原疾患の予後を大きく左右することになる.発症機序の詳細は不明であるが,DPHの多くは糸球体病変を伴うことが特徴的なことから,alveolo-glomerular syndromeなる疾患概念として興味が持たれている.原疾患の分類は表に示したが,さらに病因論的にAlbeldaらのように抗糸球体基底膜抗体(以下ABMA)を伴うもの,免疫複合体(以下IC)を伴うもの,そのいずれでもないものに分類するのが鑑別診断に便利である2)
 これら免疫学的疾患,血管炎としてのDPH以外にも,抗凝固療法中の合併症,DICなどの血液凝固異常,左心不全,レジオネラ肺炎,薬剤などでもDPHが認められることが報告されているが,本稿では割愛する.

その他の肺疾患

ARDS

著者: 吉矢生人 ,   竹田清

ページ範囲:P.270 - P.273

■概念
 ARDS(Adult Respiratory Distress Syndrome)はAshbaugh,Pettyら1,2)によって提唱された急性呼吸不全症候群である.1967年にAshbaughらが1)報告した症例は12例で,外傷による肺振とう症ないし肺挫傷(lung concussion or contusion)が4例,胸部ならびに腹部銃創が各1例,多発骨折を伴う多発外傷が1例,ビールス性肺炎(内1例は誤飲性肺炎と疑われた)の疑いが4例,急性膵炎1例であった.かれらは,成人で人工呼吸管理を必要とした272例の症例の中で,新生児の肺硝子膜症(hyaline membrane disease)とよく似た共通の病態を示すものがあることに注目して,これらの12例を選び出した.Ashbaughらが最初に報告したARDSの臨床像は表1のごとくである.この病態は,胸部X線上,瀰慢性問質性肺水腫像を呈するもので,このため広範な肺胞虚脱を来し,肺内シャントが増加して高度の低酸素血症を来すものである.ARDSの定義は,これらの病態がさまざまなストレスを契機として,それまでは病変のなかった肺に起こり,しかも肺欝血に伴う心原性肺水腫ではないと言うものである.
 その後,同様の臨床像を呈する急性呼吸不全の症例が次々と報告された.

びまん性汎細気管支炎(DPB)

著者: 中田紘一郎 ,   谷本普一

ページ範囲:P.274 - P.275

■診断のポイント
 1.臨床症状
 咳,疾を初発症状とし,病変の進展とともに呼吸困難を伴うようになる.喘鳴も経過中しばしば認められる.痰は初期には少量であるが,経過とともに痰量は増加し,多くは50ml以上,ときには100ml以上に及び,その性状は黄色ないし緑色膿性で,ときに血液が混じる.

特発性間質性肺炎

著者: 福地義之助

ページ範囲:P.276 - P.278

■診断のポイント
 わが国で特発性間質性肺炎(IIP)と鑑別を要する間質性肺疾患は,膠原病肺(CPD),サルコイドーシス(SA),過敏性肺臓炎(HP),塵肺(PN)の4疾患である.以下には全国調査成績にもとづいて鑑別診断のポイントをあげる.

薬剤性肺炎

著者: 末次勧

ページ範囲:P.280 - P.282

 薬剤による肺炎は,原因薬剤が非常に多く(表),発症機序,炎症のタイプもさまざまである.薬物療法の進歩,家庭や職場環境における薬品使用の機会の増加につれて,今後発生する頻度が高まる疾患であると予想される.主な薬剤性肺炎について以下に述べる.

じん肺

著者: 斉藤芳晃

ページ範囲:P.283 - P.285

 じん肺症は「粉塵を吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病」と定義される.線維化を引き起こすのは一般に無機粉塵であり,職業性に暴露される.粉塵の種類により珪肺(遊離珪酸),珪酸塩肺(シリカトーシス,石綿肺,タルク肺,カオリン肺),蝋石肺,珪藻土肺,炭坑夫じん肺(石炭粉塵),黒鉛肺,鉄肺,ベリリウム肺.アルミニウム肺などに分類される.暴露粉塵の組織反応の強さは,その結晶構造,濃度,暴露期間,粒子の大きさなどが関係し,散布性の粒状結節から塊状結節まで種々のじん肺結節を作る.
 胸部X線はじん肺の程度により小陰影(粒状影および不整型陰影)や大陰影を示す(表).小陰影の散布状況により1型から3型に分類され,大陰影がみられるのが4型である.線維増殖性変化は離職後も年余に渡る経過で進展し,それにともない気腫性病変が加わり,さらに気道,肺感染が加わり,胸部X線所見はさらに修飾を受ける.すなわち付加記号で示した種々の陰影が雑多に入り交じってくる.以前に較べ,粉塵環境が改善されているため,急進じん肺のような早いものは減少しているが,粒状影とは異なる不整型陰影をよく見かけ,いわゆる肺線維症との鑑別が問題になる.

