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カラーグラフ 非観血的検査法による循環器疾患の総合診断
左室中部に狭窄を示す肥大型心筋症の1例
著者: 大木崇1 福田信夫1 河野智彦1 林真見子1 恵美滋文1 森博愛1
所属機関: 1徳島大学医学部第2内科
ページ範囲:P.1060 - P.1070
文献購入ページに移動1)入院時(洞調律)の心音図(図1)
I音(1)は心尖部(Apex)でやや充進し,PQ間隔(0.21秒)から考えて明らかに異常である.このような所見は,僧帽弁狭窄や左房粘液腫などのように拡張末期まで有意な房室間圧較差が維持される病態にみられる.本例では後述するように左房収縮がきわめて弱いため,心房収縮後の僧帽弁閉鎖運動が生じ難いと考えられる.その結果,僧帽弁が拡張末期まであるレベルの開放位にとどまり,その後の左室収縮に伴って生じる僧帽弁閉鎖のエネルギー,すなわちI音音量が正常大あるいは軽度に増大したものと解釈される.
収縮早期に小さな心音(Ej)を認める.この心音は大動脈駆出音であり,Apexから第3肋間胸骨左縁(3L)に至るまで存在し,かつ3Lでは駆出性収縮期雑音の開始点となっている.II音(II)はほぼ単一である.
Apexと第4肋間胸骨左縁(4L)に小さな拡張早期過剰心音(OS)を認める.この心音はII音から約0.1秒後に出現していること,心尖部拡張期ランブル〔DM(1)〕の開始点となっていることから,僧帽弁開放音と考えられる.
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