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グラフ 非観血的検査法による循環器疾患の総合診断
収縮性心膜炎類似の血行動態を示した滲出性心膜炎の1例
著者: 福田信夫1 大木崇1 内田知行1 井内新1 奥本哲生1 森博愛1
所属機関: 1徳島大学医学部・第2内科
ページ範囲:P.1592 - P.1599
文献購入ページに移動1)心音図と頸動脈波曲線(図2)
心音図は心尖部(Apex)と第3肋間胸骨左縁(3L)における平静呼吸中の同時記録を示すが,注目すべき所見は次の3点である.①II音の病的呼吸性分裂,②心尖部の拡張早期過剰心音〔Ex(1)〕,③II音肺動脈弁成分(IIP)よりわずかに遅れて出現する3Lの拡張早期過剰心音〔Ex(2)〕.
本例におけるII音の病的呼吸性分裂には,主として吸気性の著しいIIA-IIP間隔増大(呼気時40msec,吸気時75msec)が関与するが,その主原因は吸気に伴う左室全収縮時間(Q-IIA時間)の短縮(335msec-315msec=20msec)が正常(10msec未満)よりも著しいためである.Q-IIA時間の吸気性短縮はとりもなおさず左室駆出時間の吸気性短縮(呼気時245msec,吸気時220msec)が顕著なためでもある.このような吸気に伴う左室駆出時間短縮の顕著化は,血行動態的に有意な心膜液貯留時や収縮性心膜炎,重症の閉塞性肺疾患などにみられ,この所見が著明な場合は臨床的に「奇脈」として観察される.
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