嚥下性肺炎

著者: 相澤信行

ページ範囲:P.286 - P.287

 嚥下性肺炎は口腔内,咽頭分泌物または胃内容物を気管支内に誤嚥するか,誤って気管内に挿入された経鼻胃管によって引き起こされる肺炎の総称である.誤嚥した時に,急速に出現する気道閉塞,化学的肺炎と,徐々に現れてくる細菌性肺炎に分類され,それぞれ異なった病態を示す.

急性膵炎による肺・胸膜障害

著者: 相馬一亥

ページ範囲:P.288 - P.289

 "肺は全身の鏡"と言われているように,肺病変は全身性疾患の一部分であったり,先行したりする.急性膵炎の場合にも同様のことが知られている.急性膵炎による肺・胸膜病変は,急性膵炎に特徴的なものと,他の腹部疾患でも認められるものとがある.本稿では上記それぞれについて述べていくが,肺・胸膜病変の出現機序の理解のためには急性膵炎の病態生理をまず理解しておく必要がある.

肺胞蛋白症

著者: 広瀬隆士

ページ範囲:P.290 - P.291

 肺胞蛋白症(alveolar proteinosis)は,1958年,Rosen,Castleman,Liebowらの3人の病理学者によって初めて報告された疾患である.本邦では1960年,岡らによって第1例が報告されて以来,80例以上が報告されている.
 本症の特徴は,肺胞腔内にPAS(periodic acid-Schiff)染色陽性で,しかも脂質を多量に含む蛋白様物質が充満することである.したがって,胸部X線写真上,典型例では微細斑点状陰影が両側肺門部から末梢に向かって蝶形に分布した一見肺水腫に類似した陰影を呈し,気管支肺胞洗浄(bron-choalveolar lavage)によって黄色味を帯びた白濁した液が回収される.

ウェゲナー肉芽腫症

著者: 北村諭

ページ範囲:P.292 - P.293

■疾患概念と好発年齢
 ウェゲナー肉芽腫症Wegener's Granulomatosisは,1936年にドイツの病理学者F.Wegenerにより初めて記載された疾患である.本症は気道(鼻腔から気管支,肺までを含む)の肉芽腫性炎症,壊死性糸球体腎炎,全身諸臓器の壊死性血管炎を病理学的3主徴とする.発症年齢は10〜70歳代に及ぶが,30〜50歳代に最も多く,本邦では男女比は1:1である.

慢性閉塞性肺疾患

著者: 山内俊忠

ページ範囲:P.294 - P.298

 30年ほど前には,アメリカの"肺気腫"がイギリスでは"慢性気管支炎"として扱われていた時代があった.それはそれぞれの国での定義の違いや臨床家の癖によるものと思われるが,このため食い違いを改めるべく両国を含めての会議が持たれた(第1回Aspen Conference,1958年).その後も討議が続けられ,臨床的に"換気に伴って呼気の気流が妨げられる障害"を,chronic non-specific lung diseaseあるいはchronic obstructive lung diseaseと呼ぶようになった.
 1965年のAmerican Thoracic Society(ATS)において,"肺胞壁の破壊・消失や気道の炎症による慢性の呼気障害をもたらす臨床像を持つ疾患群"を慢性閉塞性肺疾患(COPD)としてまとめる概念が提唱された.しかし,"慢性気管支炎"は,結核や腫瘍を除く気道病変が原因で慢性的に咳と痰があるものであり,"肺気腫"は,病理学的に肺実質に肺胞壁の破壊と肺胞腔の拡大を来すもの,とのはっきりとした違いがあり,今日では臨床的,病理学的診断の向上により,もはや症候群としてのCOPDの名称は意味がないとする声もあるが,上記の疾患のいくつかの合併例や,臨床観察のみでは明確な分類の不可能な症例も多く,臨床像と病理組織像との関連性が明確になるまでの仮称としての用語と理解すべきと考えられる.

鼎談

炎症性肺疾患のステロイド療法

著者: 工藤翔二 ,   中田紘一郎 ,   塚本玲三

ページ範囲:P.300 - P.310

 塚本(司会) 今日は「炎症性肺疾患のステロイド療法」ということで,先生方に忌憚のないご意見をお伺いしたいと思います.
 ところで,炎症性肺疾患に関して,ステロイドを使うべきかどうかという適応の基準,そしてステロイドを使うとしたらどんな種類のものを使うか,どれだけの量をどれだけの期間使うか,あるいは経静脈的に投与するのか,経口的に投与するのか,そういった細かい具体的なことを書いたテキストがなくて,実際の臨床の場で,私自身もそうですけれど,患者を前にして困っている方がたくさんいるのではないかと思い,このテーマを取り上げました.

理解のための10題

ページ範囲:P.312 - P.314

カラーグラフ 眼と全身病

トキソプラスマ症による網脈絡膜炎

著者: 宇山昌延

ページ範囲:P.316 - P.317

 トキソプラスマ原虫Toxoplasma gondiiはマラリア原虫と似た原虫で,元来,家畜,野生動物の寄生虫であるが,しばしば人にも感染する.人に感染した場合,ほとんどはsubclinicalの症状を示すにすぎず,成人には本症の血清抗体陽性者が20〜30%あることから,本症の不顕性感染が多いことがわかる.発病は軽いと風邪様症状ですむことが多いが,重症では皮膚発疹,肺炎,肝炎,リンパ節腫脹,脳炎,熱発を来す.
 感染経路は,本症の虫体,虫卵をもつ家畜や野生動物の肉を生ないし半焼の状態で食べて起こる場合と,猫の腸管に原虫が寄生し,糞便中に虫卵を多数排出するので,乾燥した糞便中の虫卵は家内でほこりとなって経気道的に,または食物について経口的に人に感染する.一般には猫からの感染が多く,家のペット猫が感染源として注目されている.

グラフ MRIの臨床

骨盤内臓器

著者: 富樫かおり

ページ範囲:P.352 - P.356

 骨盤領域においては,MRIの欠点である呼吸性アーチファクトによる画質の劣化がほとんどない.このためMRIは骨盤臓器の長軸方向といえる矢状断撮影が可能なことに加え,すぐれた組織間コントラストにより詳細な情報を示し,多数の報告においてその有用性が強調されている1〜5).さらに放射線被曝がないため,若年女性骨盤の検索にも適した検査法である.
 ここでは自験例をもとに正常女性骨盤MR像および各骨盤臓器の代表的疾患のMR像を呈示し,その有用性と現在みえる範囲について紹介する.筆者らの用いている機種はGE社1.5テスラ超伝導装置で,パルス系列はT1強調像としてPartial Saturation(PS;TR=600msec,TE=25msec),プロトン密度強調像,T2強調像としてSpin-echo法(SE;TR=2,000msec,TE=20/60または70msec)を用いている.

演習

目でみるトレーニング

ページ範囲:P.319 - P.325

心電図演習

著者: 白鳥健一

ページ範囲:P.327 - P.331

 幼少時より心疾患のある34歳の主婦が,精査治療のため入院した.
 既往歴,家族歴 特になし.

内科専門医による実践診療EXERCISE

労作時呼吸困難/一過性の記憶障害

著者: 前田裕二

ページ範囲:P.333 - P.336

 43歳,女性,教師.既往歴,家族歴に特記すべきものなし.
 昭和58年6月下旬より労作時の呼吸困難が出現した.発熱,胸痛はない.朝,咳嗽とともに非膿性の疾を喀出,その後呼吸困難はやや軽減するという.8月下旬には呼吸困難は自然に消失したが,59年,60年にも同様な症状が,ほぼ同じ頃に出現したため来院した.8月に田舎に帰省したときには症状は消失し,帰宅後より呼吸困難は再び出現したという.そのほか,関節痛,嚥下障害などはない.

講座 図解病態のしくみ 循環器疾患・2

心臓の肥大・拡張

著者: 杉下靖郎

ページ範囲:P.358 - P.364

心肥大,拡張の意義
 心肥大(hypertrophy)が生ずれば心筋重量は増加し,心拡張(dilatation)が生ずれば心内腔は増加する.
 心臓に一時的な急性負荷が加わった場合(運動など),心臓は心筋収縮力,心拍数などを増加させることにより代償する.これは機能的代償機転といえる.

肺癌診療・1【新連載】

肺癌の臨床疫学と早期発見の問題点

著者: 江口研二

ページ範囲:P.366 - P.370

 精力的な集団検診などの早期発見の努力にもかかわらず,わが国での肺癌の増加は,著しいものがある.厚生省の統計によると昭和60年の肺癌死亡数は,男性20,837人,女性7,753人で,疾患別訂正死亡率では,肺癌によるものが男性35.3,女性12.7(人口10万対)であり,いずれも胃癌による死亡の次に高い数値を示している1).しかもその年次推移を見ると,胃癌,子宮癌が低下傾向にあるのに対して,肺癌は,大腸癌や男性の肝臓癌などと共に年を追って増加傾向にあり,歯止めのかかる様子はない(図1).米国では国立がん研究所(NCI)のSEER(Surveillance Epidemiology and End Results)プログラムの報告によると,昭和59年の肺癌死亡率は男性で70.7,女性で28.8(人口10万対)となっており,年次推移をみると男性の肝臓癌,大腸癌,女性の乳癌などの訂正死亡率がプラトーになっているのに対して,肺癌は両性ともに増加している.本年度の米国癌学会(ACS)の推定癌罹患率では,男性で肺癌は前立腺癌と共に全癌の中で各々20%ずつを占めて1位であり,女性では肺癌は全癌の11%を占めて4位である.死亡者数では,男性,女性各々全癌死亡者数の36%,20%で両性とも肺癌が全癌のなかでトップを占めている2)

内科診療における心身医学的アプローチ

癌患者の心理的ケア—ターミナルケアを中心に

著者: 手嶋秀毅 ,   木原廣美 ,   野田文子

ページ範囲:P.372 - P.375

 わが国における癌のターミナルケアについては,いろいろ未解決の問題が多く,まだ定説がないのが現状である.したがって総説的に理論を述べることよりは,治験例を示して個々の症例にどのように対処し,それがどのような結果をもたらしたかに重点をおいて述べた.その後,各症例について癌患者の心身医学的アプローチの立場から検討を加えた.
 症例1と2は肺癌患者で病名告知を行ってターミナルケアを行った症例と,そうでない症例を対比的に述べた.症例3は婦人科癌のターミナルの症例で臨床心理士によって面接が行われ,患者の背景の心理的因子を取り扱った例である.婦人科の症例ではあるが,ターミナルケアの基本的な要因を含んでいるので紹介した.

CPC

慢性糸球体腎炎と診断されて20年後より10年間に亘る血液透析を受け,下肢の激痛,著明な精神症状を呈して死亡された55歳男性

著者: 吉田尚 ,   浅田学 ,   川口良人 ,   内原俊記 ,   登政和 ,   高橋力 ,   池田政俊 ,   奥田邦雄 ,   秋草文四郎 ,   伊良部徳次 ,   村上信乃

ページ範囲:P.338 - P.351

 患者 55歳,男,元臨床検査技師
 主訴 全身倦怠,息切れ

循環器疾患診療メモ

循環系薬剤の薬物相互作用

著者: 山科章 ,   高尾信廣

ページ範囲:P.376 - P.377

 臨床の場では2種類以上の薬剤の併用投与がしばしば行われる.しかしながら多剤併用により,ある種の薬剤の薬効が増強され過ぎて副作用を生じたり,逆に他の薬剤の薬効が阻害され薬効が低下するなどの薬物相互作用が出現してくる.
 循環系薬剤の多くは有効治療域が狭く(表1),かつその過量により重篤な副作用を生じうるため,薬物相互作用については十分認識しておく必要がある.本稿ではこういった薬物相互作用について解説する.

新薬情報

グラマリール〔フジサワ〕

著者: 清川重人 ,   水島裕

ページ範囲:P.378 - P.379

■概略
 老年期脳障害患者では,脳病変の進行とともに知的機能の低下やそれに伴って種々の精神症状が出現する.このうち攻撃的行為,精神興奮,俳徊,せん妄などは,介護・治療上困難をきわめることから問題症状,異常行動と呼ばれ,知能低下の改善が期待できない場合でも,この異常行動を軽減することの臨床的意義は大きい,従来,このような異常行動に対して,脳代謝賦活剤やNeurolepticsが臨床的に用いられているが,脳代謝賦活剤の有効症状は,自発性低下や情緒障害などの自発性喚起にあるとされ,異常行動への効果は十分とはいえない.また,Neurolepticsでは,老年患者に対しては過鎮静状態をきたしやすく,錐体外路性副作用が出現しやすいなど,期待どおりの効果が得られないことが多い.
 グラマリール(一般名:塩酸チアプリド)は,1972年フランスのSESIF研究所で開発されたアルキルスルフォン基を有する新しいベンザマイド系化合物である.当初開発国フランスでは,スルピリドと同様な作用を有するものと考え,精神分裂病,うつ病などの機能性精神病を対象とした臨床試験が実施されたが,とくに有用性は見出されなかった.

実践診療do's and dont's

リンパ節腫脹,他

著者: 山田治

ページ範囲:P.215 - P.215

 大学病院の総合外来と実地医家の外来で診る疾患の頻度は多少異なると思われるが,当科でみる初診患者の主要症状は,痛み,だるさ,めまい,むくみ,はきけ,発熱,下痢,しびれ,咳嗽である.痛みを訴える患者は25%と,全体の1/4を占める,最も多い痛みは頭痛であり,次いで心窩部痛,腹痛,胸痛,咽頭痛と続く.これらの症状の多くは突然の発症で,しかも比較的短期間で治癒していく急性疾患である.無治療で自然軽快していく症状も少なくない.疾患名でいえば,全体の18%を急性上気道炎が占めて,最も多い.
 このような診療の場で働いていると,稀ではあるが,重症疾患の患者が紛れ込むことがあり,軽症の急性疾患の中に,稀な疾患を見落とさないように選別することも,総合外来の大切な役割である.

基本情報

medicina

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1189

印刷版ISSN 0025-7699

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